1.1 背景
近年、わが国のODAは総額で世界トップクラスの規模を維持しているが、国内の厳しい財政状況等を背景に、国内から効率的・効果的かつ質の高い援助の実施を求められている。この要請に応えるためにODAの評価が実施されている。わが国のODA評価は主として外務省とODA実施機関であるJICA、JBICによって行われており、それぞれの機能に応じた役割分担を行っている。外務省では、個々のプロジェクトよりも政策やプログラムを対象とした評価を重点的に行い、JICA、JBICはプログラム及び個別プロジェクトの評価に取り組んでいる。外務省は2003年3月に「ODA評価ガイドライン」を公表し、評価業務における外務省と実施機関(JICA、JBIC)の役割分担と連携に関する方針を打ち出した。国別評価は外務省が行う特定国におけるわが国の援助対策全般を対象とする政策的観点からの評価(政策レベル評価)の一つである。
平成15年8月、政府は約10年ぶりに政府開発援助大綱(ODA大綱)を改定したが、その中では、重点地域として「日本と緊密な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼし得るアジア」を挙げている。また、政府全体として一体性と一貫性をもってODAを効率的・効果的に実施するために、主要な被援助国について、わが国の援助需要を踏まえ、被援助国にとって真に必要な援助需要を反映した、重点が明確な国別援助計画を策定することとなっている。
インドネシアは、わが国ODAの重点供与国であり、2001年度のわが国ODAに占めるインドネシアのシェアは11.5%(第1位)である1。一方、インドネシアにとってもわが国は主要なドナーとなっており、2000年度における二国間ODA供与国では第1位(60%のシェア)となっている(なお、2003年1月のインドネシア支援国会合(CGI)において総額31億ドルの支援が表明されたが、わが国は7.3億ドルの支援を表明した)。そして、わが国政府は平成15年度に対インドネシア国別援助計画の策定作業を開始している。
以上の背景から、インドネシアが国別評価の対象として選定され、本件「対インドネシア国別評価」が政策レベル評価の一環として実施されることとなった。
1.2 目的
本評価には二つの目的がある。
第一の目的は、インドネシアに対するわが国の援助政策全般を総合的にレビューし2、わが国援助政策を、(1)目的、(2)プロセス、(3)結果の3つの視点で分析・評価することにより、今後のより具体的な案件策定の指針となる対インドネシア国別援助計画の策定及び効率的・効果的な援助の実施に資する教訓・提言を得ることにある。
第二の目的は、上述の評価結果を外務省ホームページへの掲載も含めて国民に開示することで、説明責任を果たすことにある。
1.3 評価の対象
本評価では1996年度から2002年度までの間にインドネシアに対して実施されたわが国の二国間ODA協力を評価の対象とする。具体的には、同期間中に実施された(1)有償資金協力、(2)無償資金協力、(3)技術協力に属する援助を評価対象とし、政策レベルの観点から分析・評価を行うものとする。
1.4 評価の枠組み
わが国は、1994年2月に派遣された経済協力総合調査団によるインドネシア側との政策対話を踏まえて1994年度の「わが国の政府開発援助(ODA白書)」に発表された「対インドネシア国別援助方針」において、(1)公平性の確保、(2)人造り・教育、(3)環境保全、(4)産業構造の再編成、(5)産業基盤整備、を援助の重点分野(重点5分野)としている。本評価では、わが国の援助政策である対インドネシア国別援助方針(重点5分野)を評価の対象とする。
また、経済危機後の2001年9月に行われた経済協力政策協議での政策対話を踏まえて、(1)マクロ経済の安定のための支援、(2)各種改革の推進に対する支援、(3)経済ボトルネックの解消等緊急ニーズへの対応、を新たな重点課題として支援する方針が定められている。したがって、これらの重点課題(3本柱)についても対インドネシア国別援助方針の追加的骨組みとして位置づける。
わが国のインドネシアに対する援助は、援助の目的と解釈されるインドネシアの開発課題の解決を達成するため、対インドネシア国別援助方針(3本柱を含む)に沿って3つの援助スキーム(有償資金協力、無償資金協力、技術協力)を用いて実施されている(図1-1)。
1) | 国内調査1(評価分析の枠組み作成、資料分析、聴き取り調査など) |
2) | 現地調査(聴き取り調査、事例案件の政策レベル評価の観点からの考察、指標の収集等:2003年8月31日~9月20日)実施。現地調査日程を添付資料3に示す。) |
3) | 国内調査2(結果分析、情報整理、報告書作成等) |
![]() インドネシア政府機関における面談模様 |
![]() 日本大使館における面談模様 |
1 「2002年度版ODA白書」を参照。
2 本評価においては案件の個別評価は行わない。JICA・JBICによって実施される個別案件の評価は両機関が既に行っており、一部報告書として公開されている。それらの評価結果は本評価調査において適宜活用している。