広報・資料 報告書・資料



資料(2):「対中ODAの効果に関する調査」
(中間報告・現地調査資料)

対中ODAの効果に関する調査 現地調査報告

■プロジェクトの個別・波及効果、日本援助の認識(現地ヒアリング調査まとめ)
●円借款

プロジェクト(略称)
(実施年度、供与金額)
個別効果 波及効果 日本援助の認識
上水道・ダム関連のプロジェクト
(1)北京上水道
(88年度、154.8億円)
北京市街区(南部)+
周辺4県の地域に供水
北京市全供水量300万m3の半分を占める。
民生用水80%。
北京以外の地域や上水道以外の波及効果は特に言及されなかった。
北京で開催された世界大都市会議で海外の市長が訪問するほど著名で、日本の援助であることは知られている。
(2)重慶上水道
(96年度、62.44億円)
市内供水総量103万m3が19.41%増加した。これによって、2083戸の家庭が新たに供水を受けるようになった。 民用水の供水能力増加によって宅地開発などの不動産が活発になった。 地元紙などの報道にも日本からの援助であることは報道されている。
(3)西安上水道
(93・95年度、71.39億円)
2002年までに現在の西安市の上水需要に匹敵する110万トンの供水により700万人の水不足問題が改善。 南昆鉄道とならぶ難工事で工事専門家の間では有名であり、中国の工事技術向上によって刺激になった。 西安市全体の生活産業に関わる事業で中央の支援も受けているため、著名であり、認知されている。
(4)白石ダム
(書面回答)
(96年度、80億円)
農業用水2.7億m3、家庭用水・工業用水1.5億m3を供給。発電は年間平均2万kwh。ダム建設の最大の直接効果は洪水の防止である。 ダム建設による各産業への波及効果は明確ではないが、洪水から保護される農業や水産業にプラスの効果が大きいと考えられる。 全国紙によって注目されたほか、テレビでも報道されたので、認知度は高い。
輸送関連インフラ・プロジェクト
(5)北京国際空港
(93・95・96年度、300億円)
約2,600万人(年間)の旅客数を収容する能力(旧空港は700万人)を有する。 明示的な波及効果はないが、旅客・貨物の往来を活性化することによる経済面での波及効果は非常に大きい。 空港内に国際協力銀行の名称で「日中協力による空港」であることを示す広告板が設置されている。
(6)上海浦東空港
(97年度、400億円)
今後の国際線を中心とする空港サービスの新規模需要への対応:2005年に2,000万人の利用予想。ちなみに、虹橋(旧空港)の利用者1,740万人。 日本により25便のフライト増加。上海空港の近代化により(後にリニアモーター建設も予定)、対外的なアピール材料となり、新規投資を呼びこむ可能性有り。
浦東空港のハブ空港化により、上海市地域周辺の物流の活性化及び経済発展に貢献。
円借款によるものであることを名鑑に記すことを考えている。
(7)北京地下鉄
(88~89・91~93・95年度、196.78億円)
現在1日6万人程度の利用客があり、来年には約11万人の利用客を見込む。 地上交通混雑の緩和、さらには環境保全面での効果などが期待されているが、具体的な数値はなく、また実感としても目立った効果はない。 試運転期間中に地下鉄があまり利用されていないと誤報された経緯があり、マスコミを通して発信することに慎重である。今後宣伝を拡大する予定。
(8)南寧―昆明鉄道
(91~94年度、576.96億円)
電化によって、石炭(10万トン)、アルミニウム
(2万7千トン)、砂糖・木材(1万トン)、リン石等の資源、食材、旅客の輸送効率改善。過去2年間で貨物2871トンから5100トンに増加。
雇用創出効果は7,434人(従業員)、1万5,700人 (関連産業)。
冶金業・観光業の発展。
貧困地域の開発:支線の建設、特産物輸送。
報道によって認知されている。
(9)大連大窯港
(94年度、66.55億円)
当初6バース建設の予定であったが、最終的に2バースと別の2バースに対する設備機器設置に使用された。同港の年間取扱い貨物量は310万トンを見込んでいる。 大連市の発展と大連港は密接な関連があるが、この港の設備による地場産業への効果などは明示的に把握できない。 一般市民が日本の援助が関与していることをどれほど認識しているかは不明。大連市の地元紙では繰り返しPRしている。
その他
(10)国家情報システム
I、II
(94年度、87.48億円)
(95年度、115.52億円)
中国中央政府の経済マクロコントロール政策支援のためのハードウエア調達および経済分析ノウハウの移転。 国内研修を地方都市で行い(480人)、省市の情報処理、経済分析担当者へのノウハウの移転
(21省市12部門)。
国内研修8回を日本のコンサルタントにより実施。
国外研修は日本にて2回実施。(したがって日本の援助であることは周知されている)。
(11)蘇州市水質環境
(99年度、62.61億円)
同市面積の40%を占める池・川・湖の汚染、止水対策により、都市環境改善:止水の原因となっていた110万m2の泥を排出して水質浄化、旧市街の汚染されていた川に魚が戻る。 川がきれいになることにより蘇州市から流れる下流地域の水質が改善され、その周辺の農業、養殖業にメリット。環境保全のモデル都市に指定。 水質環境に対する市民の不満は強かったが、最近のマスメディアによる調査では、同市の環境評価「良い」・「基本的に良い」合わせて80%に達し、改善。

