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3.4.2 他ドナーによる日本の対ベトナムODAの評価

 本件評価調査では、日本の対ベトナムODAに関し、世銀、アジア開発銀行、UNDP、オーストラリア大使館(AusAID)など他援助国からの評価を聞いた(詳細は次ページ以降に掲載)。言うまでもなく、日本の援助は金額、件数とも他のどのドナーに比べても大きく多彩であり、他ドナーが日本の援助の詳細について知っているケースはなかったが、道路案件や電力案件、石川プロジェクトや経済改革支援借款(いわゆる「新宮沢構想」の延長線上の支援)などの代表的なプロジェクトについては概要を知っているとともに、日本の援助実施のプロセスや意思決定の仕方についてはよく理解していた。近年、ドナーと途上国政府が協力して、当該国の開発計画(開発戦略というときもある)を策定しようという動きが広がっており、ベトナムはその動きが最も進んだ国のひとつとドナーの間ではみなされている。具体的には、ハノイに駐在する各ドナーの代表者(あるいは専門家)と、政府側省庁の代表者が議論して、国全体の開発計画あるいはセクターごとの開発計画を共同で策定するというもので、二国間ドナーの一部には、具体的なプロジェクトの実施よりも、この計画策定協力に時間と資金を投入することに比重を移しつつあるところもある。ベトナムにおいて、日本は最近になって、この動きに参加し始めたと他ドナーからは見られている。特に、インフラ分野での議論をリードしていることに対する評価が高い。しかし、日本が、他ドナーと同様に政策レベルでのドナーと政府の協議に積極的に参加することは歓迎するが、日本までもが計画策定協力に重点を移して、インフラ整備プロジェクトから手を引いてしまったら、いったいどこがインフラ整備を支援するのか?という意見が出された。これは、日本には、ドナー協調か、独自のプロジェクト援助か、という2者択一ではなく、政策レベルの協議に積極的に参加するとともに、インフラ整備支援も引き続き実施してほしい、ということである。調査団としても、今後の日本の援助は、計画協力策定に参加し支援するとともに、インフラ整備プロジェクトを中心とする従来型の援助も同時に実施していくべき、と認識している。

 また、バイの小規模なドナーやNGOが行なう草の根レベルでの協力(例えば、村レベルの医療普及)と、日本が行なう大規模協力(例えば、主要都市における病院整備)などは相互補完の関係になって効果を発揮しているので、日本が横並びで他ドナーと同じことをやらねばならない、という考えに必ずしも捕らわれる必要はない、との意見も出された。今後の日本の援助は、ベトナム政府の開発計画に基づくだけではなく、他ドナーの援助活動を含む開発全体の動きをより踏まえたものとする必要がある。

他援助機関による日本の援助に関する評価(詳細)

BOX1: 世 銀
面談者:Andrew Steer (Resident Rep.), Jesper Kamersgaard (Special Assistant), Koichi Hasegawa (Country Program Coordinator)

収集資料:世銀の過去及び現在のプログラム・プロジェクト一覧

ポイント:
(1)ベトナムのようなPost-conflict Countryではインフラ整備が極めて重要だと認識しており、日本のODAのインパクトは大きかったと認識している。
(2)日本に対する他ドナーの見方は近年、大きく変わった。政策の討議やドナー間調整に積極的に参加し始めたことが評価されている。(ただし、主に大使館及びJBICのこと。)
(3)現地事務所への決定権限の委譲は世界の流れになっており、現地で各ドナーの担当者が集まって、その場で意思決定することが多くなっている。したがって、その意思決定に参加するためにも、日本も権限委譲を進めるべき。
(4)日本が政策支援の討議に参加するのは大歓迎だが、日本が完全にシフトしてしまったら、いったい誰がインフラ整備を行なうのか? 日本は、インフラ整備支援もぜひとどまってほしい(Please stay)。(同席した担当者Jesper Kamersgaard (Special Assistant)のコメント)

BOX2: ADB
面談者:Alessaondro Pio (Principal Country Officer), Vo Truc Dien (Economist/ Program Officer)

