5.3 合同プロジェクト形成/評価調査
日本は、GIIの推進にあたり、各国援助機関との合同プロジェクト形成調査および評価調査を実施した。
5.3.1 合同プロジェクト形成調査
GII実施期間中における合同プロジェクト形成調査団の派遣国は5カ国である2。 この内、4カ国には、米国との合同プロジェクト形成調査団が派遣され、残りの1カ国には仏国との合同プロジェクト形成調査団が派遣された。すでに第1章で述べたように、GIIにおいては、日米連携の推進がもっとも重要なファクターの1つであるため、本評価調査は日米合同評価の形態で実施され、米国側は日米連携について評価を実施した(本報告書第4章参照)。このため、本節では、日米合同プロジェクト形成調査については概要を示すに留める。
(1)日米合同プロジェクト形成調査
日米合同プロジェクト形成調査団は、ザンビア、バングラデシュ、カンボディア、タンザニアの4カ国に対し派遣された。それらの調査団の派遣実施時期は、7年間のGII実施期間の後半3年間において集中している(表5.7)。
表5.7 GII実施期間における日米合同プロジェクト形成調査団の派遣
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出所:「日米合同プロジェクト形成調査団の派遣」(外務省ホームページ:www.mofa.go.jp) |
合同プロジェクト形成調査団には、外務省経済協力局職員、USAID職員(本部職員と現地職員)、JICA職員、コンサルタントの他に、NGO代表が参加した。UNAIDSから日本人職員(出向中)が参加した場合もあった。
a. ザンビア
ザンビアへの日米合同プロジェクト形成調査団は、以下の3分野を日米連携の候補分野とした検討し、合意した。
1) | HIV/AIDS対策及びリプロダクティブ・ヘルス(コミニュティー・ベースによる活動、ハイリスク・グループへの対策、「包括的リプロダクティブ・ヘルス計画」への支援) |
2) | 子どもの健康(EPI及びポリオ、学校保健、飲料水等) |
3) | システムの強化(人口・健康指標調査、健康関連情報管理システム等) |
b. バングラデシュ
日米合同プロジェクト形成調査団は、1) HIV/AIDS、2) ポリオ撲滅、3) EPI活動の促進、4) リプロダクティブ・ヘルス、5) 微量栄養素、6) 国際下痢症疾病研究センター(ICDDR,B)支援の6分野をバングラデシュでの日米連携における重点分野として検討した。リプロダクティブ・ヘルスについては、日米協力のモデルとして推進することで一致した。日本が各種スキーム(プロジェクト方式技術協力、無償資金協力、NGOへの支援)の組み合わせによる支援を推進し、UASIDは、コンサルタントの提供やNGOへの技術支援等で支援を推進することが検討、合意された。
c. カンボディア
日米合同プロジェクト形成調査では、人口・保健、感染症、母子保健に焦点を当て日米連携案件の発掘と形成を行った。調査団は、1) HIV/AIDS対策、2) 結核対策、3) HIV・結核重複感染症対策、4) マラリア他感染症・寄生虫症対策、5) 母子保健の5分野における今後の連携可能性を検討した。
HIV/AIDS対策としては、HIV感染が急速に拡大する中で、カンボディア政府の「コンドーム100%政策」に対する支持、国内移動労働者等に対する予防・啓発活動の促進、政府のHIV/AIDS対策戦略の枠組みの中でのNGO間の協力関係拡大に対する日米連携支援の実施可能性が検討された。母子保健対策としては、HIV感染した母親とその子どもや「エイズ孤児」への支援、EPI支援、ヘルス・スタッフの訓練に対する日米連携支援の実施可能性が検討された。
d. タンザニア
日米合同プロジェクト形成調査においては、1) 感染症対策、2)母子保健およびリプロダクティブ・ヘルス、3) 保健システムの質的向上の3分野を重点として、プロジェクトの実施可能性を検討していくことが合意された。
1) | 感染症対策には、HIV/AIDS及び他の性感染症対策と、エイズと結核の重複感染対策が含まれ4、前者においては、自発的カウンセリングー検査センターへの支援、エイズ啓発活動強化支援、安全な血液の供給、性感染症の診断治療等が連携対象候補となった。後者においては、国家結核対策プログラム支援と重複感染患者の治療拡大支援が挙げられた。 |
