本章では「重点課題」「地域別援助のあり方」「援助手法/実施・運用上の留意点」それぞれの評価結果を述べた上で、それらを総括する。
3.1 「重点課題」の妥当性及び有効性
(1)妥当性
「重点課題」の内容は、概ねODA大綱または開発ニーズと関連しており、全体として妥当性は高いものと評価できる。「薬物」は整合度が高いとは言えないものの、「経済・社会インフラ」「環境保全」「人口・エイズ」「アジア通貨・経済危機の克服等構造改革支援」「紛争と開発」「債務問題への取り組み」は整合度が高いと言える。各課題別の検証内容は以下のとおりである。
(イ) | 貧困対策や社会開発分野への支援
a. 基礎教育 中期政策の内容とODA大綱との関連度合いは適度であると言える。ODA大綱は「基礎教育」という形で明示していないが、ODA大綱の「基礎生活」分野の中の主要分野であると考えられる。 開発ニーズとの関連度合いは高い。国際社会は、基礎教育に対する政策プライオリティを急速に拡大させており、2001年の同時多発テロ以降、開発における基礎教育の重要性が国際的にさらに強調されつつあり、現在の国際社会の動向との関連度合いは高い。かつ、基礎教育は世界教育フォーラム(2000年)、第2回アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on Africa's Development II: TICAD II)(2002年)、サミット等の多数の国際会議で採り上げられており、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)にも含まれている。 b. 保健医療 ODA大綱との関連度合いは適度である。「基礎教育」と同様に、ODA大綱は「保健医療」という形で明示していないが、ODA大綱の「基礎生活」分野の中の主要分野であると考えられる。 開発ニーズとの関連度合いについては、比較的高い。プライマリー・ヘルス・ケアの重要性は様々な国際会議や共同声明で確認されており、MDGsにも含まれている。今後の課題として、MDGsで掲げられているような目標を織り込むことが検討されるべきであろう。 c. WID・ジェンダー ODA大綱との関連度合いは低い。その理由は、ODA大綱では「効果的な実施のための方策」において「開発への女性の積極的参加」と言及されているものの、「重点分野」の中では明示されていないためである。但し、WID・ジェンダーについては、そもそも「重点分野・課題」の中に位置付けられるべきか、あるいは「方針」の中に位置付けられるべきかという問題がある。 開発ニーズとの関連度合いは高い。国際社会は1995年の「第4回世界女性会議」を初め、途上国における女性支援に対する政策プライオリティを度々確認しており、現在の国際社会の動向との関連度は高い。また、草の根レベルでの開発ニーズも高い。なお、現行の中期政策では「WID」に重点が置かれており、「ジェンダー」に関する議論は若干弱い感がある。 |
(ロ) | 経済・社会インフラへの支援 ODA大綱との関連度合いは高い。中期政策の「経済・社会インフラへの支援」はODA大綱の中の「インフラストラクチャーの整備」に該当する。 開発ニーズとの関連度合いは、アジアでのニーズとの関連度合いという点では高いと評価でき、国際的なトレンドを考慮した場合には適度といえる。アジアについて言えば、産業高度化のため、経済・社会インフラ整備に対するニーズは依然として根強い。一方、国際的なトレンドをみると、低所得国への支援に関する議論の重点は社会開発に移行している。また、中所得国への支援についても開発アプローチに(PFI等の議論が出てくるなどの)変化がみられる。しかし、アジア通貨・経済危機等の影響から民間資金の開発途上国への流入量自体が減少しており、また民間資金が向かう地域や分野に偏りがあるため、中所得では同様に経済社会インフラへのODAニーズは強く、低所得国への支援についても近年、貧困削減とインフラのリンケージ等から経済・社会インフラ整備の重要性が見直されつつある。 |
(ハ) | 人材育成・知的支援 a. 人材育成 ODA大綱との関連度合いは高い。ODA大綱では「人造り及び研究協力等の技術の向上・普及をもたらす努力」の中心的課題として人材育成の重要性が明記されている。 開発ニーズとの関連度合いは比較的高い。ASEAN首脳会議、国連貿易開発会議(United Nations Conference on Trade and Development: UNCTAD)等の国際会議で採り上げられており、地方分権化が進展する中で地方人材育成のニーズも高まっている。今後は、統治の強化や地方分権化といったトレンド、或いはローカル人材の活用や人材育成の現地化といった新しいニーズに対応していく必要があろう。 b. 知的支援 ODA大綱との関連度合いは適度であると言える。ODA大綱には知的支援に係る方針が明示的に記載されているわけではないが、「アジアの開発経験の活用」等、関連性があると考えられる記述も見られる。 開発ニーズとの関連度合いも適度である。