収集資料: ADBの過去及び現在のプログラム・プロジェクト一覧

ポイント:
(1)日本のODAのインパクトは、疑いなく大きかった。金額規模と、運輸と電力開発という二つのインフラ整備に集中したことが大きい。
(2)他ドナーは、日本は重要なパートナーであると見ていると同時に、ドナー間コーディネーションがますます重要になっていると認識。従って、日本にもドナー間コーディネーションに参加してほしい、日本抜きでは十分なドナー間コーディネーションは出来ない。
(3)日本には、今後も「経済成長」を重視する政策を取ってほしい。「貧困削減」以外のことを言うのは難しい雰囲気があるが、それは正しくない。NGOやスモールなバイのドナーは、小規模な貧困削減ができるだろうが、大規模な貧困削減はできない。一方、インフラ整備+経済成長という組み合わせは、大規模な貧困削減に貢献している、と認識している。

BOX3: UNDP
面談者:Maurice Dewulf (Deputy Resident Representative), Robert P. Glofcheski (Chief Economist)

収集資料:多数

ポイント:
(1)日本のODAシステムは以前、「恐竜」と呼ばれたが、現在は変わってきた。わが道を行くという方針から、ドナー全体の政策調整に加わるようなってきており、その方向を強めるべきである。そして、ベトナムの開発の大枠、及びドナー全体としての援助の大枠を決めることになる政策討議にもっと参加してほしい。
(2)未だ日本のシステムは中央が強い権限を持っている。現地にもっと権限を委譲し、フレキシビリティを持たせるべきである。
(3)全面的に新しいシステムやアプローチを採用する前に、パイロット・プロジェクトと割り切って新しいことをやって見るべきである。それをベトナムでやってみるべきではないだろうか。
(4)インフラ整備に多大な資金供給をしてきたことに関して、他のドナーも肯定的に評価している。

BOX4:Ausaid
面談者:Sun Hee-Lee, Ph.D ( Counselor of Development Cooperation)

収集資料:AusaidのAnnual Report

ポイント:
(1)日本の援助のインパクトは大きかったと思う。また、トップ・ドナーである日本がやること(例:大型の病院建設)と、他のドナーのやること(例:村レベルの保健支援)には違いがあり、相互補完的な関係にある場合がある。その場合、日本が横並びで他のドナーと同じ方向に向かう必要はないし、日本が相互補完的な援助を続けることはいいことだ。
(2)既存のスキームをフレキシブルに運用すべき。現地事務所の決定権限を拡大すべき。日本がやっていることや今後の方向性に関する広報を強化すべき。
(3)すでにCo-finance(コモン・バスケット)一本にしたDFIDは別として、バイのドナーはプロジェクトとCo-financeを両方行なっていくべきなのだろう。ポイントは両者の比率だ。例えば、Primary EducationやPrimary Healthcareは、全国展開で金がかかるので、Co-financeでやっていくべきなのだろう、と考えている。

参考:Poverty Reduction Strategy Paper (PRSP)の進捗状況

 PRSPの作成は、IMFのPoverty Reduction Growth Facility (PRGF)および 世銀(IDA)のStructural Adjustment Credit (SAC)の下で行われている債務免除(譲許的借款)を獲得するための条件である。第7次国家開発計画(2001-05)、社会・経済開発戦略(2001-2010)、飢餓撲滅・貧困削減戦略(2001-2010)とも整合性が取られている。ベトナムでは今年3月にInterim PRSP(I-PRSP)を完成させ、2002年3月のFull-PRSP(完成版。正式名称はCPRGS(Comprehensive Paper on Poverty Reduction and Growth Strategy))を目指して取り組み中である。なお、Interim PRSP策定の際には、策定をドナー任せにせず、ベトナム政府が独自に策定した経緯があり、特筆に値する。

他援助機関による日本の対ベトナムODAに関するヒアリング(写真右がUNDP常駐代表代理)
他援助機関による日本の対ベトナム
ODAに関するヒアリング(写真右がUNDP常駐代表代理)



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