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第2章 タンザニアの社会経済開発への取り組み

 

2.1 タンザニアの現況

 タンザニアは、東アフリカのタンガニーカ地域及びその沖合に位置する島国ザンジバルからなる連合共和国である。1961年にイギリスより独立し、1964年にザンジバルをあわせて現在の国家となった。国土面積は、本土が94万2,800km2、ザンジバルが2,000km2で、1999年の総人口は約3,290万人である。人口密度は平均すると1km2あたり35.4人であるが、都市部への集中が顕著である。国民はバンツー系アフリカ人が人口の99%を占め、スワヒリ語と英語を公用語としている。

 1999年のGDPは880億ドルである。タンザニアでは、GNPの約50%、労働人口の8割を農業部門が占め、農業が経済の根幹をなしている。しかし、経済活動人口のうち正規に雇用されている人口は約8%にすぎず、ほとんどが伝統的な小規模自給型農業に従事している。また、その国土は多様な生態系を有し、コーヒー、茶、綿、カシューナッツ、タバコ、サイザル麻、除虫菊等が輸出用に生産され、トウモロコシ、米、小麦、キャッサバ、豆類、バナナ、雑穀等が食糧作物として栽培されている。製造業の割合は低く、近年は観光を含めたサービス業が雇用創出の重要な分野となっている。

 1986年以降、政府はムウィニ大統領の下で、世銀・IMFの支援を得て、投資・流通制度改革、公営企業改革、公務員の削減といった構造調整政策を実施した。また、1992年には、革命党による一党支配から複数政党制へ移行し、経済構造調整と共に民主化政策が進められてきたが、紛争と内乱の多いアフリカにおいて内政は概して安定的に推移している。2000年10月には連合政府及びザンジバルにおいて大統領選挙、議会選挙等が同時に実施され、現職のムカパ大統領が再選された。経済構造改革の進展に伴ってマクロ経済指標は改善傾向にあり、1999年のGDP成長率は前年比4.7%を記録しているが、依然として一人あたりGNPが262ドル(2000年)の後発開発途上国(LLDC)である。

 タンザニア政府の最も大きな課題は、貧困の削減である。この国の貧困は、(1)独立当初に進められたアフリカ型社会主義に起因する組織や制度の疲弊と混乱、(2)その結果として起こる社会サービスの貧弱さ、(3)インフラの未整備による経済活動の低迷、(4)インフラ未整備や自然条件、国際価格の変動等に影響を受ける農業生産性の低さ、等といった多面的な要因が交錯した結果として存在している。特に貧困が深刻なのは農業部門であるが、近年では、貧困者が生活のために無秩序に資源を利用することによる環境破壊も問題となっている。

 政府は1993年に開発計画指針と中期財政政策の性格を有するローリング・プラン(RPFB: Rolling Plan and Forward Budget)を導入し、2002年までに年平均成長率6%の経済成長をめざしている。1996年のドナー会議において、タンザニア政府は、国の開発課題の重点として貧困根絶を掲げることを明言した。現在の開発の重点分野は、(1)農業基盤の強化、(2)社会サービスの改善、(3)インフラ整備、(4)人材育成、(5)保健医療サービスの向上、(6)環境等に置かれている。

 外交面では、非同盟主義及び反植民地主義という二大原則を掲げつつ、アフリカ統一機構(OAU)や国連等で積極的に活動し、我が国を含む西側諸国や東アジア諸国との関係強化に努めている。東アフリカ諸国との関係では、ケニア、ウガンダとの間で地域協力の強化に努め、これら3カ国によって、99年11月、東アフリカ共同体(EAC)設立条約が締結された。また、南部アフリカ開発共同体(SADC)のメンバーとして、南部アフリカ諸国での地域協力にも参画する等、重要な役割を担っている。



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