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第2章 我が国の援助実績概要



2.1 我が国の対ザンビア援助

 表2-1に示すとおり、1993年から1999年までのわが国の対ザンビアODA援助累計額は、無償・技協を合わせて409.9百万ドルであり、1995年には二国間ベースで最大の援助供与国であった。また、1999年は、約56百万ドルの援助を供与しており、1998年にはIDA等の援助機関からの援助が逓減していることからも、わが国の対ザンビア援助はドナーの中でも重要度を増していると言える。わが国の対ザンビア援助対象は建設、農業、水資源開発、教育、医療、公衆衛生、基礎インフラ等広範な分野にわたっていることからも、ザンビアにとって最も重要な援助国の一つ(1995-98ではドナー援助の約14%で旧統治国である英国の約18%に次いで第2位)として認識されている。

表2-1 我が国の対ザンビアODA実績

(支出純額、単位:百万ドル)
暦 年 贈  与 政 府 貸 付 合 計
無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額
1993 46.44 22.50 68.94 21.92 21.92 90.86
1994 65.02 22.33 87.35 23.83 18.96 106.32
1995 34.28 27.76 62.04 49.62 16.45 78.49
1996 27.44 20.83 48.27 - -5.99 42.28
1997 35.72 15.86 51.58 - -8.08 43.50
1998 22.97 13.12 36.09 - -2.49 33.59
1999 41.89 13.70 55.59 - N.A. N.A.
1993-99年
累計
273.76 136.10 409.86      
累計 592.01 248.32 840.32 426.04 308.74 1093.50
出所:外務省ODA白書


2.2 無償資金協力

 添付資料A-4-5に示すとおり、近年、我が国は、農業及び水産業、インフラ整備、水供給、保健、教育といった分野で無償資金協力を実施している。なお、ザンビアに対しては、食糧増産援助が1997年から見合わされている。

 農業及び水産業分野には、1991-1992年にかけて実施されたカナカンタパ農村開発計画、1996年に実施されたモング地域農村開発計画、同メケラ養殖場拡充計画等が含まれる。インフラ整備の分野としては、カフェ川道路橋梁替計画(1991-1992年)、ルサカ市道路網整備計画(1995-1997年)、チルンド橋建設計画(1999-2002年)といった案件があり、これらはザンビアの劣悪な交通網の修復を主な目的としている。この他、インフラ整備として、ルサカ市電話網改修計画(1993年-1994年)がある。水供給のプロジェクトは、南部州の農村地帯及びルサカ市のジョージコンパウンドにて実施されており、安全な水へのアクセス及び水関連の感染病の減少に貢献している。保健分野では、1981-1982年にて建設されたザンビア大学教育病院小児科医療センターの改善計画(1995年)があり、このプロジェクトによって伝染病の患者の隔離病棟等が新たに設置されている。教育分野では、ルサカ市小中学校建設計画(1998-1999年)が実施中である。

2.3 技術協力

 我が国が1998年度までに供与したプロジェクト方式技術協力は、表2-2に示すとおりである。我が国は、同年度までにザンビアより849人の研修員を受け入れている。一方、ザンビアへは373人の専門家及び766人の協力隊の派遣を行っている。技術協力に伴う機材供与の総額は44億4050万円となっており、1994-1998年の5年間の間に供与された機材供与額の年間平均供与額は2億3508万円である。

表2-2 98年度までに実施済及び実施中のプロジェクト方式技術協力


案件名 協力期間
ザンビア大学医学部 1980.2-1989.2
ザンビア大学獣医学部技術協力 (I) 1985.1-1992.7
職業訓練拡充 1987.10-1994.9
感染症 1989.4-1995.3
ザンビア大学獣医学部技術協力(II) 1992.7-1997.7
感染症対策 1995.4-2000.3
プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)プロジェクト 1997.3-2002.3
出所:ODA白書 外務省


 職業訓練拡充を除いては、プロジェクト方式の技術協力は保健・医療・獣医学の3分野となっている。ザンビア大学医学部への技術協力としては、1982年無償資金協力にて建設した小児医療センターへ技術支援、その後設立されたウイルス・ラボラトリーにおける、感染症対策のための技術支援が1989年4月より実施されている。一方、ザンビア大学獣医学部へは2期17年に渡り技術協力が展開され、ザンビアの獣医学分野への人材育成に役立っている。プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)への技術支援は、パイロット地区におけるコミュニティーベースでのPHC活動の推進及び効果的なレファレルシステムの構築を目指したものとなっている。

2.4 開発調査

 1995年から1999年の期間に実施された開発調査は次の通りである。

表2-3 主要開発調査(1995~1999年度)

