外交政策

平成25年9月6日
1.導入

 腐敗は,経済成長と発展の妨げとなり,市場の清廉性を脅かし,公平な競争を弱体化させ,資源の配分をゆがめ,公衆の信頼と法の支配を弱めることから,引き続き重大な課題。
 G20腐敗対策作業部会(以下,作業部会)は,G20首脳のコミットメントを実施すべく進捗を監視するとともに,腐敗対策に関する法律や施策を効果的に執行するための経験の共有やベストプラクティスの特定を行っている。この点で,作業部会とビジネス界・市民社会との対話は,腐敗対策を前進させるためには重要である。作業部会は,実施と執行のギャップを縮小させるとするロスカボス・サミット首脳宣言におけるコミットメントに引き続き焦点を当てる。
作業部会は現在,35以上の項目から構成された「G20腐敗対策行動計画2013-2014」(以下,行動計画)を実施するとともに,議長国である露からの提案である,スポーツ,文化やその他の主要な国際行事及び国有財産の民有化における腐敗にも取り組んでいる。作業部会は,経済成長に対する腐敗の影響に関する経済協力開発機構(OECD)による分析を検討した。
 我々は,本進捗状況報告の付属文書や作業部会で合意された成果文書をG20のウェブサイトに公開する。文書の公開は,作業部会の取組を周知し,ベストプラクティスの実施を支援することに資する。
 
2.2013年の進捗状況の要点

(1)国連腐敗防止条約(UNCAC),OECD外国公務員贈賄防止条約
 UNCACとOECD外国公務員贈賄防止条約は,腐敗対策に関する重要な条約。G20首脳は,G20各国に対しUNCACの批准を,OECD外国公務員贈賄防止条約の未締約国に対し条約の遵守の検討を目的としたOECD贈賄作業部会への関与を求めてきた。
 我々は,2013年のサウジアラビアによるUNCACの批准を喜ぶ一方,現在G20のうち2ヵ国がUNCACに未批准のままである。G20のうち16ヵ国がOECD外国公務員贈賄防止条約の加盟国であるが,未加盟国の大部分がOECD贈賄作業部会に定期的に関与している。
 
(2)外国公務員贈賄,賄賂の要求
 国内外からの贈賄と賄賂の要求の防止効果を向上するため,作業部会は2013年に,外国公務員贈賄罪に係る法執行に関する原則と賄賂の要求の撲滅に関する原則を承認した。
 
(3)金融活動作業部会(FATF)
 G20の各国政府は,マネーロンダリングの撲滅,法人の実質所有者の特定,及び海外に隠された不法に得られた資産の回復のための取組を支持。作業部会は,今年,FATFと引き続き緊密に協力するとともに,実質所有者の基準を含む,マネーロンダリング対策及びテロ資金供与対策に関する改訂されたFATF基準実施を確保するためにFATFが実施中の取組を歓迎する。今秋,作業部会はFATFとの合同会合を開催する予定。
 
(4)腐敗による収益の資金洗浄の撲滅
 作業部会は,今年,ロスカボス・サミットにおいて採択された財産の回復に関する原則に関連して,各国の取組のレビューに着手した。また作業部会は,財産の回復に関するG20各国への要請を促進するために,財産回復に関するアラブフォーラムにおいてG8が主導して作成した国別ガイドの作成作業を行っている。
 
(5)国際協力
 ロスカボス・サミットにおいて承認された原則を推し進めるために,作業部会は,今年,腐敗した公務員のG20諸国への入国を拒否するため,情報を共有し協力するG20ネットワークを立ち上げるとともに,腐敗による犯罪における法律上の相互援助に関する原則を採択した。
 
(6)公的部門の清廉性
 腐敗対策機関は,十分な財源と外部の影響を受けることなく,独立して業務を行うことが不可欠である。インドネシアが2013年に主催した,APEC(アジア太平洋経済協力)のワークショップ(現代社会における腐敗撲滅のための腐敗対策機関の強化に関する課題と戦略)に関する同国が提供したレポートを歓迎し,フォローアップすることを検討する。
 作業部会は,政府の財やサービスの調達過程における公平性や透明性を高める取組を継続している。作業部会は,政府調達に関するベストプラクティスを作成するためのプロセスを開始するとともに,公務員の金融及び資産情報と潜在的な利益相反の開示に関する各国の制度についてレビューを行った。
作業部会はまた,公務員の刑事訴追からの免責に関する情報収集や国有財産の民有化における腐敗のリスクに関する検討を行った。
 
(7)腐敗のリスクの高い分野での腐敗との闘い
 作業部会は,腐敗のリスクの高い分野にどのように取り組んでいくのかについて協議を行った。今年4月にスポーツ分野の腐敗との闘いに関する官民ハイレベル会合が開催され,作業部会においても主要な国際行事の組織における腐敗のリスクの緩和に関する国連薬物犯罪事務所(UNODC)のレポートについて議論した。
 作業部会は,腐敗に脆弱な産業部門,特に,採取産業や建設業の透明性をどのように向上させるかについて引き続き議論するとともに,採取産業透明性イニシアティブ(EITI)の機能と採取企業から政府に行われた支払いに関する報告についての新しい基準について説明を受けた。
 
(8)腐敗対策教育プログラム
 作業部会は,腐敗に関する啓発を高め,清廉性,誠実性,公平性及び誠実性の価値観を植え付けるための教育・訓練プログラムについて検討した。
 UNODCは,作業部会に,同事務所のウェブサイト上で利用可能な全ての教育・訓練ツールの概略について情報提供を行い,作業部会は,各国がこのサイト(http://www.track.unodc.org/Pages/home.aspxLINK)の啓発促進を行うことに賛同した。
 
(9)ビジネス界と市民社会との協力
 腐敗の根絶は,政府同様,ビジネス界の関心事項である。ビジネス界,市民社会及び政府は,腐敗行為に対する最高の行動規範の啓発と実施を促進するために協力することができる。
 作業部会は今年,B20透明性・腐敗対策タスクフォースとC20を部会会合に招待し,モスクワとオタワにおいてそれぞれ会合を行った。
 作業部会メンバーとB20及びC20のパートナーは,作業部会が,G20全体に渡って,腐敗との闘いへの個別的及び集合的取組に貴重な貢献をしていると考えている。作業部会は,作業部会の取組を導くためのサンクトペテルブルク戦略枠組の承認を提案した。
 
3.結語
 作業部会は,行動計画において各国政府が行ったコミットメントの達成に向けて,2013年は順調に進展したと信じている。2014年,豪州が議長を引き継ぎ,作業部会における作業を進展させるだろう。

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