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要 約

1.本国別調査の背景・目的・実施要領

1.1 背景

 近年、わが国のODAは総額で世界トップクラスの規模を維持しているが、国内の厳しい財政状況等を背景に、国内から効率的・効果的かつ質の高い援助の実施を求められている。この要請に応えるためにODAの評価が実施されている。外務省は、2003年3月に発表したODA評価ガイドラインに従って、特定国におけるわが国の援助政策全般を対象とする政策的観点からの評価(政策レベル評価)として国別評価を実施している。

 インドネシアは、わが国ODAの重点供与国であり、2001年度のわが国ODAに占めるインドネシアのシェアは11.5%(第1位)である。わが国政府は平成15年度に対インドネシア国別援助計画の策定作業を開始している。以上の背景から、インドネシアが国別評価の対象として選定され、本件「対インドネシア国別評価」が政策レベル評価の一環として実施されることとなった。

1.2 目的

 第一の目的は、インドネシアに対するわが国の援助政策全般を総合的にレビューし、わが国援助政策を、(1)目的、(2)プロセス、(3)結果の3つの視点で分析・評価することにより、今後のより具体的な案件策定の指針となる対インドネシア国別援助計画の策定及び効率的・効果的な援助の実施に資する教訓・提言を得ることにある。

 第二の目的は、上述の評価結果を外務省ホームページへの掲載も含めて国民に開示することで、説明責任を果たすことにある。

1.3 調査の対象・枠組み

 本評価では1996年度から2002年度までの間にインドネシアに対して実施されたわが国の二国間ODA協力を評価の対象とした。具体的には、同期間中に実施された(1)有償資金協力、(2)無償資金協力、(3)技術協力に属する援助を評価対象とし、政策レベルの観点から分析・評価を行った。

 本評価では、わが国の援助政策である「対インドネシア国別援助方針」で示された重点5分野重点分野((1)公平性の確保、(2)人造り・教育、(3)環境保全、(4)産業構造の再編成、(5)産業基盤整備)を評価の対象とした。また、2001年に打ち出された新たな重点課題である3本柱((1)マクロ経済の安定のための支援、(2)各種改革の推進に対する支援、(3)経済ボトルネックの解消等緊急ニーズへの対応)についても対インドネシア国別援助方針の追加的骨組みとして位置づけた。

 以上の方針に基づいて対インドネシア援助政策を、外務省の「ODA評価ガイドライン」に則り、(1)目的、(2)プロセス、(3)結果の3つの視点から評価した。

2.インドネシアの概況

2.1 インドネシア政治・社会経済状況の推移

 1996年以降、インドネシアの政情は変動の時代に入った。1998年5月、民主化要求が高まるなかでスハルト大統領は辞任に追い込まれた。後を継いだハビビ政権は民主化政策を進めたものの、1999年6月の総選挙で闘争インドネシア民主党が第一党となり、同年10月、アブドゥルラフマン・ワヒッド、メガワティ・スカルノプトゥリが大統領、副大統領に選出された。しかし、ワヒッド大統領の統治スタイルを巡って大統領と国会との間の確執が深まり、2001年7月、国会で弾劾の動きが強まるなかワヒッド大統領は退陣し、後継大統領にはメガワティ副大統領が昇格した。

 経済面では、1983年以降のルピア相場調整や規制緩和などの経済構造調整策により輸出主導型の経済成長軌道にのった結果、90年代前半にはインドネシア経済は順調な拡大をみせた。第6次5ヵ年開発計画(1994年4月~1999年3月)に入ってからのインドネシアの実質経済成長率は1994年に7.5%、1995年に8.2%、1996年に7.8%を記録し、期間中の目標値7.1%を大きく上回った。しかし、1997年7月初めにタイで発生した通貨危機がインドネシアにも波及し、ルピア相場の急落、対外債務返済負担の急増、金融不安、金利高騰、内需落ち込み、失業率の増大など深刻な経済危機をもたらした。1998年の経済成長率はマイナス13.1%を記録するとともに、ルピアの価値(対米ドル為替レート)は危機前の1/5以下となった。1人当たりGDPは500ドル以下まで低下し、失業者、貧困層の増大も深刻な問題となった。

 深刻な経済危機を受け、インドネシア政府は国際機関、2国間ドナーの緊急支援を得て経済・金融構造改革を断行した。インドネシアは、1998年1月以降、IMFとの間で合意した経済再建のための趣意書(LOI=Letter of Intent)を踏まえて、マクロ経済安定、財政再建、金融部門再建などの経済構造改革を実施している。

 1999年以降、インドネシア経済は穏やかな回復傾向を示し、同年の実質GDPは0.8%のプラス成長に転じた。その後、輸出の拡大、堅調な民間消費に支えられて経済成長を維持している。しかし、投資、とくに外国投資の回復が遅れており、強い成長の牽引力に欠ける状態が続いている。

