
OECD閣僚理事会結論文書:概要
平成22年5月28日
1.冒頭:経済情勢
- 前例なき国際協調の下,経済が回復していることを歓迎。他方,高い失業率等,回復はぜい弱であり,最近の出来事が示すとおり,リスクが引き続き存在することを認識。特に,ソブリン債市場の緊迫した状態は,いくつかの国の経済見通しに係る高い不確実性を示す。我々は,金融市場規制及び監督をさらに進展させるべきことに合意する。我々は,欧州における金融の安定の維持のために講じられた強力な措置及び経済ガバナンスの強化の決定を歓迎。
- 民間需要の伸びが確たるものとなるまで,適切な措置により回復への支援を継続する。同時に,政策支援の継続によるリスクを最小化することが重要である。我々は,出口戦略を策定し,回復が確実になれば,国際的な波及に留意しつつ実行する。可能な国は,国内における成長の源を拡大すべきである。これは貯蓄を増やし財政赤字を削減すべき国における需要減少の影響を和らげるであろう。
- 回復を確固たるものとし,持続可能かつバランスのとれた成長への移行を達成するため,新たな成長の源を活用するための新たな政策及び戦略が必要である。我々は,OECDの関連の取組みを評価し,マクロ経済や構造問題等の相互審査を含め,政策分析や勧告を継続することを慫慂する。
2.財政再建
- ほとんどのOECD諸国の財政状況は,危機の結果,著しく悪化しており,より持続可能な軌道に乗せる必要がある。財政再建は重大な課題である。各国の状況を考慮しつつ,財政ルール等の適切な制度的メカニズムを通じ,信頼性と透明性のある中期的な財政再建計画を策定することが重要である。財政再建にあたっては,構造的な財政収支の改善,中長期的な公的債務負担の安定化・低下を図る。公的支出の優先順位付け,成長に資する税制改革により,潜在成長力を維持する重要性を認識する。
3.雇用
- 我々は,「雇用なき回復」及び「雇用なき成長」を回避するために取り組んでいる。我々は,雇用危機に対処するため,包括的で,あまねく広がり,革新的な雇用・社会政策を策定する。当面の優先課題として,積極的雇用政策,就職支援,教育訓練の拡大,社会保障制度やセーフティ・ネットの確保に取り組む。中長期的には,人口動態の変化に対応し,格差を縮小させるため,質と量において優れた雇用を創出する成長を支援及び促進し,労働市場への参加を改善する。このため供給・需要の両面で労働市場の機能を向上させる。
- 我々は,昨年9月のOECD労働雇用大臣会合における,技能及び能力の開発及び訓練を促進するための措置をとるとのコミットメントを再確認する。我々は,OECDによる雇用に関する有益な作業やILO等との協力の下での貢献を評価する。若年者の失業及び女性の機会拡大に関するOECDの作業に期待する。
4.構造改革
- 潜在成長力を高め,財政再建,失業,高齢化等の課題に対処し,将来の経済的ショックに対処する耐久力を強化するために,構造改革を行うことに改めてコミットする。回復とともにグローバル・インバランスが拡大する可能性があり,製品・労働・金融市場の改革の推進が,バランスのとれた成長の達成に資すると確信する。
5.成長の源
(1)グリーン成長
- 我々は,政策一貫性等に配慮しつつ,グリーン成長への転換を加速する重要性を強調。我々は,グリーン成長追求の措置が国際貿易に係る義務と整合的であることを確保する。グリーン・イノベーションや環境物品・サービス,省エネ技術の世界的な普及を促進することが死活的に重要。グリーン成長戦略の中間報告を歓迎し,OECDがグリーン成長で重要な役割を果たすことを期待。
- 環境に有害な補助金等,グリーン成長経済の移行を損なうおそれのある政策を回避,廃止,または改革する重要性を認識。我々は,G20による,中期的に,非効率な化石燃料に対する補助金を合理化し,段階的に廃止するとのイニシアティブを歓迎し,G20の要請によるOECDの作業の継続に期待する。COP16で肯定的な結果に到達するとのコミットメントを再確認する。
(2)イノベーション
- イノベーションは長期的な成長の重要な源であり,イノベーション戦略の最終報告を歓迎。
- 我々は,教育及び訓練,規制や租税政策等の枠組み,起業家精神の促進及び新興企業・中小企業の支援,実効的な知的財産権を伴う知識ネットワーク及び市場を発展させる。また,政策一貫性を改善し,国際協力を推進する。OECDに対し,各国のイノベーション戦略の策定及び改善を支援するための努力の継続を要請する。
(3)貿易及び投資
- 保護主義が懸念されたほど拡大していないのは,国際協調の成果。我々は,保護主義に対抗するとのコミットメントを再確認する。危機への貿易関連政策対応に関するOECDの勧告を歓迎。OECD,WTO,UNCTADによる共同の貿易・投資に関する作業の継続を支持する。
- 我々は,これまでの進展を基礎とし,早期で,野心的で,バランスのとれた,包括的なドーハ・ラウンドの妥結に引き続きコミットする。環境物品・サービス(EGS)の貿易・投資を促進する努力を行い,実効的な「貿易のための援助」を促進する。さらに,全ての主要な輸出国に対して,輸出信用の分野で共通の国際的な枠組み及びアプローチを適用するよう,引き続き慫慂する。我々は,持続可能な低炭素・エネルギー効率的な技術に関する輸出信用の枠組みを更に発展させるための努力を強化する。
- 国際投資は危機からの回復及び経済発展のために死活的に重要。我々は,国際投資に関し,OECDが果たす中心的な役割を評価する。かかる取組は継続・強化される必要がある。我々は,多国籍企業に関するOECDガイドラインの改定作業の正式な開始を歓迎。
(4)社会進歩の計測
- 経済発展の社会的かつ環境的な側面を考慮した計測手法は有益であり,OECDに対して,この重要な問題について,更なる提案を策定することを慫慂。
6.適切性,健全性及び透明性
- 我々の将来の成長及び安定は,国際的な経済・金融取引に係る共通の一連の原則に基礎を有するものでなければならない。「国際ビジネス及び金融活動に関する適切性,健全性,透明性に関する宣言」を承認したのはこのような点を念頭においたものである。
7.開発
- グローバルな経済協力は,開発途上国における経済発展等の鍵となる要素。我々は,「ミレニアム開発目標」(MDGs)を達成するとのコミットメントを再確認する。政府開発援助(ODA)のみでは資金量が不足するとの認識を共有し,革新的資金調達を活用することを探求し,効率及び効果を促進する。
- 開発に対処するにあたり,援助だけではなく,成長の促進等を含む広範かつ一貫性のあるアプローチを支持。我々は租税と開発の分野において進展を図る必要性を認識する。我々は,OECDに対し,戦略的な開発目標を特定するとともに,開発のための政策一貫性を改善し,全ての開発パートナーとの対話と協力を促進すること等により,開発効果の向上を目指すよう慫慂する。
8.グローバルな経済協力
- 我々は,OECDの実質的な作業におけるより深い協力関係が,OECD加盟国,加盟候補国及び「関与強化」パートナーにとり貴重であるとの見解を共有し,OECDの組織,今後の関係閣僚会合等において更に協力していく。
- OECDによるG20及びG8等の国際フォーラムへの貢献を歓迎し,質の高い作業の継続を慫慂。