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第3章 他主要ドナー・地域協力機関の開発戦略

3.1 世銀

 1995年から1999年における世銀の対ザンビア援助実績については、表3-1に示す通りであり、構造調整融資関連のプロジェクトを除くと、過去5年間に実施されたプロジェクトの分野は、社会、農業・農村開発、都市開発、金融、環境、運輸、エネルギー、教育分野となっている。これらの内、農業・農村開発分野、運輸分野、教育分野では、セクター投資プログラム(SIP)が実施されている。保健分野に於いてもSIPとともに、コモンバスケット方式による支援も実施されている。これらの分野のSIPでは、セクターの開発が包括的に論じられ、ドナー間の調整が成され、ザンビアの政府の政策策定能力の向上が目的とされている。

表3-1 世界銀行の対ザンビア主要援助(1995-1999年)

(支出純額、単位:百万USドル)
理事会承認年月 分 野 案 件 名 供与額
1995-6 社会 第2次社会復興プロジェクト 30.0
1995-3 農業・農村開発 農業セクター投資プログラム 60.0
1995-5 都市開発 都市再開発、給水プロジェクト 33.0
1996-6 マルチ 経済復興・投資促進技術支援 23.0
1996-7 マルチ 経済復興・投資促進融資 140.0
1996-8 マルチ 経済及び社会調整融資 90.0
1996-11 マルチ 経済及び社会調整融資(補完融資) 7.8
1996-12 マルチ 経済復興・投資促進融資(IDA環流) 12.1
1997-5 金融 企業開発プロジェクト 45.0
1997-6 環境 環境サポートプログラム 12.8
1997-10 運輸 道路セクター投資プログラム支援プロジェクト(改革と復旧) 70.0
1998-2 エネルギー 電力復旧プロジェクト(改革と復旧) 75.0
1998-4 教育 基礎教育セクター投資プログラム支援プロジェクト 40.0
1999-1 マルチ 公共部門改革・輸出振興 2.80
1999-1 マルチ 公共部門改革・輸出振興 170.0
出所:世界銀行年次報告 1984-99


 世銀のホームページからの資料によれば、世銀が現在実施を検討しているプロジェクトには、社会投資基金プロジェクトがある。このプロジェクトには、コミュニティー開発基金、州の資本投資基金、能力開発基金、貧困モニタリング、貧困分析といった内容が含まれている。

3.2 UNICEF

 UNICEFは、PHCと栄養状態の改善、万人への教育普及、水・衛生と保健教育、女性と子供への支援、といった分野を中心に活動を展開し、ザンビアにおける主要ドナーの一つである。1996年5月10日にUNICEFとザンビア政府は女性と子供のための5カ年計画(1997-2001年マスタープラン)を策定しているが、このマスタープランによると、UNICEFはこの5年間で総額5,775万ドルの支援を実施することとなっている。(表3-2参照)

表3-2 ザンビアにおけるUNICEFの支援計画(1997-2001年度予算)

支援活動 予算額
PHCと栄養の改善 1,820万ドル
万人への教育普及 1,140万ドル
水・衛生と保健教育 1,165万ドル
女性と子供への支援 1,230万ドル
国家計画支援 420万ドル
5,775万ドル
出所: UNICEF/GRZ Programme of Cooperation for Women and Children, 1997- 2001


 「PHCと栄養の改善の支援」として、UNICEFはPHCプログラムの改善支援及びモニタリング、州レベルの保健計画策定の技術支援、地域住民および保健サービスの関係強化、等といった活動を実施している。「万人への教育普及」では、女子教育の拡充(Programme for the Advancement of Girls Education, PAGE)、HIV/AIDS教育プログラムの促進、教育プログラムの質の向上を目指している。「水・衛生と保健教育」を通して、安全な水へのアクセスの改善(主として農村部)を支援している。また、「女性と子供への支援」の一環として、子供の権利の普及、孤児やストリートチルドレンへの支援活動、FAOとの共同実施による食糧・健康・栄養情報システムの構築、ザンビア統計局のCENSUSサーベイへの支援を実施している。以上の支援に加え、UNICEFでは近年より重要視されている「HIV/AIDS対策」に取り組んでいる。中でも、母子感染対策、HIV/AIDS孤児対策が最重要課題として位置付けられている。
 我が国が供与した学校建設及び水供給のプロジェクト、USAIDと共同で実施しているHIV/AIDS対策及び予防接種の普及は、UNICEFの活動と相互補完的な役割を果たし、現地住民の生活水準の向上に貢献していると言えよう。

