(2)ベトナム側が目指した目的と日本側が目指した目的
1)ベトナム側が目指した目的
第5次5カ年計画(1991 - 1995)では、農業分野の開発について、(1)食糧自給と米の輸出促進、(2)畜産物の増産と加工肉の輸出、(3)ゴム、綿、茶、コーヒー等の輸出作物の増産による外貨の獲得、(4)未利用地の開発と植林、(5)農村および山間部の社会経済開発、(6)国営企業及び合作社の指導的役割とその維持改善、を開発目標として記載していた。
そして、第6次5カ年計画(1996 - 2000)では、(1)食糧保障、(2)穀物、野菜生産の向上、(3)食糧の質の向上、(4)栄養失調の緩和、(5)商品作物、果樹園の生産、(6)牧畜の推進、(7)海洋、島嶼、森林における潜在性の開発、(8)生態学的農業の促進、(9)農産品加工および輸出振興のための農作物生産、(10)農村市場の拡大による農村収入の向上、(11)社会経済インフラの整備を達成することを開発目標として記載していた。
第7次5カ年計画では、「農業生産と地方経済の急激な構造転換を進める。また、天候、土地、労働における優位性を活かして特色ある農業生産地域を創出する。」(数値目標:年率4.8%以上の成長)とセクターの開発目標が定められ、さらに表に記載されたような11項目の具体的な開発目標が記載されている。
2)日本側が目指した目的
従来の国別援助方針(94年度、95年度に記載あり)において、(1)生産性向上のための農業インフラ(灌漑システム等)の整備、(2)社会経済基盤の整備が遅れている地域では農業基盤整備に社会経済インフラ整備を伴う農業適地開発、(3)ポスト・ハーベスト(貯蔵・流通・加工)の向上、(4)農業生産の多様化を図るため農業技術の開発・普及等に資する協力を援助の方針として掲げ、これらの協力により、「地方における生活水準の向上を目指す」としていた。
さらに、従来の国別援助方針を踏まえて策定された「対ベトナム国別援助計画」では、次のように記載している。「農林水産業は、経済成長の核となる基幹産業として、また貧困対策としても支援を検討していくことが重要」であり、「近年、市場経済化の導入により、コメ以外の穀類や商品作物生産の増大、果樹栽培面積の拡大、畜産及び水産業の伸び等により農林水産業セクター内 の構造変化が起きつつある。こうした構造変化は農家の多角経営化、商業性の向上に資するものであり、このような変化に対し側面支援する必要がある」として、「具体的には農業部門の生産性の向上と、農産物の市場アクセスの確保を目的とし、灌漑排水等ハード面の整備、優良品種の導入、農業技術の開発・普及、流通システムの改善、農民の組織化及び農村金融制度の整備・拡充等に対する支援を検討する」及び「農村工業化等経営多角化により、農村の余剰労働人口を吸収し、農家所得向上を図るための支援も検討していく」ことを掲げている。