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2.3 他ドナーの協力

2.3.1 金額面から見た主要援助国、国際機関の動向

 図表2-28に、1980年代から1990年代後半にかけての主要援助国及び国際機関の対インド援助の推移を示す。インドへの援助総額は、1980年代から1990年代半ばまで合意額ベースで毎年50億ドル近くの規模で安定しており、1998~2000年度の落ち込みから回復して2001年度には51億ドルとなった。

 二国間援助国の中では、援助総額において日本は1990年代を通じてほぼ一貫してトップドナーであり、他の主要な二国間援助国は英国、ドイツ、オランダ等である。

 二国間ドナーのローン及び無償協力(技術協力を含む)別の数字を見ると、日本、ドイツ、フランスは歴史的にローンの比率が著しく大きいが、英国、オランダ、デンマーク、米国は現在では無償協力のみを実施している。無償協力の金額規模においては、英国、ドイツ、オランダは多くの年度において日本の無償協力の実績金額を上回っている。

 次に、国際機関の動きを見ると、世界銀行(IBRD及びIDA)は1980年代より大規模な援助を行ってきており、2001/2002年には25億米ドルの規模となっている。アジア開発銀行も、1990年代から貸付額を拡大してきている14

図表2-28 対インド援助状況(インド政府との合意ベース)
図表2-28 対インド援助状況(インド政府との合意ベース)
出所:GOI, Economic Survey 2002/03

 二国間援助国と国際機関との動向比較において特筆すべきは、1998年5月のインドの核実験実施への対応という点である。日本も含めた多くの二国間援助国がインドの核実験実施に伴い1998年度以降、コミットメント額をゼロもしくは大きく減少させたのに対して、世界銀行(特にIDA)やアジア開発銀行は、援助金額を減少させる場面はあったものの、基本的に大規模な援助を継続した。二国間援助国が本格的援助を再開しはじめた2000~01年度以降も、これらの国際機関の援助の拡大傾向は続いている。

 尚、上記の二国間及び国際機関を含めた海外援助コミットメント総額に対するディスバースメント(支払実行)額の割合は、1980年代の50%台から上昇したものの、近年でも70%程度に留まっている15。また、インドの経済・財政規模との比較においては、海外援助が占める割合はさほど大きいものではない。2001年度のインドのGDP及び歳出(中央・州政府統合ベース)に占める海外援助ディスバースメント総額の割合は、それぞれ0.77%及び2.29%に過ぎなかった16 17

2.3.2 主要援助国、国際機関の重点分野

 参考として、他ドナーの対インド援助の重点分野を述べる。大半のドナーは貧困削減を目標とし、その一環として重点分野(保健医療、教育、環境、経済改革支援等)を設定している。インドの国土及び人口規模の大きさを背景として特定州を中心に援助を行うドナーが多く、英国のように明確に重点州を設定しているドナーもある。

 以下の一覧表(図表2-29)に沿って主要ドナーの重点分野を概観する。「経済インフラ」では、英国が「電力」において、世界銀行が「電力」、「運輸」、「産業その他」においてセクター改革を重点項目として位置づけている。また、ドイツとアジア開発銀行は「経済インフラ」の上述3分野において重点的に援助を行っているが、特に、ドイツは「経済セクター強化」を重点分野として扱っている。米国は、「産業その他」の分野において「金融等」を重点課題としている。「貧困対策」に関して言えば、英国及び世界銀行は、「保健」、「教育」、「農業・農村開発」を、ドイツは「保健」、「農業・農村開発」を、米国は「保健」、「女性支援」をそれぞれ重点分野としている。また、「環境」については、主要ドナー5カ国すべてが「水・衛生」を重点分野として位置づけている。さらに、「環境」分野における各ドナーの重点援助項目を詳細に見てみると、英国、ドイツ、米国は「エネルギー効率化」、また、ドイツは「環境保全」、米国と世界銀行は「災害復興」への援助を重点的に行っている。

図表2-29 主要ドナーの重点分野及び重点州
図表2-29 主要ドナーの重点分野及び重点州


14 アジア開発銀行の対インド貸付は、通常資本財源(Ordinary Capital Resources: OCR)からのみ行われており、アジア開発基金(Asian Development Fund: ADF)のもとでの譲許的条件による貸付は行われていない。

15 ここでは各年度において行われたコミットメント額とディスバースメント額の比率を示しており、各案件を基準とした契約額と使用額の比率を表したものではない。

16 (i)ディスバースメント総額1,755.93億ルピー、(ii)GDP(名目値)22兆8,828.1億ルピー、(iii)統合歳出7兆6,721.6億ルピー。(出所:(i)Economic Survey 2002-2003; (ii)Tenth Five Year Plan 2002-2007; (iii)Union Budget 2003-2004 Annual Financial Statement)

17 また、海外援助に対するインド政府側の重要な動きとして、2003年6月に、二国間援助を受け取る相手国を今後は日本、英国、ドイツ、米国、EC及びロシアに絞り込む意向を表明した。他の国からの「小額」援助はインド政府(中央及び州)を通さずに、直接NGOや研究機関等に送られることを求めている。この主な理由としては、インド側の海外援助に対する依存度を見直すと共に、小口ドナーの援助に対応するインド側の業務上の負担を軽減する目的がある。同時にインド政府は、将来は全てのタイド援助を受け取らない方針を表明しており、特に技術協力や無償資金協力に関連して、日本の対インド援助も今後重大な影響を受ける可能性を示唆している。

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