1-1 調査の背景と目的
1-1-1 調査実施経緯
我が国の政府開発援助(ODA)は、国際社会に対して実施されている貢献策の一つであり、援助額は世界のトップクラスに位置付けられる。他方、国内経済の厳しい状況下、ODA資金の適切な配分と効果的な援助実施への要請の高まりが見られる。
ODA事業の効率的且つ効果的な運営と説明責任への要請は「貿易・投資分野協力」についても例外ではない。途上国に対する貿易・投資分野協力については、世界貿易機関(WTO)加盟国の半数以上が途上国で占められることや、貿易・投資促進を通じ途上国の経済発展を支え、貧困問題の緩和や社会開発を推進する役割としての期待の高まりが見られる。世界で最も貧困層が多いとされるアフリカでは、政治的不安定さ、国内法制度の不備、人的資源の不足等により、貿易・投資促進についても改善すべき課題が多い。
我が国は、アフリカ開発の重要性を認識し、1993年に第1回アフリカ開発会議(TICADI)を提唱し、同会議プロセスを主導した。続く1998年に開催された第2回アフリカ開発会議(TICADII)では、「アフリカの貧困削減と世界経済への統合」というコンセプトに基づき、「貿易・投資の拡大(特に、アジア・アフリカ間の貿易・投資の拡大)」について開発課題が提起された。TICADIIで採択された「東京行動計画」では、「経済開発:民間セクターの育成」を行動計画の柱の一つとして、製造業を中心とする産業開発を重視し、民間企業活動の環境整備、直接投資・貿易・輸出の促進、中小企業振興を行動目標として位置付けている。そして、輸出と外国直接投資促進のための枠組み強化(健全なマクロ経済政策、為替・貿易システムの自由化、開放経済の確立・維持)並びにインフラストラクチャー整備についても強調された。また、国際的に求める行動項目に関しても、直接投資の奨励や南南協力の拡大促進などを個別的に取り上げている*1。
2003年秋に開催が予定されている「第3回アフリカ開発会議(TICADIII)」に向けて、我が国は「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」、「平和の定着」の3つの柱を据えたアフリカ開発支援を強化・促進させる方針を示した。こうした背景から、1998年のTICADII以降に実施された、アフリカに対する貿易・投資分野協力を振り返り評価を行うことは、我が国のアフリカに対する同分野協力を検証し、今後の協力に対する教訓を得る上で重要であるだけでなく、TICADプロセスにおけるアフリカ支援策のあり方を検討する材料としても大きな意味がある。
1-1-2 調査の目的
本調査は次の点を主な目的として実施された。
(1) | TICADIIが開催された1998年以降、我が国が行なったアフリカの貿易・投資分野に対する協力を対象として、これらの強力の総体を一つのプログラムと考え総合的に評価を行い、その結果を通じて教訓・提言を得ること(プログラム・レベル評価)。 |
(2) | 2003年秋に開催が予定されているTICADIIIに向けて、東アジアに対して実施された貿易・投資分野協力とアフリカに対する同協力の比較・分析を行うことによって、「アジア・アフリカ協力」の意義並びに可能性についての検討を行うこと。 |
(3) | 調査を通じた評価結果を公表することによって国民に対して説明責任を果たすこと。 |
*1 | 財団法人国際開発センター、外務省委託「TICADIIIの開催へ向けての支援調査」(2001年12月) |