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第4章 WIDイニシアティブの評価

4-1 WIDイニシアティブの構造

 WIDイニシアティブは、「基本的な考え方」「3つの重点分野」、「日本のこれからの協力」で構成されている。「基本的な考え方」はイニシアティブの基本理念の説明、「3つの重点分野」はイニシアティブが重視する女性の教育、健康、経済・社会活動への参加の重要性の説明と、同3分野の相互作用・包括的取り組みへの意思を明らかにしている。「日本のこれからの協力」では重点3分野の到達目標を設定している。

 WIDイニシアティブの基本的な考え方は、以下の文章に集約されている。

 「日本は(中略)女性を主たる裨益対象とした案件を実施していくとともに、個々の案件について、その形成、実施、評価といったすべての段階において、女性の参加・受益に配慮するため、さらなる努力を行う」1

 「日本は、開発援助の実施にあたって、就学、就業、出産、経済・社会活動といった女性の一生のすべての段階を通じて、女性の地位の強化と男女格差の是正に配慮する。特に日本は、教育、健康、経済・社会参加という3つの分野を重視する。それぞれの分野は相互に密接に関連しており、こうした相互作用に留意しつつ、包括的な取り組みを進めていく」2

 「日本は、開発途上国との間のあらゆる対話の場を通じ、このような意識の向上を図るとともに、開発途上国の理解の下、次のような協力を強力に推進する」3

 従ってWIDイニシアティブは、
  • 女性の地位の強化と男女格差の是正に、女性の教育、健康、経済・社会活動への参加を支援することを通して取り組む。
  • その際に、これら3分野の相互作用に留意し包括的に取り組む。
  • このイニシアティブを途上国とのあらゆる対話の中で推進する。

     の3点を明らかにしている。

 第1章でWIDとジェンダー主流化を以下のように整理した。

 WID:女性を重要な開発の担い手であると認識し、開発のすべての段階に女性が積極的に参加できるように配慮していこうという考え。

 ジェンダー主流化:開発のすべてのセクター、すべてのプロセス、すべてのプログラムにジェンダー平等の視点を統合し、すべての開発課題について男女双方が意思決定過程に参加できるようにすること。

 WIDイニシアティブは、上述のように「女性の地位の強化と男女格差の是正に、女性の教育、健康、経済・社会活動への参加への支援を通して取り組む政策」であることから、開発のすべての段階でジェンダー主流化を推進するというより、女性を開発の重要な担い手として認識し、開発への女性の積極的な参加を促進するという意図の方が強い政策である。このWIDイニシアティブを以下の図4-1の通り理解し、同政策の評価を行う。

図4-1 WIDイニシアティブの構成


4-2 WID的視点による評価

4-2-1 政策の基本的な理念

 WIDイニシアティブは、ODA大綱とODA中期政策を上位政策に持つ重点課題政策に該当する。まず、WIDイニシアティブと上位政策との整合性を、次に、国際社会におけるWID/ジェンダー分野の取り組みとの整合性を検討し、イニシアティブが妥当であったかを評価する。

(1) 上位政策との整合性

1) ODA大綱との整合性
 1992年に閣議決定されたODA大綱は、日本の政府開発援助政策の最も上位に位置する政策であり、「基本理念」、「原則」、「重点事項」、「政府開発援助の効果的実施のための方策」、「内外の理解と支持をうる方法」、「実施体制等」から成る。「政府開発援助の効果的実施のための方策」として15項目挙げ、そのひとつとして「開発への女性の積極的参加および開発からの女性の受益の確保について十分配慮する」とし、WID/ジェンダーに言及している。WIDイニシアティブでは、個々の案件の「形成、実施、評価といったすべての段階において、女性の参加・受益に配慮するため、さらなる努力を行う」ことを表明しているので、ODA大綱にある女性の参加と受益の確保への配慮と整合性がとれている。

2) ODA中期政策との整合性
 ODA中期政策は、「基本的な考え方」、「重点課題」、「地域別援助のあり方」、「援助手法」、「実施・運用上の留意点」の5要素で構成されている。WID/ジェンダーに関する記述は、「重点課題」の中の「1.貧困対策や社会開発分野への支援」に集中しており、同項目では(1)基礎教育、(2)保健医療、(3)開発途上国における女性支援(WID)/ジェンダーという下位項目を立てている。教育では「女子の基礎教育支援を重視」、保健医療では「基礎的な保健医療サービスを提供する保健医療システムの構築を支援」するとしている。WID/ジェンダーについては、「男女の均等な開発への参加とそこからの受益を図る必要があることから、開発途上国における女性支援の視点が重要」と明記している。従って、女性の地位強化、男女格差の是正というWIDイニシアティブの目標は、中期政策の重点課題「貧困対策や社会開発分野への支援」のサブ目標と捉えることができる。また、中期政策が、貧困対策や社会開発分野への支援として基礎教育、保健分野を重点とし、さらに、女性の経済的自立を促進する支援を積極的に行うと表明していることは、WIDイニシアティブの3つの重点領域(教育、健康、経済・社会活動への参加)と整合性がとれている。

3) WID/ジェンダーの国際的潮流との整合性
 WIDイニシアティブが発表された1995年の北京会議以前のWID/ジェンダーに関する国際的な動きとして、1985年に第3回世界女性会議で採択されたナイロビ将来戦略は、男女平等達成の障害を指摘し、引き続きその障害の除去に努めること、また女性の参加を確保していくことを宣言した。DACは、ナイロビ将来戦略や各国の状況を反映して、1983年に採択したWID指導原則を1989年に改訂したが、これは、加盟国は途上国と協力し、開発の全てのプロセスで女性への配慮を行うこととしている。このように国際的に開発支援におけるWID/ジェンダーの重要性が高まる中で、日本として、WID分野の開発援助の拡充に努力する旨を表明したことは妥当であった。

4) 政策の基本的な理念の妥当性
 上述の通り、WIDイニシアティブは、ODA大綱およびODA中期政策との整合性が確保されており、妥当と評価できる。また、北京会議の場で、開発における女性の参加と受益に配慮し、WID分野の支援の拡充に努めると表明したことは妥当だった。

4-2-2 政策のプロセス

(1) 策定過程

1) 適切な組織・人材の政策策定への関与
 WIDイニシアティブは、外務省経済協力局国際機構課が草案を作成し、省内関係課との協議を経て策定された。WIDイニシアティブが北京会議での発表に向けて作成されたことを考慮すると、国際機関に関する業務を行っている国際機構課が担当した点は妥当である。WIDイニシアティブ策定に関する外務省の内部資料を調べた限り、策定の際に有識者にアドバイスを求めたり、識者によるタスクフォースが設置されたりしたことは確認できなかった。また、当時、実施機関(JICA、JBIC)では、既にWIDへの取り組み(第2章参照)が始まっていたが、実施機関に策定過程で積極的な関与を求めたか否かは確認できなかった。

2) 上位政策との整合性への配慮
 WIDイニシアティブにはODA大綱の「開発への女性の積極的参加および開発からの女性の受益の確保について十分配慮する」という一文が引いてある。これはWIDイニシアティブ策定に当たりODA大綱が参照されたことを示しており、配慮があったと認められる。

 ODA中期政策(1999年8月)については、同政策がWIDイニシアティブ策定後に編まれたことから、その策定に当たってWIDイニシアティブが考慮されたかどうかが問題となるが、ODA中期政策の策定過程でどの程度WIDイニシアティブが配慮されたのか、については、WIDイニシアティブに関する資料からは情報は得られなかった4。しかし、ODA中期政策には「1995年に『途上国の女性支援(WID)イニシアティブ』を発表し、開発援助実施に際し女性の教育、健康、経済・社会活動への参加を重視する」と、WIDイニシアティブに関する記述があり、整合性に関して何らかの配慮があったと推測される。

