外交政策
化学兵器禁止機関(OPCW)執行理事会(EC)特別会合(第34回会合)における「シリアの化学兵器及び化学兵器生産施設の廃棄の詳細条件」の決定(概要と評価)
平成25年11月18日
概要
11月15日(金曜日)(オランダ時間),オランダ・ハーグの化学兵器禁止機関(OPCW)本部にて,執行理事会(EC)特別会合(第34回会合)が開催され,シリアの化学兵器廃棄に向け,以下の内容を含む「シリアの化学兵器及び化学兵器生産施設の廃棄の詳細条件」が決定されたところ,決定のポイント以下のとおり。
なお,本決定は,9月に執行理事会が決定した「シリアの化学兵器廃棄」において,15日までに決定することとされていたもの。
1.化学兵器及び化学兵器生産施設廃棄のタイムライン
(1)化学兵器に関し,
ア 未充填の砲弾:シリア国内において,2014年1月31日までに廃棄完了。
イ マスタード剤並びにサリン及びVXの主要なバイナリー物質:2013年12月31日までにシリア国外に移動。
ウ その他の化学剤:2014年2月5日までにシリア国外に移動。ただし,イソプロパノール(注:アルコールの一種で、工業原料や溶剤に使用される。)については,シリア国内において,2014年3月1日までに廃棄。
エ マスタードの保管用に使用されていた容器内のマスタードの残留物は2014年3月1日までに廃棄
(2)化学兵器生産施設に関し,施設の用途や器材解体状況に応じ4種に分類し,最短で2013年12月15日までから最長2014年3月15日までの4通りのタイムフレームを設定。
(3)シリア国外における化学兵器廃棄のスケジュール
ア マスタード剤並びにサリン及びVXの主要なバイナリー物質:可及的速やかに廃棄を開始し,2014年3月31日までに廃棄し,その結果生ずる化合物については,事務局長の勧告に基づき執行理事会が同意する日までに廃棄。
イ その他の全ての化学剤:可及的速やかに廃棄を開始し,2014年6月30日までに完了。
(4)事務局長に対し,シリア国外における化学兵器廃棄に関連する活動経費のための特別の信託基金を設置することを勧告し,締約国に対し,このための任意拠出金の提供を要請。
(5)事務局長に対し,2013年12月17日までに,執行理事会に対し,シリア国外における化学剤の廃棄のための明細な計画(スケジュール,経費総額等を含む。)を提示することを要請。
(6)シリアに対し,2014年1月15日までに執行理事会において検討できるよう,2014年1月1日までに,イソプロパノール及びマスタードの保管用に使用されていた容器内のマスタードの残留物の廃棄のための計画を提出することを要請。
(7)事務局長が関係国と協議し,廃棄のスケジュールに従って廃棄することが困難と認める場合には,事務局長はその状況説明及びスケジュールの代案を含め,速やかに執行理事会に通知しなければならない旨を決定。
2.化学兵器の輸送,保管及び廃棄の詳細取り決め
シリアの化学兵器の廃棄や輸送を支援する締約国については,条約上の化学兵器保有国とみなされることはなく,化学兵器保有国としての義務を負わない旨,一方で必要なOPCWの査察の受け入れを認めることが要請される旨等を決定し,これに関連する手続等を決定。
3.化学兵器生産施設に関する詳細取り決め
技術事務局に対し,シリアが提出した化学兵器生産施設の廃棄計画に基づき,未廃棄の化学兵器生産施設に関する廃棄の検証計画を作成し,2013年12月9日までに廃棄・検証計画を提出することを要請。
4.その他
(1)シリアが自国内での化学兵器及び化学兵器生産施設の廃棄に関連する活動の状況を月ごとに報告しなければならないことを決定。
(2)技術事務局が,9月27日の執行理事会決定に基づく月例報告に合わせ,本決定の履行状況を執行理事会に報告しなければならないことを決定。
(3)事務局長に対し,1(3)アの化合物及び1(3)イのその他の化学剤(シリア国内で廃棄されるイソプロパノールを除く。)の商業化学施設における廃棄の選択肢について検討すること等を要請。
(4)事務局長に対し,2013年12月2日までに,本決定の実施状況,特にシリアの治安状況,必要な財政・技術・ロジスティクス資源の入手可能性,シリア国外での廃棄の実施場所及び廃棄のタイムラインの実施状況を執行理事会に報告することを要請。
評価
1.シリアの化学兵器については,地域情勢の安定化,大量破壊兵器の廃絶の推進等の観点から,関係者の安全を確保しつつ,可能な限り早期にその廃棄のプロセスが進むことが重要。
2.本決定は,優先順位の高い廃棄対象物をシリア国外に搬出して国際的な協力により廃棄することを定めており,受け入れ国,廃棄の具体的な方法については今回の決定には含まれていないが,9月の執行理事会における「シリアの化学兵器廃棄」決定のタイムフレームに従い,シリアの化学兵器の廃棄プロセスを推進する上で重要なステップと評価。引き続き,今後の動向について注視していくことが必要。