経済

OECD50周年構想声明(ヴィジョン・ステートメント)(仮訳)

平成23年5月

英語版(PDF)


  1. OECD設立50周年に際し,我々,OECD加盟国は,その設立目的を再確認するとともに,我々の市民の幸福の推進のため,急速に変化する世界の中でOECDがその実効的かつ影響力のある役割を確保するよう,OECDの進化に向けた構想を提示する。OECDは,経済成長及び健全な労働市場の促進,投資及び貿易の増大,持続可能な開発の支援,生活水準の向上,及び市場機能の改善のために,各国が共同で行う政策策定の取組を引き続き支援する決意である。また,この構想は,OECDをより実効的で包括的なグローバルな政策ネットワークとするとの我々の決意を強調するものである。
  2. OECDは,マーシャル・プランに起源を有するその歴史を通じ,より高い経済成長を生み出すため,良き統治や改革を促進し,経済政策を改善するために,各国を支援してきた。これらの努力の成功は,市場経済及び民主主義を支持する幅広い意見の一致の醸成に有益であった。 OECDは,成長と衡平を促進する構造改革の策定において,世界の主導的地位にある。また,各国の専門家が集う各委員会,高い質の事務局,世界レベルの情報収集及び分析,強固な相互審査(ピア・レビュー)及び証拠に基づいた政策提言は,複数の政策を比較し,成功事例(ベスト・プラクティス)を広めることを通じて,各国を支援している。規制当局や政策立案者,産業界の指導者,労働組合,市民社会による共同作業は,アイデアを共有し,お互いから学ぶとともに,成功事例,政策指針,法的規範を策定するために,主要な利害関係者が一同に集まる場となっている。
  3. 近年,グローバルな経済環境は劇的に変化した。2008年及び2009年の金融経済危機は,今日の世界において複雑さや相互の繋がりが増大したこと,成長と雇用が引き続き現在も中心的重要性を持つこと,金融部門のより実効的な規制や共通の懸念事項に対する協力の向上が必要であることを強く示した。今なお高すぎる失業率や公的部門の債務残高の問題,世界の持続可能で均衡ある成長を生み出すことに関する諸課題に対して,効果的に対処する必要がある。資本,技術,及び人の移動は急速に拡大している。新興経済大国が台頭し,世界経済に統合され,成長,富及び影響力における地球規模の変化をもたらしている。
  4. このように変貌する世界の中で,OECD加盟国は,引き続き,法の支配及び人権に基づく民主主義の諸価値や,開かれた,透明性のある市場経済原則の遵守を約束した国々からなる共同体を構成する。OECDの本質的な使命は,より強固で,よりクリーンで,より公平な経済成長を促進し,雇用と生活水準を向上させることである。我々は,OECDが,経済,社会及び環境政策上の主要課題を特定し,世界中の人々の幸福の増進のための政策を策定することにより,かかる使命を実行することを期待する。
  5. より良い暮らしためのより良い政策:OECDは,市場及び政府機能を改善し,保護主義に対抗し,より公正で効率的な課税及び投資制度を慫慂し,良き雇用を創出するための取組みを継続する。ビジネス及び政府の開放性,適切性,健全性及び透明性を促進し,腐敗と闘うことは,引き続きOECDの主要な取組みである。しかしながら,新たな挑戦には,新たなアプローチが必要である。OECDは,経済思考と分析枠組みを新たなものにする取組を支援するため,昨今の危機の教訓を取り入れる。
  6. 我々は,OECDが有する分野横断的分析力及び構造改革における知見を最大限活用し,成長と雇用の戦略を積極的に追求する。持続的な経済成長は,死活的な目標であり,将来のOECDの戦略においてグリーン成長を追求する。OECDは,女性の教育,雇用及び起業における経済機会を増加させるための手段を各国に提供する。我々の経済成長を高め,雇用を生み出し,生活水準を向上させるため,民間部門によるイノベーションの促進を支援する。OECDは,人々が分かち合う繁栄という目標のため,雇用の機会を増やすための効果的戦略を策定する。世界経済において,格差を減らし,包括的な成長を支援するために不可欠である高い質の教育及び技能,健康,社会保障政策を支援する。OECDは,各国政府が,社会保障費用の増大,高齢化,若年失業等を含む人口動態上の課題に対処する取組みを支援する。