3) 政策策定時の実施機関との協議および実施機関の対応
(1) 国際協力事業団(JICA)
 WIDイニシアティブ策定時の外務省とJICAの協議については、議事録が保存期間が過ぎ廃棄されているため、協議の有無は確認できなかった。また、外務省の記録からは、JICAの策定過程での関与は認められなかった。

 WIDイニシアティブの策定を受けて、JICAがどのように対応したのか、という点についても記録がないため不明だが、JICAにおける業務の大枠は、年度ごとに外務省からJICAに示される「業務実施方針」によって決定されることから、この文書のレビューを行い、WID/ジェンダーに関するなんらかの指示が外務省からJICAにあったのかを検証した。WIDイニシアティブが策定された1995年の翌年 (平成8年度)の業務実施方針の冒頭、総論部分に「環境の保全および開発における女性の役割にも十分な配慮を払うよう努められたい」という記述があり、これは平成9年度まで変わらない。平成10年度からは、この総論の記述が「(中略)女性の地位向上のための支援など社会開発の促進に努めるとともに(中略)ドナー間の援助協調等の着実な実施にも努められたい」と変わっている5。こうした女性への配慮に関する記述は、WIDイニシアティブ策定以前の平成7年度の業務実施方針にも記載されており、WIDイニシアティブの策定による業務実施方針の変更は生じていない。これは女性配慮がWIDイニシアティブ発表以前に業務実施方針に組み込まれていたため、それ以上の指示を必要としなかった、あるいはJICAのWID分野の取り組みが外務省より先行していたためとも考えられるが、いずれも推測の域を出ない。なお、業務実施方針の総論以外の箇所にはWID/ジェンダーに関する記述や指示は見当たらなかった。平成13年度以降の業務実施方針では「女性の地位向上のための支援など社会開発の促進に(中略)も努められたい」という部分は削除されているが、WIDイニシアティブの政策としての効力が現在も継続しているため、その意図するところを明らかにすべく調査したが確かなことは判らなかった。

(2) 国際協力銀行(JBIC)
 一般的に援助政策の策定時には、JBICは検討会への出席等により、外務省に草案作成時点でコメントを求められることがある。WIDイニシアティブ策定時に検討委員会がどのように行われたのかについては保存文書がないので不明である。また、外務省側の記録からは、JBICの策定過程での関与は認められなかった。

 WIDイニシアティブの策定、発表を受けて、JBICで何らかの対応、例えばWIDイニシアティブを受けてガイドライン等を策定した、JBIC内で組織や制度を変更した、ということは無かった。前述のとおりJBICではWIDイニシアティブ策定の2年前に「WID配慮のためのOECF指針」を策定するなど、WID分野に係る取り組みを行っており、WIDイニシアティブを受けた措置は特に必要なかったと推測できる。

(2) 策定過程の妥当性

 策定に関わった組織・人物の適性という点では、経済協力局国際機構課が中心となって策定したことは妥当であったと思われるが、WID/ジェンダー分野の有識者や、当時WID分野の取り組みにおいて外務省よりも先行しており、また実務を担当する実施機関(JICA、JBIC)の知見を生かす過程があったならば、背景情報の入手などがより効果的に行えたと思われる。

(3) 実施過程(調査対象国)

1) WID/ジェンダー政策推進のための政策協議
 日本と当該国政府の間の政策協議
 外務省本省の記録によれば、WIDイニシアティブの発表後、本省から各在外公館(133公館)に対し、被援助国政府との援助協議、ドナー国会合、NGO等との対話の場でWIDイニシアティブを積極的に紹介し、案件発掘等に努めるよう指示が出された。調査対象国の在グアテマラと在ホンジュラス日本国大使館にも、同じ指示があった。DAC加盟国援助機関に対しては、十分説明しPRに努めるよう指示された。WIDイニシアティブの広報資料(和文、英文)を本省が作成し、各在外公館に送付した。

 在グアテマラ大使館、在ホンジュラス大使館とも、相手国政府との案件選定に係わる協議及び要請案件採択の可否決定に際し、WIDイニシアティブを念頭に入れてこれを行っている。

(1)グアテマラ
 グアテマラでは、現在、大使館が積極的にグアテマラ政府機関へ働きかけて、WID/ジェンダー案件の形成に努力している6。また、草の根無償資金協力案件の採択に当たっては、特に女性配慮に重点を置いている7。WIDイニシアティブ策定当時の大使館の対応がどのようなものだったのかについては、職員が代わっており直接確認できなかったが、草の根無償資金協力に関しては、女性への配慮の重要性はその当時から認識されており、現担当にも引き継ぎが行われていた。なお、政府調査団と相手国政府との間で行われる政策協議の場で、WID/ジェンダー分野の支援の促進が議題に上ったか否かは確認できなかった。

 このようにWIDイニシアティブ策定当時の状況を確認できなかったが、少なくとも現在グアテマラにおいてはWID/ジェンダー案件の重要性を認識しており、案件形成に向け努力している。

 WID/ジェンダー関連の実施案件とされている女子教育協力に関するプロジェクト8は、主として、日米コモン・アジェンダの枠組みで形成され9、日本側からは専門家の派遣、草の根無償資金協力、一般無償資金協力などのスキームを使って実施されたものである10。WIDイニシアティブは、「2005年までに、開発途上国における6歳から11歳までの男女格差をなくすことを目指す努力」と「2010年までに、開発途上国の6歳から11歳までの女子のほぼ全員が男子と同様に学校教育を受けられるようにすることを目指す努力」を支援すると目標を設定しているが、WIDイニシアティブの掲げる目標との関連性は不明確であった。

(2)ホンジュラス
 ホンジュラスでは、WIDイニシアティブ策定後、1999年に政策協議が行われているが、外務省資料によると、政策協議の中でWIDイニシアティブに触れた形跡はなかった。

 在ホンジュラス日本大使館の現在の経済協力担当は、WID配慮を案件検討時の重要な要素と認識している。草の根無償資金協力担当官も、WID/ジェンダー案件の形成に積極的であり、現地NGOなどへのスキームの広報を通じて案件の形成・実施に努力している11
 ホンジュラスで実施されたWID/ジェンダー関連案件も、グアテマラと同様、WIDイニシアティブとの関連を確認することはできなかった。本評価調査の対象となったプロジェクト群は、それぞれWIDイニシアティブとは異なる背景によって形成されており、看護教育強化の個別専門家派遣はプロジェクト方式技術協力のフォローアップとして、第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクトはJICAが行った開発調査を受けて形成され、サン・ペドロ・スーラで実施された生産期女性保健向上計画は、看護教育強化プロジェクトのC/Pがイニシアティブをとって形成・要請されていた。また、女性の経済・社会活動への参加に関する2プロジェクトは、大使館の草の根無償資金協力担当が現地のNGOとともに形成した案件で、請訓表でWID案件とされているが、WIDイニシアティブが掲げる目標との関連性という点からは直接にはないことが確認されている(大使館でのインタビューによる)。また、WIDイニシアティブで目標にあげている「妊産婦死亡率の減少」、「乳児死亡率の減少」に直接寄与すると判断されるプロジェクトは「第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクト」と「周産期女性保健向上プロジェクト」の2つであった。機材供与や看護教育強化も間接的に2つの目標に寄与していることは間違いないと推測されるが、直接の関わりという面ではこの2プロジェクトのみである。これらプロジェクト群もWID案件と識別されているが、策定時にではなく事後的な識別であり、WID案件とWIDイニシアティブの関連は希薄となっている。