2.2 インドネシア国家開発計画の推移

 スハルト政権下では、国家開発計画として国策大綱(GBHN)、25ヵ年長期開発計画(PJP)及び5ヵ年開発計画(REPELITA)が策定された。5ヵ年開発計画はPJPに沿って立案され、毎年の予算編成はさらにREPELITAに基づいて実行されてきた。

 第6次5ヵ年開発計画(REPELITA VI、1994~1999年)では、「人的資源の質的向上」、「経済発展と経済構造調整」と共に、「公平性と貧困軽減」を国家開発の中心目標に掲げ、国家的事業として本格的に貧困対策に取り組むことを明らかにした。しかし、アジア経済危機や政変による財政の大幅な縮小に伴い、REPELITA VIで策定された開発プロジェクトのほとんどは、ドナーによる支援を受けた幾つかのプロジェクトを除いて、中止もしくは大幅な修正を加えられ、より緊急な経済再建政策が実施されることになった。政府の支出の多くは、IMF主導で行われた金融部門再建や社会的弱者への社会経済的な影響を緩和するためのソーシャル・セーフティ・ネット(SSN)プログラムの実施に充てられた。

 2000年11月に新国家開発計画(PROPENAS、2000~2004年)が、REPELITAに代わり策定された。REPELITAがセクター別の計画であったのに対して、PROPENASはイシュー別、問題解決型アプローチになっており、5つのイシュー(民主的政治システムの構築および国家統一・団結の維持等の横断的課題)を定め、課題解決のため9つの分野で具体的開発プログラムを規定している。

2.3 わが国の対インドネシア援助

2.3.1 対インドネシア国別援助政策

 わが国の対インドネシア国別援助方針は、(旧)ODA大綱、これまでの対インドネシア援助実績、インドネシアの第6次5ヵ年開発計画(REPELITA IV)、インドネシア政府との年次協議等の政策対話の結果等を踏まえて策定されたものであり、その内容についてはインドネシア側との合意がなされている。対インドネシア国別援助方針は、「公平性の確保」、「人造り・教育分野」、「環境保全」、「産業構造の再編成」、「産業基盤整備」を援助の重点分野(重点5分野)と位置づけている。重点分野はさらにサブセクターに分類されている。

 さらに、メガワティ政権の発足を受けて、インドネシアの政治・経済・社会の現状と新政権が取り組むべき諸課題を踏まえ、2001年9月の経済協力政策協議での政策対話を経て、わが国は当面インドネシアに対し、(1)マクロ経済の安定のための支援、(2)各種改革の推進に対する支援(グッド・ガバナンスへの支援を含む)、(3)経済ボトルネックの解消等緊急のニーズへの対応の3点を重視して支援を行う方針(3本柱)を定め、同月メガワティ大統領が訪日した際にこれを表明した。この3本柱は、対インドネシア国別援助方針の追加的支援方針と位置づけられる。

2.3.2 援助の規模

 1996~2002年度におけるわが国のインドネシアに対する援助額は、累計で11,278.8億円であった。その内訳を見ると、有償資金協力が9,866.3億円、無償資金協力648.7億円、技術協力763.9億円となっている。わが国の援助額は、1999年度以降、大幅に減少した。これはアジア経済危機によってインドネシア経済が悪化したことを受けて、1998~1999年度の2年間に亘りプロジェクト型借款の供与が実施されなかったこと、2000年度以降はプロジェクト型借款の供与が再開されたものの、案件数は1998年度以前に比べ5~6分の1程度であることが影響している。

 1996~2001年における二国間及び国際機関の合計プレッジ額は344.1億ドルである。そのうち日本、世界銀行、ADBの合計プレッジ額が全体の85%を占めており、インドネシアにとってわが国は、世界銀行、ADBと共に最大の借款供与国となっている。インドネシアに対する二国間援助実績をみると1996~2001年度のDAC諸国全体の累計支出純額は82.6億ドルであり、そのなかで日本、アメリカ、オーストラリア、ドイツ等が主要ドナーとなっている。特に、日本のODA額が占める割合は大きく、DAC諸国全体の累計額の69.4%を占め、2位のアメリカの5.5%を大きく引き離している。

 因みに、2001年度のインドネシアに対するわが国二国間ODA供与額は8.6億ドル(わが国全体のODA供与額の11.5%)であり、インドネシアはわが国二国間ODAの第1位の受取国となっている。また、2000年までの累計でも第1位(支出純額173.65億ドル)であり、インドネシアはわが国にとって最も重要な援助対象国の一つと認識できる。

2.3.3 援助の内容

 有償資金協力(円借款)は、1998年度以前は経済インフラ整備を主目的とする案件を中心に資金供与を行ってきたが、アジア経済危機発生後の1998~1999年度の2年間に亘り、インドネシアの国際収支支援と社会的弱者対策を主目的とした即効性のプログラム型借款を供与した。2000年度にはインドネシア経済の回復傾向を受けてプロジェクト型借款を再開し、経済ボトルネックとなっているインフラ整備、維持管理の改善を主目的とする案件を中心に資金供与を行っている。近年は、環境、地方分権、人材育成等の分野にも有償資金協力を行っている。