途上国が経済運営、法整備・執行、財政管理や成果を重視した行政活動を行えるようにするためには知識の提供が不可欠である。また、九州・沖縄サミットにおいてIT分野における知的支援が表明されるなど、国際的な議論もある程度存在した。 c. 民主化支援 ODA大綱との関連度合いについては適度である。ODA大綱の重点項目には民主化支援について明示的な表現はないが、大綱では「民主化の促進」が謳われており、この部分から関連性があると考えられる。但し、「援助を実施する場合に、当該国が民主化している」というODA大綱の原則は、「民主化を援助の目的とする」という意味ではない点に留意すべきである。 開発ニーズとの関連度合いは比較的高い。その理由として、民主化は冷戦後の国際的な流れであり促進すべき事項であること、特に移行経済諸国や戦後復興諸国でニーズが高いこと、が挙げられる。 |
(ニ) | 地球規模問題への取り組み a. 環境保全 ODA大綱との関連度合いは高い。環境保全は、「地球的規模問題への取り組み」の重要課題であり、ODA大綱では明示的に表示されている。 開発ニーズとの関連度合いも高い。国際社会による環境保全の必要性に対する認知は高い。また、地球規模問題への取り組みは、DAC新開発戦略、MDGsにおいても重視されている開発ニーズであり、国連環境特別総会等、多くの会議で採り上げられている。 b. 人口・エイズ ODA大綱との関連度合いは低い。「感染症対策」としては「地球的規模問題への取り組み」の重要課題となっている。但し、ODA大綱では人口については明記されているが、エイズについては明示的な記載がない。 開発ニーズとの関連度合いは高い。人口・エイズ問題は国際会議等で活発な議論が行われており、MDGsにおいても採り上げられている。 c. 食料 ODA大綱との関連度合いは低い。地球的規模問題への取り組みの重要課題であるが、大綱に明示的な記載がない。 開発ニーズとの関連度合いは高い。途上国によって状況は異なるものの開発のための基本的なセクターであり、また、途上国のニーズは継続的に存在する。 d. エネルギー ODA大綱との関連度合いは低い。地球的規模問題への取り組みではあるが、ODA大綱に明記されていない。 開発ニーズとの関連度合いは、適度である。環境問題との関連等、国際的にも重要性が認知されている。しかし、重要国際会議では採り上げられていない。また、中身は環境問題に近い。例えば、本項目にCO2の排出の問題等がここでいう「エネルギー」に含まれていれば、国際的に認知されている分野と見ることは可能である。 e. 薬物 ODA大綱との関連度合いは低い。地球的規模問題への取り組みではあるが、ODA大綱に明記されていない。 開発ニーズとの関連度合いは適度である。一部の途上国ではニーズは継続的に存在し、国際社会においてもある程度議論されている。 |
(ホ) | アジア通貨・経済危機の克服等構造改革支援 ODA大綱との関連度合いについては適度である。ODA大綱には明示的な記載はないが、重点事項に「アジア地域の経済発展を維持・拡大することが世界経済の発展に対して重要である」との記載があり、この点との整合性がある。また、重要項目の構造調整等にも関連する事項である。 開発ニーズとの関連度合いは高い。アジア通貨・経済危機への対応は重要かつ緊急な課題であり、ニーズへの合致度は高い。ASEAN首脳会議等でも取り上げられている。 |
(へ) | 紛争・災害と開発 a. 紛争と開発 ODA大綱との関連度合いは低い。紛争と開発は重要な課題ではあるが、ODA大綱に明記されていない。 開発ニーズとの関連度合いは高い。多くの途上国が国内紛争を抱えており、平和の構築は重要なニーズである。なお、この分野は2000年の九州・沖縄サミットで採り上げられ、2001年の同時多発テロ以降、一層注目されるようになった分野であるが、中期政策の策定時点(1999年)でこの項目を盛り込んでいたという点も評価に値する。 b. 防災と災害復興 ODA大綱との関連度合いは低い。基礎生活分野等の緊急課題であるが、ODA大綱には明記されていない。 開発ニーズとの関連度合いについては適度である。他の分野よりも自助努力が難しい分野であり、災害発生時に国際協力により対応する必要がある。このような観点から開発ニーズとの関連はあると言える。但し、一方では災害等の緊急援助が主であるため、予め「開発ニーズ」として議論しておくものではないという考え方も可能である。 |
(ト) | 債務問題への取り組み ODA大綱との関連度合いは高い。債務問題への取り組みは、ODA大綱の「構造調整等」に該当し、累積債務問題の解決に向けた適切な支援の記載が見受けられるからである。 開発ニーズとの関連度合いも高い。その理由として、ケルン・サミット、TICAD II等で採り上げられている点、重債務国でのニーズが高い点、特にサハラ以南のアフリカ諸国においては開発計画における重要課題として位置付けられている点、が挙げられる。 |