3.3 EU

 EU代表部は、ザンビアの社会経済状況のアセスメントを実施し、加盟15カ国の意見調整をしている。EUは、南部アフリカ地域の政情安定のために、8カ国と国境を接するザンビアの政治経済運営への支援が重要であると考えている。また、経済自由化を推進しているザンビア政府の方針は、EUのそれと合致するものとなっている。近年では、一層の自由貿易推進を計るため、COMESAの関税撤廃措置(2000年予定)の実施をザンビア政府に働きかけている。他方EU加盟国間でジェンダー及びガバナンスに関する意見調整が中心議題となっている。
 EUは援助の約37%を社会セクターの開発に用いることを予定しているが、これはザンビア政府の目標値と同水準にある。なお、2000年度は、ZCCMの民営化に対する経過措置としてZCCM のサブコントラクターの債務救済(約4,000万EU)、銅鉱州の社会サービス支援(約1,000万EU)、の実施を検討している。この他では、約15,000万EUのプログラム援助が計画されている。
 EUによれば、ザンビアの抱える最大課題は、行政組織の脆弱性である。このため支援活動においても、行政組織の能力開発(Institutional Capacity Building)が最大目標となっている。経済運営計画の技術支援として、大蔵経済企画省及びザンビア中央銀行へ人材を派遣しており、債務管理、貧困緩和、マクロ経済、といった分野における技術移転により政府の行政能力の向上が目指されている。この他、HIV/AIDS問題が大きな問題として認識されるようになっている。今後は、同分野への支援を強化していくことになるだろう。

3.4 英国(DFID)

 英国はザンビアの旧統治国であり、未だ極めて強い影響力と発言力をもつ。DACのレポートによれば、1997年度の英国のザンビアへの援助額は9370万ドルであり、第2位の米国の援助額4800万ドルを大きく引き離して、トップドナーとなっている。 1999年9月に英国(DFID)は、ザンビアの支援計画を見直した国別援助戦略ペーパー(Country Strategy Paper)を発行しているが、同ペーパーにおける重点分野は、ガバナンス、生活環境、社会サービス、及びHIV/AIDS等となっている。(表3-4参照)

表3-4 ザンビアにおける英国の支援計画(1999-2001年度予算)

(百万ポンド)
年 度 1999-2000 2000-2001 2001-2002
社会サービス部門
 教育 2.5 0.9(1.5) 3.5(2.0)
 人口・保健 1.5 0.4(1.6) 0.3(2.5)
ガバナンス部門
 マクロ経済運営 1.6 0.7(0.8) 0.5(0.7)
 公共サービス改革 1.5 1.8(0.8) 0.6(0.7)
 人権問題 0.2 0.4(0.3) 0.1(0.2)
 司法整備 0.3 0.3(0.3) 0.2(0.3)
 Integrity 0.6 0.6(0.2) 0.4(0.2)
HIV/AIDS   (0.5) (1.0)
生活環境部門 3.5 0.6(2.5) 0.5(3.0)
その他 0.3 0.3(0.0) 0.3(0.0)
12.0 6.0(8.5) 6.4(10.6)
出所:Zambia Country Strategy Paper, DFID
:BOP/予算支援を除く、()外がコミットメント値、()内は計画値


