(1) 地球温暖化対策関連ODAに係る政策体系
地球温暖化対策の視点から、温暖化対策ODAを体系化したものは以下の通りである。温暖化対策ODAの政策評価については、基本的にこの体系を基に進める。
図 温暖化対策ODAの政策ツリー
![]() |
出所)野村総合研究所作成 |
(2) 京都イニシアティブについて
1) 京都イニシアティブの概要
「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」の行動計画に基づく、地球温暖化対策に係る途上国支援策の基本方針で、1997年12月の気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)の場にて発表された。
<重点項目>
・ 人づくりへの協力:平成10年度から5年間で、地球温暖化対策関連分野において、3000人の人材育成に協力する。
・ 最優遇条件による円借款の実施:「利率0.75%、返済期間40年」の円借款を、省エネルギー、新・再生可能エネルギー、森林の保全造成分野に対して実施する。
・ 我が国の技術・経験の活用・移転:工場診断調査団の派遣、技術情報ネットワークの整備、途上国の実情に適合した技術の開発・移転、ワークショップの開催を通じて、我が国の公害・省エネ対策の技術移転を行う。
![]() |
出所)外務省資料より野村総合研究所作成 |
2) 京都イニシアティブの位置付け
外務省の「政府開発援助に関する中期政策」の7つの重点課題の一つに、「4.地球規模問題への取組」が位置付けられている。また、その中のサブテーマの第一番目に、「(1)環境保全」が掲げられており、特に地球温暖化対策については、「京都イニシアティブに基づき、協力を積極的に推進していく」と述べられている。
また、「京都イニシアティブ」を受け、「植林無償」と「クリーンエネルギー無償」の統合により、「地球環境無償」という無償カテゴリーが創設された。これについては、次の(3)で詳述する。
3) 京都イニシアティブの支援規模
外務省経済協力局が、COP6再会合における広報資料として作成したパンフレットによると、約8,670億円となっている。
(3) 「地球環境無償」について
1) 「地球環境無償」の概要
「地球環境無償」は、平成13年度に、「植林無償(平成10年度創設)」と「クリーンエネルギー無償(平成12年度創設)」に、大気汚染/水質汚濁対策、生態系保護関連分野を追加して、新たに創設された予算枠である。
「地球環境無償」の対象となる案件は、以下の通りである。
|
||||||||||
出所)外務省-地球環境無償実施ガイドライン(H.13年8月)」より野村総合研究所作成 |
2) 「地球環境無償」予算の位置付け
無償資金協力全体の体系は、下図に示す通りであり、地球環境無償は、一般無償→一般プロジェクト無償に属している。
図表 無償資金協力全体の体系
![]() |
出所) 各種資料より野村総合研究所作成 |
3) 「地球環境無償」の予算規模
平成13年度の無償資金協力の全体予算は、約2,320億円であり、うち「地球環境無償」の予算額は50億円で、無償資金協力全体予算の約2%を占める。平成12年度の無償資金協力の全体構成比、同一般無償の構成比、および同一般プロジェクト無償の構成比を下図にそれぞれ示す。
![]() |
出所)各種資料よりNRI野村総合研究所作成 |
図表 平成12年度一般無償の構成比
![]() |
出所)各種資料よりNRI野村総合研究所作成 |
図表 平成12年度一般プロジェクト無償の構成比
![]() |
出所)各種資料よりNRI野村総合研究所作成 |
4) 「地球環境無償実施ガイドライン(平成13年8月)」の活用状況について
本ガイドラインは、案件選定の際の執務参考資料として活用されるべく、外務省無償資金協力課が作成したもので、各国大使館に配布されている。今回、在インドネシア国日本国大使館および在中国日本国大使館でヒアリングを行ったが、ガイドラインが策定されてから余り時間が経過していないこともあり、「要請案件の検討時期との関係により、未だ活用したことはない。」という状況であった。