 無償資金協力は、従来から技術協力との連携案件を中心に資金供与を行ってきており、保健・医療分野、人造り・教育分野、環境分野、農業分野に重点を置いた協力を行ってきた。今後はインドネシアの経済社会情勢の変化を踏まえ、地方分権、ガバナンス、地方インフラ、平和構築に資する案件に幅を広げつつ柔軟に対応していく方針となっている。

 技術協力は、幅広い分野での人造りに貢献している。特にアジア経済危機に対応した中長期的な経済発展のための人材育成に資する分野に重点を置いており、地方分権、警察改革などガバナンスに対する支援も行っている。1999年の総選挙に対して選挙支援専門家を派遣した他、2001年度には経済政策支援のため日本人有識者チームが政府ハイレベルと政策対話を重ねている。

3.対インドネシア援助政策の目的に関する評価

 援助政策目的の妥当性について、日本のODA政策との整合性、インドネシア開発ニーズとの整合性、他ドナー・国際機関の援助動向との整合性の観点から評価を行なった。

3.1 日本のODA政策との整合性

 「日本のODA政策との整合性」については、わが国の上位政策である(旧)ODA大綱及びODA中期政策と対インドネシア国別援助方針(3本柱を含む)との比較を行った。その結果、援助方針で示した重点5分野は、(旧)ODA大綱の重点項目を的確に反映していることが確認できた。そして、追加的援助方針となる3本柱については、経済危機後のインドネシアの開発ニーズに対応した内容であるが、(旧)ODA大綱が発表されてから10年近くが経過していることから、(旧)ODA大綱との整合性は一部が確認できたのみであった。しかし、1999年に発表されたODA中期政策とはよく整合していることが確認できた。

3.2 インドネシアの開発ニーズとの整合性

 「インドネシアの開発ニーズとの整合性」については、インドネシアの開発計画であるREPELITA VI(1994~99年)及びPROPENAS(2000~2004年)と対インドネシア国別援助方針(3本柱を含む)との比較を行った。その結果、対インドネシア国別援助方針にある重点5分野は、REPELITA VIの開発目標・分野横断的開発と非常に整合していることが確認できた。重点5分野のPROPENASとの整合性をみると、インドネシアの新たな開発課題である「民主的な政治システムの構築及び国家統一・団結の維持」及び「法による統治及びグッド・ガバナンスの確立」に対応していない。しかし、これらの課題については3本柱を援助方針に追加することにより対応したと考えられる。3本柱には「グッド・ガバナンスへの支援」が掲げられており、PROPENASの分野横断的課題を大きく反映していることが確認できた。このことから、対インドネシア国別援助方針の重点5分野と3本柱は相互補完的な関係にあると考えられ、重点5分野に3本柱を追加することにより、変化するインドネシアの開発ニーズに対応したものと評価できる。

3.3 インドネシアの開発ニーズ・開発政策の変化

 経済危機前後における「インドネシアの開発ニーズ・開発政策の変化」については、経済危機前に策定されたREPELITA VIと危機後に策定されたPROPENASとを比較することにより検証した。もっとも大きな相違点は、REPELITA VIが中央政府主導による経済成長を主要な目的とした計画であったのに対して、PROPENASは地方分権化の流れを受けた、地方政府主導によるイシュー別・問題解決型の計画となっていることであった。具体的な政策の変化については、経済危機前は、(1)人的資源の質的向上、(2)経済発展と経済構造調整、(3)公平性と貧困削減が重視されていたのに対して、経済危機後は、(1)地方分権化の促進、(2)グッド・ガバナンスの確立、(3)経済再建の3点が開発政策の中心に位置づけられていることであった。

3.4 他ドナー・国際機関の援助政策との整合性

 「他ドナー・国際機関の援助政策との整合性」については、各主要国・国際機関の援助政策を整理し、ドナー別・分野(イシュー)別援助政策マトリックスを作成することにより検証した。その結果、各ドナー・国際機関は特にガバナンス・地方分権化に対する支援を重視していることが確認できた。また、経済成長・経済構造改革、貧困、保健・衛生、環境・自然資源管理、エネルギー・インフラの各分野・イシューに各機関が重点を置いていることも確認できた。このことから、わが国の援助政策の重点分野は、他のドナー・国際機関が考える重点分野とも整合性のとれたものであると評価できる。

