(1997年4月 在ニカラグア大使館)
援助形態 | 無償資金協力 |
協力年度 | 1994年度 |
協力金額 | 3.94億円 |
相手国実施機関 | 経済開発省水産局 |
協力の内容 | 大西洋北部零細漁民向け小型漁船(44隻)、水産局向け調査・訓練船、車両、視聴覚機材等を供与 |
〈評価要旨〉
1. 案件の維持・管理状況
当初予定されていた管理委員会(水産局を中心に州政府、漁民代表等により構成)は設立されず、現在プロジェクトは、水産局長を長に、水産局計画助成部長を実質的な維持管理責任者として運営されている。小型漁船は概ね良好に稼働し、調査船は、現在実施中の専門家による技術移転が終了した後、本格的調査技術普及航海を実施する予定。漁民からの返済金回収は継続的に行われ、返済金基金による二次融資が開始されようとしている。供与船に関する技術的問題については、派遣専門家、JICA研修員、製造メーカーにより対処されている。
2. 案件の選定・形成の適正度
国家の経済発展にとり水産部門の活性化は必要不可欠であるが、国家予算が極めて逼迫し、豊富な水産資源の開発に着手できないというニカラグアの状況の中で、水産部門を対象とし、現地の派遣専門家による事前調査や現地側との十分な協議を踏まえ形成された本件プロジェクトの適正度は高い。
3. 当初目的の達成度及び効果
零細漁業の漁獲高は大きく増加している。しかし、現在の漁獲量の大部分は気水湖及び沿岸での漁業によるもので、当初予定されていた沖合の漁業開発は、供与調査船による調査の遅れ等により遅延している。零細漁民に対する漁船の供与により、水産物のみならず農産物、家畜等も含む物流が活性化され、また、病人の運搬が容易になる等、本件プロジェクトの経済的社会的貢献度は大きい。
4. 環境への影響/WID(途上国の女性支援)への配慮
供与した資機材量では資源減少の問題は生じていないが、今後、返済金基金の運用により漁具供給量が増加してくると、気水湖での操業に対する規制が必要となると考えられる。また、女性は、物流の活性化にともない漁獲物、余剰農産・畜産物の販売に参加している。
5. 今後必要とされるフォローアップないしはアフターケア
今後の自立発展性を確保するためには、もう一期専門家を派遣し、ニカラグア側だけで機材の技術的トラブルに対応できるよう技術指導を行うことが必要である。
6.将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
本件のようなプロジェクトにおいては、事前に現地の資源開発状況や複雑な社会事情等を十分把握することが必要であり(本件プロジェクトでは在任中の派遣専門家が重要な役割を果たした)、そのためには、事前調査期間の長期化や社会学の専門家を含めた調査団の派遣が必要になると考えられる。