 社会サービスでは、保健と教育での支援活動がセクターワイドアプローチのもとに展開され、イギリスは今後も原則これを支援していく方針である。また、ザンビアが適切な政策を立案する能力を兼ね備えるようになった暁には、直接的な予算支援(コモンバスケット方式への資金のプール)を実施していく方針である。英国の定義ではガバナンスは多岐にわたる分野を含むものであり、同分野の改善のためマクロ経済運営(財政計画・債務管理への技術支援)、公共サービス改革(Public Service Reform Strategyへの支援)、人権問題(子供と女性の権利の確立)、司法整備(司法への安全性とアクセスの改善)等幅広い支援活動を展開する予定である。HIV/AIDSは、英国の援助活動の中で今後急速に重要度が増していくことが予想される。予定支援金額は、それ程大きくはないが、その問題の深刻さは強く認識されているようである。(同分野ではUNICEFとの共同活動を実施する予定である。)生活環境分野の活動の一つとして、都市部でマイクロクレジットを導入している。この他、水供給・貯蓄・クレジットなどのグループ活動を通しての社会資本、市民組織の構築及び職業訓練・ジェンダー意識向上を通しての人的資源開発、といった活動を展開している。また、主として北部州において、農村の貧困コミュニティーの支援活動も実施している。
 英国はその援助活動において市民社会の参加を重視してきた。このためアフリカの援助活動で近年着目されている参加型の開発の実績を持っている。過去に日本と英国と共同水供給プロジェクト実施が成功裡に終わった経緯があるが、今後このような経験に基づいたより緊密な関係が期待されよう。

3.5. 米国(USAID)

 表3‐5に示す通り、2000年におけるUSAIDの対ザンビアの開発援助額は、要求額ベースで約1345万ドルであり、1998年度の1101万ドル及び1999年度の1145万ドル(推計)から増加傾向にある。
 農村地域の選定グループの所得向上」では、女性の金融へのアクセスの拡大を目的とした農村マイクロファイナンス、旱魃の被害を受けやすい地域のマーケットアクセスの改善、新農業技術の普及などの活動を実施している。また、南部アフリカの地域協力機関であるSADCへの支援、ザンビアのWTO参加への技術支援等も行っている。
 「初等教育と就学へのより平等なアクセス」では、社会的弱者(特に女子生徒)の初等教育へのアクセスの改善が主眼となっている。具体的には南部州におけるUNICEFなども関わっている女子教育(Programme for the Advancement of Girls Education, PAGE)の拡充、学校での保健教育の開発、教育管理システムの改善、が目的となっている。

表3-5 ザンビアにおける米国の支援計画(2000年度予算)

(千ドル)
援助戦略/分野 経済成長及び農業 人口及び保健 環境 民主化 人的資源開発 人道的支援
農村地域の選定グループの所得向上 7,750   1,200       8,950
初等教育と就学へのより平等なアクセス         (800)   (800)
子供・リプロダクティブヘルス及びHIV/AIDSの統合的支援   3,200
(8,100)
        3,200
(8,100)
民主主義下での効率的参加への機会拡充       1,300     1,300
計 DFA
CS
7,750 3,200
(8,100)
1,200 1,300
(800)

0
13,450
(8,900)
出所:USAIDホームページ http://www.info.usaid.gov/pubs/cp2000/afr/zambia.html
()外Development Fund for Africa(DFA)、()内Child Survival and Disease(CS)


 「子供・リプロダクティブヘルス及びHIV/AIDSの統合的支援」は、過去に家族計画の奨励、妊婦のビタミンA摂取状況を改善したことによって視力が無い児童の出産率が低下したため、継続実施が予定されているプログラムである。
 「民主主義下での効率的参加への機会拡充」では、市民教育等を通じた市民組織の構築、新規に選出された議員へのアドバイス等が行われる。

3.6 南部アフリカ開発共同体(SADC)

