1.3 調査の方法
(1)現地調査と国内調査
GII評価調査は、文献調査とヒアリングを中心とする国内調査に加えて、GII対象国の中から国を選定して現地調査を実施した。現地では、質的情報を収集して調査に多面性を持たせ、GIIの評価をより適確なものとするために、関係者からのヒアリング、プロジェクト・サイトの訪問等を行った。
滞在期間は各国約1週間であったが、この間に、日本大使館、JICA事務所、連携のあるドナー(二国間、多国間)、当該国の保健セクターにおける主要ドナー(二国間、多国間)、プロジェクト方式技術協力の事務所やプロジェクト・サイト、連携のあるNGOの事務所やプロジェクト・サイト等を訪問し、調査を行った。このため、1機関もしくは1案件あたりの訪問時間は限定的にならざるを得なかった。さらに、今回の調査では調査の観点の異なる調査主体(外務省に調査委託されたコンサルタント、NGO、USAIDに調査委託されたコンサルタントが同一調査団に参加していたため、調査主体ごとの質問時間も限定された。
現地調査対象国の選定
GIIにおいてはアジア、中近東、アフリカ、中南米の各地域で協力が実施されたため、複数の地域を選定して現地調査を行った。これらの地域の中から日本の援助対象地域としてももっとも重要性が高く、GIIの実績の高いアジアと、次に人口・エイズ問題のもっとも深刻な地域であり、今後もIDI等の日本の協力へのニーズの高いアフリカを現地調査対象地域として選定した。
調査対象国は、日本のGII分野の各種実績に基づき、アジア地域から3か国(インドネシア、タイ、バングラデシュ)、アフリカ地域から1か国(ザンビア)を選定した10。選定の主要な理由は下記の通りである。
タイ
(2)日米の合同評価
GIIが発表されたのは1994年2月であるが、GIIは、その前年の1993年7月発表された「日米コモン・アジェンダ」と関連性が深い。「日米コモン・アジェンダ」自体は、分野としては、保健(人口・エイズ関連の課題はここに含まれる)以外に、地球環境、科学技術、麻薬やテロリズム等の人類社会の安定に対する挑戦にかかる分野等を対象としている。「コモン・アジェンダ」の発表後、人口・エイズに関する課題については日米の取組みが活発化し、日本がGII(期間中の7年間に30億ドルを投入するという金額明示付)を発表したことを受けて、アメリカもGII期間中の7年間に90億ドルを投入することを発表した11。
すでに1.1.2で示したように、日米両国がそれぞれの重点対象国(日本12か国、アメリカ14か国)を持ち、また、日米共通の重点国が8か国ある。日本は1997年の「中間報告」以降に、新たに4か国を追加した。
また、GII期間中には、日米の合同プロジェクト形成調査団が4か国に派遣され、合同評価調査団12が2か国に派遣された(詳細については、本報告書の第4章、第5章を参照)。
このように、GIIにおいては、日米連携は、もっとも重要なファクターの1つであるため、今回の評価調査には、アメリカ側が参加し、日米連携について評価を実施した。日米連携の重点国であるバングラデシュ、ザンビアの現地調査においては、米側のコンサルタントとUSAID職員のオブザーバー参加があった。アメリカ側は、調査結果を本報告書の第4章に記述している。
(3)NGOの調査への参加
GIIが対象とする人口・エイズ分野では、NGOによる草の根レベルでの活動の重要性が高く、GII事業においてもこれまで国内外のNGOとの各種連携の強化を目指した。それによって、日本のNGOとの連携は、事業実施における(プロジェクト形成調査へのNGOメンバーの参加も含む)連携以外に、1995年度以降、外務省とGIIに関心のあるNGOが定期懇談会である「GIIに関するNGO懇談会」(現在の名称は、「GII/IDIに関するNGO懇談会」13)を開催し、情報と意見交換、NGOの人材育成を行ってきた。
このように、GIIがNGOとの連携強化を目指した点と、日本のNGOが実際GIIに様々な形態で参加して来た点を踏まえて、GII評価調査には、「GII/IDIに関するNGO懇談会」からNGO代表が参加し、タイ、バングラデシュ、ザンビアの現地調査にも参加し、GIIにおける国内外のNGOとの連携について評価を行った。NGO代表は本報告書の第6章を執筆している。
(4)現地調査実施期間14および参加者
第1回現地調査
インドネシア | 2001年10月7日~14日 | |
タイ | 2001年10月14日~21日 | |
バングラデシュ | 2001年10月21日~29日 |
[評価調査団メンバー] | ||
阿部 貴美子 | 財団法人国際開発センター 主任研究員 (全行程参加) |
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本田 文子 | 同上 研究員 (全行程参加) |
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池上 清子 | 財団法人家族計画国際協力財団(ジョイセフ) 企画開発事業部長 (10月16日~29日) |
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Sallie Craig Huber | Principal Program Associate Management Sciences for Health (10月21日~29日) |
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[オブザーバー] | ||
永沢 浩之 | 外務省経済協力局調査計画課 課長補佐(当時) (10月18日~24日) |
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鈴木 あゆ美 | 国際協力事業団企画・評価部援助協調室 (10月21日~29日) |
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Timothy Meinke | Senior Advisor for Donor Coordination Center for Population, Health and Nutrition, Bureau for Global Programme U.S. Agency for International Cooperation (10月21日~29日) |
第2回現地調査
ザンビア | 2002年1月12日~21日 |
参加者
[評価調査団メンバー] | ||
阿部 貴美子 | 財団法人国際開発センター 主任研究員 (全行程参加) |
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高橋 径子 | 財団法人オイスカ 海外グループ 調査計画担当主任 (全行程参加) |
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Sallie Craig Huber | Principal Program Associate Management Sciences for Health (全行程参加) |
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[オブザーバー] | ||
國井 修 | 外務省経済協力局調査計画課 課長補佐 (全行程参加) |
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鈴木あゆ美 | 国際協力事業団企画・評価部援助協調室 (全行程参加) |
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Timothy Meinke | Senior Advisor for Donor Coordination Center for Population, Health and Nutrition, Bureau for Global Programme U.S. Agency for International Cooperation (全行程参加) |
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Richard Cornellius, | Senior Policy Advisor
Center for Population, Health and Nutrition, Bureau for Global Programme U.S. Agency for International Cooperation (全行程参加) |
10 当初、アフリカ地域では2か国を訪問することを予定していたが、現地サイドとの調整の結果、最終的に訪問国は1か国となった。
11 ジョイセフ、『GII(地球規模問題イニシアティブ)に関する中間報告書』(1994.4-1997.3)、1997年9月、P.4~7。
12 一部のプロジェクトに対する評価であり、最終評価ではない。
13 2000年の九州・沖縄サミットにおいて、日本が「沖縄感染症対策イニシアティブ(IDI)」を発表したことを受けて、この懇談会が感染症対策分野においても政府とNGOとの連携推進のため機能を持つこととなり、名称が「GII/IDIに関するNGO懇談会」に変わっている。
14 詳細日程および訪問先については、本報告書のAppendixを参照。