4.対インドネシア援助政策のプロセスに関する評価

 わが国の援助政策の策定・実施プロセスにおける妥当性の評価を行った。

4.1 対インドネシア国別援助方針策定プロセスの妥当性

 「対インドネシア国別援助方針策定プロセスの妥当性」では、対インドネシア国別援助方針は適切な手続を経て策定されたか、インドネシア側の開発ニーズを反映して策定されたか等を検証した。対インドネシア国別援助方針は、外務省によって、JICAの国別援助研究会での議論を参考に立案され、在インドネシア大使館、JICA・JBICインドネシア事務所からのコメントを受け、さらに経済協力総合調査団によるインドネシア政府との協議・合意を経て最終的に策定されていることから、適切な手続きが踏まれていると評価できる。対インドネシア国別援助方針にある重点5分野は経済危機以前に決定されたものであるが、わが国は、例えば1999年の政策協議の場において、社会的弱者支援、経済構造調整の必要性に焦点をあてる旨の発言をするなど、重点5分野のなかでも強調する箇所をつけるなどの対応をしている。2001年にインドネシア側と合意した追加的援助方針である3本柱は、経済危機からの回復と持続的な経済成長の基盤作りを目指したものであり、インドネシアの開発ニーズの変化に対応した重点課題の設定であったと考えられる。但し、重点5分野がいつどのような形で見直されるかについては明らかにされておらず、今後の課題として指摘できる。

4.2 インドネシア側による開発ニーズの把握プロセス

 「インドネシア側による開発ニーズの把握プロセス」では、インドネシア側の開発ニーズが国家開発計画に十分反映されていたか、開発ニーズ・開発政策に変化があったかを検証した。中央政府主導によるトップダウン方式で策定されたREPELITA VIに比べ、PROPENASの策定プロセスではBAPPENASによる開発計画案の開示や主要都市でのセミナーの開催など、地方政府及び地域住民の意見を幅広く取り入れようという試みが確認できた。したがって、少なくともPROPENAS策定以降(2000年以降)、地方の開発ニーズがインドネシアの国家政策に反映されるような体制が整いつつあると考えられる。

4.3 対インドネシア援助実施プロセスの妥当性

 「対インドネシア援助実施プロセスの妥当性」では、対インドネシア国別援助方針が援助実施段階において適切に反映されていたか、インドネシア側の開発ニーズが案件実施レベルにおいても反映されていたかについて検証した。JICAは2000年度より国別事業実施計画を作成し、援助の重点分野、基本的な考え方、開発課題と事業計画などを示している。同計画にある重点課題、プログラム、サブプログラムを見てみると、対インドネシア国別援助方針にある重点5分野及び追加的援助方針である3本柱と整合した内容であることが確認できた。同計画は、JICAが行う技術協力の案件選定基準に用いられており、わが国の援助政策が個別案件にも反映されているものと考えられる。また、JICAでは統一要望調査、専門家派遣などによりインドネシア側の開発ニーズの把握に努めており、インドネシア側の開発ニーズが個別案件に反映されるような体制が整っているものと評価できる。JBICも国別の具体的な援助方針である国別業務実施方針を定めている。これは、対インドネシア国別援助方針に基づいて策定されたものであると同時に、インフラ整備に重点を置くなど有償資金協力の実施機関としての特色が現れた実施計画となっている。同方針及び対インドネシア国別援助方針を基に円借款要請候補案件を精査し、数度にわたる調査団派遣及び関連機関との協議を経て案件採択がなされるため、わが国の援助政策が大きく反映される体制が整っていると評価できる。また、JBICとインドネシア側各機関との間での協議や、JBICによるセクター調査などが適宜行われており、インドネシア側の開発ニーズの把握に努めていることも確認することができた。さらにJBICでは、2003年度からロングリスト方式を採用し、わが国及びインドネシア側の中長期政策・計画に沿った体系的な援助の実施を目指している。

4.4 援助スキーム間の連携

 「援助スキーム間の連携」では、援助スキーム間の連携によってわが国の援助が効率的・効果的に行われていたかを検証した。1996~2002年度に実施された案件のうち、無償資金協力と技術協力の連携が確認できた案件は無償資金協力案件の4割であったのに対して、有償資金協力と技術協力の連携は有償資金協力の5%強であった(F/S、M/P等の開発調査が円借款に結びついた案件は開発調査の3割弱)。また、インドネシアの農業分野を対象に、有償資金協力、無償資金協力、技術協力を計画当初から有機的に組み合わせて実施された「アンブレラ協力」を通じて、わが国の援助がインドネシアの米の自給率向上などに貢献していることが確認できた。但し、このような複数の援助スキームを組み合わせたセクター単位の包括的な協力は他のセクターでは行われていない。各スキーム間の連携によって得られる効率的・効果的な援助のメリットを考慮すると、今後更に各スキーム間の連携は促進される余地があると考えられる。また、個々の案件については投入資源の効率性を評価して実施を決定しているが、スキームを組み合わせる場合には全体として効率性を高められるかについて留意する必要もある。

