経済

グリア経済協力開発機構(OECD)事務総長の訪日
(概要と評価)

平成24年4月26日


 グリアOECD事務総長は,4月23日から25日までの日程で訪日したところ,概要及び評価は以下のとおり。

  • 東日本大震災からほぼ1年たった我が国の復興状況を踏まえ,我が国とOECDとの協力関係を引き続き推進する等有意義な意見交換を実施。
  • 我が国の政策課題に対する提言を冊子のかたちにまとめて提示(注)。
  • 5月のOECD閣僚理事会(5月23日~24日。於:OECD本部(パリ))に先立ち,開発,技能・雇用,ジェンダー等の主要議題等に関し,関係閣僚と意見交換を実施。

 (注)今次事務総長訪日にあたり,OECD事務局がとりまとめたもの。財政の持続性達成,税システムの改革,世界経済における日本の統合強化,教育の強化,保健・長期介護制度の強化,一層グリーンな成長の実現,農業政策の改革,幸福度と進歩の計測などの11項目につき政策提言を行うもの(なお,2009年11月の事務総長訪日時にも同様の政策提言が OECDより出されている)。

1 日程

 23日に,玄葉外務大臣との会談及び有識者を交えた夕食会を実施。24日及び25日に,関係8閣僚,経済界,労働界の代表等との意見交換を実施。   25日には,野田総理への表敬等を実施。

 なお,24日と25日に,それぞれ経済産業研究所(RIETI)および読売国際経済懇話会(YIES)において,グリア事務総長による講演が行われた。

2 主な表敬・会談

  1. (1)野田総理表敬(25日午後)
    1. ア 野田総理より,昨年4月のグリア事務総長来日以降,日本経済は緩やかに持ち直している旨,また,今次訪日のためにOECDがとりまとめた我が国に対する政策提言(上記の(注)参照)に感謝を表明。これに対し,グリア事務総長より,引続きOECDとして日本の復興と経済再生のために全面的に協力していきたい旨発言。
    2. イ グリア事務総長より,(1)消費税の10%への引上げは,他の主要国に比べて穏当,(2)TPPを含む高いレベルの経済連携への取組と農業の改革の努力を支持,(3)安全性の確保を大前提として,原子力の利用を続けることを支持する,と発言。これに対して,野田総理より,これら政策提言に謝意を表し,東日本大震災や東京電力福島第一原発事故から得られる知見・教訓を,OECDを含む国際社会と共有していきたい旨発言。
  2. (2)玄葉外務大臣との会談・夕食会(23日夕)
    1. ア 玄葉大臣より,東日本大震災の復旧・復興に関連し,これまでOECDからなされた協力に謝意を述べたのに対し,グリア事務総長より,引き続き協力していきたい旨表明。
    2. イ 5月のOECD閣僚理事会に関し,グリア事務総長より,開発,技能・雇用,ジェンダーや,また,経済的課題に関する新たなアプローチについても議論する予定であり,日本の積極的貢献に期待したい旨発言。玄葉大臣より,閣僚理事会の議論に積極的に参加したい旨,特に開発戦略を重視しており,民間セクターの活力を活用したアジアの成長経験が他の地域でも活用されることが重要である旨発言。
    3. ウ OECD事務局の邦人職員増強のための取り組みを進めることに一致。
    4. エ 引続き行われた夕食会では,有識者の方々(小島順彦・三菱商事会長,佐々木かをり・イーウーマン社長,藻谷浩介・日本総研主席研究員)を交え,新興国を含む国際情勢,我が国の経済情勢・政策等について幅広く活発な意見交換を実施。

3 評価

  1. (1)グリア事務総長は,東日本大震災直後である昨年4月に訪日し,我が国に対する前向きなメッセージ(震災による日本経済への悪影響は長く続かず,必ず回復すると確信している)を発信し,また震災後の日本の取組に対する  OECDからの貢献案を提示したが,その後,防災,リスク管理,教育などの分野で具体的な協力が進められている。今次訪問では、震災からほぼ1年たった時点での我が国の復興状況を踏まえ,我が国とOECDとの間で各種協力を引き続き推進していくこと等有意義な意見交換が行われた。


  2. (2)特に,我が国の政策課題に対して,OECDとしての提言を冊子のかたちにまとめて,野田総理をはじめ関係閣僚に提示し,我が国がこれらの政策課題に取組む上で,OECDとして様々に役立つ用意がある旨明確なメッセージが伝達された。「世界最大のシンクタンク」とも言われるOECDが,その専門性に基づいた分析や政策提言を冊子にして簡潔にわかりやすく示すことは,関係閣僚をはじめ関係者にとって役立つ有益なものと評価できる。


  3. (3)次回のOECD閣僚理事会に先立ち,開発,技能・雇用,ジェンダー等の主要議題などに関し,関係閣僚との意見交換を行うことを通じ,我が国関心事項を事務総長に直接伝達する有益な機会となった。
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