3.5 評価結果の活用
評価は、その結果が適切にフィードバックされ、有効に活用されることが重要です。以下は、評価結果、導き出された提言・教訓の主なフィードバック先と活用状況です。近年、各機関はフィードバックの強化も図ってきており、効果的・効率的な援助の実施に役立てています。
(1)外務省評価結果の活用状況
- (イ)政策当局へのフィードバック
外務省が実施する評価では、日本の援助政策に関する提言・教訓が出されますが、これらの提言・教訓が将来の援助政策の立案・策定過程に反映されます。具体的には、評価調査の終了後、外務省の関係各課が参加する報告会が開催され、援助政策の企画・立案を担当する担当課により、対応策が協議されるとともに今後の政策に反映されています。また、完成した報告書も関係各課に配布され、今後の援助政策の企画・立案に活用されます。なお、これらの報告書は一般公開されています。
さらに、評価のフィードバック機能の強化を図るため、「ODA評価フィードバック内部連絡会議」において、評価の結果をより「政策」に活かすことを目指して検討が行われています(具体的なフィードバック内容の例は囲みを参照)。
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(ロ)援助実施機関(JICA・JBIC)へのフィードバック
外務省の評価調査で得られた提言・教訓は、報告会の開催や報告書の配布、さらには「ODA評価フィードバック内部連絡会議」を通じて、援助実施機関(JICA・JBIC)の将来の援助実施方針およびプロジェクトの形成・審査の検討材料として、役立てているほか、新規プロジェクトの実施・監理の質の向上に役立てています。さらに、指摘された問題点について具体的なフォローアップ措置を講じています。
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(ハ)被援助国へのフィードバック
被援助国側の責任に帰すべき問題点が指摘された場合、現地の日本大使館を通じて、或いは政策対話の場などにおいて、被援助国政府に改善を申し入れています。
国別評価については、評価実施後に評価対象国にて、援助受入窓口機関の担当者、政策立案部署の担当者、その他一般の有識者や研究者の参加を得て、ODA評価セミナーを開催し、その国の関係者に対する評価結果の確実なフィードバックを行っています。例えば、1999年度に実施した「ザンビア国別評価」の評価結果については、2000年11月16日にルサカにて評価セミナーを開催し、評価調査団より、ザンビア側政府関係者や援助関係者等(約130名が参加)に対して説明を行い、意見交換を行いました。
また、2000年9月に東京で開催されたDAC(開発援助委員会)の援助評価作業部会のワークショップには、発展途上国から初めてオブザーバーが招かれ、同時に開かれたODA評価セミナーでも被援助国へのフィードバックの重要性が強調されました。
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(ニ)「経済協力評価報告書」として公表
日本のODAに対する日本国民の理解増進の一助とするため、外務省の行うすべての評価結果及びJICA・JBICの事後評価を中心とする評価結果を「経済協力評価報告書」(和・英文)により公表しています。他の主要援助国、国際援助機関においては、評価結果について非公表、又は一部要約の形での公表も多い中、日本は最も情報公開が進んだ国の一つとなっています。
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(ホ)インターネットによる公表
1993年度の上記「経済協力評価報告書」の全文及び英文概要版から、外務省のホームページで公開しています。また、2000年7月より評価が終了したものから迅速にホームページで公開していくこととし、これまでに4回にわたって公開を行いました。今後も随時公開していく予定です。
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(ヘ)国内セミナーの開催
国内の援助関係者、有識者などを対象として、特定テーマ評価の結果に基づくセミナーを開催しています。2001年度は、中南米地域における「草の根無償資金協力」を対象とした評価結果に関するODA評価セミナーとUNDPと合同で行ったコソボ・東チモールでの評価結果についてのセミナーを開催しました。
(2)JICA・JBICの評価結果の活用状況
- (イ)機関内部へのフィードバック
教訓・提言を、将来の国別事業計画およびプロジェクトの形成・審査の材料として役立てているほか、新規プロジェクトの実施・監理の質の向上にも役立てています。さらに、指摘された問題点を機関内関連部署へフィードバックし、具体的なフォローアップ措置を講じています。
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(ロ)被援助国へのフィードバック
被援助国の責任に帰すべき問題点が指摘された場合、在外事務所を通じて、或いは被援助国側政府または実施機関との対話を通じ、改善を申し入れています。
JICAでは、すべての終了時、事後評価の評価結果を取りまとめた年次評価報告書の英語版を2000年度より作成し、被援助国側の事業実施機関に配布し、またホームページでも公表しています。さらに、国別事業評価、合同評価等では、評価実施後、評価セミナーを現地で開催し、その国の関係者に対する評価結果の確実なフィードバックを行っています。例えば、2000年度に国際開発学会に外部委託して実施した特定テーマ評価「タイ首都圏と地方との地域間格差是正」の評価結果については、広く関係者にフィードバックするために、調査対象国であるタイ(2000年8月)と日本国内(2001年10月)において評価セミナーを開催しました。
JBICでは、すべての事後評価において、評価報告書を英訳して、被援助国の事業実施機関等に提出しており、特に実施機関、被援助国政府の担当者等多くの関係者に対して評価結果への理解を深めてもらう必要性が高い場合には、現地でフィードバックセミナー等を開催しています。例えば、2000年度は、その前年度の評価案件であるタイの「東部臨海開発計画総合インパクト評価」及び「観光基盤整備事業」に関して、それぞれヴィエトナム(2000年6月)、ヨルダン(2000年9月)においてフィードバックセミナーを開催しました。本セミナーは、タイでの円借款事業の教訓を第三カ国にて活用するという南南協力の視点を踏まえたものと言えます。
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(ハ)政策当局へのフィードバック
JICA及びJBICが行ったプロジェクト及びプログラムの評価結果は、報告会や報告書の配布を通じて、政策当局である外務省へ随時報告され、具体的な提言等は、「ODA評価フィードバック内部連絡会議」で提起され、援助政策の立案にフィードバックされるようにしています。
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(ニ)報告書として公表
JICAは「事業評価報告書」により、JBICは「円借款案件事後評価報告書」およびホームページに評価結果を公表しています。
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(ホ)国内セミナーの開催
JICAでは、2001年度より国内の援助関係者や有識者などを対象として、国別事業評価や特定テーマ評価の結果に基づくセミナーを定期的に開催しています(2001年度はタイにおける「地域間格差是正」、タンザニア、ネパール、パラグァイにおける「貧困、ジェンダー」、「国別事業評価」などをテーマとして評価結果に関するODA評価セミナーを開催しました)。
JBICでは、2001年3月に、世界銀行の評価専門家を招聘した「国際協力に関する評価フォーラム」(財務省主催)に講演協力・パネル参画するなど、積極的にフィードバックを図ったほか、2001年6月に「アラバリ山地植林事業」につき、国際開発学会との共催にて、事後評価報告会を開催しました。
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