2) WID/ジェンダー分野の支援に対するニーズへの配慮

(1)グアテマラ
 WIDイニシアティブ策定時期のグアテマラの国家開発計画としては、1991-1996年の「経済社会政策」が挙げられ、その中に「女性支援」という項目がある。1996-2000年の国家開発計画の名称は「政府プログラム」であり、その中に「家族と女性への配慮」の項目がある。それらについての詳細は、1992年に策定された「社会開発行動計画(人間・子ども・青年開発)1992-1996 1997-2000」に明記されている。この行動計画は保健、食料と栄養、基礎教育と識字、家族の機能強化、女性支援、厳しい状況の子供、戦争の被害を受けた子供、環境の8項目で構成されている。このうち「女性支援」では「女性への支援は国家の認識するところであり、政策やプログラムを推進するために、女性を個人的・社会的に支援し、社会経済発展に必要な女性の潜在力を引き出すことを政府は約束する12」としている。教育分野では、特に女子教育を優先するとされ、男女格差を無くし、女子の就学率と定着率の向上を目指し、帰還者、難民、国内避難民等の女子と女性の教育機会を優先的に広げるとある。また、2000年までにジェンダー格差を減少させるための教科書改訂と50%の教員再訓練を目標にしている。保健分野では妊産婦死亡率と乳児死亡率の減少をはじめ、保健に関する複数の目標が設定され13、経済・社会活動への参加についても、女性の研修・教育の強化、女性支援サービス制度の開発、女性関連の法律・制度の整備などが挙げられている。
 WIDイニシアティブとこれらの努力の間の関連を示す資料・情報は見当たらなかったが、1995年当時および2000年の国家開発計画をみるとWID/ジェンダー分野の支援ニーズがあったことが認められ、WIDイニシアティブの重点3分野とも合致しており、以上のことから、これまでのグアテマラにおける対応は妥当であったと判断できる。

(2)ホンジュラス
 WIDイニシアティブ策定時期のホンジュラスの開発計画は、1991年に策定された「国家活動計画(人間・子供・青年開発)14」が挙げられる15。この行動計画は5つの領域(教育・保健・栄養・水と基本的衛生・子供の権利)で構成されているが、WID/ジェンダー配慮に関する記述は少なくともレビューした文献「国家活動計画第1次モニタリング・評価報告書」には見当たらない。ホンジュラスは1980年に女子差別撤廃条約を批准しているが、国家開発計画の中に女性への配慮がはっきりとした形で現れるのは、90年代の終わりになってからである(3-4参照)16。したがって1995年時点では、女性配慮のイニシアティブはホンジュラスの国家開発政策にははっきりとは現れていなかったと考えられる。だが、市民社会のWID/ジェンダーに関する関心は高まってきており、NGOなどの活動も活発化していたことを併せ考えると、WID/ジェンダー支援のニーズはあったと判断できる。

3) WID/ジェンダー支援推進のための実施機関との協議

 今回の現地調査で、ホンジュラスで、WIDイニシアティブの策定を受け、現地で大使館とJICA現地事務所が協議していたかの確認を試みた17が、記録を見つけることはできなかった。ただし、現地での協議は通常、非公式で記録されないため、本省からWIDイニシアティブ発表後に出された指示を受け、現地で大使館と実施機関の間で協議を行った可能性はある。

4) WID/ジェンダー分野の支援推進のための社会・文化的要素への配慮

 グアテマラ、ホンジュラスともに、女性の現状を把握するための特別な調査は実施していないが、下記に述べる通り、担当官・担当者レベルで入手可能な情報を収集し、現状の把握に努めている。それらの情報は、案件の形成や実施手法の検討などに利用されていることから、現時点においては社会・文化的要素への配慮はできていると考えられる。1995年時点の配慮については情報が不足しており判断できない。

(1) グアテマラ
 大使館における社会・文化的要素の把握努力という意味では、現在、女性庁、UNDP、開発援助委員会(DAC)の地域目標などから性差を示した統計情報を収集しており、またジェンダー関連のセミナーや討論会を開催して情報の収集に努めている。1995年当時の対応については、情報がないため判断できない。第3回対グアテマラ支援国会合(CG会合)に向けNGOを招待して女性問題について意見を聴取した。協力隊員からも積極的にジェンダー状況に関する情報を収集している。他方JICAも、母子保健の現状、農業等、分野ごとの性別データ、UNDPの人間開発指数、妊産婦支援の達成度等、統計情報を収集し、現状の把握に努めている。大使館ではジェンダーの状況把握を案件形成に役立てている。草の根無償資金協力案件の形成時には、直接女性を対象に聞き取り調査を実施し、何をしたいのか、何を期待してどう改善したらよいのか等、女性の立場からの視点が必ず入るように配慮している。地方の集会などに直接出向き、実際に女性が置かれている状況や社会風土を知った上で案件を形成する必要があると認識している。

(2) ホンジュラス
 ホンジュラスの社会・文化的要素への配慮については、公的統計データや新聞等を通した情報の収集、さらに他ドナーやNGOとの情報交換を通して現状の理解に努めている。JICAでは、実施案件を通して社会・文化的な要素も含めた一次情報の収集を行っているほか、文献による情報の収集、専門家や協力隊員の報告書、隊員の帰国報告会の実施などを通して、現状の把握に努めている。

5) WID/ジェンダー分野の支援・推進に関する援助スキームの効率的組み合わせ

(1) グアテマラ
 女子教育支援では、研修員受入れ、専門家派遣、一般無償資金協力、草の根無償資金協力、UNDP日本WID基金、青年海外協力隊派遣などの援助スキームの組み合わせが行われている。一般的な取り組みとしては、現場のニーズと日本のスキームを考慮して効率的に援助を行えるように、大使館の指導の下、案件が実施されている。例えば、一般無償資金協力で小学校を建設すると共に女子教育アドバイザー(専門家)を派遣し、セミナーや研修は日本WID基金を活用、教科書作成には草の根無償資金協力を利用している。このように、女子教育支援などでは、現地のニーズに対応するためスキームを効率的に活用している。

(2) ホンジュラス
 大使館とJICAホンジュラス事務所との間で、スキームの有効な活用についての会合が持たれたことはないが、今回の調査で、個別案件ベースで草の根無償資金協力などを活用してスキームの有効な活用に配慮していることが分かった。図4-2はこれまでに実施された保健医療分野の案件を中心とする個別案件の関係を矢印で結んだものである。

図4-2 女性の「健康」分野における実施個別案件とその関係


 実際には柔らかなプロジェクト群が策定され、継続して協力が行われている。ホンジュラスの保健医療分野の場合は、2人続けて派遣された政策アドバイザーと、その任期に並行する形で実施された看護教育強化プロジェクトが、後に連携した形でのプロジェクト実施につながったと考えられる。単発案件の実施と比較すると、その連携度は高いと判断できる。

 一方で、確かにこれまで行われた保健医療分野の協力は緩やかな関連を持っているが、WIDイニシアティブで目標に挙げている「妊産婦死亡率の減少」、「乳児死亡率の減少」に直接寄与するプロジェクトは「第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクト」と「周産期女性保健向上プロジェクト」の2つ。機材供与や看護教育強化も間接的に2つの目標に寄与していることは間違いないと推測されるが、直接の関わりという面ではこの2プロジェクトのみであった。

6) WID/ジェンダー分野の支援における他ドナーとの援助協調

(1) グアテマラ
 グアテマラには、WID/ジェンダー分野に関する常設のドナー間会合は存在していない。国際機関の間では、UNDPが中心となって1995年に「ジェンダー・女性の前進グループ(GIGAM)」を形成、現在、UNICEF、WFP、UNFPA、PAHO、UNV、MINUGUAがメンバーとなって活動を続けている(3-14ページ参照)。

 わが国は、案件レベルで他ドナーと協調しており、USAIDとグアテマラ女子教育支援プログラムを、カナダとバリージャス市帰還難民女性のための教育センター建設計画(草の根無償資金協力)を支援している18

