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2. 具体的な改善提言

前ページの「表4-1:重点課題の実現度と改善に向けての対策」の中で示された「改善に向けての対策」は、以下の5項目である。

1)「国別事業実施計画」に沿った形での専門家派遣の推進

2)受入機関の専門家に対するニーズの明確化

3)専門家事業の目標の明確化・評価の適正化

4)専門家の派遣準備の充実

5)語学力や専門性などの総合的に質の高い専門家の確保

表4-1の重点課題の実現度において課題の5と6の評価が相対的に低いが、重点課題「6.成果の実現」には対策4項目がすべて関連するため、各対策の間に明確なプライオリティの差はない。

また、制度変更の必要性や準備に要する時間などを考慮し、以下では、短期的導入対策(2年以内に導入すべき対策)と中長期的導入対策(3~5年をかけ導入すべき対策)の2種類を設定した。各対策の具体的な内容は以下の通りである(重点課題と対策の全体像は、本項最終ページの図に示されている)。

1)「国別事業実施計画」に沿った形での専門家派遣の推進

援助の現場では、専門家派遣事業を含む個々の協力案件が点としての協力にとどまり線や面の協力に必ずしも展開していないとの認識がある。こうした事態を打開するため、現在、国別事業実施計画にプログラム・アプローチが導入され、重要な援助課題に対する個々のスキームの連携が図られつつある。こうした連携の一つのあり方として、国別事業実施計画の策定によりある援助の受入国にとっての重要な開発課題を設定した後、その中の特定の課題に対し、開発調査・プロジェクト方式技術協力(民間企業も活用)と専門家派遣事業を例えば以下の図のような形で連携させることが考えられる。これにより受入国の産・官・学を一体化させ、より広範囲な受益者にインパクトを与えることが期待できる。

(例)裾野地場産業育成のためのプログラム・アプローチ

以下では、援助の対象国において自動車・家電産業等の基幹産業を支える周辺製造業(裾野産業)を地場産業として育成するため、まず、これをテーマとした開発調査が実施され、その成果品としての具体的な開発計画を受けてプロジェクト方式技術協力が実施されることを示している。プロジェクトの実施時に同時に相手国政府にも日本から専門家がアドバイザーとして派遣される。これにより、プロジェクトの成果が政策に反映され、逆に政策がプロジェクトに反映されることになる。また、プロジェクトに多様な組織が参加し、かつ地方でも関連した活動が実施される。このように複数のプロジェクトを組み合わせたプログラムとしての取り組みにより、個々のプロジェクトの成果が限られた受益者にのみ享受されるのではなく面的に広がることが期待される。

裾野地場産業育成のためのプログラム・アプローチ

2)受入機関の専門家に対するニーズの明確化

【骨子】なぜ当該専門家が必要であるかという受入機関のニーズを事前に期待効果の面で明確に示すと共に必要とされる専門家に対する要件をより明確に出させる。

短期的導入対策

(1) 既存のA1フォーム(専門家派遣要請書)に記載されていないが必要と思われる項目に関する専門家受入機関による情報提供を徹底させる

A1フォームに以下の内容を含む参考資料の添付を義務づける。
  • 専門家受入の期待効果(専門家を受け入れて技術移転や指導や受けた結果としてどのような効果が期待できるのか)とその重要性
  • 専門家に期待される学歴要件
  • 専門家に期待される語学力水準
  • 受入機関の組織図に関連付けたC/Pの職位の説明
  • C/Pの能力・技術・知識レベル(学歴)に関する情報

(2)B1フォーム(派遣専門家経歴書)の全ての項目への記入を徹底させ、かつ早期に受入機関に提示する

B1フォームの要求する情報が必ずしも適切かつ十分に記載されていないケースが散見されるため、チェックリストを使い記載を徹底させる(派遣支援部で各省に協力を依頼しているが、これを徹底させる)。
受入機関から早めに正式要請書を取り付けかつ専門家候補者の選定を円滑に進めることにより、B1フォームの専門家受入機関への送付時期を早め、JICA派遣支援部での候補者の決定後すぐに先方に通知できるようにする。

