経済

2011年OECD閣僚理事会(概要)

平成23年5月26日


 5月25日(水曜日)及び26日(木曜日)に,パリのOECD本部で第50回OECD閣僚理事会が開催され,我が国からは,菅内閣総理大臣,末松内閣府副大臣,伴野外務副大臣,篠原農林水産副大臣,及び田嶋経済産業大臣政務官他が出席した。今次閣僚理事会には,OECD加盟国34か国に加え,加盟候補国(ロシア),関与強化国5か国(ブラジル,中国,インド,インドネシア及び南ア)等が参加した。

 OECD設立50周年記念行事(25日午後)において,菅総理がスピーチを行った他,OECDのこれから活動方針について述べた「構想声明」(ヴィジョン・ステートメント)(仮訳英文(PDF))が採択され,また,議論の結果は,議長国である米国より「議長総括」(仮訳英文(他のサイトヘ))として取り纏められた。特に議長総括では,わが国の主張を受けて,最近の自然災害を受けて,WTO協定と不整合な措置を講じないことの必要性についての見解を共有した旨が明記された。また,「グリーン成長戦略」の最終報告が発表された。

1.総論

 今次閣僚理事会は,1961年のOECD設立から50周年を記念する節目の年に開催されるため,菅総理,フィヨン仏首相,クリントン米国務長官,バローゾ欧州委員会委員長等各国首脳の参加を得て,5月25日17時から,「OECD設立50周年記念行事」が行われた。

 また,今次閣僚理事会では,「より良い暮らしのためのより良い政策」(Better Policies for Better Lives)を主たるテーマとし,グリーン成長,イノベーション,技能向上,貿易,雇用,新しい開発政策のあり方等,幅広い議論が行われた。また,中国等の非加盟国との関係を発展させるための取組を強化する重要性も確認された。

2.各議論の概要

(1)「開会の辞及び議題の採択」,「成長,雇用,イノベーション及び技能」及び「事務総長の戦略的方向性」(25日ワーキング・ランチ)

 経済見通しから議論の対象を広げ,イノベーションや投資分野を含め,高い成長を実現するための構造改革の在り方等を議論した。

 また,グリア事務総長より,1年間の活動・報告と今後のOECDの戦略的な方向性につき,報告提案を行った。

 同セッションに出席した末松内閣府副大臣からは,日本経済について,震災によるマイナスの影響は大きいが,強力な回復力を示しており,今年後半に経済成長の回復となって現れること,雇用については,OECDの技能戦略への期待を表明するとともに,若年層の雇用支援,女性の就労拡大支援,子育て支援政策を重視しており,将来の社会保障制度の担い手を弱体化させないためにも,これらの支援政策に取り組む必要があることについて発言した。イノベーションに関しては,介護・医療分野へのイノベーションの活用について発言した。

(2)グリーン成長(25日午後)

 「グリーン成長戦略」最終報告が発表され,政策提言等につき,首脳がラウンド・テーブル形式で議論を行った。参加者間で,グリーン成長における貿易の重要性やグリーン成長の進捗を計測する必要性などにつき議論がなされた。

(3)設立50周年記念行事(25日午後)

 クリントン米国務長官,フィヨン仏首相,菅総理大臣,バローゾ欧州委員会委員長によるスピーチが行われた(菅総理のスピーチ(他のサイトヘ))。

 その他ロシアの外国公務員贈賄防止条約加盟に向けた贈賄作業部会への参加,「多国籍企業ガイドライン」の改訂の採択,OECDアフリカ公的債務管理及び債券市場センターの設立覚書の署名等が行われた。

(4)開発(26日午前)

 議長であるクリントン米国務長官が,開発政策の深化及び新たな方向性について発言を行い,その後参加閣僚等から意見が述べられた。開発援助が引き続き重要であること,新興国との関係を強化することやOECD全体で,開発のために広範な分野の政策一貫性を確保すること等を含む,開発のための新しい包括的アプローチを進める重要性が確認された。また,ジェンダー・イニシアティブについて報告があった。

 伴野外務副大臣からは,開発のために表明済みのコミットメントの実現に誠実に取り組んでいく決意を表明。その上で,脆弱層や成長の恩恵が届きにくい層に対応することの重要性や,開発において果たす役割が増大している新興国,民間セクターなどとの連携を強化し,パートナーシップを構築することが重要である旨指摘し,MDGsフォローアップ会合(6月2日及び3日,於:東京)の開催に言及しつつ,我が国としてMDGs達成に向けた国際社会の流れを後押ししていく旨述べた。

 篠原農水副大臣からは,特に食料安全保障に焦点を当て,世界的な需要増大に対応した食料増産が重要であり,多様な地域における多様な農業を維持・発展させることが必要なこと,特に今回の震災の経験や,環境・エネルギーの観点も踏まえ,地産地消や旬産旬消など,生産と消費の距離を短くすることが有効なことにつき発言した。

(5)貿易と雇用(26日午前)

 貿易の自由化が雇用の増加に及ぼす影響,更なる貿易の自由化の利益等について意見が述べられた。田嶋経産政務官から,日本からの輸出品の安全性を強調し,サプライチェーンを維持する観点も含め,科学的な根拠に基づいた対応を要請した。

3.二国間会談

 OECD閣僚理事会の機会に,伴野外務副大臣は,マリ・パンゲストゥ・インドネシア商業大臣と短時間の意見交換を行った(26日午前)。その中で,我が国とインドネシアとの友好関係の強化に加え,日・インドネシアEPAやインフラ分野等における協力・連携を引き続き進めていくことを確認した。

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