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[別添8:関係機関別議事録(抜粋)]

 

《1. スリランカ国援助関連機関》

【NPD】

1. NPDと日本の援助の関係

  • 日本政府からの支援は道路、通信、電力、水供給などのインフラ整備が主。また、日本の援助は自由度が大きく、他のドナーに比べて条件付けが少ないことが特徴。援助政策がより条件つけをするよう変更されるような場合には、スリランカの文化、社会・経済状況、生活状況などを充分に配慮してもらえるようお願いしたい。
2. 日本の援助政策とスリランカの開発政策との整合性
  • 政府の優先分野は、Vision 2010をもとに考えられており、中でもプロジェクトの自立発展性が強調されている。例えば道路を単に建設するだけでなく、その維持管理が重要とされている。
  • 世銀とADBは協調融資で4千万ドルを紛争地区の開発に拠出している。スカンジナビアの国々も北東部への支援に積極的である。日本の援助はまだ少ないが、人道主義的援助に合意してもらっている。紛争地域と非紛争地域では異なる政策が必要となることを念頭においてほしい。
  • プロジェクトベースではなく、セクターへの投資も重視して欲しい。例えば同一セクターの中での流用があらかじめ想定されているような支援が重要とされる。

【ERD】

1. 日本とスリランカとの協議、開発政策との整合性

  • 日本の援助分野に関する対話は、1990年代後半も年毎の政策協議で行われた。ス国の優先順位はPIPに基づくものであり、その後の両国の対話も、政策協議で合意された優先分野の結果に基づいて行われた。
2. 援助申請過程におけるドナーの選択
  • インフラ分野での支援ドナーには、JBICとADBがある。JBICは主に経済インフラ、ADBは保健や教育分野、農村に重点。ADBのSpecial Fund は譲許性が高い(金利1%)ため、社会分野や農村部のインフラ案件はADBに申請し、経済・都市部のインフラはJBICに申請することが多い。大規模なインフラ開発に対しては、他ドナーからの支援が受けられないという背景もある。また、ドナーの選択は、主要スタッフの定期会議で、過去の経験や政策、背景、金額を基に行う。
3. 政策レベルに関する対話
  • 全般に案件ベースの対話が多く、政策レベルの協議は少ない。経済成長と貧困削減とは両国で共に行われるべきであり、政策レベルの問題や戦略についての対話がより行われれば、効果的な開発計画への相互理解が深まり、それに沿ってスリランカ側も案件を申請することができ、両者にとって効率良い結果が出るであろう。

【教育省】

1.1990年代後半の教育セクターの優先課題と日本の援助の整合性

  • 当時の主要課題は、教育の質の向上。中でも、日本に対しては、教育施設・機材整備への援助が望まれた。また、「行政機関の中間管理職の育成」についての研修は非常に有益であった。南部地域の中等学校施設改善計画も、教育の質の向上と地域格差の是正に貢献するものであった。

2.海外援助要請に向けた日本や他のドナーとの対話内容と日本への要望

  • 建設業者や機材の選定供与において、日本側が業者を選定するために、現地調達の3~5倍の価格で機材が調達されるという場合がある。

【農業省】

1.1990年代後半の農業セクターの優先課題と日本の援助の整合性

  • 農家所得の向上が最も大きな課題。日本援助方針の、「主要作物の自給率の向上」という目的については疑問があるが、農村所得の向上のためのサブセクターレベルの課題については、妥当性があったといえる。また、新規設備・機械が必要な農業プロジェクトにおいては、ス政府・民間セクターによる調達が困難であるため、プロジェクトの初期投資を支援する日本の援助も、妥当性があった。

2.援助要請に向けた日本との対話内容と要望

  • 過去の援助の継続案件が選定される場合が多く、農業省からの新規分野での案件が認められにくい面がある。資機材の導入にあたっては、対象地・農家の技術水準を考慮した計画が必要であり、対話が十分であったとは言えない。