(2)ホンジュラス
 ホンジュラスには、1999年5月のストックホルムCG会合のフォローアップグループ、通称「G1519」と呼ばれているものがあり、同グループには、7つの分野についてセクターグループが設置されている。そのうちの社会擁護ネットグループがジェンダーを取り上げることとなっているが十分機能していない。従って、同国においても、WID/ジェンダーに関する常設のドナー会合は存在していないといえる。現在、スペインが中心となってジェンダーグループ形成を開始したところである。非公式ながらスペイン、世銀、UNICEF、BECIEの担当者による1回目の会合が2002年末に行われた。この会合に日本は参加していない。
 実施されたWID案件における他ドナーとの協調については、これまでには実績はないが、現在行われている「第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクト」では、USAIDと情報交換している。同プロジェクトの中間評価もUSAIDをはじめ、GTZや他の関連国際機関やNGOが参加した合同評価形式で行われる予定である。また、近く開始される「女性の生計向上プロジェクト」は中米経済統合銀行との協調で行われる予定である。
 WIDイニシアティブには3つの分野があるが、日本が必ずしも3つの分野すべてで協力を行わなければならないわけではない。それぞれ強みを生かした分野や地域でプロジェクトを行い、最終的に目的を達成することが重要である。そのためには、かなり緊密なドナー間の連絡、調整、協調が必要となるが、調査対象の2カ国においては、これが現状ではできていなかった。

(4) 実施過程の妥当性

(1) WID/ジェンダー政策推進のための政策協議
 WIDイニシアティブの発表を受けて、本省から各在外公館に、被援助国側にイニシアティブを紹介し、案件発掘に努めるよう指示があった。調査対象国では、当時のことは確認できなかったが、現在、現地では、WID/ジェンダー分野の案件形成に努めていることから、調査対象国ではWIDイニシアティブの実施過程の妥当性は高いと評価できる。ただし、今回の現地調査で、担当官の認識度により、WID/ジェンダー分野への取り組み度合いが左右される可能性が指摘された。本調査によれば、本省および在外公館でのWID担当官の指名に伴う専門的な研修は行われておらず、当該分野の認識を高めるための組織的なバックアップ体制があれば、より妥当性は高まったと思われる。

 グアテマラについては確認できなかったが、ホンジュラスとの間で行われた政策協議(1999年)において、WIDイニシアティブが議題に挙がらなかったことは、本省内でWIDイニシアティブに関し十分周知できていなかったためと推測される。また、WID/ジェンダー関連の実施案件とWIDイニシアティブの関連が希薄になる理由として、WID案件か否かの識別が、WIDイニシアティブに述べられている内容との整合性には十分配慮せずに行われていること、そしてその識別がプロジェクト策定時ではなく実施決定後に行われているためと思われる。政策協議で、WID/ジェンダー分野の支援に関し協議をすれば、WID/ジェンダー分野の支援に対する配慮が政策レベルにおいて行うことができ、WIDイニシアティブに基づく案件形成も促進されたと推測され、より妥当性が高くなったと判断される。

(2) WID/ジェンダー分野の支援に対するニーズ
 グアテマラでは、1995年当時の国家政策にも、WID/ジェンダー分野に取り組む必要性が明記されており、当該分野への支援は妥当であった。ホンジュラスでは、1995年時点で、国家レベルではWID/ジェンダー分野の課題について十分認識されていなかったようだが、ジェンダー格差(3-3参照)があり、またNGOを中心に市民レベルでは関心が高まっていたことを考えると、支援は妥当だったと考えられる。

(3) WID/ジェンダー分野の支援推進のための実施機関との協議
 大使館と実施機関現地事務所が、それぞれの役割に基づき、現地で対応を協議することにより、相手国政府への積極的な働きかけ、ドナー協調など、日本側の主体的な取り組みが可能になると思われる。そのためには、本省から大使館への指示に、案件形成等に関して実施機関現地事務所との協議の実施を盛り込み、本省から実施機関本部に現地事務所に対して大使館との連携を指示するよう要請すれば、WID/ジェンダー分野の支援における、現地での連携がより促進されたと推測され、妥当性が高まったと思われる。

(4) WID/ジェンダー分野の支援推進のための社会・文化的要素への配慮
 両調査対象国ともに、担当官レベルと実施機関で当該国のジェンダーに関する情報収集に努めており、そうした情報は案件形成や実施手法の検討に活用されていることから、妥当性は高い。

(5) 実施過程の連携度

(1) WID/ジェンダー分野の支援・推進に関する援助スキームの効率的組み合わせ
 グアテマラ、ホンジュラスともに、援助スキームが効率的に組み合わされ、単発で案件を実施するのと比較し、連携度は高いと評価される。ただし、この連携度は、グアテマラの場合、直接的には日米コモン・アジェンダのもとで、ホンジュラスの場合は専門家の関与によるところが大きく、WIDイニシアティブとの関連は不明確であった。案件形成時からWIDイニシアティブで設定された目標との関連を明確にし、援助スキームを組み合わせれば、連携度はより高まったと思われる。

(2) WID/ジェンダー分野の支援における他ドナーとの援助協調
 グアテマラとホンジュラスで、USAID等の他ドナーと協調して実施された案件がある。グアテマラにおけるカナダとの協調案件の場合、それぞれの援助スキームで実施できない部分を互いに補う形で協調しており20、連携度は高い。ホンジュラスでの協調は直接的なものではなく、USAIDの類似プロジェクトの関係者間での情報交換として行われているため、直接的なプロジェクト活動での協調ではないが、双方の経験が情報交換によって蓄積されていることから、二次的に連携度を高めているといえる。ジェンダーグループの会合に参加するなどして政策レベルで、わが国の取り組みにつき情報発信をし、他ドナーとの情報交換も緊密に行いながら、個別案件レベルでの協調の方途を探ることで、政策レベルからプロジェクトレベルまでより包括的なWID/ジェンダー分野の取り組みにおける協調が促進され、WIDイニシアティブで掲げられた目標の効率的な達成にも貢献するのではないかと思われる。

4-2-3 政策の成果

 WIDイニシアティブでは、目標を設定しており、政策の成果を論じる上で有効性(目標達成度)を分析することが期待されるが、グアテマラおよびホンジュラスにおける該当分野の指標の推移に対し、わが国の支援がどの程度の貢献したかについては、分析手法は依然課題があること、限られた調査期間では分析が困難であることなどから、今回の評価では行わず、当該国の指標の推移を述べるにとどめている。