4.5 他ドナー・国際機関との調整・協調プロセス

 「他ドナー・国際機関との調整・協調プロセス」では、他ドナー・国際機関との調整・協調プロセスを評価することによって、わが国の援助が効率的・効果的に行われていたかを検証した。わが国はインドネシア支援国会合(CGI)の場において、主要援助国・国際機関との調整を行っていることが確認できた。2001年に表明されたわが国の追加的援助方針である3本柱は、第10回CGIでの議論を大きく取り入れたものであり、わが国は、インドネシア政府や各主要援助国・国際機関の間で議論された援助の基本方針を反映させるようなプロセスを経て援助方針を策定していることが確認できた。また、わが国は中小企業の育成ワーキング・グループの議長を務めるなど、積極的に主要援助国・国際機関との調整を図っていることも確認できた。

5.対インドネシア援助政策の結果に関する評価

 インドネシア開発予算に占めるわが国資金協力の割合からみたわが国の援助の貢献度、及び重点5分野別のわが国の援助投入のタイミングの妥当性及び援助政策の効果について検証を行い、わが国の援助政策が課題解決に対して有効であったかを評価した。なお、3本柱については、援助政策の効果について評価するには時期尚早であるため、わが国の援助投入のタイミングの妥当性、及び今後期待される援助効果についての評価を行なった。

5.1 わが国援助のインドネシア開発予算に占める割合

 わが国の援助は資金投入額でみると産業基盤整備が大きなシェアを占めている。有償資金協力(円借款事業)の約7割が産業基盤整備分野を対象に実施された。インドネシア開発予算に占めるわが国資金協力の同分野に対する割合は31.4%と非常に高いシェアとなっている。その他、わが国の資金投入で目立ったものは、1998~99年にかけて公平性の確保を対象に実施された協力であり、インドネシア開発予算に占めるわが国資金協力の割合は1998年度には30.5%、1999年度は32.5%であった。これは、アジア経済危機対応として雇用創出、社会的弱者支援など公平性の確保に係る支援が有償資金協力及び無償資金協力を通じて重点的に行われたことによる。

5.2 重点5分野におけるわが国の貢献

 「重点5分野」別にわが国の援助を見てみると、「公平性の確保」に関しては、無償資金協力を中心とした人道的支援が行われてきたが、1件当りの投入額が少ないこともあり、この援助を個別案件毎に貧困人口率、一人当たりGDP等の統計数値の向上につながったものとして把握するには至らなかった。サブセクターの一つである「人口・家族計画及びエイズ対策」分野に対しては無償資金協力による「家族計画プログラム」が実施されているものの、当該サブセクターへの援助は特に少なかった。但し、セクター・プログラム・ローンやソーシャル・セーフティ・ネット借款などの迅速かつ柔軟な資金供与は、地方における雇用創出に貢献したものと考えられる。

 「人造り・教育分野」に関しては、技術協力及び無償資金協力を中心とした人材育成支援が行われてきたが、全体的な効果発現には時間を要するため、明確な効果を把握することはできなかった。当該サブセクターでは、技術者教育を中心とする「人造り」への援助は多いものの、「教育」分野への援助は少なかった。人造り・技術者教育の分野では、無償資金協力と技術協力により実施された「スラバヤ電子系ポリテクニック」がスラバヤという一地域を越えて教員の研修、教科書の普及に貢献している点が注目に値する。教育分野では、「地域教育開発支援調査」が2000年度から実施されている。教育分野で行政レベルに対する援助が開始されたことは、この分野でのインドネシア政府の日本の援助に対する評価が高いということを示していると思料される。

 「環境保全」に関しては、技術協力プロジェクト及び無償資金協力によって森林火災問題に対して一定の貢献をしていることが確認できた。その他では自然環境保全や公害防止などに対する支援も実施されている。しかし、全体としては当該分野に対する援助投入は減少傾向を示している。当該分野に関しては、環境改善に係る効果発現には長時間を要すること、及び環境には様々な要因が影響することなどから、わが国の貢献度を定量的に把握することはできなかった。

 「産業構造の再編成」に関しては、技術協力を中心に農業振興に対する支援が重点的に実施された。これらの支援は、農産物の多様化や高付加価値化に係るものが多く、灌漑事業などのインフラ整備(ハード面)による食糧増産とは異なるソフト面でのアプローチにより、食糧の安定供給に貢献したと考えられる。また、マクロ経済運営に対する支援の一環として行われたセクター・プログラム・ローンやソーシャル・セーフティ・ネット借款などの供与は、急速に悪化したインドネシアの国際収支の改善に一定の効果があったものと考えられる。しかしながら、全体として産業構造の再編成に対するわが国の貢献度を確認することはできなかった。

 「産業基盤整備」に関しては、有償資金協力(円借款事業)を中心にわが国が最も重点的に援助を行った分野である。しかしながら、経済危機の影響から全体的に円借款事業の進捗が遅延しており、調査対象期間中に完了していた案件は41件中10件のみであった。そのなかで具体的には、電力セクターにおける地方電化率の増加や、運輸セクターにおける自動車登録台数の増加及びジャカルタ首都圏における交通渋滞の緩和に一定の貢献を果たしていることが確認できた。

