広報・資料 報告書・資料



4. 今後のエジプトにおける水供給開発の方向性と我が国支援のあり方

(1)水供給開発の方向性

 世界の水道事業の方向性は明らかに民営化に向かっており、エジプトが多額の外国援助を受けながら際立って手厚い補助金政策を永遠にとりつづけていくわけにはいかないであろう。パッチワーク的・対症療法的な構図に入りこんでいる無償資金協力から、貧困層対策に配慮した水道事業民営化構想を視野に入れた人間開発型・社会開発型の自立性をうながす方向の援助スキームを共に模索すべきである。
 大都市圏における水供給は開発(施設建設)と、施設管理、運営管理、危機管理などのマネージメントが一体になって、はじめて人々の手元に安全な水が安定して供給される。よって施設整備偏重・給水量拡大妄想型の従来型開発プロジェクト方式のみに固執することなく、水管理(マネージメント)を包括するプログラム型の援助スキームに方向性を転換して、積み重なる問題点と課題を再整理してプロジェクトのフレームと目標を再構築すべきである。
 地域レベルでは、首都圏カイロに集中してきた水供給援助スキームを、貧困問題と直結する南部(村落)地域および環境汚染問題が深刻化することが懸念されているナイルデルタ地域に移行させ、内容レベルでは、集中型の大都市水道整備から地方小都市水道、簡易水道、村落給水に援助スキームの重点を移す方向性に着目すべきである。

(2)我が国支援のあり方

 外国援助待ちの水道施設拡張計画を見直し、自立した水道計画を立てて推進できるような水道事業体の財政を健全化するために、民営化を視野に入れて早急に料金精度の見直しと管理組織制度の再編成に取り組むためのキャパシティービルディングに向けたソフト型の技術協力にも目を向けるべきである。
 カイロ大都市圏における水不足とは、漏水と無駄使いが放置されているために、末端や高台で断水もしくは水圧不足が生じる現象である。今日までの水道のマスタープランは極論すれば無限に?増大する需要を前提とした施設拡充型の開発計画であり、無限に拡張工事を必要とする社会構造をつくってしまう恐れがある。すでにカイロ首都圏の水道は平均一日一人当たり300リットルの送水能力を有しているが、実際に市民が使用している実使用量は100リットルであることを考えると、地域的アンバランスの問題はあるにせよ、施設拡充による大都市の給水量の一方的な増大に単純に呼応することは、見かけの数値上の裨益効果があるにせよ、少なくとも今後は縮小すべきである。
 施設拡張主義の妄想にとらわれることなく、限られた資源と施設を有効に効率的に利用するための自立型のマネージメントが必要である。エジプトに限らずアラブ諸国全般的に共通してマネージメントができていないために色々な問題に対応できていない。エジプト側もマネージメントが必要であることは承知しているし問題であると認識している。

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る