1.1 背景・目的
政府開発援助(ODA)に関する中期政策(以下「ODA中期政策」)は、1999年に今後5年間の援助指針として策定されたが、2004年でその最終年に該当する5年目を迎えることから、外務省では「ODA中期政策評価検討会」を設置し、わが国のODA中期政策の意義・内容等を評価し、その見直し作業の参考として提言を聴取することとした。
1.2 評価者等
(1)ODA中期政策評価検討会
ODA中期政策評価検討会は、ODAに関連する分野または評価を専門とする以下の有識者によって構成され、外務省の委託を受けて、平成15年7月から平成16年3月まで、ODA中期政策の評価を行った。会合の日時と主な議題は図表1-1の通り。また、本会合は外務省経済協力局調査計画課及びUFJ総合研究所が事務局を務めた。
日 時 | 議 題 | |
第1回 | 15年8月7日 9:30-11:30 | ・本評価会合の趣旨・運営方法の確認 ・評価枠組み(対象部分、評価項目、評価基準、情報源・収集方法)にかかる討議 |
第2回 | 15年9月18日 9:30-12:30 | ・第1回の討議結果を踏まえた新たな評価枠組み(対象部分、評価項目、評価基準、情報源・収集方法)にかかる討議及び決定 ・各重点課題の概要、設定背景及び実績の説明 |
第3回 | 15年10月17日 9:30-12:30 | ・「重点課題」「地域別援助」のあり方の評価 |
第4回 | 15年11月28日 9:30-11:30 | ・「援助手法」「実施・運用上の留意点」の評価 |
第5回 | 16年1月23日 9:30-12:30 | ・評価結果の総括と提言 |
(イ) | 「重点課題」の評価項目 重点課題の評価項目として、「妥当性」と「有効性」を設定した。DACの定義によると、「妥当性」は、「開発インターベンション(開発のための手段)の目標が、受益者の要望、対象国のニーズ、地球規模の優先課題及びパートナーやドナーの政策と合致している程度」と定義されることから1、本会議では後述のとおり、ODA中期政策の上位概念であるODA大綱や被援助国の開発ニーズとの関連度合いを検証した。情報源としては、ODA大綱、開発関連国際会議資料等文献を用いた。 また、「有効性」については中期政策がどの程度実施されたのかを検証するため、後述のとおり、下位政策である分野別・国別の援助政策への反映度合いとインプット・ベースの実績から評価した。情報源としては、分野別イニシアティブに関する政策文書、ODA白書、国別データブック、JICA、JBICの援助計画・方針等文献等を用いた。 「妥当性」は、ODA中期政策の上位概念である「ODA大綱との関連度合い」と、ODA実施の前提条件となる「開発ニーズとの関連度合い」を基準として評価することとした。ここで、本評価では次期ODA中期政策の策定に資する評価を行うことが狙いの一つであることから、ODA中期政策策定当時の開発ニーズを考慮しつつ、「現在の開発ニーズとの関連度合い」を評価することとした。 「有効性」は、その政策が当該政策の下位にある政策・案件にどれだけ反映されたかを基準として評価することとした。「反映度」については、中期政策の各重点課題に関わる、分野(課題)別のイニシアティブがどれだけ発出されたかを評価基準とすることとし、その数字的裏付けとしてインプット・ベース実績を補足的に評価基準とすることとした。 |
(ロ) | 「地域別援助」の評価項目 地域別課題の評価項目として、「重点課題」の評価と同様に「妥当性」と「有効性」を設定した。妥当性については、その基準として上位政策であるODA大綱及び開発ニーズとの関連度合いを検証した。情報源としては、ODA大綱、開発関連国際会議資料等文献を用いた。有効性については、その基準として中期政策の下位政策である国別援助計画への反映度合い、及び国別・地域別の投入実績を検証した。情報源としては、国別援助計画、ODA白書、国別データブック、JICA、JBICの援助計画・方針等文献、関係府省・JICA・JBICへのアンケート結果等を用いた。 「重点課題」の評価と同様に、「妥当性」は、ODA中期政策の上位概念である「ODA大綱との関連度合い」と、ODA実施の前提条件となる「開発ニーズとの関連度合い」を基準として評価することとした。ここで、本評価では「次期ODA中期政策の策定に資する評価を行う」ことが狙いの一つであることから、ODA中期政策策定当時の開発ニーズを考慮しつつ、「現在の開発ニーズとの関連度合い」を評価することとした。 さらに、「ODA大綱には明記されていないが、現在の開発ニーズとの関連度合いは高い」といった評価があり得る。そのため、基準間のウェイト付けができるよう「総合評価」を行うこととした。 「有効性」は、その政策が当該政策の下位にある政策・案件にどれだけ反映されたかを基準として評価することとした。反映度合いについては、国別援助計画や方針への反映度合いを評価基準とすることとし、その数字的裏付けとしてインプット・ベース実績を評価基準とすることとした。 |
(ハ) | 「援助手法」及び「実施・運用上の留意点」の評価項目 援助手法/実施運用上の留意点の評価項目として、適切性を設定した。「援助手法」及び「実施・運用上の留意点」は文字通り援助の実施方法・プロセスを述べており、これらが適切に行われているかどうかにつき検討を行った。その基準として連携、検証システム、国民参加促進のための取り組み、情報公開の取り組みの有無を検証した。情報源としては、ODA白書等文献、外務省へのアンケート結果等を用いた。 「援助手法」及び「実施運用上の留意点」は「連携」「検証システム」「国民参加促進のための取り組み」「情報公開の取り組み」の4つに再分類することができる。 従って、「援助手法」及び「実施運用上の留意点」の適切性は、これら4つの取り組みが適切に行われたか否かによって判断することとし、判断基準として「連携の有無」「検証システムの有無」「国民参加促進のための取り組みの有無」「情報公開の取り組みの有無」を設定することとした。 |
1 外務省他訳「評価と援助の有効性-評価及び結果重視マネジメントにおける基本用語集」