2024年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)ODAの意義

日本は、エネルギー資源や食料の多くを国外から輸入し、自動車を始めとする様々な製品を国外に輸出することで、経済を支えています。日本への物流の要所である地域や海峡の安全が確保されなければ、石油やガス、食料などの供給が滞り、日本人の日常生活は大きな影響を受けることになります。他国で発生した紛争や災害を受けて、日本国内の物価が高騰することが少なからずあるように、開発途上国を含む世界と日本は支え合う関係にあり、互いの国の平和と経済成長があってこそ成り立っていると言えます。

諸外国との関係を構築しながら、地域の安定や発展、地球規模課題の解決に向けた取組を行い、そういった取組を通じて日本と相手国との重層的なウィンウィンの関係を作っていくことは、日本と日本国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じてさらなる繁栄を生み出すために不可欠な貢献です。

■70年間のODAを通じて築かれた信頼と支え合う関係
インドネシア・パティンバン港の自動車コンテナターミナル(写真:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

インドネシア・パティンバン港の自動車コンテナターミナル(写真:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

天然さけのいなかったチリでさけの養殖に取り組むJICA専門家(写真:JICA)

天然さけのいなかったチリでさけの養殖に取り組むJICA専門家(写真:JICA)

日本は、重要な外交ツールの一つであるODAを通じて、開発途上国の抱える課題の解決に貢献し、良好な二国間関係を築いてきました。

日本が70年間続けてきたODAは、着実に開発途上国を含む世界からの信頼につながっています。シンガポールの著名なシンクタンク、ISEASユーセフ・イスハク研究所が2019年から毎年東南アジアにおいて実施している調査においても、日本は調査開始以来6年連続で、主要国の中で最も信頼できるASEANのパートナーに選ばれています。また、日本のパスポートで190以上の国にビザなしで渡航できますが、これも、日本がODAなどを通じて諸外国との友好・信頼関係を築いてきた表れです。

日本のODAによる協力は、友好な二国間関係の構築のみならず、日本の経済・社会活動にも寄与してきました。

まず、ODAは、相手国の経済成長を後押しすると同時に、日本企業の海外展開にも寄与してきました。例えば、インドネシアの物流の拠点となるパティンバン港は、同じ島国で埋立地盤改良や岸壁護岸建設などの高い技術を有する日本が、コンテナターミナルや自動車ターミナルの建設や、既存の高速道路をつなぐアクセス道路などの建設を支援しています。首都圏の物流の効率化を図ることで、インドネシアの投資環境改善を支援し、経済成長に寄与しており、2021年には、日本企業が設立した事業会社による自動車ターミナルの運営、現地に進出する日系企業の自動車の本格的な輸出が開始しました。同港は、自動車関連企業を始めとした日系企業が多く集積する工業団地からのアクセスが良く、インドネシアからの輸出活発化に寄与し、日本企業にも裨(ひ)益することが見込まれています(タイ東部臨海開発の事例は【事例2】を参照)。

また、ODAは、海の安全確保や維持、航行の自由にも寄与しています。国際航路における船舶の安全な航行は世界貿易にとって重要な意義がありますが、輸出入の約99%を海上輸送に依存する日本にとっても、安定的な日本への物資供給や自動車などの製品の輸出につながります。一例として、原油などエネルギー資源を始めとする物資の日本への輸入ルートの要所であり、多くの日本関連船舶が航行するマラッカ海峡、シンガポール海峡、ソマリア沖・アデン湾等で、日本はODAを通じて沿岸諸国の海上保安機関の能力強化や巡視艇の供与などを行うことで、船舶の安全な航行、ひいては安定な日本への物資供給に寄与しています(フィリピン沿岸警備隊支援の事例は【事例3】、海洋の安全については第Ⅲ部2(2)も参照)。

さらに、ODAは、相手国政府の産業育成を支援すると同時に、日本の食料安全保障にも寄与しています。一例として、日本の食卓では、日本のODAが開発途上国の産業開発を支援し、日本への輸出につながった食材を見ることができます。日本はさけの生息域でさえなかったチリに対して、1969年から養殖技術を伝えるなど約20年間にわたり協力し、チリは世界でも一、二を争うさけの輸出大国に発展しました。今では日本人が消費するさけの約3割がチリから輸入されています。独立間もないモーリタニアへたこつぼ漁を伝えたのも、日本のODAです。当時、同国では魚介類を食べる習慣がなく、漁業という産業は存在しませんでしたが、今やたこ漁は主要産業に成長し、水産物輸出の約86%をたこが占めています。日本は、たこ漁以外にも長年にわたり同国の水産分野に継続的に協力していますが、日本が輸入するたこの約4割はモーリタニア産で、また、日本のまぐろ延縄漁船は同国海域で操業しています。このように長年にわたって築かれた相互互恵の関係は、日本の食料の安定的な供給先確保に寄与しています。

■日本国内の課題解決にもいかされる開発協力の知見
公益社団法人青年海外協力協会と社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)、JICAによる避難所支援に向けた会議の様子(写真:JICA)

公益社団法人青年海外協力協会と社会福祉法人佛子園(ぶっしえん)、JICAによる避難所支援に向けた会議の様子(写真:JICA)

海外での開発協力の知見は、日本国内でもいかされています。例えば、中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)などにおいて、JICA海外協力隊や平和構築支援など、海外での事業経験が日本国内の被災地支援にいかされています。直近の能登半島地震では、JICA海外協力隊の帰国隊員を中心とした組織である公益社団法人青年海外協力協会(JOCA)および地域の社会福祉法人が、自治体と共に平時から立ち上げていた地域交流施設を拠点として、地震発生間もない時期から救援活動を開始し、地域の復旧・復興に取り組みました。また、JICAもJOCAおよび社会福祉法人と協力して避難所運営支援を行うとともに、並行して被災自治体へのJICA職員等の派遣、外国人技能実習生の被災状況確認など、緊急時から復旧・復興に至るまでの中長期的な支援を行っています(インドネシアにおける火山防災事業への協力が日本の防災にいかされている事例は「匠の技術、世界へ」を参照)。

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