外交政策
第8回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議(概要と評価)
9月27日(金曜日),ニューヨークの国連本部において第8回CTBT発効促進会議が開催されたところ,概要及び評価は以下のとおり。
1 概要
(1)今次会議では,マルトニ・ハンガリー外相及びナタレガワ・インドネシア外相が共同議長を務め,我が国からは岸田外務大臣が政府代表として参加。
(2)多くの政府代表から,前回会議以後新たに6カ国が批准したことを歓迎する一方で,CTBT早期発効の必要性を訴え,国際監視制度(IMS)等検証制度の更なる整備・強化等について意見が述べられた。また,新たに立ち上げられた賢人グループ会合の下での早期発効に向けた期待の声が寄せられた。
(3)会議参加国の総意として,未署名国・未批准国に対する早期署名・批准の呼びかけや核実験モラトリアム維持の重要性,CTBT検証体制の本来機能に加えた民生・科学分野における有用性等を盛り込んだ最終宣言(和文(PDF)/英文(PDF))が採択された。
2 岸田大臣による政府代表演説(和文(PDF)/英文(PDF))のポイント
・ 事実上の国際規範となりつつある核実験の禁止に関し,以下3つの行動を提案。
・ 一つ目として,核実験が行われた場合の国際社会全体による協調的かつ強固な反対を呼びかけ,核実験の禁止に関する国際規範化を推進すること。
・ 二つ目として,CTBTにおける国際監視制度(IMS)の有効性を実例と共に示しつつ,当該ネットワークを早急に完成させる重要性を訴えること。
・ 三つ目として,各国による政治的アクションを強化し,発効要件国の批准に向け全ての国がそれぞれの立場から積極的に働きかけ,行動すること。我が国としても,各国と連携しつつ,CTBT発効促進に向けたハイレベルでの働きかけを積極的に行っていくことを表明。
3 評価
(1)各国政府代表による演説では,署名開放後17年が経過してもなお未発効の現状への危機感を募らせる発言が多く見られる一方で,現在完成に向けて構築が進む国際監視制度(IMS)の有用性を評価し,現地査察(OSI)と共に強力な検証制度の構築に向けて努力していくべきとの前向きな発言が目立った。
(2)また,未発効ながらCTBTは普遍的枠組みとなりつつあると認識し,ゼルボ事務局長の下で立ち上げられた賢人グループ会合のイニシアティブにより,早期発効促進に向けた期待が寄せられた。
(3)我が国は,岸田外務大臣の代表演説を通じて,核実験反対に関する協調行動の重要性を訴え,各国との協力の下でCTBT発効に向けた取組を一層強化していくとの考えを力強く発信することができた。
(4)また,本件会議のマージンにおいて,岸田外務大臣はゼルボCTBTO事務局長と短時間のバイ会談を行い,引き続きCTBTの早期発効に向けた協力を確認した。
(参考1)発効促進会議
CTBTは,署名開放後3年を経過しても発効しない場合,批准国の過半数の要請によって,発効促進のための会議を開催することを定めている(第14条2)。この規定により,1999年から隔年で発効促進会議が開催されており,今回は8回目。
(参考2)CTBTの現状
CTBTは96年9月に署名に開放されるも,発効には発効要件国44か国すべての批准が必要とされ,現在まで未発効。発効要件国のうち,米国,中国,エジプト,イスラエル,イランは署名済・未批准。インド,パキスタン,北朝鮮は未署名・未批准。現在,署名国183か国,批准国161か国。