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第7章 我が国援助に対する現地の評価と要望



7.3 青年海外協力隊(JOCV)およびJICA派遣専門家の意見と要望

バングラデシュ国実施機関及び現地有識者に加え、同じく現地に在住するJICA派遣専門家及び青年海外協力隊(JOCV)らの我が国支援に対する評価や要望について聴取り調査を行った。

(1)派遣専門家

出席頂いた派遣専門家の指導分野及び配属機関は次のとおり。

投資促進及び産業振興のためのインフラ整備分野

指導分野 配属機関
投資促進 首相府投資庁(BOI)
ツーステップローン事業実施アドバイザー バングラデシュ銀行
道路橋梁アドバイザー 運輸省道路局(RHD)


災害対策分野

指導分野 配属機関
メグナ河中長期護岸対策(業務調整) バングラデシュ工科大学(BUET)
水資源開発アドバイザー 水資源省計画局(BWDB)


農業・農村開発分野

指導分野 配属機関
住民参加型農村開発アドバイザー バングラデシュ農村開発局(BRDB)
農業政策アドバイザー 農業省計画局
資金協力連携促進 JICA事務所


社会開発分野

指導分野 配属機関
砒素汚染対策アドバイザー 地方自治技術局(LGED)
ノンフォーマル教育 教育省初等大衆教育局ノンフォーマル教育部
上水道経営管理 チッタゴン上下水道公社(CWASA)


我が国支援に対する評価に関する発言の内容は以下のとおり。

~支援全体を見通して~

  • 援助案件の要請がなされた後、実施に移行する時点で、案件を取巻く状況や環境が変化していることがあり、この時点で妥当性を損なう場合がある。
  • 自己財源での施設維持管理はなかなか改善の視られない課題である。
  • 関係省庁間の調整(事業計画段階において)が殆ど図られていないのが現状である。
  • 我が国はプロジェクト・ベースの支援であり、政策対話やクロス・セクター的な開発課題への対応に重点が置かれていない。プロジェクトありきで、国別援助計画が策定されている印象を受ける。
  • 過去を振り返れば結果的に重点分野に沿った案件構成にはなる。しかし、要請主義の影響もあり、戦略や座標軸を持たずに協力案件が形成されているという印象を受ける。国別援助計画の役割が充分機能しておらず、内容も足りない部分が指摘される。
  • 支援内容の間口を広げ過ぎであると思料される。結果的に我が国のプレゼンスの高さを誇るセクターや分野が本当にあるのか疑問である。
  • 我が国支援は全体的に貧困層へのターゲティングが弱いという印象を受ける。
  • バングラデシュ国の開発課題が技術や施設(含むマイクロクレジット、トレーニング)など直接的な投資だけで解決できるとは考えられない。投資や移転技術を機能させるための制度や運用方法の構築に対する支援(制度インフラに対する知的支援)が足りない。
  • ガバナンス(事業の実施及び運営能力)が弱いが故に個別支援の効果が良好に発現されにくい状況にあると言える。
  • コンサルタントへの依存と彼らの負担が非常に大きな国であると言わざるを得ない。
  • 総じて技術移転は非常に時間を要するものとの印象を受ける。

~重点分野別に~

  • 産業振興に向けて、現状ではインフラ整備支援に偏り過ぎとの印象を受ける。より直接的な製造業や中小零細企業へのてこ入れが可能となる支援が不足している。
  • 自然災害対策分野への投資量が不足気味の印象を受ける。

~我が国援助機関について~

  • 教育分野では様々な取り組み方針について提案及び打診を行っているが、支援の効果が視覚的かつ短期的にも発現しにくいこともあってか、実践が困難な現状にある。かつ、各種の決定や決裁に時間を要し迅速な対応を図れないことが多い。他ドナー機関は権限委譲が進んでおり決定も早いため、とりわけドナーとの協調や協力体制を検討する場で障害を感じる。

我が国支援に対する要望に関する発言の内容は以下のとおり。

  • 持続的な予算措置という裏付けを伴う維持管理の徹底は、最低限の支援条件として、支援選定時に申し入れを行うこと。
  • 調査を行うコンサルタントに期間的な余裕と調査遂行上の柔軟性を与える。
  • インフラ整備支援は、施設間のリンケージが充分取れている整備計画を基本として、可能で有れば、地域的な総合整備事業も検討する。
  • 援助関係機関在外事務所への権限委譲を一層進める。
  • 我が国に比較優位のある分野や技術を重点的に活用する。
  • 我が国の歴史と発展経緯を充分踏まえた支援を行う。我が国は戦後、農村社会から短期間に変化を経た歴史を有し、開発の経験と特徴を踏まえ独特な技術及び知的支援が可能であると思料される。
  • 当初より資金協力ありきではなく、あくまでも技術支援を基本として、そこからニーズが生じた場合につき検討を行う。
  • バングラデシュ国で策定される貧困削減戦略に対する援助計画の策定を検討する。

(2)JOCV隊員

出席頂いたJOCVは次のとおりである。

指導分野 配属機関
家畜飼育 バングラデシュ農村開発局(BRDB)
村落開発普及員 青年開発局(DYD)
理数科教師 教員訓練大学
理数科教師 教員訓練大学
体育教師 体育大学
電気機器 技術訓練センター
システムエンジニアリング 技術訓練センター
自動車整備 UCEP(NGO)
ポリオ対策 拡大予防接種計画事務所(EPI)
看護医療 TMSS(NGO)
看護医療 FPAB(NGO)


我が国支援に対する評価に関する発言の内容は以下のとおり。

  • 概ね我が国の支援のプレゼンスを感じることが多く、日頃接するバングラデシュ国民にもODAの一環で活動していることを充分認識してもらっていると思う。
  • JOCVは我が国支援における広報面の象徴であるという自覚をもって仕事に従事している。「顔の見える援助」という観点からもより効果的な手段になっていると感じる。
     (一方で、日常接するバングラデシュ国の人たちと我が国支援の恩恵やあり方について議論したり、話を持ちかけられることがほとんど無いのが現状で、認知度も薄いのではという意見も半数近くあった)
  • 改善を要することや課題を見つければ、受入機関に提案を行うよう努めている。しかしながら、往々にして受入機関の組織のあり方や勤務姿勢に関係する事項が多く、JOCVとしてどこまで介入して良いのかとまどうことが多い。
  • バングラデシュ側から要請がありJOCVの供給がマッチすれば派遣となるが、要請から派遣までのタイムラグが常に問題となっている。技術指導を「待たれていた/望まれていた」という実感がなかったり、薄れていたことが多々あった。


我が国支援に対する要望として考えられる発言は以下のとおり。

  • 活動を通じて一番嬉しいのは、受入機関からの「評価」を受けることである。従って、受入機関によるJOCV活動の「評価」を依頼してはどうか。
  • JOCVのモチベーションを維持するために、活動を通した目標と活動計画の策定は経験から極めて重要であると考える。しかしながら、それを一定の責務として受取られるのは抵抗があり、不安でもある。


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