【保健省】

1.1990年代後半の保健セクターの優先課題と日本の援助の整合性

  • 医師の数は充分であったが、看護婦などのパラメディカルの数が不足していたため、医療人材の確保が急務であった。理由としては、施設が劣悪なため、専門的な医療を勉強しようとする者が少ないことが上げられる。また、コロンボ周辺と地方の保健医療の格差が大きいことも大きな課題。
  • 海外援助は建物の建設や高度機材の整備にできるだけ回したいという保健省の事情があるため、高次の病院の機材整備、保健人材の養成、地方の中核病院への支援を主に実施した日本の援助は妥当性が高かった。
  • 現在はVision 2010に明確に「治療中心から予防中心に」と明記されていることもあり、予防に向けての日本との協議も活発に行なわれるようになった。
  • 健康保険システムの導入、地方分権化、余剰公務員の削減、民間活力の導入などを骨子とする保健セクターリフォームは、今後の課題。現在行なわれている開発調査は、それらを含めた具体的な国家保健開発計画となることを期待している。
2.海外援助要請に向けた日本や他ドナーとの対話内容
  • 新しい技術や高等技術を要するものや、人材養成を主目的とするものを日本に要請することが多い。
  • 要請前に、日本の関心が良くわからない点が問題。案件の正式要請前の協議が全く行なわれないわけではないが、プロポーザルを出した後で、認められるのかどうかがわからず、半年から1年以上待たなければならない。プロポーザルを出す前に、日本の関心が公表されて、事前の協議が進んでいるようになれば、お互い効率的に案件形成ができるようになる。

【企業省】

1. 1995年から1999年の工業部門の開発課題と日本の援助

  • 当時の課題としては、(1)国際市場における競争力を付けること、(2)地方の産業の多様化、(3)後進地域である東部、北部、南部の開発、(4)スリランカに見合った民営化、があげられていた。
2. 日本の援助への要望
  • 日本の援助は民間セクターや民間プログラムへの支援が制限されているが、工業化の振興にはそれが不可欠。ADBや世銀のように、民間セクターへの支援強化が要望される。
  • 世銀・IMF等の他ドナーは、工業振興において、複数の省庁が協同しなければならないプログラムを提案している。例えばEUは労働者の管理、福祉などに関して監督を行なっている。また環境規制なども他省庁との協調が必要である。日本の援助でもそうした複数の省庁を取り込む必要のある事項にもチャレンジしていただきたい。

【コロンボ大教授】

1. 民営化・構造改革・資金流用について

  • 日本の援助は、もっと民営化や構造改革を重視すべき。しかし、世銀・IMFが主張するような政府の役割の限定には、賛成できない。効率向上が課題だ。
2. 紛争地域への支援について
  • 紛争の状況下では、開発援助と復興支援とを分けることは難しい。ドナーも、もう少しリスクを取って支援しても良いのではないか。日本の95~99年の援助政策にも、平和構築のための北部支援は入れるべきであったと考える。

《2. 現地調査時訪問プロジェクトサイト》

【鋳造技術向上計画】

1. 鋳造事業の現状

ス国には自動車産業など鋳物製品の川下産業がないため、鋳物単体での販売という市場制約がある。輸出可能な製品を作れるのは1~2社のみ。

2. JICA専門家からの意見

技術指導のJICA専門家が、センターやプログラムの運営に関して関与することは難しい。
【小企業育成計画】

1. NDBへの支援期間、SME融資の長期展望について

  • SMEからの融資需要は大きく、SMILE(I)は2年、SMILE(II)は1年と、予定を超える速度で資金を消化。E-friendも3年半で消化予定。今後も需要拡大は続くと見られる。
  • 資金を自己調達するための長期的戦略の必要性は認めるが、国内市場からの長期資金調達の金利は高く、一般貯蓄動員による資金も長期融資への利用は困難。また、政府が民間貯蓄の80%を借入しているので、民間企業に貯蓄より回せる資金も限定されているため、金利およびインフレ率が低下するまでの期間、ドナーによる支援を期待。
2. 案件形成・実施過程でのJBICとの対話
  • NDB、ス政府、JBICは、案件の詳細計画、実施メカニズム、参加銀行選択の基準など実務的な内容を主に話し合った。

【第二次ガンパハ農業総合開発計画】

1. 案件形成・実施プロセスでのJICAとの対話

  • 機材の選択も、Road Development Authorityで行われるため、スペアパーツの国内調達が難しく修理のできない機械や、農村道路建設に適さない機械の供与に関する問題が生じた。
2. 事業の効果
  • 橋建設により、農作物の市場への流通が改善され、児童を始めとする一般農民の移動も容易になった。道路維持・建設機械は、予算配分に限界があるものの、州政府管轄道路の維持を可能にした。

