(1997年4月、在ホーチミン総領事館)
援助形態 | 有償資金協力(円借款) |
協力年度 | 1970年度 |
協力金額 | 16.2億円 |
相手国実施機関 | 越電力公社 |
協力の内容 | ホーチミン市(旧サイゴン)の電力需要の増加に答えるための発電機の増設。 |
<評価概要>
1 案件の維持・管理状況
電力供給は、北・中・南部毎にそれぞれ第1、第3、第2電力会社によって担われていたが、1995年の機構改革により電力公社による統合され、右公社の各地支局が現場の維持・管理を行っている。本案件は電力公社ホーチミン支局が担当しており、予算は全て電力の売却により、電力料金は越全土で統一料金を採用している。供与した6基のディーゼル発電機の内4基は稼働中だが発電容量は低下し、残る2基は故障している。現在修理中だが、部品のスペックが古く調達困難なため修理不可能であり、他の4基のメンテのために2基(故障中)の部品を使っている。現在、本件発電所はホーチミン市への送電に関し、重要な地位を占めているが、ドリア・ヴンタオ地域にて建設中のフーミー発電所からの送電が開始されると、発電コスト・容量の両面から本件発電所の存在意義が薄れてゆく。また、ホーチミン市当局より、本件発電所の所在地が市街にあり、ディーゼル発電につきもののスモッグの大気汚染による周辺住民への悪影響を指摘されており、これへの何等かの防止・緩和措置をとらなければ、将来移転を余儀なくさせられる状況にある。
2 案件の選定・形成の適性度
越南部の電力供給は非常に逼迫しているため、ホーチミン市においては現在においても計画停電が実施されている地域がある。従って、本件の選定は適切であった。サイト選定については、考慮の余地があったが、建設当時は南越解放戦線がサイゴンに攻勢をかけていた時期で、発電所を含む重要な施設は旧南越政権の制圧区域であるホーチミン市(旧サイゴン)周辺に集中して設置されている。従って、当時としてはサイト選択に余地はなかったものと思料される。
3 当初目的の達成及び効果
設置後20年以上を経た現在においても、前期の通り、稼働していることは当初計画した効果が上がっているものと判断し得る。
4 環境への影響/WID(途上国の女性支援)への配慮
前期のとおり、ホーチミン市当局よりスモッグ対策につき何等かの措置を講ずるよう指示が出される等周辺住民への悪影響を緩和するための努力に迫られているが、電力公社にその予算は不足しており、当面対策が講じられる予定はない。他方、バリア・ヴンタオ地域の大型発電案件の完成する2000年頃には、本件発電所の存在価値は薄くなるため、いずれにせよ近い将来本案件は移転または稼働停止のいずれかの選択を迫られることになろう。
5 今後必要とされるフォロー・アップないしアフターケア
将来、本案件が移転されることになった場合の資金協力につき現場で要請されたが、その際には円借款、技術協力による対応につき検討する余地があると思料されるが、問題は、越側における他の発電案件とのプライオリティー付けにある。