(1) 教育

1)プロジェクト実績
 今回の評価調査で対象となった案件は以下のとおり。

表4-1 「教育」分野におけるWID案件実績
案件名 スキーム 実施年
・小学校建設計画 一般無償資金協力 96-98年
・女子教育にかかる企画・調整 専門家派遣 95-01年
・女子教育協力の教育方法の開発 専門家派遣 96-99年
・女子教育アドバイザー 専門家派遣 99-00年
・女子教育計画アドバイザー 専門家派遣  
・地方基礎教育手法の開発 専門家派遣 01-03年
・女子教育ナショナル・セミナー 日本WID基金 97年
・女子教育支援プログラム 日本WID基金 99年
・チマルテナンゴ県女子初等教育普及計画 草の根無償資金協力 96年
・トトニカパン県教員教授法改善セミナー実施計画 草の根無償資金協力 96年
・トトニカパン県二言語教育促進小学校への図書供与計画 草の根無償資金協力 96年
・ソロラ県教員再訓練セミナー実施計画  草の根無償資金協力 97年
・レタウレウ県教員再訓練セミナー実施計画 草の根無償資金協力 97年
・グアテマラ県教員再訓練セミナー実施計画 草の根無償資金協力 97年
・アルタ・ベラパス県教員再訓練セミナー実施計画 草の根無償資金協力 97年
・フティアパ県教員再訓練セミナー実施計画 草の根無償資金協力 97年
・トトニカパン県二言語・女子教育および参加型統合プログラム促進小学校への図書供与計画 草の根無償資金協力 97年
・フティアパ県21世紀の女子教育プロジェクト(第2フェーズ) 草の根無償資金協力 00年
・トトニカパン県二言語識字教育教科書作成計画 草の根無償資金協力 00年
・サンタ・クララ・ラ・ラグーナ市パベヤ・チチヤル地区小学校建設計画  草の根無償資金協力 01年
・ペテン県小学校読み書き能力向上計画 草の根無償資金協力 01年
・二言語教育推進小学校のためのポポル・ブフー普及版作成計画 草の根無償資金協力 01年
・グアテマラ国貧困地区小・中学校のための教育図書供与計画 草の根無償資金協力 01年
・トトニカパン市チョタカ地区中学校建設計画 草の根無償資金協力 01年
・スニル市ラ・カレラ村小学校建設計画 草の根無償資金協力 01年
・エル・アシンタル市サン・ホセ地区中学校建設計画 草の根無償資金協力 01年


2)教育分野の指標の推移

表4-2 教育指標の推移(全国)
  1996 1997 1998 1999 2000 2001
小学校純就学率 69.1 72.6 77.7 81.0 84.3 85.1
小学校男子純就学率 72.3 75.5 80.6 83.6 86.4 87.0
小学校女子純就学率 65.7 69.4 74.6 78.4 82.1 83.2
男女差 -6.6 -6.1 -6.0 -5.2 -4.3 -3.8
小学校留年率 15.7 14.8 15.6 16.1 15.2 14.7
小学校男子留年率 16.4 15.4 16.2 17.1 15.7 15.2
小学校女子留年率 14.9 14.2 14.9 14.9 14.6 14.0
男女差 +1.5 +1.2 +1.3 +2.2 +1.1 +1.2
小学校中退率 8.4 8.1 12.9 11.4 10.4 7.0
小学校男子中退率 9.1 8.7 13.6 12.7 10.9 7.3
小学校女子中退率 7.5 7.4 12.1 9.9 9.8 6.7
男女差 +1.6 +1.3 +1.5 +2.8 +1.1 +0.6
中学校純就学率 19.9 20.4 20.3 21.4 24.0 28.4
中学校男子純就学率 20.5 20.9 20.9 22.0 24.7 28.9
中学校女子純就学率 19.2 19.9 19.8 20.8 23.4 27.8
男女差 -1.3 -1.0 -1.1 -1.2 -1.3 -1.1
中学校留年率 4.2 4.3 3.9 4.4 4.4 3.7
中学校男子留年率 4.8 4.8 4.4 5.3 4.9 4.2
中学校女子留年率 3.4 3.7 3.4 3.3 3.8 3.2
男女差 +1.4 +1.1 +1.0 +2.0 +1.1 +1.0
中学校中退率 3.1 6.3 5.7 15.5 14.4 8.1
中学校男子中退率 4.9 7.4 7.6 18.8 16.1 9.1
中学校女子中退率 1.0 5.0 3.4 11.4 12.4 6.9
男女差 +3.9 +2.4 +4.2 +7.4 +3.7 +3.2
男女差=女子純就学率-男子純就学率
出典: "Guatemala: Desarrollo Humano, Mujeres y Salud", Sistema de las Naciones Unidas en Guatemala, Guatemala, 2002, p 381-382


 1996年から2001年までに、小学校純就学率で16ポイント上昇、女子に関しては、17.5ポイントと大幅に増加している。また、男女差も-6.6%から-3.8%と改善した。「グアテマラ女子教育協力に関するモニター・評価の報告書」は、この改善状況について、「特にプロジェクトが本格実施となった98年以降の男女差の変化は顕著である。日本の協力だけが大きな影響があったとは断言できないが、大きく貢献したことは間違いない」と記述している。中学校純就学率では8.5ポイントの改善が見られたが、中学校の男女格差は横ばい。留年率、中退率は中学校中退率を除いて現状維持、あるいは緩やかな改善傾向にある。中学校中退率は、1996年から1999年までは増加傾向にあるが、2000年から改善の傾向が見られる。

(2)健康

1) プロジェクト実績

 今回の評価調査で対象とした案件は以下のとおり。

表4-3 「健康」分野のWID案件実
案件名 スキーム 実施年
・看護教育強化 プロジェクト方式技術協力 90年9月-
・保健医療総合改善計画 専門家派遣 94年-
・看護教育強化(個別派遣専門家) 専門家派遣 98年-
・子供の疾病対策計画 一般無償資金協力 99年
・第7保健地域リプロダクティブ・ヘルス向上プロジェクト プロジェクト方式技術協力 00年-
・サン・ペドロ・スーラ市メトロポリンタン区域ラス・パルマス保健所管轄区"ラ・ウニオン地区における生産期女性保健向上計画 草の根無償資金協力 01-02年


2)保健分野の指標の推移

表4-4 保健指標の推移(全国)
    1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000
妊産婦死亡率
(*100,000)
*1     221 221 108 108 108
*2 220         110  
*3   220          
施設での分娩率                
専門介助者による分娩率 *1              
*2   55%         54%
*3 47% 55%          
*4     42.6% 38.2% 34.66% 44.57% 46.8%
乳児死亡率(*1000) *1     41.82 40.23 38.64 37.05 35.41
*2     29 36     32
*3 50 40         35
2歳未満児の予防接種率
(*4)
Sabin     94.2 93.1 97.8 95 88
DTP 84%(*2) 94%(*2) 93.5 93.5 96.8 95.2 94
SRP     91.2 89.1 100 98.1 100
BCG 90%(*2) 90%(*2) 100 100 96.3 93.1 100
破傷風     99 99.1 96.3 100 100
合計特殊出生率 *1   4.55 4.40 4.26 4.11 3.97 3.83
*2   4.6   4.3     4.3
*3 5.2 4.7         3.9
家族計画の実施率 *2 47% 47%     50%   50%
*3 47% 50%         62%(2001)
*4     50% 50% 50% 50% 50%
医師一人当たりの人口(*10,000) *2 22
(*1993)
        83  
妊産婦コントロールへの参加 *3   73%          
*4     94.2 91.3 82.29 84.01 85.07
出生時平均余命 *1     66.01
70.96
66.38
71.37
66.85
71.78
67.43
72.20
67.51
72.63
*2   66.5
71.2
  67.5
72.3
    63.2
68.9
*3 63
67
63
68
        63
69
出典
*1 "Boletin de Informacion Estadistica de Atencion Ambulatoria en Salud", Secretaria de Salud, Tegucigalpa, Honduras, 2000,
*2 UNDP, "Informe de Desarrollo Humano", 2002, 1995
*3 Gender stats 1990
*4 "Salud en Cifras 1996-2000", Secretaria de Salud, Tegucigalpa, Honduras
注) 空欄は情報なし


 1995年から2000年までの関連指標の推移は、各指標とも少なくとも現状維持、あるいは緩やかな改善傾向にある。

(3)女性の経済・社会活動への参加

1)プロジェクト実績
 今回の評価調査で対象となった案件は以下のとおり。

表4-5 女性の経済・社会活動への参加」分野のWID案件実績

案件名 スキーム 実施年
・ 貧困女性研修センター建設計画 草の根無償資金協力 99年
・ 貧困女性のための生計向上事業 開発福祉支援 99年


2)女性の経済・社会活動への参加分野の指標の推移

表4-6 女性の経済・社会活動への参加分野の指標の推移

  1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000
女性の就職率 *2 30% 22.7%   40.3%
*3 28% 30%   32%
公職に就いている女性の割合
男女別の収入比 *2 35.3% 34.7% 43.5% 34.9% 37.2% 42.3%  
管理職に就いている男女の割合  
一般職についている男女の割合  
*2 UNDP, "Informe de Desarrollo Humano", 2002, 1995
*3 Gender stats 1990
注)空欄は情報なし


