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第6章 NGOとの連携

6.1 GIIにおける官民連携の背景と経緯

 今でこそあたりまえのように言われる官民連携であるが、具体的な前例が少なかった1994年当時の日本政府としては英断であったと言ってよい。当時の担当官はGII発足当時を振り返り、以下のように分析している。

「NGOの中には人口・エイズという保健分野の専門的知識を持った人材と経験を豊富に持っている団体があることは省内でも十分に認識されていたし、国内の経験を途上国の開発のプロセスに活かしていくためには、そういったNGOとの連携は欠かせないものであるという認識があった。その発想の下にGIIのプログラムは構成されていった。また、人口・エイズに関する分野におけるプロジェクト要素の一つとして、コミュニティーへの普及が最も重視されているので、その観点からもNGOへの期待は高かったし、その期待は現在も続いている。(2001年11月15日インタビューより)。」
 GIIを推進するために外務省とNGOの間で懇談会(「GIIに関する外務省/NGO定期懇談会」)が定期的(隔月)に開催されるようになり、より効果的な途上国への援助・協力の方策についての意見交換が行われてきた。人口・エイズ関連の団体にとどまらず広く開発全般に関わりのある団体、またプロジェクト実施型、研究・アドボカシー型の団体など多様な団体が協力し合ってきたが、分野の違う団体同士の関わりが求められたのもGIIそのものの特徴を受けたものであった。GIIが終了した2001年3月現在で39団体が懇談会のメンバーであったが、IDI発表後はGII/IDIの両方の分野にまたがったメンバーシップに拡大させる必要性が出てきたため、2001年1月より「GII/IDIに関する外務省/NGO定期懇談会」と改称、現在もメンバー団体数は増え続けている(会則およびメンバー表添付)。
 GIIが発足した1994年2月以降、特にそれに付随してスタートした懇談会を中心とする日本国内における動きは革新的であり、その動きが日本の開発協力に与えた影響は、NGOとのパートナーシップを構築する点から、多大なものであった。主な点は、
1) プロジェクト形成調査団へのNGOの参加
2) GIIプログラムおよびGIIの下で実施されている個別プロジェクトの見直しやモニタリングへのNGOの参画、また一部のODA関連プロジェクトをJICA/NGOの協力体制で実施(ヴィエトナム、ザンビアなど)
3) 国際会議への政府代表団としてのNGOの参加/政策提言の機会の増加
4) GII関連テーマの人材養成プログラム(FASID・JICAの研修等)の企画へのNGOの参画、および参加者としてのNGOの参加
5) GII最終評価調査へのNGOの参画
などがあげられる。他の分野・スキームでは考えられなかったような部分にまでNGOの参画が実現され、NGOにとっての新しい連携の可能性が次々と導入されていった。これらは決してNGOが政府側と対立し“勝ち取った”という類のものではなく、NGOの持つ視点や人脈、経験等が開発協力の現場で有効であるとの判断からODAとNGOとの連携の推進が必然的に図られた結果であり、その背景にはGO/NGO間の深い理解と、メンバーNGOによる南と北をつなぐ意欲があったことは忘れてはならない。
 この懇談会の成果を、当時の政策担当官は、
1) 対立関係にあると捉えられていたNGOとの信頼関係が育まれてきた。
2) NGOの実績、知見を理解する良いきっかけとなった。
3) 具体的にどういう連携が可能なのかを探るための判断材料が豊富に詰まっており、案件形成においても役立った。
と評価する。
 また、GIIを通したODA側への影響として、担当部署であった調査計画課だけではなく、無償資金協力課、技術協力課などとの連携が進んだほか、JICAや専門家等との連携も進んだというコメントが当時の担当官からあがっている。
 本章では、それらの官民協調の具体例を元に現場レベルおよび日本国内の両方に与えた影響、インパクトについて検証、ベストプラクティスからの教訓および今後の官民の連携における課題を洗い出している。

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