(イ) | 貧困対策や社会開発分野への支援 a. 基礎教育 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。成長のための基礎教育イニシアティブやTICAD II等、様々なイニシアティブに基礎教育支援の姿勢を反映させてきている。 投入実績については、やや不十分である。従来のトレンドから比較すると金額的に多く、JICAにおいてはこの分野の調査研究等が活発化している。しかし、他の重点課題と比較して相対的に多いわけではない。 b. 保健医療 中期政策の内容は分野別イニシアティブに比較的よく反映されている。イニシアティブの例としては、沖縄感染症対策イニシアティブ、対アフリカ支援イニシアティブ、橋本イニシアティブ等があり、バーミンガム・サミット、TICAD II等の国際会議でも表明されている。 投入実績は不十分である。派遣人員の4分の1が保健医療分野であり、人的投入が多く、目に見える貢献をしたと言える。また、JBICにおいても案件が着実に形成されつつあり、JICAにおいてはこの分野の調査研究が活発化している。しかし、金額的に見ると援助実績は伸びていない。特に円借款の実績は、1件当たりの金額が大きいため減少幅が大きくなる傾向があることを考慮しても、著しく落ち込んでいると言える。 c. WID・ジェンダー 中期政策の内容は分野別イニシアティブに比較的よく反映されている。イニシアティブの数が少なく、95年の北京会議以降の国際的な議論の進み方を見ると、国内の議論をより深化させる余地はあったのではないかと考えられる。しかし、北京会議にあわせて「途上国の女性支援イニシアティブ」が発表され、それ以降の基礎教育や保健関係の政策文書においても言及されていること、JICAにおいてもジェンダー分野の調査研究等が活発に行われていることは評価できる。 イニシアティブの表明や専門家の育成などには相当の努力が払われており、金額も人的投入も十分大きいものの、それに相応しい予算の伸びにはつながっておらず、投入実績は不十分である。 |
(ロ) | 経済・社会インフラへの支援 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されているとは言えない。イニシアティブとしては「国際的な情報格差に対する包括的協力策」があるが、我が国の「経済・社会インフラ支援」の中心である道路・港湾・電力等の分野におけるイニシアティブはほとんどない。PFI等についても十分な議論を行い、十分な理論を構築した上でインフラ支援の重要性を積極的に主張すべきであったと思われる。 投入実績は比較的多い。トレンドとしては減少傾向にあるが、中期政策の重点課題の中では投入金額的が最も多い。また、JICA・JBICにおいてはこの分野の調査研究が活発になされ、質の高いインフラ整備に向けた基盤が整備されている。 |
(ハ) | 人材育成・知的支援 a. 人材育成 中期政策の内容は分野別イニシアティブに比較的よく反映されている。対アフリカ支援イニシアティブ、日・ASEAN総合人材教育プログラム、TICAD II、UNCTAD Xでの表明等、数多くのイニシアティブに反映されていることは評価できるが、地方分権等、比較的新しい分野の人材育成について方針を示したようなイニシアティブはない。 投入実績については、適度である。投入規模が大きく、人材育成を目的とした借款や国費留学生、長期研修員制度等の投入も伸びているからである。また、プロジェクト型の取り組みも特に地域協力ネットワークを形成する方向で進展している。しかし、今以上に投入量を増やす余地はあると思われる。 b. 知的支援 中期政策の内容は分野別イニシアティブへ適度に反映されている。実際に、二国間援助では、チリ国地域経済開発・投資促進支援、ミャンマー国経済構造調整政策支援、インドネシア経済政策支援等の取り組みがあり、また、TICAD等の場で知的支援について言及してきた実績がある。しかし、多国間国際会議等で表明したイニシアティブはない。 投入実績については、やや少ない。プロジェクト数が増加傾向にあり、様々な努力が重ねられてはいるが、重点課題というには実績が少な過ぎる。日本は、人的投入は多いが、質的に対応できる援助をしていたのかは疑問である。他の重点課題と重複するためか、投入が明示できない点も指摘しておきたい。 c. 民主化支援 中期政策の内容は分野別イニシアティブへ適度に反映されている。「民主的発展のためのパートナーシップ」により実質的な議論が開始した点は大きく評価されるべきだが、欧米に比してイニシアティブが少ない。 投入実績は不十分である。確かに、件数は徐々に増えているが、「重点課題」である割には金額的及び人的投入が未だ少ないためである。 |