 女性の経済・社会活動への参加分野の指標については、今回の現地調査では、その傾向を見るための十分な情報を得ることができなかった。女性の就職率については改善が見られるが、男女別の収入比(男性の収入を100とした時の女性の収入)はほぼ横ばいという状況である。公職に就いている女性の割合については、現地調査の結果、現時点での女性の閣僚の割合は22%で、前政権の34%よりも低くなっている21

(4) 政策の成果の有効性・インパクト

1)教育
 JICAと教育省がまとめた「日本-グアテマラ女子教育活動200022」では、表4-1の「小学校建設計画」、「専門家派遣」、「女子教育プログラム」、「日米コモン・アジェンダ関連」の案件を「グアテマラ女子教育協力23」とくくっている。これに関する専門家の評価報告書24によると、プロジェクトを実施した7県すべてで女子の就学状況の改善されたことが示されている。
 WIDイニシアティブでは「2005年までに、発展途上国における6歳から11歳までの男女格差をなくすことを目指す努力を支援する」としている。グアテマラの教育システムは、小学校が7-12歳、中学校が13-15歳、高校が16-18歳。WIDイニシアティブで述べられている6-11歳は、グアテマラの教育システムの中では小学校に相当する。小学校の種々の指標を見てみると、就学率では女子の方が男子より低いが、留年率や中退率は、女子の方が男子より良好である。小学校就学率の男女格差も1996年から2001年の間に-6.6%から-3.8%へ縮小している(表4-3)。単純平均すると、その間、年0.56%のペースで改善されており、この進捗が継続すれば、2005年までには完全に男女格差を解消までは行かないものの、2010年には男女格差は解消される可能性もある。

 WIDイニシアティブでは、目標達成の手段として女子教育の教科書・教材の作成・普及、教員の養成、女子が利用できる教育・訓練のための施設・設備の整備、成人女性の識字教育の促進、その他の女子の初等教育の普及に役立つ協力、が挙げられている。WID案件の実績によると、これらのほとんどの手段を講じて女子教育の改善に取り組んでいる。目的達成の手段という意味でも、達成度は高い。

 インパクトの面でも、これら女子教育協力のプロジェクト群では実施による知見が蓄積され、C/P側に還元されており25、グアテマラ側へのフィードバックが行われているといえる。WIDイニシアティブへのフィードバックについては、フィードバックが行われた事実は確認できなかった。

2)健康

 既に述べたとおり、ホンジュラスの保健分野の案件は、その多くがスキーム間で連携している。このように緩やかながらも連携した支援がこの10年にわたり継続しており、現在も実施されていること自体が、1つの成果であるといってよい。

 ホンジュラスにおける保健分野の協力は、保健医療全体の改善を目的に行われてきたが、第7保健地域リプロダクティブヘルス向上プロジェクト、生産期女性保健向上計画では、女性が直接の受益者として考慮されていることから、女性の受益に対する配慮は行われているといえる。JICAホンジュラス事務所でも女性の参加・受益を重視しているとのインタビュー結果を得た。これらのプロジェクトのホンジュラスにおけるWID/ジェンダー政策へのフィードバックは、国家女性局でのインタビューでは確認できなかった。WIDイニシアティブ自体へのフィードバックについても、その事実は確認できなかった。

 WIDイニシアティブは、「2010年までに妊産婦死亡率を200以下(10万出生あたり)に下げる」、「乳児死亡率を2015年までに35以下(1000出生あたり)に下げる」ことを目標に掲げている。妊産婦死亡率については既に2000年時点で108と目標を達成していると考えられる(表4-4参照)。乳児死亡率については、1995年以降、徐々にではあるが減少傾向にあり(表4-4参照)、2000年時点でほぼ2015年の目標に到達しつつあると考えられる。予防接種率の改善状況からも、今後も継続した乳児死亡率の減少が予想できる。

 次に目標達成への手段だが、WIDイニシアティブには、基礎保健医療体制の整備・強化、保健衛生栄養教育の促進、母子保健サービスの強化、家族計画の普及、医療・保健・衛生・栄養・人口に関する基礎データの整備能力の向上、その他の女性の健康増進に役立つ協力、が挙げられている。これらの手段に関連するプロジェクトをまとめたものが以下の表である。

表4-7 WIDイニシアティブの目標達成手段(健康分野)とプロジェクトの関係
目標達成の手段 プロジェクト名 スキーム
基礎保健医療体制の整備・強化 医療機材整備(無償資金協力)
看護教育強化プロジェクト
無償資金協力
プロジェクト方式技術協力
保健衛生栄養教育の促進 看護教育強化プロジェクト
生産期女性保健向上計画
プロジェクト方式技術協力
草の根無償資金協力
母子保健サービスの強化 リプロダクティブヘルス向上プロジェクト
生産期女性保健向上計画
技術協力プロジェクト
草の根無償資金協力
家族計画の普及 リプロダクティブヘルス向上プロジェクト
生産期女性保健向上計画
技術協力プロジェクト
草の根無償資金協力
医療・保健・衛生・栄養・人口に関する基礎データの整備能力の向上 リプロダクティブヘルス向上プロジェクト 技術協力プロジェクト
その他の女性の健康に資する協力 リプロダクティブヘルス向上プロジェクト 技術協力プロジェクト


 以上のように、必要とされる手段をほぼ網羅する形でプロジェクトが実施されている。目標達成の手段という意味でも、達成度は高いと判断できる。ただし、母子保健サービスの強化、家族計画の普及、基礎データ整備能力の向上の手段については、リプロダクティブヘルス向上プロジェクトを通して開始されたばかりであり、WIDイニシアティブに掲げられた目標の確かな達成のためには、引き続きその着実な実施が必要である。

 上述のWID案件は、その多くが相互に関連していることはすでに述べたが、これらのプロジェクト活動の経験や結果は、C/P機関に蓄積され、現在も活用されている。このプロジェクト群によって保健政策にどのようなフィードバックがあったのかについては確認できなかった。看護教育強化プロジェクトについては、ホンジュラスの経験を活用してエルサルバドルで同様のプロジェクトが行われており、JICA内へのフィードバックと知見の活用が行われていることから、インパクトも高いと判断できる。

3)経済・社会活動への参加

 WIDイニシアティブには、女性の経済・社会活動への参加分野の量的な指標は設定されていない。代わりに、女性の経済・社会参加の支援のための手段を「女性の適正技術の研修・訓練の場の提供、女性の労働環境の改善、女性問題関連の法律・制度の整備のための協力を行う」と指摘している。WID案件として実施された上記2つのプロジェクトは、この手段の中の「研修・訓練の場の提供」にあたる。

 両プロジェクトともに資金の供与は1999年に実施されているが、センターは2001年の9月に完成したばかりである。開発福祉支援による活動も開始は2001年11月26で、いずれも実質的な活動が始められてから1年余りしか経過していない。活動の受益効果が「女性の経済・社会活動への参加」分野に現れるには、投入量、時間ともに少ない。JICAは技術協力プロジェクトとして女性の生計向上を主な目的としたプロジェクトを開始する予定であり、この分野での協力は今後強化されると思われる。

