平成22年5月28日
5月27日(木曜日)から28日(金曜日)にかけ,パリのOECD本部で第49回OECD閣僚理事会が開催され,我が国からは,直嶋経済産業大臣,武正外務副大臣及び津村内閣府大臣政務官他が出席した。今次閣僚理事会には,OECD加盟国31か国(5月7日にチリが正式加盟)に加え,加盟候補国4か国(エストニア,イスラエル,ロシア及びスロベニア。ロシアを除く3か国については,5月10日に正式に加盟を招請。),関与強化国5か国(ブラジル,中国,インド,インドネシア及び南ア)等が参加した。
閣僚理事会の最後に,「結論文書」(和文骨子、和訳、英文(PDF))及び「国際ビジネス及び金融の活動に関する適切性,健全性,透明性に関する宣言」が採択された他,「グリーン成長戦略」の中間報告及び「イノベーション戦略」の最終報告が併せて発表された。
今次閣僚理事会では,過去1年間のOECDの活動実績の総括及び将来の活動指針に加え,金融・経済危機の克服及び経済回復に向けたこれまでの取り組みを受け,「回復から持続的成長へ」と題して,財政再建,雇用,成長の源(グリーン成長,イノベーション及び貿易)等,国際社会が直面する幅広い問題について議論を行い,G8やG20サミット等に先立ち時宜を得た会合となった。特に,最近の欧州を中心とする金融,財政問題を踏まえ,財政再建,構造問題に協調して取り組むことの重要性が確認された。
グリア事務総長より,1年間の活動・報告と今後のOECDの戦略的な方向性について,持続的成長の実現に向けた政策課題,G8やG20等のグローバルなフォーラムにおけるOECDの役割等の観点を踏まえつつ,報告・提案を行った。
武正副大臣からは,昨今の経済・金融情勢等を踏まえ,グローバルな政策協調が死活的に重要になっていることから,OECDが魅力的な作業を行うことで政策協調に貢献することが重要である旨述べた。その上で,我が国を含む,多くのOECD諸国にとって,経済回復及び自律的な成長を実現することは喫緊の課題であり,OECDが,1)国際協調の成果,危機の教訓等の分析,2)財政再建,3)グリーン成長等の新たな成長の源に関する作業,4)雇用問題をはじめ構造問題についての分析や政策提言を行うことに期待する旨述べた。
財政再建については,各国の公共支出の優先付けや税制改革等の経験を踏まえ,構造政策や財政措置の国際的影響等について,幅広く議論を行った。また,雇用については,OECD諸国の状況を踏まえ,更なる雇用悪化の防止や高失業率の構造化の防止に必要な政策等について議論を行った。
武正副大臣から,財政再建の重要性につき説明するとともに,雇用問題については,「雇用なき回復」,「雇用なき成長」を避けるとの堅い意思の下,現在の高失業率が構造的なものとならないよう,労働・社会政策を実施すべきである旨主張した。
相互依存の進展により,新興諸国との対話拡大の方向を受けて,新規加盟国や「関与強化」対象国(インド,インドネシア,中国,ブラジル,南アフリカ)と共に,安定的な経済成長,開発,OECDの役割等について議論を行った。
経済・金融危機を受けて,ビジネス活動の適切性,健全性,透明性が市場の機能や安定的な経済運営に重要であることが明らかになったことを踏まえ,関連分野におけるOECDの取組みの向上等につき議論を行った。
ア イノベーション
グローバルな課題や社会的課題に対応しつつ持続可能な成長を実現するためには,イノベーションが不可欠であることから,イノベーションを促進するための政策等について議論した。
イ グリーン成長
グリーン成長は,温室効果ガス等の削減や天然資源の効率的使用をはかりつつ,経済成長を実現する取組みであり,新たな雇用機会創出のための政策を含め,グリーン成長促進のために必要な政策,規制枠組等について議論した。
ウ 貿易・投資
貿易及び投資は,経済の回復のみならず,持続的成長の実現のために極めて重要な要素であることを踏まえつつ,保護主義の抑止,ドーハ・ラウンド交渉の早期妥結,貿易・投資の雇用創出効果等について議論した。
武正副大臣より,貿易・投資について,今次経済・金融危機においては,深刻な保護主義的措置の導入が抑制されてきたが,そのためにOECDが果たしてきた役割を高く評価する旨,また,現在の経済回復を自律的な成長につなげるためには,貿易の自由化や投資を促進することが重要であり,かかる観点からドーハ・ラウンド交渉の早期妥結が重要である旨主張した。また,APECで検討中の新たな成長戦略は,世界規模の成長を考える上で有用である旨述べつつ,一方で,世界経済の持続的かつバランスのとれた成長のためには先進国の成長力の引き上げが求められており,その点につきOECDの分析・提言に期待している旨述べた。更に,グリーン成長の観点から,環境配慮型製品・サービスの自由化の一層の促進やグリーン・イノベーションの推進が重要である旨主張した。
(1)グリア事務総長(28日午後)
我が国とOECDとの一層の関係の強化や,APECへのOECDの貢献の他,我が国が関心を有している社会進歩の計測等につき議論した。また,OECDと非加盟国との関係強化を含め,来年設立50周年を迎えるOECDの今後を見据えた戦略的方向性についても,意見交換を行った。
(2)クリーン豪貿易大臣(28日午前)
WTO,APEC貿易大臣会合等について意見交換した他,捕鯨に関して豪州が国際司法裁判所に訴える旨決定したことについて,残念であり,我が国の立場を踏まえ然るべく対応していく旨述べおいた。
(3)ラガルド仏経済・産業・雇用大臣との意見交換(28日午前)
日EU経済連携協定交渉に向けた取り組みや,ギリシャ問題を含む欧州経済について意見交換を行った。
(4)ラミーWTO事務局長との意見交換(27日夕方)
WTO・DDA交渉の今後の進め方について,同日午前に開催された豪主催のWTO非公式閣僚会合での議論も踏まえ意見交換。パリで確認されたコミットメントを,6月5日及び6日のAPEC貿易担当大臣会合(札幌)につなげていくことを確認した。