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4.6 保健分野における今後の日米パートナーシップへの提言のまとめ

 日米コモン・アジェンダおよびGIIの本評価調査中に、両イニシアティブの意図や目的について多くの質問があった。本来、両イニシアティブでは政治的目的、次に経済目的をも達成するように計画されていたという認識があり、政治的目的は中央の東京やワシントンでは達成された。しかし現地では単独で援助を行った場合より大きな政治的インパクトがあったという証拠は少ない。実際、現地では支援の受け手やプロジェクト担当者からは、日米コモン・アジェンダやGIIとは何か、どのプロジェクトが両イニシアティブに属しているのか、どのように合同で計画・実施が行われ、計測・評価が行われているのかと、繰り返し質問を受けた。
 両イニシアティブには開発の意図や目的があったとすれば、たとえそれが明白でなかったとしても、中央でも、現地においても、良好な連携やインパクトがあったということが様々な例から明らかとなった。限られた例ではあるが、更に共同で計画され、完了したイニシアティブがあるのも事実である。現地では更に連携が進展する可能性が高く、連携を進めるべきであり、本調査でヒアリングを行った際にも、あらゆるレベルで連携へのコミットメントの意識は高いことがわかった。
 今後パートナーシップに関する正式な合意が両国の間に必要かどうかについては議論の余地があるが、両国の政治的目的が達成され、今後の連携が開発目標の達成に向かっているのであれば、おそらく正式な合意がなくとも、連携を進めていく準備は整っているであろう。バングラデシュやザンビアでの現地プロジェクトの合同計画・実施の成功例では、国家レベルの開発活動における今後のパートナーシップの方向性が充分示されている。
 本章前セクションの議論から導かれた以下の主な提言は、保健分野において共同で開発成果を達成していく手段として熟慮されるべきものである。今後検討されるべき重要な提言を以下に要約する。

グローバルレベルの提言
(1)政治的な合意は不要
 国レベルでの連携が進展している状況に鑑みると、上位レベルでの連携への方向づけや枠組みの設定、コミットメントは引き続き効果的であるが、将来ODAにおける日米連携について公式の政治的合意は必要ないように思われる。中央レベルよりも現地レベルでの合同計画や連携を重視していくべきである。

(2)注意を促し、インセンティブを与えるような連携を存続
 保健分野での日米連携は適切な状況の下で行われるべきである。すなわち、想定される負担についての対応策、付加価値やインセンティブを高めたり、連携の促進をサポートできるような企画をすることが重要である。

開発アジェンダへの提言
(1)開発アジェンダの重点化
 今後、ODAの保健セクターにおける日米連携は、開発課題に重点を置くべきであり、このようなグローバルな連携の効果を計測・記録できるよう明確な目標や目的を設定する努力をすべきである。これらの合同プロジェクトは両国民に説明責任を果たすため、また将来の連携に向けた教訓を記録するためにも計測可能なものでなくてはならない。

現地/国レベルでの提言
(1)現地レベルへの権限委譲、現地活動を調整する専門家スタッフの増員の必要性
 保健分野の緊密な連携を推進するために、JICA及びUSAIDはそれぞれの現地事務所に保健の専門家及び必要な人材を継続して配置することを促進すべきである。USAIDの現地ミッションは、日本側と定期的な交流を担当する保健分野の専門スタッフを少なくとも1名は配置すべきである。同様に、JICAの保健スタッフの業務内容には、USAID、他ドナー、被援助国政府のカウンターパートと日本のつなぎ役として日本ODAを調整することが含まれるべきである。

(2)国レベルで、援助形態毎の各担当を明確化する必要性
 日米両国は、各対象国での保健セクター支援の概要を作成の上、共有し、スタッフ、被援助国関係者に情報を提供すべきである。日本は保健分野のプロジェクトの担当者は誰なのか、また、どのような形の援助スキームが可能なのかについて明示すべきである。

プロセスへの提言
(1)人事交流の存続の促進
 パートナーシップを強化するためにも、今後ともJICAとUSAID間の人事交流や、USAID本部の人材を日米連携の促進担当として配置することを継続するべきである。JICA本部も同様に保健分野の日米連携担当スタッフを配置すべきである。

(2)SWAPへの参加のためのバスケット・ファンドは不要
 バスケット・ファンドとは関係なく、全てのドナーの計画が保健分野の対象国国家計画に反映されるよう、日米はセクター・ワイト・アプローチ協議で積極的な役割を果たしていくべきである。これは、将来日米連携のための新たな合意がなされるのか否かに関わらず、進められるべきである。

(3)広報活動促進の必要性
 日米の合意が明確に理解され、母国および対象国において国民の支持を得られるようにするためにも、将来の日米連携においては、国民との関係強化が含まれるべきである。


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