 女性の経済・社会活動への参加分野でのプロジェクト数は上記のように少ないが、女性の参加と受益への配慮がここ数年強化されていることが、案件の実施に反映していると考えられる。これらのプロジェクトの成果は、国家女性局でのインタビューによると、ホンジュラスのWID/ジェンダー政策にはフィードバックされていない。これはプロジェクト自体の実績が少なく成果が発現されていないためだろう。WIDイニシアティブへのフィードバックも確認できなかった。

 労働環境の改善や女性関連法律・制度のための協力については、1995年以降、複数の国際機関の協力によりホンジュラス政府が女性関連法律の整備や政策策定を行った際に、日本は参加していない。インパクトについても、対象2プロジェクトが実施中ということもあり、まだ評価できる段階にない。

4-3 ジェンダー主流化の視点による評価

4-3-1 基本的な理念

(1)WIDイニシアティブのジェンダー主流化の適性度
 WIDイニシアティブは、女性の参加と受益に配慮するとし、女性に焦点を合わせている点でWID的といえる。DACによる「新しいガイドライン(DAC Guidelines for Gender Equality and Women's Empowerment in Development Cooperation)」では、女性の地位向上はジェンダー平等と並列に扱われており、ジェンダー平等とWIDの関係は以下のように表されている。

 「この戦略は女性に向けたイニシアティブ(つまりWID)を排除するものではない。それは必要であり補完的なものである。同様に男性に向けたイニシアティブであっても、それが女性と男性の平等に資するものである限り必要である27

 WIDはジェンダー平等を達成するために必要で補完的な手段であるとの認識が、現在の国際的なジェンダー主流化への取り組みにおけるWIDの位置付けといえる。この意味で、WIDイニシアティブは、ジェンダー平等の世界的な潮流の中で、現時点でも妥当なイニシアティブである。一方で、個々の援助案件の「全ての段階において、女性の参加・受益に配慮する」こと、「女性の一生のすべての段階を通じて、女性の地位の強化(empowerment)と男女格差の是正(gender equality)に配慮する」として、開発のすべてのプロセス、女性の一生の全ての段階で配慮することは、ジェンダー主流化に通じるものである。

(2)ジェンダー先進国のジェンダー政策との比較
 本報告書で取り上げたジェンダー先進国の国際協力におけるジェンダー政策を要約すると以下のようになる。

カナダ
 カナダのODAのWID/ジェンダー政策はジェンダー平等推進である。男女の平等な意思決定のプロセスの実現、女子の基本的人権、資源へのアクセス・コントロール及び裨益における男女格差の削減が目標となっている。

スウェーデン
 スウェーデンは「男女間の平等の推進」が長年ODAのベースとなる概念である。男女平等化に特化した活動を実施している。この根底には「平等は人権そのもの」、「女性と男性の平等な権利・機会・義務は、効果的で持続的な人間中心の開発にとっての前提条件」という概念がある

米国
 USAIDのWID/ジェンダー政策はWID 推進である。USAIDのWID室は、女性の経済的状況の改善、女子の教育機会の増加、女性の法的権利の拡大・改善と市民社会への参加の増大、プログラムへのジェンダーの視点の組み込みを戦略的目標としている。

ドイツ
 ドイツのODAにおけるWID/ジェンダー政策は、開発プロセスへの男女の平等な参加 (長期的には女性の地位向上)とジェンダーによる不利益の削減が目標であると同時に、持続的開発の前提条件と捉えている。男女間の関係を変えることにも目を向けている。

スペイン
 スペイン国際協力法では、性別による差別のないこと、及び女性の平等な参加が国際協力の原則の1つである。女性の社会参加・統合・機会均等が優先分野であることは第7条で記されている。

 以上、米国を除く4ヶ国はジェンダー平等を推進し、米国は女性の参加を促進する政策となっている。前者は男女の別なく平等な開発へのかかわりを確保しようとしている点でジェンダー主流化を開発アプローチとして採用していると考えられ、米国はWIDを開発アプローチとしていると考えられる。

(3)基本的な理念の妥当性
 ジェンダー主流化が世界的な潮流となっているが、WIDイニシアティブの理念が効力を失ったわけではない。それは、「開発のすべてのセクター、すべてのプロセス、すべてのプログラムにおいてジェンダー平等の視点を統合し、すべての開発課題において男女双方が意思決定過程に参加できるようにする」ためには、女性をターゲットにしたWIDアプローチも欠かせないからである。言い換えると、WIDアプローチはジェンダー平等を実現するための1つの手段なのである。WIDイニシアティブはジェンダー主流化の中でも有効なイニシアティブである。

 しかしながら、WIDイニシアティブが3つの重点分野を持つイニシアティブであることにより、日本のWID/ジェンダーの取り組みが、これら3つの分野に限定して理解される可能性があることが懸念される。ジェンダー主流化は開発のすべてのプロセス、セクター、プログラムにジェンダー平等の視点を統合し、ジェンダー平等を実現することを目的としている。WIDイニシアティブはジェンダー平等への取り組みの1つとして理解されなければならない。

4-3-2 政策のプロセス(調査対象国)

(1)ジェンダー平等を促進するための政策協議

1) グアテマラ

女性庁
 女性庁のインタビューによれば、日本側と女性庁がジェンダー平等を促進するための政策協議を行ったことはこれまでにないとのことである。女性庁が発足する前までナショナル・マシーナリーとしての機能が期待されていた労働社会保障省女性室への支援はこれまでにほとんどない。ただし、援助の実績が少ないことについての是非を議論するためには両機関の援助の受入れおよび実施の能力を考慮に入れる必要があるが、本調査では時間等の制約もあり、分析の対象とはしていない。

他のドナーとの協調
 グアテマラではGIGAMがジェンダー主流化促進のためのドナー協調組織となっているが、日本はGIGAMに参加したことはない。

2) ホンジュラス

女性局
 ホンジュラス女性局(Instituto Nacional de la Mujer)でのインタビューによると、日本サイドとジェンダー平等を促進するための政策協議を行った事実はこれまでにない。また、日本サイドからの働きかけもなかったという。

他のドナーとの協調
 ホンジュラスでは、女性局でのインタビューによると、女性局とUNDPを中心とするUNグループが中心となってジェンダー関連法律の整備を行ってきたが、日本サイドと協調したことはないという。

(2)政策のプロセスの有効性

 ジェンダー問題は、すべての分野に関わっており、文化・社会的要因に深く関わっていることからその根も深い。1つの分野の1つの課題であれば1つの援助国で対応可能なものもあるだろうが、ジェンダー問題は全ての分野、全ての課題に横断的な課題であり、取り組みにあたっては相手国政府や他ドナーとの連絡・調整・協調が重要になる。現在のところ、日本側がジェンダー平等を促進するための政策協議や他ドナーとの協調の実績は認められない。積極的な政策協議やドナーとの協議が、今後ジェンダー主流化を促進するための課題である。

4-3-3 政策の成果(調査対象国)

(1)ジェンダー主流化の組織的側面

1) グアテマラ

 グアテマラのナショナル・マシナリーは1981年に労働社会保障省女性室(Oficina Nacional de la Mujer: ONAM)が設立されたことに始まる。政権交代による影響を軽減するために、政府の中に独立した組織として国家女性局への移行を試みたが実現できなかった。2000年には女性室とは別に女性庁(Secretaria Presidencial de la Mujer: SEPREM)が女性政策策定・指導機関として設立された。大統領府内の組織の設立は容易だが、政権が変わった場合、組織の存続が確保されないリスクを伴うため、現在、女性庁の法制化案が国会に提出されている28。女性庁は全ての省庁に女性室ができることを望んでいるが、実現に至っていない。

