(1997年3月、土地改良庁ハイメ・ラモ・ヒメネス国際協力借款担当部長)
援助形態 | 開発調査 |
協力年度 | 1987年度~89年度 |
相手国実施機関 |
農業農村開発省・水文気象土地改良庁 (HIMAT) 1994年の機構改革により、農業農村開発省・土地改良庁(IMAT)となっている |
協力の内容 | アリアリ川における農業総合開発計画調査(F/S) |
(評価要旨)
1 案件の維持・管理状況
1992年、本件開発調査時に我が国により移転されたノウハウを基にINATにより調査結果の見直しが行われ、同年10月に、円借款案件「アリアリ川流域農業開発計画」が日本政府へ正式に要請された。同円借款案件は、1995年7月に両国政府間のE/N交換、96年4月にOECFとの貸付契約が行われ、現在実施設計等が着実に進行中である。
また、地域住民参加型で事業が展開され、1993年に受益者事業費負担軽減策の法的整備、96年に工事後の施設利用維持管理に向けた水利組合設立が行われた。その他の公共関連事業も順次進行中である。
2 案件の選定・形成の適正度
開発調査時及び現在の政府は、貧困問題撲滅計画に意欲的に取り組んでおり、この一環として農民の生活レベル向上及び地域の活性化を推進している中、洪水・干ばつに常時悩まされ、零細小規模農家(地区の8割以上)が多い一方、首都近郊で食糧基地としてのポテンシャルが高いアリアリ地区において実施された本件プロジェクトは、政策的にも社会経済的にもプロジェクト選定として適当であったと思われる。
3 当初目的の達成度及び効果
本件開発調査後、円借款条件として具体化され着工に向け着実に事業が展開されていること、調査結果の見直しを行うための技術も移転されたこと、地域住民参加型で事業が展開されていること等、ハード投資のみならず、ソフト面の充実も図られつつあり、開発調査の目的及び勧告事項を十分達すべく、着実に進行しているものと思われる。
4 環境への配慮/WIDへの配慮
事業化にあたっては、現存の森林地域は開発しないこと、環境保全可能(表土扱い等)な線的土木工事が中心で大規模な地形・形状の変化はないこと、営農形態は基本的に現在までの体系を大幅に変更しないこと等の配慮を行うこととなっており、重大な環境影響は与えないと考えられる。
また、労働時間の短縮、家庭収入の向上等により、農家女性が、家庭内の家事や手工業に従事したり、子供の教育充実等を図れるようになることが期待される。
5 今後必要とされるフォローアップ乃至アフターケア
工事完了後の農業生産活動に向けた市場情報、収穫及び流通加工の手法、組合組織の機能強化等に関する技術指導・人材育成等のソフト面の協力を行っていく必要がある。
6 将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
開発調査から円借款案件成立までには時間を要すことが多く、調査結果の見直しが必要となることも多いため、開発調査時に調査手法について相手国側に十分な技術移転をすることが重要と考えられる。