案件名 協力期間
全国水資源開発(M/P) 1994~1995
ザンベジ川流域モング農村開発計画(M/P, F/S) 1994~1995
南西地区チーク材資源調査(M/P) 1994~1996
チャンビシ南東地域資源開発協力基礎調査 1994~1995
ザンベジ川チルンド橋建設計画調査(F/S) 1996~1997
ルサカ市未計画居住区環境改善計画 1998~1999


2.5 有償資金協力

 添付資料A-8に示すとおり、ザンビアの債務状況の悪化により、我が国はザンビアに対して1984年以降、新規借款を見合わせてきた。しかし累積債務問題への対処策として、ザンビアは、パリクラブにて、1990年トロント・スキーム、1992年新トロント・スキームによる債務救済措置の適用が認められている。この措置を受け、我が国はザンビアの民主化・経済改革努力への支援を目的として、世銀との協調融資によって、1992年97億円の商品借款を実施している。
 1996年のナポリ・スキーム適用を経て、現在、ザンビアに対しては、IMF・世銀が主導で債務救済枠を拡大した新たな債務救済措置(HIPCイニシアティブ)の適用が検討されているが、ザンビアの累積債務状況に鑑み、同国にこの救済措置が適用される公算は高いものと思われる。我が国は、債務救済措置を受けた国に対して当面新規借款を見合わせる方針であるため、ザンビアに対しても我が国から新規の借款が行われる可能性は少ないと予想される。

2.6 今後の援助戦略への留意事項

(1) 説明責任および透明性の確保

 ザンビアに対してHIPCイニシアティブの適用が認められ債務削減措置が採られると、我が国としては債務削減相当額を債務救済無償として供与していくこととなろう。ザンビアの累積債務状況の深刻さに鑑み、同国へ対して債務救済を行うのは妥当な措置であるが、同時に債務返済義務の免除により利用可能となる余剰資金(債務救済無償)が適切な目的で運用されているかについて引き続き関心を向けていかなければならない。その際、最も重要なことは、ここで改めて強調するまでもなく、債務救済無償の使途に関するザンビア政府の説明責任(Accountability)および資金運用に関する透明性(Transparency)の確保である。現在、EUをはじめ、多くのドナーはアフリカ諸国の債務管理に関して強い関心を持っており、関係省庁に人材を派遣するなどして、同分野の行政能力の向上を計っている。我が国もこうした分野において人的貢献を行うことが望ましいが、それが難しい場合にでも、再び新たな債務問題を生じさせないため、また日本国民への説明責任を果すためにも、ザンビア政府に対して債務救済無償の使途に関する説明責任および透明性の確保を求めていくことが必要であろう。

(2) 貧困削減戦略への関与

 HIPCイニシアティブの実施に際し、債務救済措置により利用可能となった資金は原則として貧困削減のために用いることが国際的に認知されている。IMF・世銀も、HIPC対象国に対して貧困削減戦略ペーパー(Poverty Reduction Strategy Paper; PRSP)を策定支援し、これらの国の開発はこのPRSPに即して行うこととしている。イギリスも貧困削減を援助における最大の課題であると明示しており、こうした欧米のドナーの動向を踏まえると、今後、ザンビアにおいても全ての開発計画が貧困削減に如何に貢献しているかがモニターされ、貧困削減が援助の主たる評価基準になっていくものと予想される。現在、ザンビア政府はUNDPの協力のもと「National Poverty Reduction Plan 2000-2004」といった5カ年計画を策定しているが、我が国としてもザンビアの貧困削減の戦略を初期の段階からよく把握し、計画策定に積極的に貢献していくことが重要である。

(3) 支援分野の選択

 今回の調査のみで関係省庁の行政能力を判断するのは難しいが、省庁間で行政能力に差違が見られた。援助資金の有効活用のためにも、カウンターパートである省庁の行政能力を加味して支援分野を選択していくことになろう。
 また、ザンビア政府の財政状況は想像以上に逼迫しており、僅かな負担と思われるローカルコストでさえ手当てするのが難しい状況にある。実際、ローカルコストの負担が出来ないためにストップしてしまうプロジェクトも少なくない。支援するプロジェクトの自立発展性を考慮するならば、ローカルコストの手当てにきちんとした裏付けがないプロジェクト、又は、ランニングコストが嵩み過ぎるプロジェクトへの支援は、当面見合わせることも必要となろう。