(ニ) | 地球規模問題への取り組み a. 環境保全 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。21世紀に向けた環境開発支援構想、温暖化対策途上国支援構想、持続可能な開発のための環境保全イニシアティブ、日米水協力「きれいな水を人々へ」イニシアティブ、日本水協力イニシアティブ等、多くのイニシアティブに反映されている。 投入実績についても十分である。投入金額は十分に多く、基盤整備のための調査研究・指針策定等の活動が非常に活発である。 b. 人口・エイズ 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ、沖縄感染症対策イニシアティブ等に反映されている。 投入実績については、ほぼ十分と言い得る。投入量が多く、JICAでは将来の拡充に向けての調査研究が活発に進められている。しかし、イニシアティブを多数表明していることを考えると、より大きな投入がなされていても良いのではないかと思われる。 c. 食料 中期政策の内容は分野別イニシアティブに反映されているとは言えない。JICAによって課題別指針がまとめられているものの、イニシアティブは特になく、アプローチ等についても十分な議論がなされているようには見受けられない。 投入実績は十分である。金額も人的投入も多いが、援助の中身については議論する必要がある。これ程の金額を出していることを考慮すると、世界の議論をもっとリードし得たのではないかとの見方もできる。 d. エネルギー 中期政策の内容は分野別イニシアティブに反映されているとは言えない。多国間の会議等で表明したイニシアティブがないためである。 しかし、投入実績は十分である。金額は多く、基盤整備のための調査研究は着実になされており、特にJBICの取り組みは活発である。 e. 薬物 中期政策の内容は分野別イニシアティブに反映されているとは言えない。多国間の国際会議等で表明したイニシアティブはアジア薬物対策東京会議コミュニケのみであり、十分とは言えない。 また、投入実績についても、金額的にも人的にも投入が少なく、不十分である。 |
(ホ) | アジア通貨・経済危機の克服等構造改革支援 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。新宮沢構想、小渕イニシアティブ等が提唱されている。 投入実績も十分である。投入金額は十分であると判断し得る。投入が過大という見方もあるが、この程度の投入を行わなければ効果が発現しなかったと考えられる。 |
(へ) | 紛争・災害と開発 a. 紛争と開発 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。特に、対人地雷の人道分野における国際協力のためのガイドライン、対人地雷条約の締結、対人地雷関連支援、「紛争と開発」に関する日本からの行動(アクション・フロム・ジャパン)等のイニシアティブに反映されていることは評価できる。但し、国内での議論が不十分であり、紛争に対する理解は未だ低いことを考えると、これらのイニシアティブをより活用すべきではないかと思われる。 投入実績についての評価は意見が分かれた。まず、投入量が大きく伸びていること、JICAにおいても課題別指針の策定や調査研究が活発に行われていること、さらに、日本に比較優位がない状況のなかでそれなりに投入ができていると判断されること、などから実績は十分であるとも考えられる。一方で、非常に重要な問題であり、中東等を含めて非常に大きなニーズがあること、紛争以降の開発に継続性を以って取り組む必要があることを考えると、金額的・人的投入がともに少ないとする見方もある。 b. 防災と災害復興 中期政策の内容は分野別イニシアティブへ適度に反映されている。緊急に必要となるものであり、予め多国間国際会議等で表明することは難しいと考えられる。 投入実績については適度である。大規模な災害等に対応して、適時に適度な投入を行っていると考えられる。 |
(ト) | 債務問題への取り組み 中期政策の内容は分野別イニシアティブに十分反映されている。「重債務貧困国に対する開発と債務救済に関わる包括的取り組み」のイニシアティブ等があり、かつサミット等で、繰り返し我が国のスタンスが説明されている。 投入実績も、金額的にみて十分な投入がなされていると判断される。 |
(イ) | 東アジア地域 ODA大綱との関連度合いは高い。ODA大綱では「アジア地域に重点を置く」としており、東アジア地域、ASEAN諸国の経済発展を維持・拡大することが世界経済の発展に重要であると述べられている。 開発ニーズとの関連度合いは比較的高い。東アジア地域には、貧困対策や社会開発分野への支援や経済・社会インフラ整備を中心に様々な開発ニーズが継続的に存在している。社会的弱者の支援については、東アジアには中所得国が多いことからその必要性が低いという見方もできるが、経済的格差が拡大している事実もあり、ニーズはあると言える。また、アジア通貨・経済危機の克服と経済再生にかかるニーズは大きかった。中期政策はこれらのニーズをよく反映していると言える。 |
(ロ) | 南西アジア地域 ODA大綱との関連度合いは高い。中期政策では、南西アジア地域の貧困削減を重点課題として掲げており、これはODA大綱に記載された課題と大体整合している。但し、ODA大綱では「アジア地域」と総称されており、南西アジアに対する援助方針は明示的ではない。 開発ニーズとの関連度合いは比較的高い。同地域は貧困削減関連のニーズが高く、多くの人口を抱える同地域における貧困削減と貧困層の生存確保のための支援は重要である。また、同地域は経済運営の変革・産業振興のための人材育成・経済社会インフラの整備へのニーズが高い。同地域の人口の増加に伴う環境への圧力は大きく、環境保全は重要な課題である。貧困削減と経済インフラが併記されており、国際会議・国際機関等の報告でも、この地域の開発ニーズは貧困削減や民間活動の支援にあり、関連度は高い。 |