(3)複数候補者制度(受入機関に複数の専門家候補者を提示する)を検討する

この制度については、実際に海外でGTZ(タイ事務所)による実施の例があり、専門家の受入機関からの導入の希望も強い反面、日本側の省庁や民間企業の人事システムになじまないとの声もあるため、以下のような補足調査により導入の是非を検討すべきである。
  • GTZおよび他ドナーでの実施状況
  • 日本側の省庁・民間企業などでの実現可能性
  • 実施のメリット・デメリットの比較

註:本改善策は、下記の重点課題の「4.語学力や専門性などの総合的に質の高い専門家の確保」にも対応する。

中長期的導入対策

(1) 専門家派遣に必要な全ての費用のうちごく一部分を専門家受入機関にも負担させる制度を導入する:本対策は、専門家受入国に真にニーズの高い専門家を要請させる意味があり、また以下の「3)専門家事業の目標の明確化・評価の適正化」を実施する上で有効な対策と言える。

相手国の開発状況、援助の必要性を考慮して3段階(例:「低所得国」「低中所得国」「高中所得国」以上*)に分け、上の2段階に所属する国の専門家受入機関に対し、専門家派遣費用全体の例えば5%・10%程度の負担(これまでにも受入機関により提供されている執務室や秘書の提供といった便宜の費用は算入しない)を専門家の業務費(活動経費)支出のような形で求める。これにより、必要性の少ない専門家は自動的に排除され、また受入機関がより厳密な事業評価を行うことが期待できる。
なお、受入機関によってはこうした費用負担の導入以前に技術協力協定などで定められた専門家の現地経費を負担することが困難な場合があるが、本施策の主旨は、これまでの受入機関側の実態としての費用負担(上記のこれまでの便宜供与)に上乗せする形での負担を求めるということであり、場合によっては、本来先方が負担すべきであった費用の負担をより徹底させるという形での実施も考えられよう。

*註:DACによれば、「低所得国」「低中所得国」「高中所得国」の定義は、以下のとおりである。
「低所得国」:1995年の1人当たりGNPがAtlas basis で$766未満(LLDCを除く)
「低中所得国」:1995年の1人当たりGNPがAtlas basis で$766~$3035
「高中所得国」:1995年の1人当たりGNPがAtlas basis で$3036~$9385
ちなみに今回の調査対象国では、タイとフィリピンが「低中所得国」にメキシコが「高中所得国」に該当する。

(2) A1フォームの内容を先方のニーズが明確になるよう充実させる

上記の短期的導入対策の(1)のA1フォームへの添付資料の内容をA1フォームの本体に取り込む形で、A1フォーム自体を改訂する。

(3) 派遣専門家評価委員会(仮称)による評価体制を導入する(詳細要検討)

以下のようなような役割を持つ「派遣専門家評価委員会(仮称)」を設立する。また、同委員会の構成員には、外務省・JICA以外の外部の人材も含める。
  • 専門家派遣制度全体の評価
  • 個々の専門家派遣事業の評価(例:長期にわたって定着している専門家派遣事業の評価を実施する)

註:本改善策は、下記の重点課題の「3)専門家事業の目標の明確化・評価の適正化」にも対応する。

3)専門家事業の目標の明確化・評価の適正化

【骨子】専門家の派遣をひとつの事業としてとらえ、専門家派遣事業の評価を専門家自身の評価とは切り離して行う。また、評価においては、事前に目標を明確に設定することによる目標管理を導入するとともに、専門家本人やJICA事務所の視点だけでなく受入機関の見方を反映した相手方との共同評価を行う。

短期的導入対策

(1) 専門家派遣事業の目標を明確化する

既存の専門家のWorkplanを充実させ、活動計画のみならず、中間時点での成果品や最終的な目標さらには最終的な目標が貢献するところの上位目標を記載する。また、目標の設定においては、できる限り定量的あるいは具体的な記述を行なうようにする。なお、Workplanは、JICA本部においても、学識経験者や国際協力専門員によりレビューされることが望ましい(特に技術面)。

(2)事前・中間・終了時の3時点で専門家事業評価を実施し、作業を日本側だけでなく相手方と共同で行なう:「専門家事業評価の適正化」は、複数の重点課題にかかわる対策であり、本対策はその中でも中心的な対策であるから重要度は高い。