(4)技術移転の重視

 プロジェクトを遂行していくにあたり、ザンビア側は物理的にものが設置されることに加え、将来的には自分達でプロジェクトを立案・実施していくためにも、プロジェクトの遂行方法そのものを学んでいきたいと切に願っている。
 援助案件の自立発展性の観点からも、プロジェクトの計画段階からローカル・スタッフの関与を一層促進し、技術移転を行うことにより被援助国の案件形成・実施運営能力の向上をより高めることが重要であると思料される。また、技術移転は被援助国の人造りに貢献することから、一層の拡充が望まれる。

(5)セクター投資プログラムの理念

 行政能力が脆弱なアフリカ諸国の政府にとって、思惑の異なるドナー間の調整を行い、開発計画の整合性を計ることは大きな負担となる。このため、アフリカ諸国ではドナー間の調整を図り、セクター全体の開発を整合的に実施することを目的としてセクター投資プログラム(SIP)が導入されている。SIPにおいては、始めに、ドナーの支援を受けつつ、途上国政府が主体となりセクターの開発政策を策定する。セクター開発政策が策定されると、続いて途上国政府は策定された政策実現のために必要な開発戦略(Strategic Plan)を作成する。そして、最後に、その開発戦略を実施するための具体的な実行計画(Action Plan)を練ることとなる。
 こうした一連の作業の中で、途上国政府とドナーの間では頻繁な会議が行われ、十分な話し合いの機会がもたれる。また、昨今では、会議へのNGO等・市民組織の参加が奨励されるようになっている。以上のプロセスを経て完成した開発戦略は、極めて包括的な内容となり、当該国の開発活動に関与するものの総意として位置付けられることとなる。従って、我が国が援助を行う場合でも、この開発プランに照らし合わせて必要とされるプロジェクトもしくはプログラムを選択し支援することとなる。

(6)キャパシティー・ビルディング(能力開発)

 セクター投資プログラム(SIP)導入のもう一つの趣旨は、開発戦略の策定を通して途上国政府の行政能力の向上を目的としていることである。援助国が長年に渡り資材を投入したにも係わらず、アフリカにおいて期待される経済成長が実現されてこなかった。このことから、行政システムが脆弱であるアフリカにおいて資材の投入を伴う協力を実施する場合には、それを適切に運用・維持・管理していくためのキャパシティー・ビルディングも同時並行的に実施しなければいけない、という重要な教訓を得てきた。このため、現在、ほとんどのドナーは、アフリカでは行政機関のキャパシティー・ビルディングという長期的な課題へ取り組んでいく必要があると考えている。
 つまるところ、アフリカは行政組織が比較的しっかりしているアジアとは明白に異なる開発問題を抱えていると認識されているのである。他ドナーはこれまでの協力の経験を通じ、アジアの成功をモデルケースとしたアジア型の開発戦略をアフリカにおいて展開しても同様の成果を得ることは難しい、という教訓を得てきた。我が国もこれまでの経験を踏まえ、ザンビアの開発戦略を策定するにあたっては、アジア型の開発戦略をそのまま適用せず、例えば、相応のリカレントコストの負担が必要となる協力を実施する場合には財政力などに十分配慮するなど、ザンビアの現状を十分に反映した開発協力を実施することが大切である。また、アフリカ諸国の開発において重視されている制度構築・社会開発といった分野では、その開発資金の大部分が人件費によって占められている従来の援助スキームでは現地政府の負担となっていたものであったが、こうした分野への手当てを行わないで援助効果を期待するのは難しい。
 加えて、社会開発分野への支援には住民の生活様式や慣習を理解し、住民の中に溶け込んできめ細かい対応をしていくことが求められる。このため、政府-政府ベース(G-G Base)を中心に支援していくことは人的・時間的制約を鑑みた場合、容易ではない場合も多い。実際、他のドナーは、NGOを有効に活用することにより社会開発分野への支援に成功をおさめている。また、たとえG-G Baseで支援を行ったとしても、先方政府がNGOを利用することも多く、NGOとの連携を図ることが援助効果を向上させる上で肝要となる。これらから、我が国としても「草の根無償資金協力」や「開発福祉支援事業」といったより柔軟なスキームを一層活用していくことが望ましいと思料される。

(7)意志決定権

 現地においては、ドナー間の調整のため頻繁に会議が開催されており、様々な事項が日進月歩で決定されている。こうした中で、ザンビアに対して何らかの貢献を行っていくのであれば、我が国も、開発戦略策定の初期段階から関与し、当該国のセクター開発問題を理解し、他国の担当者と議論でき、ある程度の決定権を持った人材を現地に長期的に派遣する必要がある。日本の現地機関は他ドナーと比較して与えられている権限が少ないように思われる。他ドナーの場合は、現地の担当者に多くの権限が委譲されており、現地機関の判断によってある程度の柔軟性を持った計画を実施することが可能となっている。

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