平和構築
我が国の国際平和協力
1 概要
我が国は、国際平和のために、より積極的な役割を果たしていくことが必要と考え、1992年6月、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(国際平和協力法、PKO法)を制定し、国連を中心とした国際平和のための努力に対して、本格的な人的・物的協力を行ってきた。
この法律は、我が国の国際平和協力として「国際連合平和維持活動」への協力、「国際連携平和安全活動」への協力、「人道的な国際救援活動」への協力及び「国際的な選挙監視活動」への協力の四つの柱を定めている。また、これらの活動への協力として、要員・部隊の派遣による人的協力のほか、物品の譲渡が行えるよう「物資協力」の制度も定めている。
2 法律の目的
国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動、人道的な国際救援活動及び国際的な選挙監視活動に適切かつ迅速に協力することができるように国内体制を整備することによって、我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与すること(第1条)。
3 平和維持隊への参加に当たっての基本方針(いわゆる5原則)
以下は憲法第9条との関係で一切問題を生ずることがないようにする目的で整理をした基本方針。
- (1)紛争当事国の間で停戦の合意が成立していること
- (2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること
- (3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場を厳守すること
- (4)上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること
- (5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能
4 国際平和協力業務
我が国は、国際連合平和維持活動のために実施される業務で次に掲げるもの、国際連携平和安全活動のために実施される業務で次に掲げるもの、人道的な国際救援活動のために実施される業務で次の(13)から(19)まで、(21)及び(22)に掲げるもの並びに国際的な選挙監視活動のために実施される業務で次の(8)及び(21)に掲げるものを「国際平和協力業務」として行う(第3条第5号)。
- (1)武力紛争の停止の遵守状況の監視又は紛争当事者間で合意された軍隊の再配置、撤退、武装解除の履行の監視
- (2)緩衝地帯等における駐留及び巡回
- (3)武器の搬入又は搬出の有無の検査、確認
- (4)放棄された武器の収集、保管又は処分
- (5)紛争当事者が行う停戦線等の設定の援助
- (6)紛争当事者間の捕虜の交換の援助
- (7)防護を必要とする住民等の生命、身体及び財産に対する危害の防止等のための監視、駐留、巡回、検問及び警護
- (8)選挙、住民投票等の公正な執行の監視又はこれらの管理
- (9)警察行政事務に関する助言若しくは指導又は警察行政事務の監視
- (10)矯正行政事務に関する助言若しくは指導又は矯正行政事務の監視
- (11)(9)及び(10)に掲げるもののほか、立法、行政(国の防衛に関する組織に関するものを除く。)又は司法に関する事務に関する助言又は指導
- (12)国の防衛に関する組織等の設立又は再建の援助
- (13)医療(防疫上の措置を含む。)
- (14)被災民の捜索若しくは救出又は帰還の援助
- (15)被災民に対する食糧、衣料、医薬品等の配布
- (16)被災民を収容するための施設又は設備の設置
- (17)紛争によって被害を受けた施設又は設備であって被災民の生活上必要なものの復旧又は整備のための措置
- (18)紛争によって汚染その他の被害を受けた自然環境の復旧のための措置
- (19)(1)から(18)までに掲げるもののほか輸送、保管、通信、建設又は機械器具の据付け等
- (20)国際連合平和維持活動又は国際連携平和安全活動を統括又は調整する組織において行う(1)から(19)までの業務の実施に必要な企画、立案等
- (21)(1)から(20)までに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
- (22)国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動の活動関係者の生命及び身体の保護
5 我が国の具体的な協力実績
(1)国際連合平和維持活動(PKO)への協力
同法成立以後、我が国は、これまで計13のPKOに要員を派遣してきている(2024年1月現在、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に司令部要員として自衛官を派遣中)。これまで、カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、スーダン、ハイチ及び南スーダンに自衛隊が、カンボジア及び東ティモールに警察が派遣されている。
(2)国際連携平和安全活動への協力
我が国は、2019年4月以降、エジプトのシナイ半島で活動している多国籍部隊・監視団(MFO)に司令部要員として自衛官を派遣している。
(3)人道的な国際救援活動への協力
我が国は、これまで6つの人道的な国際救援活動に要員の派遣等を実施してきている。ルワンダ難民のために自衛隊の部隊を派遣し、医療活動等を行ったほか、東ティモール避難民、アフガニスタン難民、イラク難民、イラク被災民及びウクライナ被災民のために、自衛隊機による人道救援物資の輸送を行った。
(4)国際的な選挙監視活動への協力
1998年6月、同法が改正され、我が国要員を派遣する体制の一層の整備が図られた。本改正以来、ボスニア・ヘルツェゴビナ(2回)、東ティモール(3回)、コソボ、コンゴ民主共和国、ネパール、スーダンの計9つの国際的な選挙監視活動に要員を派遣した(同法改正前はアンゴラ、カンボジア、モザンビーク、エルサルバドルの計4件に派遣)。
(5)物資協力
我が国は、これまでにPKO、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際移住機関(IOM)、政府間開発機構(IGAD)に対し、合計30回にわたり物資協力を行ってきている。
6 世論調査
「我が国の国連平和維持活動への参加」については、2023年9月の内閣府「外交に関する世論調査」(PDF)によれば、約9割の回答者が現状程度又はこれまで以上の積極的な参加に賛同を示している。これは、現在までの我が国のPKOへの協力の実績に対する国民の評価を反映するものと考えられる。政府としては、今後とも、このような協力への国民の理解と支持が更に深まっていくよう、PKO一般及び我が国の参加の実態に関する広報努力を続けていく。