【ガンパハ農業普及改善】

1. AEIP(Agricultural Extension Improvement Project)の現在の活動状況と課題

  • プロ技終了後、ガンバハIRDP事務所は閉鎖され、活動は西部州農業局の管轄下にあるAEICに引き継がれて州予算により実施している。予算不足からJICA支援時と同じレベルの活動は困難だが、規模を縮小して活動を続けている。
2. 援助の効果
  • グループ活動の効果の他の農民への普及は、それほど活発ではないという意見があった。理由として、(1)グループ形成のインセンティブとなるインプット供与ができないこと、(2)作物市場の展望に農民が確信を持てないこと、(3)畑作においては灌漑管理を必要とする米作に比べグループ形成のインセンティブが小さいこと、が挙げられている。

【ペラデニア大学農学部教育機材整備計画】

1. 農学部の現在の活動状況と課題

  • 1997年設立のAgriBusiness Centerによる民間との共同研究開発による産学提携がなされている。
2. 援助の効果
  • 機材供与による教育レベルの向上がみられる。

【ペラデニア大学工学部教育機材整備計画】

1. 工学部の現在の活動状況

  • デザインセンターが、民間企業に製品設計・MCセンターを活用した加工・コスト削減や製造過程の向上へのアドバイス・試験などのサービスを実施しており、産学提携がみられる。また、機材利用による教育・研究の質の向上も伺える。
2. 課題
  • 予算削減により、MCセンター機材を含めた等が、プログラム上の問題で稼動できず修理もできない状況にある。利用状況を含め、機材の維持管理をモニタリングし、更新計画策定計画を策定するメカニズムが必要である。

【大コロンボ圏水辺環境改善計画】

1. 案件実施過程の効率性

  • 案件形成から実施までのプロセスが遅かった。理由としては、(1)日本側の決定に時間がかかったこと、(2)案件事前評価で追加データが要求されたこと、がある。
2. 課題・教訓
  • 運河へのごみ投棄に関しては、ゴミ回収を行うコロンボ市と現在協議を重ねており、水質汚染については、未処理で事業排水を行う企業に対し、法的措置・市外への移動を含めた対応、排水処理施設への融資などを検討している。不法入居者問題については、一部地域で不法入居がみられるが、管轄は土地省となっている。これら問題解決のためには、環境改善のように、様々な省庁・地方行政機関の連携が必要と考えられる。

《3. JICA・JBIC》

【JICA在外事務所】

1. JICAの案件策定過程

  • JICA・JBIC間において、開発調査と有償の連携は数多く実施されているものの、電力・道路はJBIC、教育・保健はJICA、というように大体はセクターで役割分担が決まっている。
2. JICAの国別援助方針との関わり
  • 国別援助方針は1990年の国別援助研究に基づいて作成されてから、10年間ほとんど変化していない。大きなミッションが作成したものだけに、変えづらいという事情がある。
3. 国別援助方針への要望
  • 今の国別援助方針には具体性と手段が欠如しているため、他ドナーとの協議時には、協議がしづらいことがある(その時はJICAの国別事業実施計画に基づいて協議する)。もう少し方向性を示してくれればよい(例えば、保健分野では感染症対策を重視するなど書かれているのがよい)。

【JICA在外事務所当時の職員】

1. 国別援助方針とJICAの方針

  • 国別援助方針に関しては、総花的で何が重点課題かがあいまいという印象を受ける。
  • JICAは当時からプログラムアプローチを取り入れようとしていた。国別援助方針もプログラムを作る参考にはしたが、具体的な所はスリランカ政府へのヒアリングで行なった。

【JICA在外事務所当時の職員】

1. 国別援助方針とJICAの事業

  • 国別援助方針を具体的にすることは、実施機関には大きな制限となるため、方針としてはあのレベルでよいのではないか。優先度などを先方と議論し、その下に、より方向性・アプローチを打ち出した国別援助計画があるのが理想だが、毎年そうした議論をできるかが疑問である。
2. 大使館・JBICとの連携
  • 水道、道路、下水、ツーステップローンなどではJBICプロジェクトとの連携のため、JICA専門家を置くべきだと認識されており、専門家の派遣を進めてきている。

