2024年版開発協力白書 日本の国際協力

(4)自然災害時の人道支援

近年、気候変動の影響もあり、短時間・局所的といった異常な集中豪雨の発生頻度は世界的に増加しており、洪水や土砂災害による被害も激甚化・頻発化の傾向にあります。開発途上国では、経済・社会基盤が脆(ぜい)弱であるため、災害により大きな被害を受ける国が多くあり、国際社会からの支援が求められています。

日本は、海外で大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、直ちに緊急援助を行える体制を整えています。協力体制には、人的援助、物的援助、資金援助があり、災害の規模や被災国等からの要請内容に基づき、いずれかまたは複数を組み合わせた協力を行っています。

●日本の取組

ホンジュラスの熱帯暴風雨被害に対して、ロドリゲス・ホンジュラス外務国際協力次官(国際協力担当)(写真右から2人目)に緊急援助物資を供与する中原駐ホンジュラス日本国大使(写真右から3人目)(写真:JICA)

ホンジュラスの熱帯暴風雨被害に対して、ロドリゲス・ホンジュラス外務国際協力次官(国際協力担当)(写真右から2人目)に緊急援助物資を供与する中原駐ホンジュラス日本国大使(写真右から3人目)(写真:JICA)

人的援助として国際緊急援助隊があり、(i)救助チーム、(ii)医療チーム、(iii)感染症対策チーム、(iv)専門家チーム(災害の応急対策と復旧活動に関する専門的な助言・指導を行う)、(v)自衛隊部隊(特に必要があると認められる場合に医療活動や援助関連の物資や人員の輸送を行う)を、個別に、または組み合わせて派遣します。

物的援助としては、緊急援助物資の供与を行っています。日本は海外5か所の倉庫に、被災者の当面の生活に必要なテントや毛布などを備蓄しており、災害が発生したときには速やかに被災国に供与できる体制にあります。

2024年には、モンゴルで発生した雪害、パプアニューギニアの地滑り、アフガニスタンの洪水、ブラジルの豪雨、中米カリブ地域のハリケーン、ベトナムの台風、ホンジュラスの熱帯暴風雨、ボリビアの森林火災による被害に対応し、JICAを通じて、テント、毛布、プラスチック・シート、浄水器、消火用資機材などの緊急援助物資を迅速に供与しました。

資金援助としては、海外における自然災害や紛争の被災者、難民・避難民等の救援を目的として、被災国政府や被災地で緊急援助を行う国際機関などに対し、緊急無償資金協力を行っています。

2024年には、洪水の被害に見舞われたエチオピア、ソマリア、ケニア、バングラデシュ、また、地滑り被害を受けたパプアニューギニア、台風被害を受けたベトナム、ミャンマーに対して、国際機関を通じて、水・衛生分野における支援や、シェルターや食料の提供支援などを行いました。

日本のNGOはODAを活用した被災者支援を行っているほか、国際機関などが緊急援助活動を実施する際のパートナーとしても活躍しています。ジャパン・プラットフォーム(JPF)注56は自然災害や紛争によって発生した被災者および難民・避難民等への人道支援を行っており、JPFの加盟NGOは、ケニア(気候変動による干ばつや洪水)、アフガニスタン(地震)、バングラデシュ(洪水)、ウクライナ(紛争)など、現地政府の援助が届きにくい地域で、現地のニーズに対応した様々な支援を実施しています(実績などは第Ⅴ部1(3)を参照)。

自然災害の多い日本と東南アジア諸国にとって、災害対応は共通の課題です。日本は、2011年に設立されたASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を支援し、その災害等への対処能力の向上等に貢献してきました。2024年も引き続き、緊急物資を迅速に被災国へ輸送するASEAN緊急災害ロジスティック・システム(DELSA)の構築および同システムを活用した支援や、被災状況の緊急評価等を行うASEAN緊急対応評価チーム(ERAT)やASEAN各国防災機関の幹部候補職員を対象とした人材育成を行っています。

案件紹介3

エチオピア、ソマリア、ケニア一般公募

SDGs11

エチオピア、ソマリア、ケニアにおける洪水被害に対する緊急無償資金協力
緊急無償資金協力(2024年3月~9月)
紛争と洪水に苦しむ「アフリカの角」地域の人々の命と生活を守る

長引く紛争や気候変動、昨今の国際情勢を受けた世界的な食料・エネルギー価格の高騰等の複合的な影響等を受けて、「アフリカの角」地域注1では、多くの人々が故郷を追われています。2023年10月以降、豪雨による洪水が繰り返し発生し、生活環境は一層厳しさを増し、新たに200万人以上が避難を余儀なくされる事態に直面しています。

そこで、日本政府と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、「アフリカの角」地域に位置するエチオピア、ソマリア、ケニアの3か国で、洪水被害に遭った人々の命を守り、避難民とその受入れ地域の人々の生活を支える支援を実施しました。

本事業の対象であるエチオピア東部のソマリ地域では、40年以上にわたり隣接するソマリアから35万人以上の難民を受け入れており、また洪水被害も甚大です。UNHCRは、日本からの支援を活用し、仮設避難所の整備、清潔な飲み水や医療サービスの提供、衛生習慣についての啓発活動、ジェンダーに基づく暴力の防止対策などを強化し、約22万人の生活改善に寄与しています。

UNHCRエチオピア事務所の小坂(こさか)順一郎渉外担当官は、「長期化する紛争や気候変動への対応では、中長期的な視点での支援が不可欠。エチオピアでは日本の強みでもある『人道と開発と平和の連携(HDPネクサス)』のアプローチを通じて、人道危機の初期から持続的な開発の視点をいかして、既存の公共サービスの活用や地域社会の危機対応能力の強化などに力を入れている。」と話しています。

日本の支援によってエチオピアの難民居住区に設置されたタンクで水を汲む難民の家族(写真:UNHCR)

日本の支援によってエチオピアの難民居住区に設置されたタンクで水を汲む難民の家族(写真:UNHCR)

エチオピアで、難民の生徒と受入れコミュニティの生徒が共に学ぶ小学校を訪れた小坂渉外担当官(中央)(写真:UNHCR)

エチオピアで、難民の生徒と受入れコミュニティの生徒が共に学ぶ小学校を訪れた小坂渉外担当官(中央)(写真:UNHCR)

注1 アフリカ大陸の北東部のインド洋と紅海に向かって「角」のように突き出た地域の呼称で、エチオピア、エリトリア、ジブチ、ソマリア、ケニアの各国が含まれる地域のこと。


  1. 注56 : 用語解説を参照。
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