(ハ) | 中央アジア・コーカサス地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱では「中央アジア」とは明記されていないが、アジア地域の中に含まれると解釈でき、人造りや環境が重視されている。 開発ニーズとの関連度合いは比較的高い。この地域では、民主化・市場化といった体制移行のための制度づくり、人材育成、経済インフラ等へのニーズが高い。また、旧体制からの移行に伴う社会的な問題への対応も課題となっており、中期政策の内容はこれらのニーズに合致している。 |
(ニ) | 中東地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱では中近東は例示されているだけに過ぎず、具体的な記述はないが、ODA大綱の掲げる平和主義や、環境の重視がこの地域の重点支援分野の選択に反映している。 開発ニーズとの関連度合いは適度である。脱石油のための経済多角化、低所得国への社会インフラ、平和プロセス支援等、多方面のニーズに対応している。特に中東和平プロセスへの支援は重要な課題である。経済社会インフラ整備、国内技術者層の育成、投資促進のための環境整備、環境保全対策への支援へのニーズは継続的に存在する。しかしながら、中期政策策定以降にアフガニスタンやイラクの復興支援や難民対策という国際的に危急の課題が現出しており、今後、こうしたニーズに対応する必要がある。 |
(ホ) | アフリカ地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱上、アフリカ地域は例示されているだけに過ぎず、具体的な記述には欠けている。しかしながら、「特に、後発開発途上国へ配慮する」という記述もあり、また大綱の人道主義の観点からもアフリカ地域への援助は説明されると解釈できる。また、貧困対策、環境、人造り、経済的自立、紛争予防等への支援という中期政策の重点項目は、ODA大綱の精神と一致する。生産セクターへの支援もODA大綱に対応している。 開発ニーズとの関連度合いは高い。TICADやサミット等の国際会議の場で議論されてきたアフリカ開発の課題と中期政策の重点課題は基本的に一致している。アフリカにおいては紛争国が多く存在しており、民主化・紛争後の復興支援へのニーズは高い。但し、基礎教育の普及・エイズ対策・水対策が国際的に注目されている状況の中で、貧困対策や社会開発への支援、砂漠化対処に対する支援については中期政策は言及していないことから、この点は改善されるべきである。 |
(へ) | 中南米地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱上、中南米は例示されているに過ぎず、具体的な記述には欠けている。しかしながら、中期政策にはODA大綱の「重点項目」のほとんどが含まれている。 開発ニーズとの関連度合いは適度である。国際的には、1990年代の民主化及び経済改革の進展を確実にすることが重視されており、この点は中期政策の内容と合致している。また、経済改革の進展に伴い、格差の是正が課題となっており、南米南部共同市場(Mercado Comun del Sur: MERCOSUR)等の広域的な取り組みが進められている。また、基礎インフラ整備のニーズが多い。 |
(ト) | 大洋州地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱上、大洋州地域は例示されているに過ぎず、具体的な記述に欠けているが、中期政策に掲げられているこの地域の重点課題は、ODA大綱の重点事項と合致している。 開発ニーズとの関連度合いは適度である。島嶼国として経済基盤は弱く、潜在的に支援の必要性は高い。社会経済インフラ等にニーズがあり、民間部門振興のための人材育成を支援しているのは評価できる。また、大洋州においては「拡散性・地理的隔絶性」に配慮することが適切に重視されている。他の記述も適度に大洋州の開発ニーズを反映している。 |
(チ) | 欧州地域 ODA大綱との関連度合いは適度である。ODA大綱上、欧州地域は例示されているに過ぎず、具体的な記述に欠けているが、中期政策に書かれているこの地域の重点課題は大綱の重点事項と合致している。 開発ニーズとの関連度合いについては適度である。市場経済の移行に伴い経済制度の変革、環境対策等のニーズはあり、中期政策においても記載されている。旧ユーゴスラビア諸国の民主化の進展を確実にすることは重要である。市場経済への移行、環境保全・インフラ復旧・復興支援等は国際的にもこの地域の開発ニーズとされる。 |