5.3 3本柱に対するわが国の貢献

 「3本柱」のうち「マクロ経済の安定」や「経済ボトルネックの解消」については、3本柱以前から実施している援助政策と重複する課題であり、重点5分野及び3本柱で実施してきた援助協力を併せた効果発現が期待されるところである。グッド・ガバナンス、地方分権化など、インドネシアの新しい開発課題を含む各種改革の推進に対する支援については、技術協力を中心に無償資金協力による支援も行われている。中小企業振興の一環として派遣された政策アドバイザー(浦田ミッション)による政策提言が、インドネシア政府の中小企業政策に取り入れられるなどの効果が発現しているケースも一部で確認できた。改革支援の分野の援助は高度な政策レベルでの援助になる性格を有しており、当該分野での支援拡大は、わが国援助がより「顔の見える援助」となることにも貢献すると考えられる。

6.総合評価と今後の対インドネシア国別援助政策への提言

6.1 総合評価

 目的に関する評価では、対インドネシア国別援助方針(重点5分野及び3本柱)の目的が、上位政策にあたる(旧)「ODA大綱」及び「ODA中期政策」に示された指針に合致したものであると確認された。対インドネシア国別援助方針がインドネシア5ヵ年開発計画(REPELITA VI)を踏まえたうえでインドネシア政府との協議を通じて策定されたものであり、その支援内容もREPELITA VIと整合していることから、開発ニーズを適切に反映したものであると評価できる。2000年に策定されたインドネシア新国家開発計画(PROPENAS)については、重点5分野で対応できない新たな開発ニーズに対して3本柱を追加することにより対応している。その他、JICA・JBICによる相手国省庁との対話を通じて開発ニーズの把握に努めており、総じてインドネシア側の開発ニーズはわが国の援助方針に反映されていると評価できる。

 しかし、目的の妥当性に関しては、幾つかの課題が指摘される。第一に、対インドネシア国別援助方針に基本方針は記載されているが、対インドネシア援助の目的が明示されていないことである。第二は、1994年にインドネシア側と合意された重点5分野と2001年にインドネシア側の開発ニーズの変化に応じて追加された3本柱との関係が明確に位置付けられていないという点である。現在ODA白書や外務省ホームページに掲載されている対インドネシア国別援助方針には3本柱が含まれていない。3本柱が表明された2001年以降も重点5分野が依然として対インドネシア国別援助方針の重点分野であるとされており、3本柱の位置付けが明記されていない。第三は、重点5分野に含まれているサブセクターのなかには、例えば通信セクターのように重点を置いたことの妥当性への疑義を持たざるを得ないサブセクターもあることである。インドネシア政府にとって通信網の整備は優先課題であったが、民間主導によって整備を進めたため、結果として通信セクターの援助対象としての重要性は低いものであったと考える。

 プロセスに関する評価では、対インドネシア国別援助方針は、わが国援助実施機関の国別事業実施計画(JICA)、国別業務実施方針(JBIC)の国別業務実施方針に反映されており、案件形成プロセスの中でも案件採択の基準として同方針が参照されていることが確認された。但し、1994年に合意された重点5分野については、1999年の経済協力政策協議の場においてその妥当性に係わる議論が行われるなど、インドネシアの開発ニーズに対応したものであるか否かの確認がされているものの、いつどのような形で重点分野を見直すのかが定められていなかったことは課題として指摘できる。

 無償資金協力のうち約4割が技術協力との連携がなされているなど援助スキーム間の連携がみられる。但し、計画当初から複数の援助スキームを組み合わせてセクター単位で支援を実施するという包括的な援助協力は農業分野以外では行なわれていない。各スキーム間の連携によって得られる効率的、効果的援助のメリットを考慮すると、今後更に各スキーム間の連携は促進される余地があると考えられる。他ドナー・国際機関との調整・協調に関しては、わが国はCGIの場において調整を行なっている。対インドネシア援助政策の基本方針については、わが国と他ドナー・国際機関との間で一定の調整が行われているものと考えられるが、案件実施レベルでの協調については限定的となっている。より効率的・効果的な援助を実施するためには、今後のさらなる調整・協調を他ドナー・国際機関と図っていくことが必要であると考える。

 結果に関する評価では、分野ごとに効果を評価するための代表的な開発指標を設定し、その指標の推移から分野ごとに対して供与されたわが国の援助全体の効果を評価することを試みた。インドネシアは1997年に経済危機に直面し、マクロ指標は押なべて急激な悪化をみせたが、その後インドネシア経済の回復に伴ってマクロ経済も改善傾向を示している。対インドネシア国別援助方針(3本柱を含む)に従って供与されたわが国の援助の動向を検討すると、定性的にみればこうしたインドネシア経済の回復及び指標の改善に貢献したものと考えることができる。

