5.2 国際機関との連携
5.2.1 国連人口基金(UNFPA)との連携
我が国は、1996年より人口・家族計画特別機材供与によるUNFPAとのマルチバイ協力を実施し、リプロダクティブ・ヘルスに配慮した母子保健の改善、家族計画の普及に関する活動を支援している。UNFPAとのマルチ・バイ協力において、我が国は、原則4年間の協力期間で、1ヶ国につき年間2000万円を限度に、(1)避妊具・避妊薬、(2)母子保健用医療器具、(3)必須医薬品、(4)啓発普及活動用資材を、日本と相手国との二国間協力として供与している。UNFPAは、我が国が供与する機材の有効活用を図るため、当該国政府に対し指導、助言を行っている。UNFPAとのマルチバイ協力は、1999年度までの累積で、アジア諸国8ヶ国に総額4億2,000万円強、中南米・アフリカ諸国8ヶ国に総額4億4,000万円強にのぼる。
5.2.2 国連児童基金(UNICEF)との連携
我が国とUNICEFとの連携の形態は、主として(1)マルチバイ協力と、(2)UNICEF調達部を通じた資機材(ワクチンを含む)調達に分けられる。UNICEFとのマルチバイ協力は1989年から開始され、30数ヶ国以上を対象に、主に「予防接種拡大計画(EPI)」と「ポリオ根絶」への支援が行われた。マルチバイ協力における我が国とUNICEFの役割分担は、我が国が被援助国にワクチンやコールドチェーン等の機材を供与し、UNICEFはこれらの機材を効果的に活用するため、当該国政府に対し、ワクチンの配付計画や維持管理への技術指導、予防接種推進のための人材育成等に関する指導を行っている。
我が国は、マルチバイ協力によるワクチン、コールドチェーン等、機材の調達に際しては、UNICEFの調達部を通じて調達しており、その額は年間約20数億円近くに達している。
表5.4に、我が国とUNICEFとの連携実績の具体例について示す。
表5.4 日本とUNICEFとの主な連携実績
国名 |
年度 |
協力形態 |
協力分野 |
実施額 |
カンボディア |
1992-2000年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
3億8,400万円 |
ヴィエトナム |
1993-2000年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
2億7,000万円 |
ミャンマー |
1995-2000年度 |
マルチバイ協力 |
ポリオ対策:NID用ワクチン、コールドチェーン等機材供与 |
3億3,800万円 |
1994-1998年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
2億3,040万円 |
バングラデシュ |
1995-2000年度 |
マルチバイ協力 |
EPIコールドチェーン整備に係る機材供与 |
2億5,940万円 |
タンザニア |
1995-2000年度 |
マルチバイ協力 |
NIDおよびEPI用ワクチンの供与 |
2億400万円 |
ナイジェリア |
2000-2001年度 |
無償資金協力 |
「ポリオ撲滅計画」 |
5億3,000万円 (2000年度) |
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7億4,300万円 (2001年度) |
ケニア |
1989-1995年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
2億7,100万円 |
セネガル |
1996年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
2,800万円 |
2000年度 |
マルチバイ協力 |
ポリオ対策 |
4,000万円 |
ガーナ |
1991-1996年度 |
マルチバイ協力 |
EPI |
3億2,130万円 |
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出所:外務省調査計画課『我が国カンボディアの感染症対策』、『我が国ヴィエトナムの感染症対策』、『我が国ミャンマーの感染症対策』、『我が国バングラデシュの感染症対策』、『我が国のタンザニアの感染症対策』、『我が国のナイジェリアの感染症対策』、『我が国のケニアの感染症対策』、『我が国のセネガルの感染症対策』、『我が国のガーナの感染症対策』 |
5.2.3 その他の国際機関との連携
GII期間中の、世界銀行及びUNDPとのGII関連分野での連携実績を、それぞれ表5.5、表5.6にまとめた。連携の分野では、世界銀行とは初等教育(人口間接)の分野で、UNDPとはエイズ分野での連携協力が多い。連携の形態は、世銀、UNDP両機関との連携において、我が国が無償資金協力または専門家派遣を提供する場合が多い。