(イ) | 東アジア地域 中期政策の内容は国別援助計画等で適度に具体化されている。東アジア16ヵ国のうち国別援助計画は6ヵ国、国別援助方針は8ヵ国で策定されているが、数としてはやや少ない感がある。しかし、それぞれのアジア通貨・経済危機克服、社会的弱者の支援、人材育成、制度づくり、環境保全・農村開発・地域協力等の中期政策の方針は、国別援助計画、国別援助方針に当該国の発展段階に従って盛り込まれている。 投入実績についてはほぼ十分である。東アジアは地域別では最も投入実績は多い。支援の重点地域であり、特にアジア通貨・経済危機克服と経済再生支援に積極的な投入が行なわれたことが伺える。1999年の実績は大きく、また、二国間援助に占める割合も高く、日本が重視している姿勢が読み取れる。1999年を境に援助額及び割合ともに漸減しているが絶対額は大きく、援助内容の見直しも進んでいる。 |
(ロ) | 南西アジア地域 中期政策の内容は国別援助計画等でよく具体化されている。中期政策の支援の方針は国別援助計画・方針に各国の状況を踏まえつつ反映されている。なお、南西アジア7ヵ国中、国別援助計画策定国は1ヵ国に過ぎないが、国別援助方針は5ヵ国分が策定されている。 投入実績についての評価は十分とも、適度とも評価できる。量的には、地域別では2番目に投入実績が多い。日本はこの地域に対して特に運輸・通信分野で相当の協力を行っており、これは中期政策の「投資促進に資する環境整備」に当たると思われる。一方、中期政策に明示されている貧困対策各分野の展開は十分ではない。なお、「運輸・通信等、金額の大きい分野が中期政策に例示されていないのは違和感がある」との意見があった。 |
(ハ) | 中央アジア・コーカサス地域 中期政策の内容は国別援助計画等で十分具体化されているとは言えない。当該地域8ヵ国に対して、国別援助計画、国別援助方針は1ヵ国も作成されていない。 投入実績については適度である。2000-2001年はそれ以前の実績を下回っているが、過去5ヵ年でみると、自立的な経済開発・民主自由化・体制移行のための技術協力、特に計画・行政分野の協力が活発に行われており、経済発展の段階、日本との経済等の関係を反映した投入となっている。 |
(ニ) | 中東地域 中期政策の内容は国別援助計画等で適度に具体化されている。国別援助計画や方針には中期政策で提示されている重点課題は反映されており、経済社会インフラ整備、国内技術者層の育成、投資促進のための環境整備、環境保全対策への支援については、それなりの記載がある。しかし、対象国22ヵ国に対して、国別援助計画は2ヵ国、国別援助方針は2ヵ国しか作成されておらず、また、国別援助計画については、重点分野・課題として中東和平プロセスが記載されていない。この地域は国際政治の中でますます重要性を増しており、その意味でも、この地域ではもう少し国別援助計画が策定されるべきである。 投入実績については適度である。投入は、所得レベルや経済等の関係、地域の人口・発展度合いから考えて妥当であると考えられる。この地域へのODA投入量は増加傾向にあるが、1996年度から2000年度まででは平年の変化は少なく、地域の重要性から考えてもう少し投入があっても良いのではないかとの意見もあった。 |
(ホ) | アフリカ地域 中期政策の内容は国別援助計画等で適度に具体化されている。対象国46ヵ国に対して、国別援助計画は4ヵ国、国別援助方針は5ヵ国で策定されており、主要国をカバーしている。これら全ての国別援助計画・方針において、中期政策の貧困対策・社会開発支援の内容が反映されている。他方、対アフリカ支援においては、債務問題への対応、人材育成及び政策立案・実施能力構築、或いは工業セクターや農業セクター、その他民間セクター等の開発等も重要なテーマとなっており、次期中期政策においてはこれらの内容についても言及する必要があろう。 投入実績については適度である。債務問題で円借款が供与できない状況のもとで比較的多くの無償援助が行われている。確かに、対象地域の大きさ(46ヵ国)から考えれば、現状の投入実績は少ないとみることも可能であるが、日本からの距離等を考えれば妥当であると見るべきである。加えて、世界銀行の「ジャパン・ファンド」、IMFの「貧困削減・成長ファシリティ(Poverty Reduction and Growth Facility: PRGF)」等、多国間ベースのファンドも数多くあり、アフリカにおけるセクター・プログラムには資金が相当量入っているとみられる。支援内容に関しても、概ね中期政策の重点支援項目が重視されていると判断できる。 |
(へ) | 中南米地域 中期政策の内容は国別援助計画等で適度に具体化されている。国別援助計画は2ヵ国、国別援助方針は4ヵ国で策定されており、全体として中期政策の内容は国別援助計画・方針に反映されている。具体的には、保健医療、教育、基礎的インフラ、農業・農村開発、環境保全、社会経済インフラ等を重点課題としている。民主化については、ニカラグア、エルサルバドルで重点課題として取り上げられているがペルーでは採り上げられていない。今後の課題として、人材育成、技術移転等にかかる広域的な協力を重点課題として採り上げるべきである。 投入実績については適度である。傾向として1998年度に落ち込み、以後2001年まで微増しているが、経済の回復により民間ベースの資金が流れていることを考えると、現在の援助額は相応のレベルにあると思われる。内容的にも、中期政策及び国別援助計画・方針の内容に対応したものとなっている。 |
