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(4)日本の援助に対する提言と今後の課題

 インフラ分野における日本の援助に対する提言としては、ベトナム側の2001年からの第7次5カ年計画においても、引き続き電力、運輸を中心としたインフラ整備がトップ・プライオリティの目標として掲げられている。また、今回の現地調査における各省庁の関係者からのヒアリングでも、電力、運輸インフラ整備が重要な案件であることが指摘された。したがって、当面の間は引き続き電力、運輸インフラに対する援助を行っていくのが適切であると考えられる。また、通信分野についても通信技術が急速に発展する中で、経済・社会開発にとって重要なインフラの1つとなっており、今後この分野での援助を拡大することも検討が必要である。

 しかし、ODA予算の拡大が困難な状況において、大規模な投資を必要とするインフラ分野に対する援助を継続することは必ずしも容易ではない。したがって、ODAと民間ベースでの協力の役割分担についても検討の余地があると思われる。例えば、インフラ整備に関して、収益事業単体で民間参加が可能な事業については民間ベースでの協力にできる限り任せ、民間資本が入りにくいが、例えば工業生産の増加を下支えするインフラ分野、地方間格差縮小のための山岳地帯や農村部のインフラ整備、さらに自然災害対策等に重点を置くことが重要である。

 また、電力分野については、ベトナム電力公社は、今後電力需要が年間14~17%程度伸びることを予想しており、これに対応するためには年間14~15億ドルの投資を行う必要があると見込んでいる。世銀とADBは、新規の案件を承認する条件として電力料金を引き上げることを要求しているが、ベトナム政府側が当面電力料金を引き上げないことを決定したため、世銀、ADBから新規の援助を受けられるかどうかについては不透明であると電力公社側は見ている。もし、ODAだけでは十分な資金が集められないようであれば、民間銀行から融資を受ける必要があるが、ベトナムは高リスク国であるため、融資条件は大変厳しく、民間からの資金調達は容易でないことが予想される。したがって、日本が今後も電力分野について継続的に大規模な有償資金協力を行わなければ、ベトナムの電力インフラの整備が計画通りに進まない可能性は高い。電力インフラの整備が計画通りに進まなかった場合は、電力供給能力の不足が経済活動拡大のネックとなる可能性があるので、この点については慎重に検討する必要があると考えられる。

交通省でのヒアリング(中央右が交通省次官)

交通省でのヒアリング(中央右が交通省次官)

BOX: ベトナム財政省による日本のODAの評価

面談者:Mr.Nguyen Ngoc Hung (External Finance Department), Ms. Linh
<日本の援助についての評価>

  • 日本のODAは、最も額が大きく、ほとんどインフラ・プロジェクトに使われているので、ベトナム政府は、ベトナムの経済発展に大きな影響を及ぼしたと評価している。
  • 経済効果から考えると、日本の借款で、エネルギーや交通などのプロジェクトなど、経済効果の高いプロジェクトを実施している。日本のODAによって、ハノイを中心とする北部の道路ネットワークが完成した。例えば、国道5号線の整備(ハノイ市(首都)~ハイフォン港(北部の主要港))まで、以前は5時間かかったが、現在は1.5 - 2.0時間に短縮された。また、道路沿いの人々の生活水準も向上した。
  • 無償資金協力では、バックマイ病院という規模の大きい病院が整備され、ベトナム国民は、水準の高い治療が受けられるようになった。
<今後の円借款の活用の方針>
  • ベトナム政府としては、今後も円借款をインフラ整備に集中させていこうと思っている。投資計画省が、毎年日本に提出する要望リストもインフラ案件が上位に来ている。円借款でインフラを整備しようという理由のひとつは、インフラ整備には巨額の資金が必要であり、それを貸せるところが日本以外にあまりないこと。もうひとつの理由は、イギリス、ドイツ、フランスなどの借款と比べて、円借款はインフラ整備に関して、すでに有利な点を固めていることがあげられる。その有利な点とは、規模の大きいインフラ整備の経験を通じて、日本の入札業者が、ベトナムの下請け企業とどう協力すべきかのノウハウを蓄積した、という点である。したがって、質の高いインフラが整備されることが当然になっている。



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