(2) 協力隊事業の3つの目的
図2-10は、協力隊事業の3つの目標に対するそれぞれの重要度を派遣中隊員と帰国隊員を比較して示したものである。「A.相手国の社会・経済発展への寄与」では、“重要”と“やや重要”の合計は派遣中隊員が80%、帰国隊員が78.6%、「B.国際交流・二国間の関係の増進」では派遣中隊員が86.4%、帰国隊員が90.3%、「C.日本の青少年の人材育成・日本社会への還元」は派遣中隊員80.8%、帰国隊員が78.2%であった。また明確に“重要”と回答している割合は、“やや重要”を加えた結果とほぼ比例しているが、より顕著に3つの目標に対する重要度に相違が表れている。この結果からは、協力隊員にとっては、3つの目標ともにほぼ“重要”と位置づけられているが、その重要度はA.相手国の社会・経済発展への寄与、C.日本の青少年の人材育成・日本社会への還元、B.国際交流・二国間の関係の増進、の順に高いと言える。但し、A.とC.の目標については、“あまり重要でない”“重要でない”と回答している割合がほぼ2割存在している。
A.相手国の社会・経済発展への寄与
上記の結果を派遣国別にクロス分析した場合(図 2-13と図 2-14)、「A.相手国の社会・経済発展への寄与」が“重要”と回答している帰国隊員は派遣国がアジア地域(46.3%)や中東地域(43.8%)に多いが、派遣中隊員ではアフリカ地域(43.3%)、中南米地域(42.6%)に多い結果となった。帰国隊員と派遣中隊員では派遣状況が異なるため一概にこの結果を比較することはできないが、帰国隊員と派遣中隊員の相違点を派遣時期と捉えた場合には、近年アジアや中東地域については技術力が上向いてきているが、アフリカ地域や中南米地域については相変わらず経済・社会状況が厳しいことを反映した結果とも言える。
また、図 2-15の示した参加形態別(新卒、退職、現職参加)では、現職参加の方がA.を“重要”と回答する割合が高く、新卒は低い。例えば帰国隊員の中で現職参加はA.を“重要”と回答している割合は50%、“やや重要”を加えると約9割近くなる。この傾向は派遣中隊員も同様である。現職参加隊員の方が自身の有する“技術や知識を移転したい”という意識をより強く頂いて参加している傾向が強いと分析できる。
B.国際交流・二国間の関係の増進を地域別
図2-16、図2-17は、B.国際交流・二国間の関係の増進を地域別に分析した結果である。ここでB.を“重要”と回答している帰国隊員は派遣国が中南米地域(59.3%)、中近東やアフリカ地域に多く、逆にA.で“重要”と回答していたアジア地域が46.3%と一番少なくなっている。また、派遣中隊員では派遣国がアジア地域(57.8%)の隊員がB.を“重要”とする割合が一番多く、逆にA.で“重要”と回答していたアフリカ地域(44.3%)や中南米地域(44.2%)の隊員が少なくなっている。
つまり、A.とB.の目標を協力隊員の派遣国別に分析するとA.で“重要”と回答している地域の隊員は、B.の目標に対しその重要度を低くし、逆にB.の目標で“重要”と回答している地域の隊員は、Aの目標では重要度を下げている。AとBの目標は反比例傾向にあるといえる。
C.日本の青少年の人材育成・日本社会への還元
「C.日本の青少年の人材育成・日本社会への還元」に対する重要度については、参加隊次と参加形態に対してクロス分析を行った。
参加隊次別では、退職と現職参加に比べ新卒の参加者が派遣中隊員、帰国隊員ともに“重要”または“やや重要”と回答する割合が一番高かった。退職と現職参加については派遣中隊員と帰国隊員が“重要”または“やや重要”と回答する割合は合計ではほぼ同じであるが、“重要”のみの回答は、派遣中隊員では退職参加が一番低く、帰国隊員では現職参加が一番低くなっている。