2) | 母子保健およびリプロダクティブ・ヘルスにおいては、ビタミンA補充プログラムへの支援やEPI支援等の他、家族計画や流産・中絶後ケアへの支援、妊産婦の梅毒検査への支援等が連携対象候補となった。 |
(2)日仏合同プロジェクト形成調査
セネガル
日仏合同プロジェクト形成調査が、日仏連携の推進に向けて1997年3月に実施された。この合同プロジェクト形成調査では、パリにおいても仏国側関係者との情報・意見交換を実施した。同調査において、今後の、1) 現地事務所間の定期的会合の開催、2) 血液供給に係る協力の推進等が日仏両国間で合意され、具体的には「国立輸血センター血液検査機材供与計画」が形成された。これは、仏国専門家が駐在し技術協力を行っているセネガル国立輸血センターに対し、日本は安全な血液供給を行うための機材を供与した草の根無償資金協力案件である。
5.3.2 合同プロジェクト評価
GII実施期間中における他援助国との合同プロジェクト評価団は、GII重点実施16カ国中3カ国(ザンビア、マダガスカル、フィリピン)へ派遣された。ザンビアにおいては米国との合同プロジェクト評価(1995年)が実施された。マダガスカルにおいては、仏国との合同プロジェクト評価が実施された。フィリピンにおいては、同じく仏国との合同プロジェクト評価(1995年)と、米国との合同プロジェクト評価(2001年)が実施された。
(1)日米合同プロジェクト評価5
a. ザンビア
日米合同プロジェクト評価団(1995年派遣)は、米国側プロジェクト「エイズ予防プロジェクト」の評価を行った。
b. フィリピン
日米合同プロジェクト評価団(2001年派遣、Part 1)は、フィリピンにおけるJICAのリプロダクティブ・ヘルス分野のプロジェクト(1992年度開始)の評価およびJICAとUSAID協調・協議実施に関する調査を目的としていた。この評価調査団(Part 1)派遣に続き、今後2回にわたり日米合同プロジェクト評価団が派遣される予定である。
(2)日仏合同プロジェクト評価6
日仏合同プロジェクト評価は、マダガスカルとフィリピンで共に1995年に実施された。2か国での評価は対をなすものであり、マダガスカルではフランスの案件、フィリピンでは日本の案件を評価している。日本側からは、外務省経済協力局職員、学識経験者、医療従事者が参加し、フランス側からは、フランス協力省職員、医療従事者が参加した。
a.マダガスカル
合同プロジェクト評価調査団は、フランスの案件「公衆衛生支援」プロジェクトを評価した。評価調査団が訪問したプロジェクト対象地域において、フランスは県中央病院および県保健局への支援と、県医療保守センターの設立支援を実施しており、日本が同じ県中央病院に対して無償資金協力による機材供与を実施した。これにより日仏連携が実現していた。
b. フィリピン
合同プロジェクト評価は、日本の「公衆衛生プロジェクト」(結核分野)を評価した。上記のマダガスカルにおける評価対象プロジェクトとは異なり、日仏連携は行われていなかった。
2 外務省ホームページwww.mofa.go.jp上の掲載文書「日米合同プロジェクト形成調査団の派遣」、JICA企画・評価部連携協力推進室、「JICAと仏国との連携」(平成11年12月8日)。一方、外務省経済協力局による「経済協力評価報告書」(平成9年6月)およびJICA企画・評価部連携協力推進室による文書「JICAとUSAIDとの連携」(リバイス平成13年9月)によれば、GII実施期間中におけるGII重点16カ国に対する合同プロジェクト評価団の派遣国は2カ国となっている。
3 企画調整員の派遣は、1999年に実現している。
4 これら2分野の他に、マラリアおよび他の寄生虫疾患対策が含まれる。
5 外務省経済協力局調査計画課資料より。
6 外務省経済協力局、『経済協力評価報告書』、平成8年、平成9年。外務省ホームページ、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/gai/h09gai/h09gai013.html 。