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第3章 評価結果

3.3 プロセスの適切性

3.3.1 JICA・JBICとの連携・協議

1999年7月に、JICAのプロジェクト確認調査と円借款年次協議を同時期に派遣することで包括的な政策協議が行なわれた。主管は外務省経済協力局政策課(当時。2003年度より国別開発協力課に移管)であり、「対処方針」は同課が関係各課及びJICA・JBICと協力して起案し、関係三省(外務省・財務省・経済産業省)と協議の上、とりまとめた。政策協議には、外務省・JICA本部・JBIC本部・現地大使館・JICA在外事務所が参加した(これ以降2003年に至るまで「経済協力政策協議」としては行われておらず、対モロッコ援助は1999年の政策協議の結果を踏襲、適宜調整の上、実施されている)。

一方モロッコは1996年より円借款年次供与国となったが、それ以降、年次協議が原則的に毎年行なわれており、評価対象期間の1999年、2000年、2001年にも行われた(1999年については既述の通り政策協議の一環として行なわれた)。同協議は有償資金協力課が主管で、その対処方針は同課がJBICと調整のうえ起案し、関係三省と協議の上とりまとめている。

JBICの年次協議にはJICAもオブザーバーとして参加するなど、JICAとJBICとの連携は円滑に行なわれている。モロッコにはJBICの現地事務所はなくパリ駐在員事務所が管轄しているが、パリからの出張の際、あるいはJBIC関連調査団にJBIC職員が同行する際などには、必ずJICA在外事務所を訪問して情報交換や資料の共有を行なっている。

案件の選定・採択のプロセスにおいて、外務省とJICA・JBICとの連携は、担当者レベルでの日常的な連絡の形で密接に行なわれている(スキームごとの案件選定・採択・実施に至るプロセスは添付-6プロセスチャートを参照)。

以上より、当該分野の政策立案・実施にあたりJICA・JBICとの連携・協議は適切に行われたと評価される。

3.3.2 NGO等の民間との連携・協議

NGOに関しては、草の根無償案件で、現地NGOや組合を援助受け入れ相手機関としている。これは、行政機関である村を実施機関とすることで案件の承認などの手続きに非常に時間がかかり実施が遅延し、迅速さという草の根無償の長所が失われることが多かったための措置である。

草の根無償以外では、NGO等の民間との政策に関する協議は行われていない。

3.3.3 他ドナーとの連携・協議

「上水道セクター整備計画」と「アブダ・ドゥカラ灌漑計画」はそれぞれ他ドナーと協調融資がなされた案件であるが、その他の案件での連携はなかった。また特に協議が行なわれた記録はないが、大使館の日常業務としての情報収集及び案件毎の各種調査における他ドナーとの協議が政策協議等に活かされたものと推察される。

3.3.4 相手国政府との協議

1999年の政策協議では、前年度のJICA在外事務所とモロッコ側の間で協議において我が国援助の優先分野として確認された、(1)農業・水産業振興、(2)水資源開発、(3)基礎インフラ整備、(4)地方開発、(5)環境、につき引き続き支援の要請があった。また国家開発5カ年計画において地域格差の是正が重視されていること、さらに南南協力拡大への要望が伝えられた。

モロッコは1998年4月の政策協議の際、ロングリスト方式への移行に同意した。OECF(現JBIC)は1999年4月にモロッコで円借款セミナーを行い詳細手続きを説明した。2001年度よりロングリスト形式での円借款要請が行なわれるようになり、毎年JBIC、実施機関、財務民営化省、大使館を中心に、包括的な協議が実施されている。

1999年の政策協議に至るまでにも、上述のようなプロセスの中で様々な協議が行なわれた。政策協議に至る準備会合としての公式な会合は別途行なわれていないが、その他にも、現地大使館、JICA事務所を通じた、モロッコ政府側との日常的なやりとりの中で情報収集(1)協議が行なわれた。

有償資金協力案件に関しては、財務民営化省が全セクターの要望をとりまとめ、優先順位をつけている。財務民営化省による選定の基準・優先分野は、社会開発、農村開発(農村電化、基本的な衛生、水供給、基礎教育、道路の建設)、投資促進(民間セクター支援のためのインフラ整備)、衛生(健康に良い環境づくり)、案件の成熟度、詳細な事前調査の有無などである。 i

オンゴーイング案件数が増加する中、モロッコ側の案件実施に係るオーナーシップ強化のため、2001年7月から現地でモニタリング会合を開催しており、2003年6月までに4回実施されている。同会合には、JBIC本部及びパリ駐在員事務所、財務民営化省、外務協力省及び全実施機関の代表の間で、案件の進捗状況(調達及び貸付実行)の確認と問題点の協議を行なうとともに、円借款を取り巻く新たな情報の提供等を実施している。この他に、JBICパリ駐在員事務所からは隔月で中間監理ミッションが派遣されている。同事務所は調達に関する権限を本部より委譲されており、迅速な対応に努めている。

他方、一般無償資金協力・技術協力に関しては、外務協力省に取りまとめの機能が不足し、JICA在外事務所が現地大使館と協議しながら実質的に当初の優先順位付けを行なっている。また、無償・技術協力においては、個別派遣専門家を中心とした案件の発掘・形成が行なわれている。

有償、無償、技術協力とも、案件選定・優先順位付けのための公式な協議は政策協議・円借款年次協議に限られるが、日常的な連絡の中で緊密に情報交換が行なわれている。


i 財務民営化省Nouha財務海外資金局長(2003年9月24日)インタビューによる。




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