1. 事業の統計的な傾向把握*
経費実績は1979年度以降増加傾向にあり、1980年度に100億円を超えた後1999年度には411億円となっている。JICA予算全体に占める専門家事業(経費)実績の割合は7-12%で推移しており、特に1994年以降は11-12%と専門家事業の比率が高くなっている。派遣実績を人数でみると、1955年度の専門家派遣事業開始以降ほぼ一貫して増加し続け、1999年度までの専門家派遣総数は5万8509人となっている。1999年度には4003人が派遣され過去最高の派遣数となった。
スキーム別(個別・プロ技・その他): | 1999年度までに派遣された総派遣数5万8509人のうち52.2%がプロ技専門家、43.4%が個別派遣専門家である。1970年代までは個別派遣専門家の方がプロ技専門家派遣数を上回っていたが、1980年代以降プロ技の派遣数が上回っている。 |
期間別(長期・短期):1981-99年度に派遣された専門家総数4万7889人のうち、76.8%が短期専門家、23.2%が長期専門家である。1981年度から99年度までの派遣人数の伸び率は、長期専門家の場合1.9倍、短期専門家の場合2.6倍と、短期専門家の伸び率の方が大きい。
所属分類別(公務員等・民間等・JICA関係者1):民間出身の専門家は、94年度に公務員出身の専門家数を上回り、その後緩やかな伸びを示している(99年度1904人)。公務員出身の専門家派遣数は1993年度から97年度にかけて減少する傾向にあったが、97年度以降は比較的大きな伸びを示し、民間出身の専門家の数に近づいている(99年度1890人)。JICA関係者の派遣人数は、毎年200人前後となっている。
推薦省庁別(各省庁・JICA):1990年代に派遣された専門家3万445人のうち、25.9%がJICAから、74.1%が中央省庁からの推薦を受けて派遣されている。このうち、農林水産省推薦の専門家の派遣総数全体に占める割合が14.9%と最も多く、以下旧文部省(13.9%)、旧通産省(12.5%)、旧建設省(7.3%)、旧運輸省(6.2%)と続く。
事業区分別:1955年から99年まで、すべての事業区分で派遣人数は増加しているが、増加が著しい分野は、農林・水産、公共・公益事業、保健・医療の諸分野となっている。また、1990年代の特徴として行政・計画分野での派遣人数が比較的大きく増加していることが挙げられる。
全般:1990年代に派遣された専門家3万0445人のうちアジア地域に派遣された専門家が圧倒的に多く、全体の60.2%を占めている。次いで中南米(19.9%)、中近東(8.9%)、アフリカ(7.3%)、欧州(2.0%)、大洋州(1.6%)の順である。
アジア地域:1990年代にアジア地域へ派遣された専門家の数は1万8339人と最も多く、またどの年度においても派遣数は最も多くなっている。1990年代でみた場合、公務員出身の専門家派遣数が民間出身の専門家数を上回るのはアジア地域だけである。また、他地域と比べた場合、短期専門家の占める割合が80.1%と著しく高く、さらには、省庁の推薦を受けた専門家の占める割合が77.9%と最も高い。
中近東地域:1990年代に中近東地域へ派遣された専門家の数は2723人となっており、全体に占める割合はあまり高くない。1990年代の派遣人数は毎年150-250人程度で推移している。中近東地域への専門家派遣の特色は、スキーム別の個別派遣の割合が40.3%、その他専門家派遣の割合が12.2%と、他地域と比べた場合、最も高い点であり、また、所属分類別でみた場合にも、民間に所属している専門家の割合が54.0%と最も高い。
アフリカ地域:1990年代におけるアフリカ地域への専門家派遣数は2214人である。同地域への専門家派遣の特色は、1990年代をみた場合、プロ技専門家の派遣割合が58.4%と、他地域と比べても最も高いことであり、また長期専門家の割合が34.6%と他地域のいずれよりも高い。さらに、JICAの推薦を受けた専門家が他地域と比べた場合最も多いこと(37.7%)及び事業区分別において、農林・水産分野の専門家の割合が33.2%と目だって高いことも特徴と言える。
中南米地域:1990年代における専門家派遣人数は6070人とアジアに次いで多い。他地域と比べた場合の中南米地域に対する専門家派遣の特徴は、スキーム別における「その他専門家」の派遣人数の割合が10.9%と中近東地域に次いで高いこと、及び事業区分別において、農林・水産分野における派遣割合が31.9%とアフリカ地域に次いで高いことである。
今回現地調査の対象となっているのは、タイ・フィリピン・メキシコの3国である。これら3国に対する専門家派遣は、概ね所属する地域(アジア・中南米)と同様な傾向にあるが、具体的には以下のような特徴がある。
タイ:1990年代にタイに派遣された専門家の総数は、国別でみた場合3239人ととても多い。アジア地域全体と比較した場合のタイへの専門家派遣の特徴は、スキーム別においてはプロ技専門家の占める割合が62.1%、また、所属分類別においては、公務員出身の専門家の割合が54.3%、そしてさらに、中央省庁からの推薦割合が87.1%といずれも高いことである。
フィリピン:1990年代にフィリピンへ派遣された専門家の総数は2038人となっている。アジア地域全体と比較した場合、フィリピンへの専門家派遣の特徴は、スキーム別において個別専門家派遣の占める割合が42.5%と高いこと、さらに、事業区分別でみた場合、公共・公益事業の占める割合が高いこと(30.6%)である。
メキシコ:1990年代にメキシコに派遣された専門家の総数は763人と、タイ、フィリピンに比べると少ない。中南米地域全体と比較した場合のメキシコへの専門家派遣の特徴は、スキーム別においてプロ技専門家の占める割合が61.3%、また所属分類別においては、民間出身の専門家の割合が54.7%と高いこと、さらに、中央省庁からの推薦割合が84.9%と著しく高いことである。さらに、事業区分において、公共・公益事業の占める割合が31.3%と高い。
なお、次ページの表1-1に全地域・地域別・国別の角度別の専門家派遣傾向を整理した。
表1-1 1990-99年に派遣された専門家の各角度別割合(単位:%)(PDF)
*本章で用いられる用語、及び統計データに関する定義・詳細情報を、巻末の添付資料1.に記載した。
本ページから22ページに掲載されたグラフは、JICAの所有するデータベースに基づいてまとめた。
1 JICA役職員、国際協力専門員、JICA特別嘱託及びJICA専門技術嘱託を意味する