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第7章 我が国援助に対する現地の評価と要望



7.1 バングラデシュ国援助受入実施機関の評価と要望

バングラデシュ国の社会経済開発における我が国支援について、バングラデシュ国政府関係機関の評価と要望を得る目的で、これまでに我が国支援を受入れた経験のある主要政府14実施機関を対象に質問票を配布のうえ、アンケート調査を実施した。調査結果を回収できたのは14機関のうち、以下の7機関であった。主な質問事項は、我が国支援が果たした役割や貢献、我が国支援の長所と短所、今後の要望についてである。

表7-1-1 アンケートに協力頂いた実施機関

機関名(順不同) 該当重点分野
計画省実施モニタリング評価局
Ministry of Planning(MOP)、Implementation, Monitoring & Evaluation Dept.(IMED)
援助受入・調整担当省
財務省経済関係局
Ministry of Finance(MOF)、Economic Relations Dept.(ERD)
援助受入・調整担当省
農村開発庁
Rural Development Board(RDB)
農業・農村開発
農村電化庁
Rural Electrification Board(REB)
農業・農村開発、インフラ整備
水資源開発庁
Water Resouces Development Board(BWDB)
災害対策
投資庁
Board of Investment(BOI)
輸出振興及び投資促進
電力開発庁
Power Development Board(BPDB)
インフラ整備


以下に共通して多くみられた回答を、質問のテーマ別に回答機関を問わず抽出したものを紹介する。

(1)我が国支援に対して賞賛すべき点

  • 経済インフラ整備について日本の支援以上に熱心なドナーはいない。後に日本からの直接投資に繋がるような投資配分を今後も強化して欲しい。
  • 農村開発分野では、他のドナーが資金提供を中心とするのに対し、我が国の特色は、農村開発のモデル作りに向けられ、その展開を図ろうと注力している点であり、これは非常に望ましい。
  • JOCVはバングラデシュ側の事情や国民に最も適合性が高く、かつ受け入れられ易いスキームである。理由は、現地語を話し、現場で住民と食事を共にし、住民の日常生活の中から改善を導き出す努力を常としているからである。
  • 日本の支援が優れているのは公益サービスの供給やインフラ整備に係る計画策定スキルであり、特に導入したい技術支援内容である。
  • 研修事業は職員の能力向上と知識獲得に大いに効果がある。
  • 日本のODAの長所は、アジア的価値観をもって事が進められること、技術移転を目標に掲げていること、そして品質管理能力の高さである。
  • 有償資金協力の支出モニタリング及び進捗管理はとても緊密に行われている。報告を求められる回数も多く、結果的に案件の円滑な調達、実施に貢献していると考える。また、審査時の組織や職員の実施能力は厳しく審査されていると思う。
  • 日本の支援の良い点は、調査計画から事業の実施まで一貫してフォローを提供する点にある。


(2)日本の支援に改善が望まれる事項と要望

  • 農業、農村開発、保健医療、教育、運輸交通、科学技術の分野で更なる支援が必要とされる。農業セクターの成長はより公平に恩恵が貧困層に浸透し、農村経済活動の多様化が農村経済の成長には不可欠である。科学技術の振興支援は過去あまり関心を寄せられていないが、バングラデシュ側としてはバイオ、遺伝子工学及び情報技術の分野で支援の必要性を感じている。
  • 日本の支援内容選定には、比較的長い時間がかかる。迅速な決定が行われないため、バングラデシュ政府の計画遂行調整上の問題が生じ、資金供与先の確定が非効率となることがある。
  • これまでの経緯より、教育、保健医療及び給水分野での協力が比較的少ないことが日本のODAの特徴である。この点から、貧困層の日本の支援に対する認知度は薄いものと思料される。貧困削減の効率的達成には、保健医療や教育分野に対する支援の拡充を望む。
  • 貧困格差や女性の地位向上の改善に向上する支援事業が乏しい。結果的に小規模農民、社会的弱者(女性や土地無し貧困層)を対象とした貧困撲滅の実施機関であるBRDBを通しての農村開発支援でのプレゼンスは少ないのが現状である。
  • 最貧困層や女性の地位向上は、バングラデシュ政府及び他のドナーでは重要な配慮事項となっているが、日本の支援による農村開発、生計向上、インフラ整備事業においては係る課題について配慮が充分ではない。農村開発事業では、土地なし貧困層が支援事業のターゲットとして適切に認識されていなかった。
  • 日本の支援による各種インフラ整備事業に係る投資費用は比較的高い(特に無償資金協力)。バングラデシュ側はインフラの絶対的不足から質より量的な達成を重視しているのが現状である。
  • 構造物施設の維持管理に係る技術支援の整備と強化が求められる。
  • 機材整備支援では、日本より機材を調達する例が多く、スペア部品の補充が困難となるなど、維持管理に支障を来す事例が多い。
  • 専門家派遣は、より課題を明確に絞り込んだうえで、かつプログラム・ベースの専門家派遣を求める。また、個人的に活動する専門家が多く、組織のサポートを受けて活動しているという印象に欠ける。派遣専門家のTORを受入機関側の課題に即してデザインすべきである。専門家はアドバイスを行い、受入機関はそれを実施するのみという形態が望ましい。また、充分な実務経験に裏打ちされた専門家の派遣をより拡充して頂きたい。
  • 日本の支援の改善すべき点は、JOCVは高く評価するが一人一人の任期が短いことである。1年かけて現場に馴染むと帰国年になるというのが現状である。
  • 開発調査事業などでは現地コンサルタントの投入量の増加が望まれる。
(3)バングラデシュ側の課題(ODA効果発現の阻害要因と考えられる事項)

  • 支援事業の運営、維持管理や活用の促進に携わる人材が充分訓練されておらず、不足の状況にある。各実施機関における公益サービスの供給及び施設整備計画の策定や達成にも支障を来している。人的資源の開発と職員の能力向上が成果発現に不可欠であると考えられる。また、特定の分野に専門性を有する職員が不足している。
  • JOCVは非常に有益なスキームであるが、JOCVの活動計画に参画したり、支援を行うローカル・カウンターパート充当に必要な資金が不足している。そのため、活動計画が充分に実施されないまま帰国に至る隊員が存在する。
  • 事業効果の持続性は、比較的多額の初期投資を要する事業の方が問題が多い。


(4)その他

  • 現在NGOは80%の村落で公共サービス支援に携わっているほど活動規模を広げており、政府の足らざる部分での支援のみならず、政府とパートナーシップを構築し公益サービスの計画、実施に当るNGOも存在する。しかしながら、NGOへのODA支出は決して「バングラデシュ政府向け」とすべきではない。最終的に、政府はNGOの活動を管理することはできない。
  • 多くのドナー間で支援内容の重複があり、援助に関するドナー相互の調整強化が望まれる。また、ドナー機関融資の際に、コンディショナリティーを付与されるが、それらの内容がドナー間で矛盾する場合がある。とりわけ協調融資の場合に多く見受けられる。


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