いわゆるDACの評価5項目の視点を活用した事前・中間・終了時評価を行う。それぞれの評価の実施方法は、以下の通り。

a. 事前評価
(時期)専門家派遣の検討時
(主体)日本側(JICA)
(項目)当該専門家派遣の必要性・重要性を確認するために、特に地域部で実施する「専門家派遣要請案件のJICA総合評価」の際に当該専門家事業に関する計画の妥当性・目標達成度・効果・効率性の4項目評価を行う。想定される各項目の視点は以下の通りである。

  • 計画の妥当性:専門家の業務は、国別援助計画及び国別事業実施計画の重点課題に関連するか、他のJICA事業との関連性はあるか、当該案件に長期専門家というスキームが最適であるか
  • 目標達成度:当初目標は明確に設定されているか、当該技術分野で日本に優位性はあるか
  • 効果:専門家の派遣は、結果的に相手国に重要な効果をもたらすことが期待できるか
  • 効率性:目標達成のために長期専門家派遣は最も効率的なスキームと考えられるか、外国人(第三国専門家)や現地専門家の活用の余地はないか
b. 中間評価
(時期)長期専門家の場合、6ヶ月あるいは四半期毎に実施する。
(主体)第1段階として専門家(自己評価)と受入機関(主要なC/Pとその上司)が別々に行い、さらにJICA事務所と援助の窓口機関がその内容を確認する形で行う。
(項目)事業の評価と専門家個人の評価(下記の短期的導入対策(2))とは別個に行う。事業の評価は、Workplanに工夫を加えたもの(1枚目には活動項目のみならず目標指標・実績欄を設け、2枚目に目標達成度の原因分析の欄を設ける)を用いて行い、目標の達成度とその原因(背景)分析に重点を置く。Workplanに関しては、メキシコにおける聞き取り調査で活用した次々頁の例を参照されたい。
なお、活動計画書の作成にあたっては、これが実際の活動から柔軟性を奪わぬよう注意が必要である。具体的には、活動の成果や派遣期間全体の事業目標を実現するためには、環境変化に対応した活動の組み替えや変更を認めるべきである。

c. 終了時評価
(時期)長期専門家の場合、任期終了の6ヶ月あるいは四半期前に実施する。
(主体)中間評価と同じ
(項目)Workplanを用いた目標達成度・原因分析(主に専門家・受入機関が行う)に加え、その他3項目の評価も行う(主にJICA事務所と援助の窓口機関が実施)。また、JICA事務所と援助の窓口機関は、今後に向けた提言(案件の廃止・継続等)も行う。なお、評価結果は、JICA本部においても、学識経験者や国際協力専門員によりレビューされることが望ましい(特に技術面の評価)。

(3)専門家事業評価と区別した形で専門家自身の評価を実施する

専門家派遣事業とは別個に専門家個人の評価を以下の形式で行う。本評価は、現在JICAが実施している事後的な専門家評価に近いが、審査項目が多い点、専門家受入機関への聞き取り調査を制度化している点が異なる。
(時期)長期専門家の場合、任期終了直前に実施する。
(主体)JICA事務所が受入機関への聞き取り調査を行った上で実施する。必要に応じて、専門家本人に対しても聞き取りを行う。なお、専門家の技術力については、各種報告書等に基づき、JICA本部で国際協力専門員や外部の学識経験者による補足評価を行なう。
(項目)語学力・コミュニケーション技術・技術力(赴任していた案件での期待された業務に対しての相対的な評価)・異文化対応能力/社会性・マネジメント能力について行う。個々の評価結果は総合して3段階評価を行い、極めて優秀である場合は、優先的に専門家の案件情報を提供するなど今後の当該専門家の採用促進を図り、逆に極めて問題である場合は、現行のように次回の審査・採用を慎重に行う。

参考資料:調査員が聞き取り調査で示した評価・モニタリングの書式-"Format of Workplan"(PDF)

4)専門家の派遣準備の充実

【骨子】新たに長期専門家が派遣される場合には、JICA在外事務所が受入機関を訪問し専門家の受入体制を十分に行い、またJICA本部は、新規派遣であるかどうかにかかわらず、専門家派遣の適切な事前準備を行う。

短期的導入対策

(1) 専門家の事務所や執務のための機材の状態など受入体制の確認をJICA在外事務所がより徹底して行なう

以下の事柄を徹底する。
  • 新たに長期専門家が派遣される場合には、JICA在外事務所が受入機関を訪問し、機関(部署)の長や将来のC/Pと面談し、専門家受入の体制について、特に期待される役割が明確であるかどうか確認する。
  • 新規派遣か否かにかかわらず、JICA事務所は、将来の専門家のC/Pの存在や執務室・事務機器が適切であるかどうかを確認する。

