(2) 地球温暖化対策を主目的とするODA案件の要請状況
前項で述べた通り、被援助国政府における温暖化対策の優先度は低く、従って、温暖化対策を主目的とするODA案件の要請は、現時点ではほとんどないことが予想される。以下の現地調査ヒアリング結果は、これを裏付けている。
1) インドネシア国の在外公館や実施機関事務所におけるヒアリング結果
・ 温暖化対策を主目的とする要請は、現時点では皆無である。
・ インドネシアに係る開発関連ドナー間の会合においても、温暖化対策に係るテーマを話し合ったことは、これまでにない。
・ インドネシア国は、経済危機からの復興途上にあり、環境省以外のカウンターパートの温暖化対策に対する認識はかなり低いと思われる。
2)
中国の在外公館や実施機関事務所におけるヒアリング結果
・ 温暖化対策を主目的とする案件の要請はない。
・ 温暖化対策は、内容的に非常に幅広いため、それそのものが要請として出てくることはないだろう。
・ 中国におけるODA案件は、全て、中国政府が独自に策定している計画の重点課題に沿う案件を選定するようになっているが、温暖化対策というものが、先方の重点課題となっていないため、そのような案件が要請されることはない。
(3) 地球温暖化対策を副次的効果とするODA案件の要請状況
地球温暖化対策を副次的効果として持つODA案件、具体的には植林/緑化分野およびエネルギー転換/効率改善分野等のODA案件については、比較的、要請が多い傾向にあることが、以下のインドネシア国および中国におけるヒアリング結果では裏付けられた。
1) インドネシア国の在外公館や実施機関事務所におけるヒアリング結果
・ インドネシア国においては、数年後には電力需要量が供給量を上回り、安定的な電力供給が困難になると予測されている。従って、既存の発電所のエネルギー効率改善案件など、電力分野の要請は、引き続き多い。大使館としても、このような案件を積極的に取り上げて行きたいと考えている。
・ 2000年度案件として、植林無償案件を2件採択しており、今後も、このような協力を継続したい。
・ 植林分野においては、JICA個別専門家(政策アドバイザー)が、植林協力等の推進に大きく貢献している。これを踏まえて、植林分野の協力を積極的に推進していくことが考えられる。
2) 中国の在外公館や実施機関事務所におけるヒアリング結果
・ 対中国経済協力計画の基本方針は、「内陸部重視」ということである。環境分野の支援においても、これを基本とし、森林保全や水汚染対策等に重点を置いて協力を展開したいと考えている。
・ 間接的に温暖化に貢献する案件(特に植林分野)については、多くの案件を実施中であり、この分野については、大使館の指導のもと、今後も積極的に協力を展開していきたいと考えている。
・ 環境保全は、対中国経済協力計画の重点課題の一つとして位置づけられている。これを受け、大使館の指導のもと、JBICとしても、今後、環境保全に積極的な支援を行いたいと考えている。
・ 植林/緑化分野においては、中国林業局の6つの重点課題のうち、主に「2.退耕環林」「3.三北長江中下流防護林」の二つを中心として取り組みたいと考えている。
・ 削減タイプの案件としては、これまで、小型ボイラーの改良、都市ガス化、地下鉄建設等の案件において協力実績があるものの、今後は、よりグリーン・イシューに重点を置く方針である。
・ 中国の電力セクターは、最近、発電部門と配電部門の分社化が決定するなど、現在、流動的な状況にあるので、中国側の体制が固まるまでの当面の間は、動向を見極めるに留まる。