 女性支援に関する事業を受け持つ機関は女性庁に集約されているわけではない。女性支援は以下の組織でも行われている。

行政:女性庁、大統領夫人社会事業庁、企画プログラム庁女性諮問審議会、和平庁国家女性フォーラム、グアテマラ先住民開発基金女性班、大統領府人権委員会先住民女性護民局
  • 立法:女性、子ども、家族委員会
  • 司法:女性に対する家庭内暴力防止国家調整室
  • 政治法規制:人権訴訟代理人室女性護民局
  • 行政司法規制:公共省女性検事局、国家訴訟代理人護民局女性班
  • その他:エネルギー工業省ジェンダー班、環境自然資源省ジェンダー班、農牧食料省女性農村青年班、公共保健社会支援省女性総合保健審議会、教育省女性女子諮問審議会、内務省ジェンダー班、労働社会保障省女性室および勤労女性室

2) ホンジュラス29
 ホンジュラスでは副大統領の管轄下、1994年に政府女性室が設置された。しかし、政府は女性室に予算をつけなかったため、UNICEFが年間約4万ドルの資金を供与している。後に複数のドナー(UNDP、IDB、フランス、台湾など)が約4万ドルの資金供与を実施した。

 1996-98年にかけて女性室は予算獲得のために政府に強く働きかけ、ドナーの圧力も助けとなって年間300万レンピーラ(約25万ドル)の予算を獲得することができた。この予算を使って女性室は女性を対象とした小規模な生産プロジェクトや、市町村レベルの女性部の設置へ向けた活動を開始した30

 1999年には女性室は女性局として1つの独立した組織になり、政府は女性局に対し、年間500万レンピーラの予算をつけた。独立した組織になったことにより活動領域が広がり、スウェーデンの資金援助も得られたため、他省庁からの影響も相対的に減った。その結果、女性局の業務構造や政治的決定プロセスは大きく変化した。2000年から2001年にかけて「国家女性政策」の策定に向けて女性局と市民団体、政府組織との会合が繰り返し行われ、2000年の新政府発足と同時に公開された。2002年から2003年には女性局の予算は年間約900万レンピーラ(56万ドル)になった31

(2)政策の成果のインパクト(調査対象国)
 WIDイニシアティブの「女性の経済・社会活動への参加」の項には、支援の1手段として「女性問題関連の法律・制度の整備のための協力を行う」とうたっているが、グアテマラでもホンジュラスでもそれに該当する支援は行われていない。ただし、女性問題関連の法律・制度の整備を支援するだけでは、ジェンダー主流化には対応しているとはいえず、むしろ、そうした支援を通じて、ナショナル・マシーナリーの組織能力向上を図り、女性の経済・社会活動への参加促進が可能になるよう、法律・制度の立案のみならず、実施にまで配慮することが重要だろう。今後、ナショナル・マシーナリーと連携し、WID/ジェンダー分野に取り組んでいくことが望まれる。


1 「日本のWIDイニシアティブ」、1995年9月5日、外務省、『基本的な考え方』、第2節

2 同上『3つの重点分野』、第1節

3 同上『日本のこれからの協力』、第1節

4 WIDイニシアティブに関する内部資料は、WIDイニシアティブのフォローアップのためのタスクフォース(WID班)によるものがあるが、記録は1997年までものであり、ODA中期政策の編纂時期とのギャップがある。

5 国際協力事業団の平成7~13事業年度業務実施方針、外務省・農林水産省・通商産業省、1995~2001年

6 和平庁や大統領夫人社会事業庁への働きかけを行っている。

7 WID/ジェンダー案件の重要度については、担当職員の判断に左右される。現在の経済協力担当は、女性の重要性を個人的に認識しているため、上述のように大使館側からの働きかけを行った。草の根無償資金協力担当は、前任者から女性の重要性に配慮するよう引継ぎを受けている(大使館でのインタビューによる)。

8 1-3ページ、グアテマラで実施された女子教育関連のプロジェクトリストを参照。

9 WIDイニシアティブ発表の前に、日米コモン・アジェンダの協力分野に新たにWID分野を加えることが合意されており、WIDイニシアティブの実施にあたり、日米コモン・アジェンダの枠組みが活用され、現地での案件形成につながった。

10 元個別派遣専門家およびJICA事務所におけるインタビューによる。JICA個別派遣専門家による報告書「グアテマラ女子教育強力に関するモニター・評価の報告書」、JICA-MINEDUC, "Japon-Guatemala Actividades para la Educacion de la Nina" も参照。

11 WID/ジェンダー案件の基準については、グアテマラと同様、担当者によって大きく左右される。草の根無償資金協力の請訓表(1995-2000)には、裨益対象に女性が入っていればすべてWID案件と判断していたが、現在の担当は裨益対象における女性の割合だけでなく、女性の参加の度合い、資源へのアクセス度、決定権なども視野に入れてWID案件かどうかを判断している。

12 同上 p.33

13 同上 p.27 妊産婦死亡率の目標値は6(2000年)、乳児死亡率は34(2000年)以下、などを目標としている。

14 Plan de Accion Nacional: Desarrollo humano, infancia y juventud, 1991, Tegucigalpa, Honduras

15 本調査ではこの行動計画が入手できなかったため、「国家活動計画第1次モニタリング・評価報告書
"Desarrollo humano, infancia y juventud: Primer Informe de Seguimiento y Evaluacion del Plan de Accion Nacional", SECPLAN, Tegucigalpa, Honduras, 1994)」を参照して執筆した。

16 現在の国家開発計画(Plan de Gobierno)にもPRSPにも、女性への配慮に関する記述は開発計画全般にわたってちりばめられている(p.14, 23, 31, 41, 79, 81 特にP.81には「ジェンダー公正」という一節を設けている)。

17 JBICは両調査対象国に海外駐在員事務所を設置していない。

18 添付資料の「4. ケーススタディ国のWID/ジェンダー分野の支援における援助協調に関する補足説明」を参照。

19 添付資料に枠組みの詳細を付した。

20 カナダ側はこの案件を各機関の援助スキームで実施できない部分を互いに補完しあえた協調と高く評価している。具体的には、カナダはインフラのための資金はないが、日本の草の根無償資金スキームでは対応可能であり、反対に日本はプロジェクトに携わる現地スタッフの人件費は出せないが、カナダはこれに出費が可能である。また、カナダの担当者は日本のODAが豊富であることに言及し、カナダはジェンダーへの取り組みの知見はあるが、予算規模は小さいので、日本に豊富な資金を出資してもらいよりよい協力を実施するためにこれからも協調案件を増やしたいと語っていた。(CIDAにおけるインタビューより)

21 ホンジュラスのローカルコンサルタントの報告による。

22 JICA/MINEDUC (2000) Japon - Guatemala Actividades para la Educacion de la Nina

23 江連誠2002「グアテマラ女子教育協力に関するモニター・評価の報告書」

24 同上 p.13 表3.8参照

25 女子教育個別派遣専門家とのインタビュー、および「グアテマラ女子教育協力に関するモニター・評価の報告書」、江連誠、p.18参照。

26 同上

27 "Directrices y guia de conceptos de CAD sobre la igualdad entre mujeres y hombres", Ministerio de Asuntos Exteriores(スペイン外務省), 1998, p.39

28 女性庁側としては「和平協定履行のための実施計画2000-2004」に女性庁に関する言及があり、国連グアテマラ和平検証ミッションや国際援助機関が女性庁を強く支援しているのにもかかわらず解体することとなれば、新政権は和平協定を破ることになる。そうなれば、新政権は国民に悪い印象を与えることになるため、女性庁は存続されるであろうと考えられている。

29 以下の情報は前政権時の財務大臣であり、元女性室の室長からの聞き取りによる(ローカルコンサルタントがインタビューを実施)。

30 これらの活動は現在では1つも継続されていない。

31 この予算はドナーからの資金援助額と比較すると、特に多い予算ではない。スウェーデンの女性局に対する資金援助は年間100万ドルに達していた。




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