外交政策

平成25年5月18日
 5月18日,我が国とカンボジアとの共同議長により,第2回東アジア低炭素成長パートナーシップ対話が東京で開催されたところ,概要と評価は以下のとおり。
 
1.出席者

 モック・マレット・カンボジア上級大臣兼環境大臣(共同議長),ヤスミン・ブルネイ首相府エネルギー大臣,バルタザル・カンブアヤ・インドネシア環境担当国務大臣,クアン・ベトナム天然資源環境大臣,アコム・トナロム・ラオス天然資源・環境副大臣,ピタヤ・タイ天然資源・環境省副大臣,グリンスパン国連開発計画(UNDP)副総裁,アムスバーグ世界銀行副総裁ほか,東アジア首脳会議(EAS)18か国政府関係者(閣僚級)及び国際機関(アジア開発銀行(ADB),国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP),経済協力開発機構(OECD),国連工業開発機関(UNIDO))の代表が出席。
 我が国からは,岸田外務大臣(共同議長),石原環境大臣,佐々木経済産業審議官,坂根経団連副会長,田中JICA理事長,渡辺JBIC副総裁が出席。
 
2.概要

(1)昨年の対話で特定した,(1)各国の低炭素成長戦略の策定・実施,(2)技術,市場及び非市場メカニズムの重要性,(3)様々なステークホルダー間の効果的なネットワーク構築の三点について,各国が実施している多様な取組について進展が報告されるとともに,今次会合では,第二の柱である低炭素成長に資する「技術」に焦点をあてて議論が行われた。

(2)低炭素成長を実現する上での「技術」の重要性について,以下の三点について認識が共有された。
(ア)政府と地方自治体,特に,鍵となる優れた技術を有する民間セクターとの連携強化が必要。
(イ)低炭素成長実現のためには,EAS地域での低炭素技術の普及が不可欠。そのためには,温室効果ガスの削減ポテンシャルの高い分野における適正技術の普及が重要。
(ウ)低炭素技術の普及を促進するためのツールとして,市場メカニズムを含むあらゆる政策ツールの動員が不可欠。

(3)これまでの2回の対話で共有された知識及び経験が,低炭素成長及び気候変動に関する国際的な努力の重要な要素となることに留意するとともに,これらを共有し,政策形成過程にインプットするネットワーク(東アジア低炭素成長ナレッジ・プラットフォーム)の構築を歓迎した。

(4)強化された官民連携を基礎として,EAS地域において効果的な低炭素技術を推進し,投資を呼び込み,ビジネス環境を改善することの重要性が改めて強調された。

(5)来年は,EAS地域における低炭素成長の達成に向けて,民間セクターのより主体的な協力を得て,ハイレベル・フォーラムを開催するとの我が国からの提案が歓迎された。
 
3.評価

(1)日本は,国連気候変動交渉において,全ての国が参加する新たな国際枠組み構築に向けて積極的な役割を果たしているが,真に気候変動問題を解決するには,先進国のみならず新興国,途上国においても低炭素成長が不可欠であり,このための地域的・二国間の協力を推進することは,国連交渉を後押しする取組として重要である。特に,世界の成長センターであると同時に,世界最大の温室効果ガス排出地域である東アジア(EAS)地域において,低炭素成長の実現に向けた地域協力のための政策対話を日本主導で行うことの外交的意義は大きい。

(2)特に,今回会合では,「我が国が技術で世界に貢献していく攻めの地球温暖化外交戦略を組み立てる」との総理指示(1月25日)を踏まえ,技術を中心テーマに置いた。岸田外務大臣は,共同議長として会合を主導するとともに,会合のオープニング・スピーチで,低炭素成長実現における民間セクターとの連携の重要性を訴え,我が国の技術を活用して途上国における温暖化防止を進める二国間オフセット・クレジット制度についての参加者の理解を向上させるとともに,昼食会場に設けた企業展示ブースに参加閣僚を案内して我が国の優れた低炭素技術を紹介した。これは岸田外務大臣の外交政策の第三の柱である日本経済再生に資する経済外交の強化の具体的取組であり,先端技術を有する我が国民間企業の輸出や対外投資を後押しするものであった。会合前日の大臣主催レセプションにおいては,東北地方を含む地方自治体における低炭素成長の取組につき歓迎挨拶にて言及するとともに,自治体の取組をビデオ上映で紹介する等,日本の復興を対外的にアピールするとともに環境未来都市を含む自治体の海外展開を積極的に支援した。

(3)石原環境大臣からは,直前の5月16-17日に,我が国とニュージーランドが共同議長を務めて東京で開催した「第4回アジア・太平洋炭素市場ラウンドテーブル」の成果を紹介するとともに,二国間オフセット・クレジット制度を活用して途上国が一気に低炭素社会に移行できるよう都市や地域全体を低炭素化する取組の推進と,これを後押しするための新たな資金方策を構築していくとの考えが発表された。

(4)今後,本年11月のCOP19に向けて「攻めの外交戦略」を構築していくにあたり,今次会合は重要な成果となるものである。

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