●無償援助(草の根含む)
プロジェクト(略称)
(実施年度、供与金額)
個別効果 波及効果 日本援助の認識
草の根無償
(1)手をつなぐ地球村
(98年度、8.44百円)
100ヵ所の小学校が環境教育をうけ、自発的に環境保護運動を継続している。 周辺住民、小学生の親も環境意識が高まり、ごみ分別や回収に協力している。
民間外資企業(GEなど)の支援などと相乗効果を生んでいる。
回収された資金で貧困地域に同じような「地球村」の設立に使用。
今後河北省(北京に隣接)で100ヵ所設立する目標。
日本の援助であることが明示されており、幅広く認識されている。
(2)四平市視聴覚
障害センター
(99年度、6.63百万円)
1991年の設立から現在までに当センターを利用した患者は 264人。加えて、センターで指導をうけた方々が、家庭内で家族に対して行っているリハビリもあるが、数は把握できない。 当センターでの治療法やノウハウが他のセンターで参考とされているといった具体例は聞かれない。 設備一つ一つに日本からの援助を示すシールが貼られており患者はもちろん、テレビ、新聞などの報道により、日本の援助が貢献していることは十分認識されている。
(3)鞍山市再就業センター
(98年度、9.67百万人)
1998年11月以来、延べ25万人求職者を受け入れ、5.2万人に職を斡旋することに成功した。また、3,700人に訓練を行い、1,900人が就職することができた。 職業斡旋という業務の性格上、地域的な広がりは期待できない(同様のセンターは市内に9ヵ所ある)。同センターの設備・機能面の応用も計画されていない。 上記同様、設備機器それぞれにシールが貼られているほか、繰り返し報道されたこと、入口の日本の援助を示す看板などを通じて、市民にも認識されている。
(4)龍州県金龍
給水プラント

(99年度、83百万円)
飲料水不足問題解消。水汲み負担(労働量換算25万元/日)軽減。
消化器系の疾病率の抑制(治療費15,000元相当)。
他の経済活動に従事できるようになり、村民の収入10%増加。 道路からみえるように「日本国利民工程項目」と表示。
地元の新聞(龍州報等)で活発に宣伝。
(5)民仁小学校建設
(96年度、18百万円)
103人から132人に増加、教育環境(建物、教材等)の改善。周辺地域位の小学校と比べて成績下から中位に上がる。   援助を記念するプレートを構内の壁面にかけてある。
県、地区、自治区のテレビ、広西報で報道
(6)彬県橋梁建設
(97年度、22百万円)
24.5kmの道路開通し、村から県庁までの所要時間は2時間から40分まで短縮。 輸送コスト低減により、農産物の卸売り価格が上がり、村民の年平均収入は約30元上昇。 援助を記念する石碑を各橋に建てる。
地元のテレビで報道。
(7)彬県飲料水・電力供給
(98年度、82百万円)
4村の1,180人の生活用水及び家庭用電力を供給。
灌漑化が可能になり、一人当たり所得は200kg以内から540kgに増加。
消化器系の疾病率80%低下。
電化によって加工業(綿、食品)の促進、灌漑化による食料量増産等により所得は、39%上昇。
援助を記念する石碑を建てる。
地元のテレビで報道。
一般無償
(8)中日友好病院
(80~83、86年度:長期41人・短期142人、169.3億円)
スタッフ1,300人が近代的な医療システムに合わせたサービス提供の習得。累計600万人の患者に対応。 付属の臨床研究所における中央、部レベルの受託研究のもと1,900人が研修を終了した。
31ヶ国から研修医受入(年述べ300人程度)。
名称のとおり広く知られている。
(9)二次少数民族中学校
(97年度、20億円)
教員一人当りの主要機器台数
32件→48件
生徒一人当りの主要機器台数
3件→4件
PCクラス週1時間増加
県内のほか地域の就学率は60%であるのに対し、本地域は80%。
周辺の公務員などへの職業教育にも開放。
県内の視聴覚教材作成の中心地として教員研修にも活用されている。
広く認識されている。
(10)白城地区農村
給水計画