6.2 今後の援助政策への提言

 新ODA大綱では、ODAの目的として国際社会の平和と発展に貢献することを掲げている。目的の達成のためにODAをいっそう戦略的に実施することも明記されている。インドネシアは日本にとって最も重要な援助対象国の一つである。このインドネシアの安定と発展(繁栄)に効率的かつ効果的に貢献していくためには、重点分野を選定し、効率的・効果的に目標が達成できるような最適アプローチによって援助を実施していくことが求められる。

 今回の政策評価を通じて確認された援助政策上の課題を解消するためには、1)開発ニーズの変化に柔軟に対応できるように開発ニーズをくみ上げる体制を強化する、2)援助政策をより体系的なものにし、重要分野ごとの目的を明確にして開発目標・指標を設定する、3)効率的・効果的な援助が可能となる場合には援助スキームの有機的な連携や他ドナー・国際機関との連携によるフレキシブルな案件の形成・実施を行う、の3点が重要であると考えられる。対インドネシア国別援助方針は何ら目標となる指標を掲げておらず、また、重点分野や課題についてもどのようなアプローチが採られるべきかについては十分に書かれていない。このため政策レベル評価においてその達成度を指標に基づいて評価することに限界があった。最適アプローチによる援助という点では改善の余地は大きいと考えられる。

 以上の観点から、わが国の対インドネシア援助政策に対して以下の提言を行なう。

1)真の開発ニーズをくみ上げる体制の強化

 援助政策は、変化するインドネシアの開発ニーズにタイムリーに対応しなければならない。これまでわが国の援助政策は、インドネシア政府が5年毎に改定する開発計画に合わせて策定されてきた。インドネシア政府の開発計画の改定に対応してわが国が対インドネシア援助政策を見直すというかたちを継続するとするならば、その開発計画が真の開発ニーズを的確に反映しているのかを評価する必要がある。また、インドネシア側の計画策定プロセスに対してわが国がどれだけ参画し、真のニーズをくみ上げることに協力できるかも課題となる。

 2000年から実施されている国家開発計画(PROPENAS)ではボトムアップ方式が採られ、地方の開発ニーズが今まで以上に反映される体制となった。この体制の変化は地方政府に政策策定能力を求めると同時に、中央政府に対しては今まで以上の政策調整を求めるものである。わが国としてもこうした計画策定プロセスに積極的に協力していくことが重要である。

 現行のPROPENASが終了した後、次の5ヵ年開発計画が策定されるかどうかは現時点で不明である。しかし、いずれにしてもインドネシア政府が打ち出す新たな開発方針及び政策の変化に対して、わが国としてもそれらを評価し、援助内容を適切に対応させていく体制をとる必要がある。わが国は、これまでも経済協力政策協議の場やJICA・JBICのインドネシア事務所、JICA専門家を通じてインドネシアの開発ニーズの把握に努めてきた。しかし、インドネシアの開発ニーズを従来よりもさらにきめ細かくモニターし、かつどのような援助が求められているかを把握する体制を作ることが望まれる。それにより、どのようなニーズに対してわが国援助で協力していくか、どのようなアプローチを採るべきかを見極めることも可能となる。また、援助政策についても定期的なモニタリングと適時に見直しを行なえる体制が整えられれば、例えばアジア経済危機のような緊急事態に対してもより一層適格に対応できる。また、これまで援助の受け入れはBAPPENASが一括して担当していたが、現在では地方の関与が拡大している。今後は、インドネシア側のオーナーシップをどのような形で実現するのかを考えて、開発ニーズを把握していくことが重要となる。

2)具体性のある「目的」と「目標」の設定

 わが国の援助を効率的・効果的に実施するためには、「目的-目標-手段」の体系図を明確に示したうえで目的達成に最適な援助案件を実施することが重要である。従って、援助政策のなかで各重点分野の援助目的を具体的かつ明確に示す必要があると考える。

 現在の対インドネシア国別援助方針が示している重点分野・課題は具体性に欠けると言わざるをえない。例えば、重点分野である「産業基盤整備」のサブセクターの一つに「電力セクター」があるが、電力セクターに対してわが国はどのような援助を行うのかが明示されていない。分野ごとに開発課題を明確にし、達成すべき目標を設定した上で、課題解決に必要な援助アプローチを決定し、開発指標を用いて目標値を設定することにより、援助政策と実施プロセスとの関係を明確にすることが望まれる。これは効率的・効果的な援助の実現にも資すると思料する。

 目的の明確化にあたっては、分野別の方針に基づいて分野別の援助資金配分の目処も検討することが望ましい。この場合、限られた資源をどのような割合で開発目標に配分するのかに関してインドネシア側と政策対話を行い、配分に関して目的の共有化を図ることも必要となろう。

3)包括的援助計画の策定

 より効率的・効果的な援助を実施するためには、政策の企画立案と実施の連携が極めて重要となる。そのためには、援助計画は、援助政策から具体的な援助実施手段まで一貫性を持ったものとすることが望ましい。開発課題からそれを解決すべき各スキームまでの「目的-目標-手段」の関係を明確にし、援助政策から具体的援助計画までを取りまとめることが、効率的・効果的な援助の実施、さらには案件採択に関する国民への説明責任を果たすことにもつながるからである。そのためには、重点分野の開発ニーズに対してどのようなアプローチを採るか、どのような援助スキームを対応させるかを検討していく必要がある。

