国際協力の現場から 06
国際機関で活躍する日本人職員の声
~強制移住の課題に立ち向かう~
2024年、日本がジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度注1を開始してから50周年を迎えました。これまでに2,000人以上の日本人の若手人材を国際機関に派遣し、2023年末現在、国連関係機関で活躍する約960人の日本人職員(専門職以上)のうち、約半数がJPO出身者です。このように、JPO派遣制度は日本人が国際機関職員として国際協力分野のキャリアを踏み出す第一歩として大きな役割を果たしています。本コラムを執筆した篠﨑(しのざき)智美氏も同制度を活用する一人であり、2025年1月から正規ポストでの採用が決定しています。
難民キャンプ訪問をきっかけに、国際協力の道へ
生計を立てるため、ウガンダの難民居住区内の市場で働く難民の女性たち(写真:篠﨑智美)
IOMギリシャのスタッフを対象に、人身取引対策の研修を実施する筆者(写真:篠﨑智美)
小学校の修学旅行でヒロシマを訪れ、被爆者の方の体験談を聞いてから、「平和な世界の実現に貢献したい、国際協力に携わりたい。」と思うようになった私は、自分が将来取り組みたい活動や分野を絞るため、学生時代には国内外でのインターンシップや留学に積極的に挑戦しました。大学院では戦後復興学を専攻し、修士論文研究で訪れた東アフリカのウガンダで難民の方々の体験を直接聞いたことが、国際移住機関(IOM)でのキャリアを目指すきっかけとなっています。生きるために避難を強いられ、言語も文化も異なる国で新しい生活を始めることの大変さや困難を痛感した経験から、移住を強いられた避難民の方々の生活再建の手助けや、強制的な移住の原因となる課題の解決に貢献したいと思うようになりました。
大学院卒業後は日本の国際協力NGOに就職し、南スーダンとウガンダの避難民支援に取り組みました。「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」注2を通じてIOM ナイジェリアで国連ボランティアを経験した後、JPOとして2022年1月からIOMギリシャで人身取引注3対策支援を、2023年4月からはケニアに拠点を置くIOMソマリアで平和構築支援を担当しています。最初は新規プロジェクトの計画や、実施中のプロジェクトの報告書作成等を主に担当していましたが、現在は自身が計画したプロジェクトの管理も任せてもらえるようになり、ソマリアの政府関係機関や援助国政府、他の国際機関との連携・調整、現地スタッフの雇用や共同で事業を実施する現地NGOの選定、予算管理や活動のモニタリングなど、幅広い業務を担当しています。
強制移住の根底にある課題の解決を目指して
ソマリアでは、アル・シャバーブを始めとする暴力的過激派組織の活動が人命の喪失や強制移住を引き起こす一因となっています。このため、ソマリア政府はこれらの組織における非リーダー格の「低リスク」な人々への社会復帰支援を行うことで、自主的な脱退を促し、組織の弱体化を目指しています。組織から脱退した女性の多くは、戦闘員の妻など、殺戮(りく)や暴力行為に直接的に加担していないにもかかわらず、地域コミュニティからの差別や疎外、組織からの報復のリスクなどの深刻な課題に直面しています。また、紛争に関連して生じる性的暴力(CRSV)の被害者も少なくありません。私が担当しているプロジェクトでは、このような女性を含む暴力的過激派組織からの低リスクな脱退者や、今後、社会から疎外され暴力的過激派組織に勧誘されるリスクの高い若年層に対して、心のケアや職業訓練等の支援を行い、社会への復帰や参画を促しています。
IOMソマリアでは、ケニアの首都にあるナイロビサポート事務所で勤務しています。現地のスタッフとは電話やSNS、メールやオンライン会議等で連絡を取ることが多いです。事業地に足を運ぶことは難しいですが、同じ志を持つ現地スタッフや提携する現地NGOと協力しながら、支援が届きにくい地域でニーズの高い支援を実施することに大きなやりがいを感じています。これからも、強制移住を引き起こす課題の解決に取り組み、その影響を受けた人々の支援に携わり続けたいと思っています。
国際移住機関(IOM)ソマリア事務所 篠﨑智美
注1 詳細は図表Ⅴ-3を参照。
注2 注40を参照。
注3 注51を参照。
