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第5章 インドネシアに対する貿易・投資分野協力の評価とアジア・アフリカ協力

5-4 貿易・投資分野におけるアジア・アフリカ協力の考察

 本節では、我が国のアフリカに対する貿易・投資分野協力プログラムの評価と、アジアへの協力事例としてのインドネシアに対する貿易・投資分野協力プログラムの評価を踏まえ、アジアの貿易・投資分野の開発経験を活かしてアフリカに対してどのような協力が可能であるかについて考察する。

5-4-1 アフリカにおける民間部門への技術移転の促進
 アジアとアフリカに対する貿易・投資分野協力プログラムを比較した場合、民間部門の人材育成の効果や技術移転のインパクトに違いが見られ、アジア・アフリカ協力でも、民間部門の育成を意図した協力が重要と思われる。
 研修員受入と専門家派遣を通じた民間部門の育成には時間もかかり、協力の有効性・インパクトを計ることは容易ではない。それでもインドネシアの事例で見られるように、アジアでは、協力を通じた民間部門への技術移転が比較的進んでおり、貿易・投資分野協力の裨益対象の拡大が、経済発展にも寄与していると考えられる。
 アフリカからの研修員受入を行う場合、アフリカの研修員OBによる帰国報告や技術移転を、自国の政府機関内部に対してだけでなく自国の民間部門をも対象として行うような誘因を持たせることが重要である。アジア諸国が政府部門から民間部門への技術移転を効果的に実施している経験と方法を伝えることは、アフリカ諸国が自国の民間部門への技術移転を行う取組みを促す契機になると思われる。

5-4-2 貿易・投資分野における地方への技術移転
 技術移転のインパクトは、受益国全土に広く伝播することが期待されるが、アジアにおける貿易・投資分野協力の地方展開は、アフリカにとっても示唆に富む経験であると思われる。インドネシアにおける事例では、貿易研修センターが地方において研修コースを開講している他、投資調整庁地方部局の投資促進活動は、投資機会拡大の活動、投資関連情報の発信に寄与している。こうしたインドネシアの事例に見られる地方展開の技術をアフリカに伝えることは、地方への技術移転の伝播が未発達であると思われるアフリカ諸国にとり、貿易・投資分野の開発を進める上で貴重な参考事例になるものと考えられる。

5-4-3 アフリカにおける貿易・投資分野の開発拠点造りの支援
 アフリカにおける貿易・投資分野での技術移転のインパクトを高めるためには、開発拠点造りを進めることが1つの方法と思われる。インドネシアの貿易研修センターは、インドネシア国内の貿易・投資分野の開発拠点であるだけでなく、東南アジア諸国における中核的な南南協力の拠点の1つとしても位置付けられている。また、インドネシアの他には、我が国や国連工業開発機関(UNIDO)の協力によりマレーシアに設置された「アジア・アフリカ投資・技術移転促進センター(通称ヒッパロスセンター)*10」 も貿易・投資分野の技術協力の拠点として知られている。
 アフリカにおける貿易・投資分野の開発拠点としては、我が国の技術協力によって運営が進められているエジプトの「貿易研修センター」があるが、同センターは、エジプト国内の貿易・投資分野の人材育成、技術移転に貢献しているだけでなく、他のアフリカ諸国に対する協力の拠点としての位置付けをもたせようとする計画である。
 しかし、アフリカでは、同センターの他には貿易・投資分野の開発拠点が乏しく、今後さらに拠点を拡充させることが必要と思われる。アフリカにおいて、アジアに見られる貿易・投資分野の開発拠点を増加・構築させることは、アフリカでの貿易・投資分野の技術蓄積に繋がることが考えられる。
 アフリカの貿易・投資分野の開発拠点造りに対して、我が国の他、インドネシアやマレーシア等が、アジアにおける運営管理方法や人材育成方法について技術移転を行うことは、長期的にはアフリカの貿易・開発分野の持続的開発の基盤を形成することに繋がると思われる。


*10 ヒッパロスセンターの設立は、1998年10月開催のTICADIIにおいて、民間セクターの役割を重視すると共に、アフリカとの貿易、投資・技術移転の促進を通じて、アフリカの民間セクターの発展を実現していくための組織設立を小淵首相が表明したことを契機とする。1999年に設置された同センターの主な活動は、1)外国投資を求めるアフリカ諸国の経済状況、投資環境、投資機会等に関する情報の紹介、2)アフリカからアジアへ派遣される民間使節団の受入、3)アフリカ投資を考えるアジア企業へのアドバイス提供、4)アフリカ諸国の投資誘致能力向上のための技術協力である。


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