 包括的な援助計画を策定するためには、外務省が中心となり、援助実施機関であるJICA、JBICも巻き込んで検討していくプロセスが重要となる。有償資金協力についてはJBICが、無償資金協力及び技術協力についてはJICAが援助実施計画の体系を策定している。外務省の援助計画とJICA、JBICによる各々独立した援助実施計画が、いかに論理的一貫性を持ち、政策目標に合致し、目標達成のために有機的に連関したものであるかということが明確にされるべきである。外務省が援助計画策定プロセスにJICA、JBICも巻き込むことで、政策目標の共有、当該目標の実現をモニター・評価する指標の設定と共有化を更に図ることが望ましい。

4)有機的な援助スキームの組み合わせ

 課題解決のために戦略的に援助を実施するためには、スキームの枠にとらわれない包括的な援助アプローチが効率的・効果的となるケースも多いと考えられる。現在、実施にあたって有償資金協力はJBIC、無償資金協力は外務省、技術協力はJICAが実施している。各スキーム間の連携によって得られるメリットを考慮しながら、各種援助スキームを有機的に組み合わせた援助を検討し、さらに促進していくことが望ましい。また、援助の効率化が可能となる場合には、他ドナー・国際機関との連携も積極的に進めることが必要と考えられる。

5)ロープロファイル解消の必要性(わが国援助のプレゼンスと影響力の確保)

 最後に、現地調査時においてインドネシアの省庁及び援助関係者から、他ドナー・国際機関と比べて「日本はロープロファイル(目立たない、低姿勢等の意。)」であるとの指摘を受けた。これは、インドネシア政府及びインドネシア国民に対するわが国が援助のプレゼンスや影響力が相対的に小さいということと解釈される。

 援助の投入額から見れば、わが国はインドネシアにとって最大の援助供与国となっている。それにもかかわらず、わが国の影響力が弱いと評価される理由の一つに、わが国がインドネシア政府に対して明確な援助方針を示しえていないことが考えられる。対インドネシア国別援助方針で示された重点分野・課題では具体的な目的が明示されていないため、何を重点に援助を行っているのか見えにくいことが挙げられる。その結果、各課題の解決に向けてどのような援助アプローチを取るべきか等の戦略性も徹底していない。JICA、JBICは個別案件まで含めた援助実施計画を策定しているが、外務省が策定する援助政策には具体的な援助実施計画等が含まれていない。このためわが国援助のセクター全体への貢献、あるいは援助全体としての貢献がインドネシア側に十分認識されていないのではないかと考えられる。また、CGIなどの場において日本が強力なリーダーシップを取っていないこともわが国が「ロープロファイル」と評価される理由の一つとして考えられる。

 しかし、日本の援助がロープロファイルであるという指摘は、IMF、世銀など他ドナー・国際機関と比較したうえでのものである。IMF、世銀はコンディショナリティのかたちで援助供与に際してインドネシア政府の政策に対して様々な条件を付している。経済危機に直面した97年以降、2003年までインドネシアの経済運営は、IMFとの間で趣意書(LOI)のかたちで合意した政策パッケージに従って行われ、経済構造改革の実施を支援条件としたが、こうしたIMFの姿勢や政策処方箋の内容については、インドネシア政府内や内外の経済学者による批判もある。従って、ロープロファイルであるということは、わが国が援助実施に際してより柔軟な姿勢で臨んでいる証左であるとも解釈される。

 インドネシアはわが国と密接な相互依存関係を有する重要なパートナーとして位置づけられており、わが国が援助協力を継続していく意義は大きい。重点課題に対して効率的・効果的に援助を実施するためにわが国の対インドネシア援助に対する考え方やアプローチをインドネシア側に伝え、相互理解をより深めていく姿勢が望まれる。また、インドネシア政府や他ドナー・国際機関に対してもわが国の援助方針、アプローチに関する理解を高めていくことが望まれる。これによって、わが国援助がより「顔の見える援助」、つまり、「ロープロファイル」から「ハイプロファイル」へと転換していくことが可能になるものと考えられる。

 また、わが国援助に関する広報活動の拡充もロープロファイルの解消に有効であると考える。わが国の援助が果たしている役割をインドネシア政府関係者だけでなく、広くインドネシア国民に広報していくことも必要である。広報活動においては地方分権化への対応も検討するべきである。これまで援助の受け入れはBAPPENASが担当していたが、現在では地方政府の関与が大きくなっている。今回の現地調査でも中央政府の省庁の一部では、例えば援助条件、実施プロセス等について理解が不十分であるケースがあった。今後は、地方に対してもわが国援助の広報をきちんと行っていくことが重要である。

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