我が国は、開発途上国の経済・社会開発を進めることは、開発途上国のみならず、世界の平和と安定に役立ち、国際社会全体の利益であると共に我が国の国益に資するものと考え、これまで政府開発援助(ODA)を積極的に推進してきました。しかしながら、97年度ODA予算は対前年度比2.1%増と近年最低の伸び率に低下したほか、96年の我が国ODAの実績は、およそ96億ドルと前年の147億ドルから急減し、対前年比35%減に転じると云う大きな変化が生じています。また、財政改革の断行が必要となっている現在、既に98年度政府開発援助予算については、対97年度比10%マイナスの額を上回らないものとすることが閣議決定され、援助を更に効率的・効果的に実施することの必要性が従来にも増して高まっております。
我が国政府開発援助を具体的な援助案件で見ると、個々の援助案件の発掘・形成から実施、そして維持・運営・監理と云う一連の過程を経て実施されます。その各過程について、援助案件の形成が適切であったか、援助が適正に実施されたか、被援助国側に如何なる影響を及ぼしたか、所期の目的・効果を達成しているか、援助した案件は持続して自立発展しているか等を援助終了後に評価した上で、その結果を案件の運営・監理の改善に役立て、また、将来の援助の実施に活用したり、援助関係者や国民に情報を提供して行くことが大切です。これによって援助は、より効率的・効果的に実施され、援助の「質」も改善されるようになります。
外務省ではこのような考えの下に援助評価を行い、1982年以来毎年その結果を取りまとめた評価報告書を公表してきました。今次報告はその15回目に当たります。我が国のODAを巡る環境には厳しいものがありますが、ODAに対する我が国の取り組みは、我が国の国際社会に対する姿勢を示すものであり国益に直結するものであります。日本政府としては、今後とも開発援助を重視し、その改善に努めていく方針です。
今次報告書が、この様な状況にある我が国の政府開発援助に対する理解の増進に役立てば、幸いと思います。
平成九年六月
外務省経済協力局長
畠 中 篤