  7. 開発のための我々の新たなパラダイム:様々な開発段階の国々が,グローバルな持続的経済成長の達成に貢献する。我々は皆,包括性及び柔軟性の原則に基づいて,お互いから学び,共にアイデアを生み出し,政策,規制,基準を調整し,より良いものにすることによって繁栄できる。援助の提供を超え,より幅広い相互作用を行うことは,経済成長,貧困の削減,開発において有益である。我々は,OECD全体で,新たな包括的な開発のアプローチを開始することにコミットする。これには,政策の成功例や失敗例の共有,相互学習への取組,さらにはOECDと関心を有する開発途上国とのパートナーシップの深化を含め,共同作業をより増加させることが伴う。さらに,我々は,引き続き,各政府により推進される幅広い政策が,OECD設立条約に述べられた世界の発展を推進させるとの我々の願望と一貫したものとするための戦略を定める取組を続ける。このアプローチは,OECDの開発協力における豊かな経験,開発途上国の異なる必要性や課題を尊重し,これらの国との協力を通じて生み出された成功事例を取り入れる。
  8. 我々は,援助に対するコミットメント及びミレニアム開発目標(MDGs)の達成が優先課題であることを再確認する。我々は,ドナーとパートナーの優先課題を整合させ,開発途上国に実施能力を造り出し,自らの将来に対するオーナーシップを持ち,相互の説明責任を強化するための力を与えることにより,援助をより効果的にするための努力を継続する。
  9. グローバルな政策ネットワークに向けて:過去50年で,OECD加盟国は,当初の20か国から34か国に拡大し,現在ロシア連邦との加盟協議中である。また,より最近においては,世界中の異なる発展段階の国や機関との間で多様かつ柔軟な関係に従事してきた。より多くの国が我々の議論に参加し,データや成功事例を共有し,OECDグローバル・フォーラムに貢献し,委員会や諸機関に参加しており,また,OECD関連基準に参加している事例もある。これらの参加は,全ての人々にとって,より良い成果を出すために,お互いの経験から学ぶとの我々の共通の目標を推進するものである。我々はこれらの絆の強化を歓迎する。
  10. OECDは,その分析及び規範並びに基準の高い質や,勧告の客観性,厳密な相互審査(ピア・レヴュー)の手続を維持しながら,新たな発想やパートナーとのネットワークを引き続き拡大する。我々は,知識や経験を共有し,改革を促進し,OECDの基準に貢献したり,参加することに関心のあるすべての国との共同作業を歓迎する。我々,OECD加盟国は,加盟の可能性を含めて,より緊密な関係を求める国々との間で,相互利益がある分野において協力を強化する。
  11. 2007年以降のブラジル,中国,インド,インドネシア,南アフリカとの協力は,OECDが,グローバル経済,環境,社会に係る諸課題により良く対処する上で有益である。我々OECD加盟国は,我々のすべての市民の生活を改善するため,これらの国々のそれぞれとの間で,新たな形のパートナーシップ及び共同作業を発展させることに取り組む。我々は,他の国際機関との協力を継続し,絶えず変化する21世紀の諸課題への対処を助け,引き続き G20の取組を支援するため,OECDの知見を活用する用意がある。
  12. OECDは,他の国際機関や地域開発銀行を含む,地域機関とのパートナーシップを含め,各種地域に関する活動を向上させる。我々は,東南アジア,ラテン・アメリカ,南東ヨーロッパ,ユーラシア,サブサハラ・アフリカや中東北アフリカとの政策対話を引き続き支援し強化考えであり,中東北アフリカに対しては,経済や社会改革のイニシアティブを支援するため,可能な限りのことを行う。
  13. OECDは,今後とも,世界中の政府のための効果的かつ革新的な政策の選択肢を策定するとの目的のために高い水準の基準に基づき,成果重視で厳格でありつつも,柔軟なネットワークとして活動を継続する。我々は,OECDが最善の組織運営の取組を行い,引き続き,その効率性と実効性の改善に取り組むよう確保する。OECDは,この構想追求において,客観的,包括的で適切な対応を行う機関であり続ける。

Adobe Acrobat Readerダウンロード Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータに対応したソフトウェアを入手してください。

このページのトップへ戻る
2011年OECD閣僚理事会 | 目次へ戻る