【JBIC在外事務所】

1. 国別援助方針との関わり

  • 2001年中頃、国別援助計画の作成のため大使館からコメント依頼があったため、特にインフラ・鉱工業の草稿へのアイデアをJBICから提出した。(保健医療と教育はJICAがアイデアを提出)。
  • ス国においては、経済協力関係の3者(大使館、JBIC、JICA)のコミュニケーションが伝統的に良い。3者協議では、治安、新規案件、援助方針などが継続的に話されている。だが外務省の国別援助政策には分野しか書かれていないため、ス国との対話時に用いることはない。
2. JBICとス国側の政策協議
  • JBICの方針は十分明らかになっていると思われる。現在の国別援助方針は包括的であり、現場としてはその範囲で案件形成ができる面がある。
3. その他
  • スリランカの場合、日本、ADB、世銀が突出して大きいドナーである。日本は経済・社会インフラが中心、世銀は保健や教育、ADBはインフラもあるが教育も保健もやるという棲み分けができている。だが、金額の大きいものは協調融資を想定しており、また地域で分ける場合もある。

【JBIC当時の状況を知る職員】

1. JBIC国別事業実施方針を策定した理由

  • 外務省の国別援助方針は包括的であるため、JBICとして分野を絞り込み、開発課題の捉え方を明示する必要があった。
2. 国別援助方針をよりよいガイドラインにするための施策
  • 日本国民の援助に対する関心の高まりに対応し、より説明責任を明確にするために、援助の目的や意義を明確にし、重点セクター・サブセクターのより戦略的な絞込みをすることが必要。

《4. 対スリランカ主要ドナー》

【ADB】

  • 日本による経済インフラ支援は、ス国のニーズに見合うものであり評価される。しかし、収益性が見込まれ、民間運営が可能な案件(例:電力・空港)までも低利融資で支援するのは、ス国政府の効率の向上を妨げ、構造改革を遅らせる可能性があるのではないか。ADBが民活導入を進める道路セクターについても、日本により低利もしくは無償でメンテナンス機械を供与されると、構造改革に逆行することになる。ス国の改革プロセスと整合する形での実施が望まれるが、セクター別支援、Private Sector支援に対する考え方の違いが生じているため、日本との調整が難しいという面もある。
【CIDA】
  • 北東部和平支援の、日本大使のリーダーシップを評価している。日本との協調が難しい分野としては、紛争地域での援助が挙げられる。日本は「紛争地域外」の支援という立場を取ってきたが(援助には、1)紛争地域内、2)紛争地域周辺部、3)紛争地域外の3つのアプローチがあると考えられる)、ドナーとの対話が重ねられる中で、「紛争地域内」での援助に移ってきている。
【DFID】
  • 日本は、ス国に対する最大ドナーとして、もっとオープンに対話を持つべきである。
【UNDP】
  • ス国での最大ドナーであるにも関わらず、これまで紛争地域への支援には積極的でなかったが、現在は、JICA・JBICミッションもUNDPを訪問しており、大分変わってきているようだ。特にJBICは、マイクロファイナンス案件の北部・北東部地域での活用をUNDPと協力してできないか、問い合わせてきている。また、現日本大使の開発フォーラムやドナー調整でのイニシアティブも評価している。
【USAID】
  • 日本の援助は、ス国政府との共同実施、大きな建設コンポーネント案件の多さ、が特徴だろう。これは、USAIDでは難しく、他のドナーが出来ない所を補完しているといえる。
  • USAIDでは、ADB・WBと多くの協議を行っている。彼らの実施過程は遅いので、USAIDが技術協力や調査を担うことで、プロセスを迅速化できる。JBICとの連携の可能性も視野に入れている。
  • 日本が、貧困削減よりも経済成長を重視しているとしても、日本の専門・技術がそこにあるのであれば良い。各ドナーが能力を最大限に生かすことが重要である。
【GTZ】
  • 日本は最大の二国間援助を行っており、インフラ整備など、ス国に必要な支援を続けていると思う。多額の借款を実施しているのだから、制度や政策の改革に関し、ス国政府によりプレッシャーをかけても良いのではないか。また、他のドナーとの経験の交換を進めるのもいいのでは。


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