これら以外にも、我が国の他ドナーとの連携の例として、世界保健機関(WHO)が進める「ロールバックマラリア」への支援が挙げられ、我が国のWHOへの拠出金の一部にイヤーマークをつけることで、メコン川流域6ヶ国を対象とする「メコン川流域ロールバックマラリア」を支援している。また、2000年には、アジア開発銀行との連携で、ADB日本特別基金により、カンボジアの「HIV/AIDSキャパシティ・ビルディング」を支援している。
表5.5 JICAと世界銀行との主な連携案件
被援助国名 |
プロジェクト名 |
実施年 |
我が国の協力分担 |
世界銀行の協力分担 |
ヴィエトナム |
「北部山岳地域初等教育施設改善計画」(日本)
「Viet Nam-Primary Education Project」(世界銀行) |
1998年 1994年~2001年 |
無償資金協力 施設改善 |
1994~2001年、7,000万米ドル出資(日本の無償資金協力との間における地域分担) |
ネパール |
「第3次小学校建設計画」(日本)
「Nepal-Basic and Primary Education Project」(世界銀行) |
1998年
第1フェーズ: 1996~1998年
第2フェーズ: 1999~2004年 |
無償資金協力
・小学校建設
・施設改善等 |
バスケットファンドへの出資(1999~2004年、2,760万米ドルの出資を計画) |
パレスティナ |
「小学校教室建設計画」 |
1997年 |
無償資金協力 |
日本の無償資金協力プロジェクトとの間でプログラム・コンポーネントあるいは地域を分担 |
セネガル |
ギニア・ビサオ |
マリ |
モーリタニア |
グルジア |
「医療機材整備計画」 |
1998年 |
モザンビーク |
「シプトゥトゥニ教員養成校建設計画」 |
1997年 |
ガーナ |
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2000年 |
JICAの第3国研修と世界銀行開発援助研究所(World Bank Institute: WBI)の実施する研修事業との連携による共同セミナー「保健医療サービス改革」の実施 |
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出所:国際協力事業団企画・評価部援助協調室『世界銀行との協調の現状』2001年9月 |
表5.6 JICAとUNDPとの主な連携案件
被援助国名 |
プロジェクト名 |
実施年 |
我が国の協力分担 |
UNDPの協力分担 |
パキスタン |
UNAIDSプログラムに対する協力として
「エイズ対策・血液検査特別機材供与」(日本)
「Japan UNAIDS Collaboration」(UNDP) |
1997年 |
機材供与(「エイズ対策・血液検査特別機材供与」) |
・HIV/AIDS 検査、カウンセリングにかかるワークプランの作成 ・供与機材の活用状況モニタリングおよび評価 |
第一女性銀行に対する協力として 「中小企業振興」(日本) 「銀行運営」(日本) 「Women in Urban Credit」(UNDP) |
1998年 1999年 3月~6月 |
短期専門家派遣 ・「中小企業振興」(1名) ・「銀行運営」(1名) |
組織運営能力向上のための技術支援 |
インド |
「エイズ対策・血液検査特別機材供与」(日本) |
1997年 |
機材供与(「エイズ対策・血液検査特別機材供与」) |
日本側供与機材の活用に関するモニタリングおよび評価 |
フィリピン |
「女性職業訓練センター」(日本) 「Economic Empowerment of Women through Gender-Oriented Enterprise Development」(UNDP) |
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専門家派遣(WID 関連) 2名(1997年10月~1999年10月、1998年3月~2000年3月) |
・国内研修(将来的に地域研修、アジア・アフリカ研修への拡大)の実施 ・啓発活動への協力 ・UNV 派遣の実施 |
「エイズ対策」(日本)
「Increasing Awareness and Understanding of the Development Implications of HIV/AIDS」(UNDP) |
1996年 7月 ~2001年6月 |
プロジェクト方式技術協力 |
JICAプロジェクトの成果の普及・啓発に協力 |
「HIV感染およびエイズによる日和見感染症の実験室内診断技術」(日本) 「Promoting Multi-sectoral Approaches to HIV Prevention and Care」(UNDP) |
1997~2001年 |
第三国研修 |
研修の拡充に協力(アフリカからの研修生を招聘等) |
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出所:「JICAとUNDPとの協調の現状」(2001年9月6日、JICA企画・評価部援助評価室) |