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1.2.8.ドッソ県 派遣目的:体育

(1)派遣概要

相手国  
国別事業実施計画重点分野 重要課題外
開発課題  
協力プログラム   
派遣開始時期 1994年7月13日 ~ 現在三代目隊員活動中
ミニッツ調印  
業種名 体 育
相手国実施機関 ドッソ県青少年スポーツ文化局
任地名 ドッソ県ドッソ市 10名
裨益対象 地域住民
PDM  
 目 標 ドッソ市中学校の体育教師として体育授業を行い、スポーツを通じた生徒達の心身育成に寄与する。
 個別活動目標  
 成果(活動分野) 成果1:中学校において体育教師として体育授業を実施し、学生の心身育成に努める。
 活動1-1:各種スポーツ技能の指導
 活動1-2:身体検査
 活動1-3:体育実技試験の監督
 活動1-4:

成果2:課外授業としてバレーボール活動を行い、参加生徒の社会性の育成に努めると同時に地域の活性化に寄与する。
 活動2-1:CEG2でのバレーボール活動
 活動2-2:ドッソ市民チームの強化
 活動2-3:隊員主催のバレーボール大会の企画・運営
 活動2-4:審判講習会の企画・実施
 活動2-5:バレーボール大会への遠征
日本側投入実績  
 協力隊員 帰国隊員:体育 10名
活動中隊員:体育 1名
 隊員支援経費

(主な機材等)

体育授業用の教材、バレーボール用品一式 他
合計:      円
 研修員受入 1名(受入先:隊員出身県)
ニジェール側投入実績  
 カウンターパート ドッソ市:なし
 協力隊員住居費用 ドッソ市    月額      CCF(月額) 支払:
ドゴンドッチ市 月額      CCF(月額) 支払:
 予算措置総額  
国内支援体制 出身県
他の日本のODAとの関係 なし
他のドナーとの関係 なし
(調査団作成)

(2)5項目評価

1)妥当性

 ドッソ県ドッソ市には、1994年7月より7年以上継続して体育隊員が派遣されており、現在までに延べ11名(内活動中1名)が活動してきた。いずれも3つの市立中学(第1中学~第3中学)に体育教師として配属され、ドッソ市で不足する体育教師を補うことが目的とされてきた。また、初代隊員達がはじめたバレーボールの課外活動が続けられており、ドッソのバレーボールはニジェール国内においても有名である。バレーボールは高いチームプレーが要求されることから、当初は教育的な意味合いから導入がなされた。一時期は非常な盛り上がりを見せ、それにともないバレーボール協会の設立、市立バレーボールグラブが設立、またニジェール国内隊員主催のバレーボール大会がなされてきた。しかしながら、各中学に名1名の計3名活動していた隊員が現在1名まで減少しており、バレーボール活動も以前のような活気が失われつつあったが、現在は卒業生や研修生の力で復活しつつある。

 また、体育教師として配属される隊員達の中には、その活動形態や内容について模索するケースが多い。この理由としては、中学生(マナーや態度が悪い)を相手に(1)不慣れな現地で体育授業を受け持つことの難しさ、(2)不足する体育教師の補完に過ぎず、体育教師の育成にはつながっていない、(3)教師と生徒達のストライキ(給与や奨学金の不払いが理由)の頻発、(4)課外活動であるバレーボールに対する過度の期待などが上げられる。

 しかしその一方で、受入側からは、継続した体育隊員の派遣や増員が重ねて要請されており、また同時にバレーボールの強化に対する要請も同時になされている。

 これまでの派遣は、ニジェール側の要請内容に沿う形で中学校において一体育教師として活動することが期待され、要請内容もそれに従ったマンパワー型の活動内容が主であった。このため、派遣は妥当性であったと評価できる。受入先の中学、また卒業生達の評価も非常に高い。現在、帰国隊員達が指導した生徒達がバレーボールを指導できるような立場に成長してきており、今後の活動に期待ができる。

 今後の派遣については、これまでの派遣活動の問題・課題を整理した上で、配属先が期待する活動の優先度を再度検討し、派遣計画の転換を図っていく段階にある(教育の一環としての体育とバレーボールに特化した指導の区分)。