(ト) | 大洋州地域 中期政策の内容は国別援助計画等で十分具体化されているとは言えない。対象国14ヵ国に対して、国別援助計画、国別援助方針は1ヵ国も作成されていない。また、国連は島嶼国を対象とした開発方針を出しているが、当該地域と日本との関係を考えれば、日本においてもこのような方針が必要と考えられる。 投入実績については適度である。ODA全体における割合はわずかであるが、所得レベルや日本との経済等の関係を反映した投入となっており、かつ継続的に支出がなされている。投入内容も、中期政策の援助重点分野を反映したものとなっている。 |
(チ) | 欧州地域 中期政策の内容は国別援助計画等で十分具体化されているとは言えない。対象国15ヵ国に対して、国別援助計画、国別援助方針は1ヵ国も作成されておらず、援助研究会も開かれていない。なお、近隣に欧州の援助国が多く存在すること、日本との経済等の関係に鑑みれば、現状レベルで適当であるとの意見もあった。 投入実績については適度である。ODA全体における割合はわずかであるが、対象国の所得レベル、日本との経済等の関係を反映した投入となっており、かつ継続的に支出がなされている。投入内容も、中期政策の援助重点分野を反映したものとなっている。 |
(イ) | 政府全体を通じた調整及び各種協力形態・機関間の連携 外務省がODAの主務官庁たることを中央省庁等改革基本法上明確にするとともに、「対外経済協力関係閣僚会議」の開催、資金協力会議の開催等、現地ODAタクスフォースにより情報交換の場を設けるなど、省庁間の連携体制を強化する取り組みが見られた。また外務省、JICAにおいても、国別・地域別アプローチの体制が強化された点も評価できる。 しかし、省庁間会議は情報交換が主であり、関係機関が連携し、整合性をもって援助を実施するというレベルに達しているとは言えない。また、有償と無償、無償と技協等、形態間の連携に関しても、関係機関間のバリアが高く、連携は不十分であった。 |
(ロ) | ODA以外のOOF及び民間部門との連携 日本がある意味で得意としてきたことであり、ある程度の成果を収めているが、途上国開発における貿易・投資に関する議論が不足している。 |
(ハ) | NGOとの支援及び連携 各種資金協力スキームの整備、協議会の開催等、大きな進展があったことは評価する。しかし、NGOと政府のパートナーシップが本当に形成されているとは言い難く、また協議会等での議論が本当に政策にきちんとした影響力をもっている状態になっているかどうかは疑問が残る。 |
(ニ) | 自治体との連携 地方自治体との連携については適度な連携ができている。特に、地方分権関連の分野などで最近、地方公共団体の職員が専門家・協力隊として海外に出ることが多くなっている。従来から比べれば、支援の仕組みが整ってきていると言えるのではないかと考えられる。また、提案型の国際協力事業が拡大する中で、国際協力に特色のある自治体が増加している。 |
(ホ) | 他の援助国及び国際機関との協調 制度・人材等の様々な制約がある中で、一定程度の成果を残している。特に、日米協力(GII)の継続、TICADにおけるアジア諸国やフランス等との連携等、他ドナーとの連携が進展した。さらに、日本は国際機関での最大級ドナーとして、ある程度のプレゼンスを示している。しかし、援助額に見合った調整機能を必ずしも果たし得ていないことや、セクター・プログラムにおいて遅れた立場にあり、現地でのドナー会合への対応状況など、フィールド・レベルでみるとポジティブな評価はできない。 |
(イ) | 開発人材育成 人事交流(国際機関への派遣や調査への相互参加)に関して、ある程度の実績があったことは評価できる。また、大学・大学院におけるインターンシップの活用、単位の相互補完も、ある程度の進展があった部分である。さらに、NGOとの対話の強化、各種セミナー・シンポジウムの開催等、国民との対話の強化のための努力がなされてきた点も評価できる。 しかし、「専門家の公募制度の拡充」と「民間コンサルタントの積極的な活用・育成強化」については大きな進展があったとは言えない。人とモノへの投入バランスを考えた場合に、人の部分にもっと資源が使われても良いのではないか。JICAのジュニア専門員、外務省の専門調査員等の制度はあるが、若い人が自分の力を試してみる場が不足している。人材は量的には充実してきているが、質的に高めていく必要がある。途上国にとって真に役に立つ支援ができているのかという視点が必要であろう。 |
(ロ) | 開発教育 学校での教育も含め、開発教育の量は多くなっており、相当な成果があったと評価できる。小中学校及び高校に総合的学習の時間が設けられ、開発教育の受け皿ができたことは大きく、当該授業への途上国経験のある講師の派遣等で外務省やJICAが積極的支援を行っている点は良い。教材、ビデオ等の様々なマテリアルが作成されている点も評価できる。 |
