3-1 JICAによる貿易・投資分野協力の概要
3-1-1 JICAによる貿易・投資分野協力
JICAは貿易・投資促進の協力として、次の3つを大きな柱として位置付けている*1。
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Box 1:報告書「途上国への制度整備の方向性(貿易・投資・競争関連制度)」*2が示すJICAによる貿易並びに投資促進・円滑化支援 JICA報告書「途上国の制度整備の方向性」では、貿易促進・円滑化、投資促進・円滑化の事例として下記の分類を行っている。 投資促進・円滑化 |
3-1-2 研修員受入を通じた貿易・投資分野協力の実績と特徴
JICAによる研修員受入は、1954年に開始された技術協力の中で、最も基本的な「人造り事業」として位置付けられている。2001年の本邦研修では全体で7,961人が参加し、内、アジア地域が4,179人と、全体のおよそ半分を占めている。他方、アフリカ地域(サブサハラ・アフリカ)からは1,106人(全体の約14%)が参加している。また、貿易・投資分野が含まれる「商業・貿易」の分類で地域別に整理すると、表3-1のようになりさらに割合は小さくなる(全体の約9%)。
研修員受入の形態は、日本国内での研修となる「本邦研修」と、海外での研修となる「在外研修」に大きく分類される。本邦研修はさらにグループ型、個別型等に分類され、グループ型は集団研修、一般特設研修、国別研修、コストシェアリング研修に分れる。アフリカからの研修員受入では、本邦研修の「集団研修」、「一般特設研修」、「国別特設研修」が、在外研修では第三国集団研修が当てはまる。
JICAの地域分類では、アフリカ地域は「サブサハラ・アフリカ」を示すことから、本調査が対象とするアフリカ全体を検討するためには、北アフリカ諸国を含む「中近東地域」も考慮に入れ、アフリカ全体の傾向を考える必要がある。中近東地域に分類されている北アフリカ諸国を含めた、アフリカ全体の研修員受入の実績については、3-2節を参照ありたい。
表3-1 JICA「商業・貿易」分類における研修員受入数の地域別割合の推移
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出所:JICA年報より作成。 |
表3-1及び図3-1はJICAが実施した研修員受入事業の中で、「商業・貿易」分類における研修員受入数の地域別割合を整理したものである。1998年にはおよそ70%近かったアジア地域からの研修員受入が、1999年以降、50%程度に低下し、代わって、中近東地域、アフリカ地域等からの研修員受入が増加傾向にある。アジア地域は、1998年には772名と最も多い数字を示しているが、その後、減少傾向にある。その減少分は、他地域に配分され、北米・中南米地域からの研修員受入数が増加している。また、アフリカ地域からの研修員受入数も増加している。
図3-1 JICA「商業・貿易」分類における研修員受入の地域別割合
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出所:JICA年報資料より作成。 |
3-1-3 専門家派遣を通じた貿易・投資分野協力の実績と特徴
専門家派遣は、専門家を開発途上国に派遣し、その国の経済、社会開発の中心となる行政官や技術者に、実業に即した技術を移転し、提言を行い、人造り、組織・制度づくりに貢献するものである*3。
専門家派遣は、専門家の派遣、研修員受入、機材供与等の協力形態を有機的に組み合わせた「プロジェクト方式技術協力型」、協力形態の組み合わせによらず、開発途上国からの個々の要請に応じて単独で専門家を派遣する「個別型」に大別される。また、派遣期間は2週間~1ヶ月程度の短期派遣と、1年もしくは2年にまたがる長期派遣とに分けられる。専門家派遣を通じたアフリカに対する貿易・投資分野協力としては、政策・制度構築の他、貿易・投資促進を中心とする産業振興の協力が進められている。
表3-2及び図3-2は、JICAの商業・貿易分類における専門家派遣の地域別割合を示したものである。ここでも研修員受入の実績が示しているのと同様に、半数以上がアジアへの派遣である。それでも、1998年には70%近くであった割合は、1999年以降、50%程度に低下し、北米・中南米地域や、中東地域への派遣が増加傾向にある。次節3-2-2で見るように、アフリカへの派遣専門家は、エジプトへの派遣が多いが、表3-2では、同国が中東地域に分類されているため、アフリカ地域の派遣者数に反映されていない。
表3-2 JICA「商業・貿易」分類における専門家派遣数の地域別推移
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出所:JICA年報資料より作成。 |
図3-2 JICA「商業・貿易」分類における専門家派遣の地域別割合
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出所:JICA年報資料より作成。 |
*1 | JICAホームページ「貿易・投資促進」。 |
*2 | 市場強化のための制度整備協力に係る委員会、産業競争力強化分科会、国際協力事業団「途上国への制度整備の方向性(貿易・投資・競争関連制度)」平成15年3月。 |
*3 | 国際協力事業団「技術協力専門家派遣と技術協力プロジェクト」国際協力事業団年報(2002年) |