2)有効性

 不足する中学校の体育教師を補完すること、また課外授業としてバレーボールを指導すること、この2点に限れば、体育教師としてのポストを担い、またバレーボールに指導も適宜行ってきたことから、その目標達成度はきわめて高い。また第1中学から第3中学の校長先生・先生、また教え子達の評価も非常に高い。

 しかしながら、グレーブと呼ばれる先生と生徒のストライキは隊員の活動を阻害する大きな要因となっていた。さらにカウンターパート(=現地体育教師)の不在も隊員の活動を阻害する要因になっている。これは体育が単なるスポーツ技能の向上が目的ではなく、スポーツを生徒達の健全な心と身体の発育に役立てることを目的としていることをニジェール側の体育教師に伝えることが、隊員達が最終的に目指す活動成果となっているためである。このため、体育教員としての役割を果たす、課外活動の充実や地域住民へのスポーツ振興という活動についての有効性は高いが、体育教育の必要性を学校側に移転するという活動での有効性は低いといえる。

3)効率性

 学校の体育に対する予算が皆無であるため、スポーツ用具の調達は隊員支援経費に頼られていた。このため、多くの隊員が活動に合わせて申請してきているので、中学校にはある程度スポーツ用具の蓄積がなされてきている。ただし、隊員支援経費で購入されたスポーツ用品の配布および管理方法については機材リストが作成されておらず、その用途の詳細は不明である。

 機材の購入については、隊員達が必要量以上のものを購入しないよう注意を払っていたのでその投入量は妥当であったと判断する。しかし、用具の管理については問題があったといえる。

4)インパクト

 同一地域に派遣された隊員達が連携し、課外体育授業の一環として取り入れたバレーボールの指導が、学校だけでなく、地域全体に受入れられ、現在も面的な広がりを見せている。隊員活動が与えたインパクトは非常に高かったと評価できる。また、カウンターパートや卒業生達がバレーボール技術の普及や指導に参加している。

 ドッソ県に適切な体育教育を広めるには若い体育教師を日本で研修されることが不可欠と考え、ある隊員は自分の出身県の研修員受入制度を利用し9ヶ月の研修に自分のカウンターパートであったニジェール人体育教師を送り出すことを実現させた。受入先はバレーボールの部活動が盛んな高校であった。ここで、体育教師は「学校教育における体育理論」を一から学び、子供達の健全な心と身体の発育には体育教育が不可欠なことを体感した。研修を終えニジェールに帰国した体育教師は、帰国直後は彼の教育方針がなかなか受け入れられず苦労したが、地道に活動を続け現在では年齢別、経験年数別に分けてボランティアで指導を行っている。また協力隊の体育隊員のサポートも自主的に行っており、隊員にとっては良き相談相手となっている。

 一方で、今年で派遣が7年目となり、教え子達が母校に戻り課外活動としてのバレーボールを指導できる年齢に達してきており、実際活動も行っている。今後の活動を促進する非常に大きな力となる。彼らは帰国隊員達に対する親しみを失っておらず、何とか現隊員の活動をフォローしようという気持ちを有している。このことも一つのインパクトといえる。体育隊員と関わった生徒、先生、卒業生は、それぞれ日本への親しみを強く感じている。

5)自立発展性

 隊員達の教え子達が高校を卒業する年齢に到り、現在のバレーボール活動を自主的にサポートしている。先の日本で研修を受け体育教師とも連携して活動を行っており、ドッソ県のバレーボール活動を今後盛り上げる原動力となる。

 一方で、体育派遣の本来の目的は、ニジェール国の体育教育の充実と体育教員の養成であるが、体育教員の人材不足は解消されず、隊員の活動に頼るところが大きい。隊員の活動が自立発展するためには、バレーボール活動以上に、体育教育の必要性をニジェールの体育教師に伝えていかなければ、いつまでたってもニジェールに体育教育は浸透しない。

 中長期に渡る派遣となっているため、バレーボールに特化した隊員活動と、体育教育に特化した隊員活動を分け、派遣目標を明確化させる必要も検討すべきである。

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