(2) 派遣前研修の評価をしっかり行ない研修内容をさらに充実する

a. 派遣前研修の質の向上・維持のために、研修受講者を中心とした研修の事後評価をしっかりと行ない、専門家候補者のニーズに応える実用性の高い研修とする。事後評価では、研修直後の評価のみならず一定期間を経た事後評価の導入も検討する。
b. 特に初めて派遣される専門家については、機材の携行に関して早目にアドバイスする。税関での引き取りなどの際に起こりうる問題の予防方法についても指導する。
c. 専門家事業を成功させるためには、いわゆるプロセス・マネジメントのスキルが重要であるため、これを学ばせる研修機会(講義・演習・教材)をより充実させる。

5)語学力や専門性などの総合的に質の高い専門家の確保

【骨子】専門家の審査基準の明確化・適正化により質の高い専門家が選定されるようにし、公募・登録制度の充実により高い能力を有する専門家の母集団の拡大を図るとともに、実績を残した専門家に対してはその再登用を促進する。また、専門家の派遣待遇の改善によっても優秀な専門家の母集団の拡大を図る。

短期的導入対策

(1) 専門家選定における審査項目と審査方法を省庁派遣の場合もJICAが行なっているレベルに合わせる:本対策は、専門家の質を高める各種対策の中でも要の対策であり、重要度は高い。

JICAの派遣支援部の適用している以下のような審査項目を標準化し、省庁推薦の場合も、各省庁の選考において適用されるよう協力を求める。(註-太字は、JICAでも未実施の項目
  • 語学力:国総研で実施される語学試験に基づいた既存の派遣基準(*註)を適用し、採用にあたっては語学力証明を義務付け、不確かな場合は上記語学試験で一定の水準に到達することを義務付ける。なお、プレゼンテーション(下記参照)を現地側で必要とされる言語(例:英語)でも行なわせることにより、語学力の実用面を補足的に審査する。

    *註:派遣基準

    ランク 点数 業務区分 語学力水準(目安)
    A 180-300 アドバイザー、リーダー、調整員 英検準1級レベル
    B 150-300 一般 英検2級レベル
    C 100-300 職能重点分野 英検3級レベル
    D 100未満 不合格(派遣延期)  

  • 語学以外のコミュニケーション・スキル:専門家候補者(プロ技の業務調整員や企画調査員を除く)に対しては、単なる面接ではなく、「業務企画書」(*註)によるプレゼンテーションを実施する。プレゼンテーションでの説得力・わかりやすさでみる。
    *註:案件の背景・活動内容を踏まえた上で「技術移転項目と達成目標」「技術移転の方法」「活動のおおよそのスケジュール」をA4版で3枚程度にまとめたもの。現在JICA派遣支援部では、公募の専門家全員と登録専門家(技術判断が必要な案件)の面接で活用している。業務企画書は、JICA職員・専門家(学識経験者)により採点され、選考の判断材料となる。
  • 技術力:学歴、資格(特定の技術力の証明)、執筆論文などで審査する。
    註:論文審査は、例えば、国際協力総合研修所の専門員により実施することが考えられる。
  • 学歴:A1フォームの情報により必要な水準を特定する。
  • 職歴:同じくA1フォームの情報により、特定の分野における最低10年、15年の適当な業務経験(含む海外での経験)というような要件を設定する。
  • 異文化対応能力・社会性:海外での経験(業務もしくは留学)やプレゼンテーションや面接での質疑応答ぶりで判断する。
  • マネジメント能力:管理者としての過去の経験(部下の統括業務、部下の数等)やプレゼンテーション・面接での質疑応答ぶりで判断する。特にプロジェクトのリーダー候補者や政策アドバイザー型専門家の場合には本項目を重視する。
なお、プロ技におけるリーダー(チーフアドバイザー)のような職種の場合は、できれば赴任の前に相手側実施機関との面談により双方が技術協力のパートナーとしての相手側の適格性を確認することが望ましい。候補者選考の最終過程での先方機関訪問が理想的であるが、それが難しい場合には、プロジェクト実施前の短期調査などにリーダー候補者が参加することをルール化することを提案する。リーダー候補者がこうした調査に参加し、実際に相手側とプロジェクトの進め方などについて議論を行なう形で相互面接を行なう。そしてJICA職員(調査団員もしくは事務所所員)が候補者と先方機関の双方に事後的に確認を行ない、仮に相手側がリーダーの受入に強い難色を示した場合には、候補者の再検討を行なうべきであろう。