 SADCは、1980年に、南アフリカの経済的支配からの脱却及びアパルトヘイト政策への対抗を目的として南部アフリカ諸国により設立された地域協力機関である。しかし、現在は南アフリカを含め、全ての南部アフリカ諸国が加盟を果している。本部は、ボツワナの首都ハボローネに設置されているが、セクターの開発に関しては加盟国の間で分担がされており、担当国毎にプロジェクトの選定及び実施の権限が付与されている。各国の担当部門は表3 - 6に示す通りである。

表3-6 SADC加盟国の担当セクター


国 名 担 当 分 野
アンゴラ エネルギー
ボツワナ 農業研究、家畜生産、動物病コントロール
コンゴー(民) 未定
レソト 水、環境、土地管理
マラウイ 内陸漁業、森林、野生動物
モーリシャス 観光
モザンビーク 文化及び情報、運輸及び通信
ナミビア 漁業及び水産資源
セイシェル 未定
南アフリカ 金融及び投資、保健
スワジランド 人材開発
タンザニア 産業及び貿易
ザンビア 鉱業及び雇用・労働
ジンバブエ 食糧、農業、天然資源、穀物生産


 上表の通り、SADCは多くの分野で活動を展開しているようであるが、実施されているプロジェクト数の4割以上が運輸及び通信部門であり、予算に至っては総額80億5405億ドルの約8割以上64億7440万ドル程が同分野へ支出されている。これは、SADCが政治色の強い組織であるため、域内全般に公平に便益がもたらされる分野を選定した結果と考えられる。
 ザンビアは、鉱業部門及び雇用・労働部門を担当しており、事務所はルサカに存在する。鉱業部門のプロジェクトは97/98年度ベースで36プロジェクトあるものの、その予算は1851万ドル(全体の僅か0.23%)に留まる。一方で、内陸国であるザンビアにとって、国境を跨ぐインフラの整備を行うSADCの活動は極めて重要である。中でも、南部アフリカの中心に位置しながら財政難のため域内の物資輸送の根本的な問題となっているザンビア国内の道路網及び鉄道網をSADC がどのように分析しているのか、また、モザンビークのもつナカラ回廊及びベイラ回廊の整備、タンザニアのダルエスサラーム港への鉄道網の整備をSADCが今後どのように支援していくかによって、ザンビア経済は大きな影響を受けると思われる。

3.7 COMESA

 COMESAには、東部及び南部アフリカを中心とする19カ国が加盟しており、アフリカ最大の地域協力機構となっている。しかし、サブサハラ・アフリカ諸国のGDPの約4割を生産する南アフリカ及びボツワナが加盟していない。事業規模もSADCに比べれば小さく予算総額で約2870万ドルに留まる(1998年度)。
 COMESAの目的は、「一国では経済規模の小さいアフリカ諸国の経済圏の統合を計ることによって域内の経済を活性化させること」である。この目的のために、COMESAは、2000年に加盟国内の関税撤廃を実施する予定である。また、物資の自由な移動に加え、人材の移動の自由化、貨幣の安定供給、将来的には統一貨幣の発行を目指している。 SADCの経済振興政策がハード面重視のサプライサイド型アプローチであるのに対して、COMESAのそれはソフト面重視のディマンドサイド型アプローチとなっている。EU代表部をはじめとしたヨーロッパ諸国がCOMESAに対し、精力的な支援を実施しているのは、COMESAの戦略がEU統合のプロセスと類似しているためであると考えられる。
 ザンビアは、COMESAの中でも経済自由化をリードしている。しかし、ザンビア国内には、経済自由化を余りに急速に進め過ぎたため関税収入が減少し、財政負担となっているといった意見、都市部の工業労働者の雇用吸収を行える産業の育成をしないうちに自由化を行ったため生産活動の停滞を招いているとの意見や、外国投資が期待していたように促進されないため輸出産品の生産拡大が見込めないことから、将来的には外国からの物資を輸入するための資金が不足する等、といった意見も見受けられる。
 [YH1]表の金額単位は千ドル?この額で正しいか確認してください。
 [YH2]人道支援分野の実績は、「なし」?確認して、「なし」ならこの列を削除して表をきれいにまとめてください。

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