(イ) | 妥当性 ODA大綱との関連度合いは比較的高い。多くの重点課題は、ODA大綱の「重点事項(地球的規模の問題への取り組み、基礎生活分野(BHN)等、人造り及び研究協力等技術の向上・普及をもたらす努力、インフラストラクチャー整備、構造調整等)」と比較的整合性がとれており、経済インフラ、人材育成、環境保全という従来からの重点が盛り込まれている。しかし、人材育成や環境保全等のセクター横断的事項は、他の重点分野と横並びにはならないのではないか。また、薬物や防災と災害復興は重点課題として位置付けるべきなのか、という疑問は残る。 開発ニーズとの関連度合いについても比較的高いと言える。多くの重点課題は様々な国際会議で採り上げられているものであり、開発ニーズをよく取り入れている。しかし、中期政策の内容は総花的であり、メリハリに欠ける感が拭えない。民間でもそうであるが、「選択と集中」は一つの流れであり、今後は何を選択していくかを議論する必要がある。さらに、ハード支援からソフト支援への流れ、及び地方分権化の流れを踏まえて全体のニーズを考慮する必要がある。 途上国の自助努力を旨とし、アジア地域への支援に比重を置いている我が国にとって、社会開発への支援にどの程度比重をかけるかについては議論のあるところである。しかし、我が国は生活改善、基礎的な貧困削減のための知見を有しており、貧困削減が国際協力のトレンドとなる中、一層の研究・活用を行うべきである。 |
(ロ) | 有効性 分野別イニシアティブへの反映度合いについては適度であり、それなりに反映されていると評価できる。基礎教育、保健医療や環境保全、人口・エイズについては様々なイニシアティブが発出され、他にもアジア通貨・経済危機の克服等構造改革支援、紛争と開発、WID・ジェンダー等に関するイニシアティブが表明された。一方、食料、防災と災害復興、薬物、エネルギーに関してはイニシアティブがほとんど或いは全く表明されていない。食料、防災と災害復興については、その支援の性格上、イニシアティブとして反映し難い点があるが、経済インフラ等、日本が得意とする分野においては日本が率先して国際的な議論を喚起する必要があったのではないか、と考えられる。 投入実績については適度であると言える。総額としては、世界第2位の供与国ということもあり、十分な実績と言えるが、課題によって投入量に大きな差が見られ、重点分野間の金額・人の投入バランスに留意する必要がある。特に、政策として、もしくはイニシアティブとして出したものについては、それをきちんと守る形で資源の配分を考えていくべきである。さらに、現在の中期政策は重点課題を羅列して説明するに留まっているが、「結果重視」の考え方を導入し、目的を達成するための資源配分について更なる議論を行っていくことが必要である。 |
(イ) | 妥当性 ODA大綱は、アジア地域、とりわけ東アジア、ASEAN諸国を重視することを謳っているが、他の地域についてはほとんど記述がないため、中期政策の地域別援助のあり方との整合性を議論することは困難である。但し、中期政策の地域別の重視分野の多くは、大綱の基本理念・原則・重点項目と一致していることから、実質的な整合性はあるものと考えられる。 開発ニーズとの関連度合いについては適度なものと評価できる。東アジアでのアジア通貨・経済危機に対する対応、南西アジア・アフリカ等における貧困削減、中近東での中東和平プロセス支援、中央アジア・コーカサス・欧州での経済移行支援、中南米の民主化・経済体制支援等、地域毎にニーズに合致した開発課題として対応している。また、格差是正、社会的な弱者への支援ニーズ、対象地域・国の開発ニーズにも基本的に対応している。しかしながら、中期政策の地域別重点支援分野の記述は総花的であるとの印象も受ける。 |
(ロ) | 有効性 ODA中期政策の内容は、国別援助計画等に十分反映されていると言える。既存の計画・方針では、重点分野が網羅的であるため、自然に反映度合いも高くなるということもできるが、一般に中期政策の内容は計画・方針に適切に盛り込まれていた。また、国別援助計画・方針がない地域では、実施機関が国別事業実施計画を策定し、計画的な支援を行っているが、中央アジア・コーカサス、大洋州、欧州では皆無であり、中期政策の内容を如何に具体化させていくのか、今後の検討課題である。 投入実績については適度であると考えられる。東アジアは、重点地域であり、二国間援助に占める投入実績の割合も大きい。特にアジア通貨・経済危機克服と経済再生支援に積極的な投入が行われた1999年の実績が大きい。日本のODAの約40%を支出する東アジア地域と1%を僅かに超える大洋州や欧州地域を中期政策の中で同列に扱うことは困難であるが、各地域別援助実績から判断する限り、適度な投入実績があったと考えられる。但し、中期政策においては重点分野を示しているものの、「どの程度を適正とするか」の基準が提示されておらず、実施及び評価上のネックとなっている。今後、基準提示のあり方について検討が必要であると思われる。 |