(2)専門家の選定において、同一案件に対して省庁推薦の候補者とJICA推薦の候補者の両者を比較検討できるようにする

(1)で提案した審査基準・方法の標準化をより徹底し、また各省庁の業務負担を軽減するため、現在個別に行なわれているJICA推薦と省庁推薦の選考の最終過程をJICAで一括して運営管理する。具体的には、以下のように2段階で実施する。
  • 第1段階:省庁推薦の最終選考で候補者が少数に絞り込まれた時点でJICAが選考を引継ぎ、上記のような業務企画書を用いたプレゼンテーションを行ない、他の情報と合わせた総合判断で最終候補者(基本的には1名、場合によっては2名)を選定する。
  • 第2段階:JICA推薦の適用枠を順次拡大し、職種によっては、選考の最終段階で省庁からの候補者とJICAの候補者とを合わせて審査する。審査は、やはり上記のような業務企画書を用いたプレゼンテーションを行ない、他の情報と合わせた総合判断で最終候補者(基本的には1名、場合によっては2名)を選定する。

(3)公募・登録制度の積極活用(人数を増やす)

現在、公募・登録制度からの専門家の登用は、少数に留まっているが、これを順次拡大し、競争原理の適用により専門家全体の質の向上を図る。公募・登録制度の積極活用は、上記(1)の対策と同時に導入すべきである。

なお、公募制の活用については、下記のような点について留意することが必要である。
1)指導分野によっては、公募型がなじまないあるいは慎重な検討を要する場合がある。例えば、資金協力案件の形成に関与しうる位置にあり、高い中立性が求められる場合、行政機関に対して行政制度の運営にかかる指導を行う場合はむしろ公務員が専門家として派遣されることが望ましいケースもある。
2)公募型専門家は、高水準の人材が確保される可能性もあるが、組織のバックアップが期待できず、十分な成果が発揮できないことや、ロイヤリティーが低く、派遣先組織とのミスマッチが生じる危険性もある。従って、その評価とパフォーマンスの向上方策(組織的支援策等)については引き続き検討を要する。

(4)専門家の供給源を多様化する(外国人や現地専門家の活用・国内援助人材の育成)

優秀な専門家の登用とコスト効率性の向上を目的とした以下のようなルートでの専門家雇用を拡大する。
  • 外国人(第三国専門家)の活用
  • 現地専門家の活用
  • 協力隊OBやNGOスタッフに対する研修制度の充実による国内援助人材の育成(上記の人材登録とも連携させる)

(5)短期専門家(技術費付)の積極活用(人数を増やす)

民間からの優秀な専門家の採用が困難である背景のひとつとして、派遣する側の企業にとっての財務面でのメリットが少なく(民間企業派遣専門家に対する聞き取り結果により確認)また本人が長期間不在となることによる企業本体への悪影響が大きいことが指摘される。従って、短期専門家の優位分野や実際のニーズ分析を行った上で、現行の公示制度を活用した短期専門家(技術費付)の積極活用をはかる。その際、短期専門家(3ヶ月以上)についても、長期専門家の評価制度に順ずる形での事後評価および専門家評価を導入する。

(6)高い能力を有する専門家に対する優遇制度の導入(手当の改善など)

事後評価の結果極めて優秀と判断された専門家に対する以下のような優遇制度を導入する。
  • 手当の加重
  • 将来の専門家案件情報の積極的な提供
  • 長期的な雇用契約の導入の検討

中長期的導入対策

(1) 専門家の報酬制度を減り張りのきいたものにする(職務の困難度や人材需給を反映した木目細かな報酬制度にする)

現行の専門家の報酬制度は年功序列色が強いため、各企業で中核的な役割を果たしている人材を採用しやすいような報酬体系の導入を検討する。また、職務の困難度・人材調達の難易度などを反映した報酬制度とする。

専門家派遣事業のあるべき姿実現に向けての重点課題と対策(PDF)



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