(92~93年度、10.04億円)
フッ素病地区30万8,000名の飲水問題を解決。軽度の患者比率は50.0%から47.7%へ、重度の患者比率は6.4%から5.2%へと低下した。 給水パイプの届く地域内での効果に留まるが、パイプ自体が延長されているので、受益人口は2,000人ぐらい増加している。 吉林省の新聞、マスコミで取り上げられていることもあり、日本の援助が導入されていることは広く市民に認識されている。

●技術協力(無償資金協力との組み合わせも含む)
プロジェクト(略称)
(実施年度、専門家派遣人数、
供与金額)
個別効果 波及効果 日本援助の認識
医療関連プロジェクト
(1)ポリオ対策プロジェクト
(91年度、長期13人・短期96人、5.39億円)
1995年以降中国において野生株ポリオは発生しておらず、順調に根絶の最終段階に差し掛かっている。 山東省で成果をあげて以来、周辺4省、南方ハイリスク4省、自治区へとプロジェクトのカバーする地域が広がっている。 テレビ・ラジオで報道されたことも多く、中国語のビデオをも作成されている。
農業・灌漑関連プロジェクト
(2)畜産センター
(90~97年度、長期15人・短期33人、3.8億円)
乳牛:
24780頭→31027頭(27%増、1990年の比較、以下同じ)
牛乳生産:
78480トン→12万トン
(53.8%増)
本年の研修成果:
現地セミナー7回
研修会24回
訪日研修技術者33人
天津市内の技術者の増加:
600人→1,200人
北京等多くの省からの見学者、1995年農業部新技術展示会に出品などが報道されて、日本のプロジェクトであることは広く知られている。
(3)灌漑排水技術
開発研修センター
(93年度、長期12人・短期36人、2.86億円)
本センターが特に開発した技術としてラバーダム、稲作節水灌漑技術などが挙げられる。 各地方の水利所の所長クラスは、すべてこのセンターで研修を受けており、また全国に設置された300のモデル都市で当センターの技術を活用している。 華北テレビ、中央教育テレビ、北京テレビなどで報じられたほか、水利部の専門誌でも取り上げられた。
その他(人材育成、環境等)
(4)環境保護センター
(90~94年度、長期16人・短期25人、9400万円)
環境観測技術分野46人、公害防止技術分野47人への教育、ノウハウ移転。
論文数230件作成。
地方の環境責任者に1ヶ月研修を行う。
円借款の大連、重慶、貴陽の環境モデル都市プロジェクトの論証委員会メンバーに本プロジェクトのカウンターパートが就任、他地域へノウハウ移転が進んでいる。酸性雨に関する研修を年3回開催啓蒙に勤めている。
日本の技術者(JICA)専門家もたくさん滞在しており、日本の援助であることは広く認識されている。
(5)天津市職業訓練センター
(92~93年度、長期7人・短期30人、1.39億円)
指導員の卒業生数は過去709人。 地域の企業従業員への研修は過去5年間に549人。内訳は技能別に NC旋盤200人、自動車整備200人、自動制御149人。
ベトナム、エジプトへの技術協力。
ダイハツ、VWの合弁会社に卒業生709人が就職しており、ドイツの研修センターとともに日本の援助でできた本センターは知られている。
(6)郷村都市化実験市
(海城市)
(2000年度)
JICAレポートは海城市の意向に沿った調査になっているが、調査結果に基づいた具体的な動き、成果までには至っていない。 全国9つのモデル都市の一つであり、海城市の経験も他の都市に移転していく予定である。
江蘇省が本調査のフェーズ2に関心を示している。
開発調査という性格上、特に宣伝されていない。


このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る